万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

オウム真理教死刑囚の刑執行-‘カルトの黄昏’

2018年07月11日 15時05分40秒 | 日本政治
地下鉄サリン事件を始め数々の凶悪事件を起こしたオウム真理教の死刑囚7人は、今月6日、遂に刑が執行され、この世から去ってゆきました。突然の死刑執行に、マスメディアでは「似たような事件は必ず繰り返される」とする見解やオウム真理教の残党による報復テロを警戒する声も聞かれますが、松本智津夫死刑囚の処刑は、‘カルトの黄昏’を象徴しているのかもしれません。

 オウム真理教死刑囚の刑執行が‘カルトの黄昏’となる第一の理由は、教団の信者達にとっては神聖、かつ、絶対的な教祖であったとしても、テロや犯罪事件を起こせば、法の下で裁かれ、問答無用に死刑に処されるとする前例となったことです。1980年代末から90年代にかけて、日本国の支配を計画した松本智津夫率いるオウム真理教は、政官界を含むエリート層にも浸透し、衆議院選挙にも立候補者を擁立する程の勢いがありました。しかしながら、かくもあっさりと死刑が執行されたわけですから、“似たような事件”を起こすような教団が続々と登場するはずもありません。また、たとえ‘日本国王’を目指す教祖が出現したとしても、オウム真理教の顛末を知っていれば、誰も帰依しようとはしないことでしょう。

 第2の理由は、オウム真理教の仏教的な教義に従えば、死は恐れるものではなく、死しても輪廻転生すると考えられていることです。乃ち、オウム真理教系の後継教団の信者達は、教祖の仇を討つべく報復テロに及ぶよりも、‘生まれ変わり’を探すことに熱中することでしょう。松本智津夫本人は、徳川家光や朱元璋、果ては、古代エジプトのジェゼル王に使えた宰相兼技術者のインホテップでの‘生まれ変わり’と称したそうですが、教団から松本智津夫の‘生まれ変わり’と認定され、教祖の地位を約束されても、誰もが全力で逃げるはずです。

 第3の理由は、オウム真理教が活動した時代とは違い、現在では、インターネットによる情報の拡散が急速な点です。仮に当時、インターネットが存在していたならば、教祖の人柄や空中浮揚などの超能力が一般の人々からも様々な角度から検証され、‘いんちき’と断定され、ニット上で拡散したことでしょう。また、閉鎖的な教団内部における信者の修行の実態が、ネット上に漏れれば、その不気味さに多くの人々が戦慄を覚えたはずです。こうした情報が広く共有されれば、日本国内で15000程の信者を集めることはなかったことでしょう。この点からしましても、オウム真理教に匹敵するほどのカルト教団が今日出現するとは思えないのです。

 以上に幾つかの理由を述べてきましたが、オウム真理教の存在は、むしろ、日本社会において、殺人をも公然と肯定するカルト教団の恐ろしさを広く国民に知らしめることとなりました。ロシアや北朝鮮との繋がりなど、まだまだ解明すべき謎は残されておりますが、オウム真理教死刑囚の刑執行は、カルト教団をも地獄への道連れとしたのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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