万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日銀の独立性問題―金融政策と対外通貨政策のジレンマ

2012年11月20日 15時46分46秒 | 日本経済
日銀、金融政策を現状維持 追加金融緩和の効果見極め(朝日新聞) - goo ニュース
 日銀の白川総裁は、本日、追加金融緩和の効果を見極めるために、金融政策の現状維持を決定したと報じられています。しかしながら、金融緩和は、アナウンス効果だけでも、既に円安と株価上昇という目に見える効果をもたらしており、これ以上の見極めが必要なのか、疑問なところでもあります。

 ところで、アナウンス効果の発信源となった安倍自民党総裁の金融緩和発言に対しては、日銀の独立性を脅かすとして批判の声も上がっているそうです。日銀の役割は、確かに、通貨価値の維持にありますので、国内の金融政策だけを見れば、中央銀行の独立性の保障には、正当な根拠があります。ところが、通貨に関する政策には、国内向けの金融政策だけではなく、自国通貨の国際的な価値に関わる対外通貨政策もあります。日銀は、国内の金融政策を優先し(デフレ放置はこの点でも問題が…)、アンチ・インフレ政策の観点から通貨の番人に徹していますが、その一方で、対外通貨政策の分野では、日本経済は、異常な円高という大変動に見舞われてきたのです。外国為替市場では、中国や韓国などが、戦略的に自国通貨安に誘導しており、また、アメリカのFRBやEUのECBも、リーマンショック以来、量的緩和政策を実施しておりますので、相対的に日本の円だけが上昇する傾向にあります(投機筋による円買いにも晒されている…)。今日では、外国為替市場に直接に政府介入することは、国際的に戒められていますので、中央銀行による量的緩和が、対外通貨政策においても、主たる政策手段となりつつあるのです。

 対外通貨政策のような戦略性の高い政策領域では、政府にも政策権限がありますので、ここは、政府と日銀が協力して、円高対策を行うべきなのではないでしょうか。安倍総裁の主張する3%インフレターゲット論にも、首を傾げるところはあるのですが、国内の金融政策と対外通貨政策の間にはジレンマがありますので、国内のみを基準として金融政策を実施していますと、対外的な通貨政策が蔑にされ、甚大な損害が発生しかねないと思うのです。

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コメント (4)
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