現在、ロシアは、強引な手法でクリミアをウクライナから奪い、自国に併合した行為を咎められ、国際社会から厳しい経済制裁を受けております。特に、長期に亘ってロシアの脅威に晒されてきたヨーロッパ諸国の態度は硬く、対ロシア制裁が解かれる気配はありません。
ロシアのクリミア併合はその合法性において欠落があり、軍事力を背景にした‘一方的な現状の変更’を支持するつもりはありませんが、それでも、中国と比較しますと、国際社会はとりわけロシアに対しては厳罰で臨んでいるように思えます。
クリミア半島は、第二次世界大戦中にスターリンによって追放されたクリミア・タタールの地であるとする説もありますが、ユーラシア大陸には遊牧民族が闊歩していたため、同半島に対して正当な領有権を主張できる国、又は、民族は何れか、という問題について、解を見出すことは簡単ではありません。紀元前に遡り、恰も文明の十字路の如く、ローマ人、ゴート族、フン族など様々な民族がその歴史を彩っています。13世紀におけるモンゴル族のバトゥのヨーロッパ遠征以降、この地には上述したタタール族が入り、暫くはクリミア・ハン国として栄えました。ロシア領となったのは、1768年の露土戦争に際して帝政ロシアが、オスマン・トルコ帝国の属国となっていた同国を独立させ、1783年にはロシア領として併合してからのことです。さらにウクライナ領とされたのは、第二次世界大戦後、ソ連邦のフルシチョフが同領域をウクライナに移譲した1954年のことなのです。
クリミア半島の歴史は、遊牧民族を含む様々な民族が興亡してきたユーラシア大陸における国境線の線引きの難しさを示していますが、ロシアの主張にも、歴史的な根拠が皆無なわけではありません。しかしながら、国際社会は、クリミアの変遷について歴史的な考察を加えることなく、ロシアに対しては厳罰を以って臨んだのです。
もちろん、ロシアに歴史的な根拠があるとはいえ、正当なる手続きを経ずして一方的に併合した行為に対しては、国際法秩序の維持の観点からすれば、厳しい制裁を科すべきはあります。しかしながら、その一方で、中国は、他の諸国の領有権主張を完全に無視し、「九段線」を根拠に南シナ海の諸島を一方的に占領しています。しかも、根拠とされた「九段線」は、2016年7月12日に、常設仲裁裁判所において国際法上の歴史的、並びに、法的根拠としての有効性を完全に否定されています。
本来であれば、中国が同判決を‘紙屑’として破り捨て、その履行を拒否した時点で、国際社会は、中国に対してロシアと同等、あるいは、それ以上に厳しい制裁を科すべきでした。ところが、何故か、中国に対しては、国連安保理に対して制裁を訴えたり、独自制裁に踏み切る国はなく、国際法秩序を破壊する行為を野放しにしてしまったのです。今般、アメリカ国内では、トランプ大統領の対ロ融和が批判を浴びておりますが、軍事的脅威や他国への政治介入の程度からすれば、オーストラリアで既に表面化しているように、中国の方がよほど危険な存在です。
中国は、北朝鮮危機の影に隠れるかの如く、南シナ海の軍事要塞化をほぼ完成したとも報じられております。国際社会はダブル・スタンダードを排し、国際法秩序を護るために、対中制裁を検討すべき段階に至っているのではないかと思うのです。
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ロシアのクリミア併合はその合法性において欠落があり、軍事力を背景にした‘一方的な現状の変更’を支持するつもりはありませんが、それでも、中国と比較しますと、国際社会はとりわけロシアに対しては厳罰で臨んでいるように思えます。
クリミア半島は、第二次世界大戦中にスターリンによって追放されたクリミア・タタールの地であるとする説もありますが、ユーラシア大陸には遊牧民族が闊歩していたため、同半島に対して正当な領有権を主張できる国、又は、民族は何れか、という問題について、解を見出すことは簡単ではありません。紀元前に遡り、恰も文明の十字路の如く、ローマ人、ゴート族、フン族など様々な民族がその歴史を彩っています。13世紀におけるモンゴル族のバトゥのヨーロッパ遠征以降、この地には上述したタタール族が入り、暫くはクリミア・ハン国として栄えました。ロシア領となったのは、1768年の露土戦争に際して帝政ロシアが、オスマン・トルコ帝国の属国となっていた同国を独立させ、1783年にはロシア領として併合してからのことです。さらにウクライナ領とされたのは、第二次世界大戦後、ソ連邦のフルシチョフが同領域をウクライナに移譲した1954年のことなのです。
クリミア半島の歴史は、遊牧民族を含む様々な民族が興亡してきたユーラシア大陸における国境線の線引きの難しさを示していますが、ロシアの主張にも、歴史的な根拠が皆無なわけではありません。しかしながら、国際社会は、クリミアの変遷について歴史的な考察を加えることなく、ロシアに対しては厳罰を以って臨んだのです。
もちろん、ロシアに歴史的な根拠があるとはいえ、正当なる手続きを経ずして一方的に併合した行為に対しては、国際法秩序の維持の観点からすれば、厳しい制裁を科すべきはあります。しかしながら、その一方で、中国は、他の諸国の領有権主張を完全に無視し、「九段線」を根拠に南シナ海の諸島を一方的に占領しています。しかも、根拠とされた「九段線」は、2016年7月12日に、常設仲裁裁判所において国際法上の歴史的、並びに、法的根拠としての有効性を完全に否定されています。
本来であれば、中国が同判決を‘紙屑’として破り捨て、その履行を拒否した時点で、国際社会は、中国に対してロシアと同等、あるいは、それ以上に厳しい制裁を科すべきでした。ところが、何故か、中国に対しては、国連安保理に対して制裁を訴えたり、独自制裁に踏み切る国はなく、国際法秩序を破壊する行為を野放しにしてしまったのです。今般、アメリカ国内では、トランプ大統領の対ロ融和が批判を浴びておりますが、軍事的脅威や他国への政治介入の程度からすれば、オーストラリアで既に表面化しているように、中国の方がよほど危険な存在です。
中国は、北朝鮮危機の影に隠れるかの如く、南シナ海の軍事要塞化をほぼ完成したとも報じられております。国際社会はダブル・スタンダードを排し、国際法秩序を護るために、対中制裁を検討すべき段階に至っているのではないかと思うのです。
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