万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

豪雨被害を最小限に留めるために-ダムの放水問題

2018年07月10日 15時45分03秒 | 日本政治
西日本豪雨死者132人、不明74人 広島・榎川が氾濫
西日本一帯で発生した今般の水害は甚大なる被害をもたらし、犠牲になられた方も既に132人を数えております。亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますと共に、ご家族の方々に対しまして心よりお悔み申し上げます。また、行方不明となられた方々の一刻も早い救出を願わずにはいられません。

 今般の豪雨では、土砂崩れやがけ崩れによる被害に加えて、河川の氾濫による浸水被害も広範囲に及んでおり、一村の凡そ全域が水没の危機に面した地域もあったようです。土砂崩れ等による家屋の損壊も多く、地震に優るとも劣らない水害被害の凄まじさを見せつけております。今後の生活に不安を覚えつつ、避難所での慣れない生活を強いられる方々の心中を察しますと、まことに心が痛みます。

 日本国は自然災害が多い国であり、古来、その備えにも心を砕いてきました。それでも自然の力を前にしてはなす術を失いがちなのですが、今般の災害で一つ改善すべき点としを挙げるとすれば、ダムの放水問題です。報道に拠りますと、被災地のダムの多くは、満水状態に至ったため、豪雨で河川が増水する中にあって放水せざるを得なかったそうです。愛媛県西与市では、上流の野村ダムの放水より肱川が氾濫し、市から避難情報が伝えられたものの、朝方であったことも災いして逃げ遅れた5人の方が亡くなっております。おそらく、他にもダムの放水によって被害が拡大した地域もあったことでしょう。

 雨量の増加によるダムの放水は、予め作成されていた放水マニュアルに従って行われており、この点、当局にミスがあったわけではないようです。放水措置を採らなければ、ダムの水が溢れ、その周辺にあって被害が発生することは確かです。しかしながら、数十年に一度というレベルの豪雨である場合には、マニュアル通りの措置が適切であったかどうかは疑問なところです。上述した野村ダムの場合、流入分とほぼ同量の水を放出する「異常洪水時防災操作」を行ったため、放水量は操作前の2から4倍に急増したそうです。ダムからの放水がなくとも豪雨のために河川は急激に増水しているのですから、ダムからの放水は、洪水被害を拡大さてしまったかもしれないのです。

 今後の被害状況の調査や分析によって、ダムからの放水が水害を悪化させる要因として確認された場合には、今後の予防策として、ダムの放水マニュアルを見直す必要があるように思えます。例えば、豪雨が長期的に続くとする予報が出されている場合には、降水に先立って放水作業を行い、ダムの貯水量を予め下げておくとか(ダムの貯水キャパシティーを上げる…)、一度に放水せずに、下流の水量に急激な影響を与えないように、少量づつ段階的に放水するといった工夫です。

 僅かな改善策で被害を防ぐことができれば、それに越したことはありません。今般の水害を教訓として、日本国は、国も地方も合わせ、より効果的な防災を実現すべく、マニュアル等の見直しにも取り組むべきではないかと思うのです。

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