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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

オウム真理教から学ぶ怪しいカルト教団の見分け方

2018年07月23日 11時55分54秒 | 社会
本日の日経ビジネス・オンラインでは「不寛容ではオウム問題は解決しない」とするタイトルの記事が発信されておりました。英マンチェスター大学のエリカ・バフェッリ准教授によるオウム真理教研究に基づくものですが、同記事には、危険で怪しいカルト教団の見分け方に関するヒントが隠されているようです。

 タイトルだけを読みますと、同記事は、‘殺人容認教義までをも含めてオウム真理教に対して寛容であろう’と主張しているとつい勘違いしてしまうのですが、全文を読み通しますと、オウム真理教団には、教団幹部による凶悪犯罪の計画を全く知らなかった、あるいは、事件が起きてからショックを受けて脱会した信者も多いので、こうした‘元信者の社会復帰を認め、過去の過ちに寛容であろう’という趣旨のようです(ただし、オウム真理教死刑囚の死刑執行に際してSNS上に起きたオウム真理教への批判・非難の嵐を‘ヘイトスピーチ’と認定する態度には疑問がある…)。社会に‘居場所’がなければ、お互いを理解できる元信者同士が集まり、同様の教団を‘再結成’してしまうリスクがあり、この点を重く見て、‘不寛容ではオウム問題は解決しない’と題したのでしょう。イギリスでも、過去にイスラム過激派に属していた人々の社会復帰問題があり、日英共通の今日的な課題として理解しているのかもしれません。

 記事の主題は、元信者に対する理解と社会復帰問題なのですが、同記事で興味深い点は、大勢の‘無実の信者’がオウム真理教教団内部で生じてしまった理由に触れている点です。バフェッリ氏の説明によれば、同教団は階層集団であり、組織内部が細分化していたそうです。つまり、トップから末端までの信者が位階的な階層によって分断されており、トップや幹部と他の階層、並びに、各階層や信者の間に設けられた壁によって、教団の行動計画や関連情報の流れが遮断されていたのです。こうした風通しの悪い閉鎖型のピラミッド型の位階組織では、上部がテロや国家転覆を計画しても下部の信者は知る由もなく、いざ計画が実行に移されますと、情報が遮断されてきた下部の信者達は、知らぬまに巨悪計画に協力させられてしまっているか、思いもよらぬ出来事に慌てふためくか、それとも、茫然自失の状態になるのです。

 考えてもみますと、イエス・キリストやブッダなど、世界宗教の教祖達が、こうした隠蔽体質、かつ、ヒエラルヒー志向の組織の結成を薦めたというお話は聞きません。むしろ逆に、自らの教えや行動を積極的に信者の前に範として示し、これらを以って信者達を自然に感化させています(もっともキリスト教の場合には、イエス・キリストは幾度かの奇跡を示しており、松本智津夫の空中浮揚等の超能力と共通した点もないわけではないが、キリスト教が広く受け入れられたのは、その人道主義的な教義にあったのでは…)。となりますと、オウム真理教教団の如き組織的特徴を有する教団は、神や仏の御心に従った人としての善き生き方や魂の救済を求めるといった純粋なる信仰のために存在するのではなく、どこか‘怪しい’と判断して然るべきなのかもしれません。もしかしますと、教団設立の目的は別のところにあり、それは、秘かに野望を抱く教祖の信者利用や営利目的、あるいは、何らかの国際組織、もしくは諸外国の下部団体であるかもしれないのです。

オウム真理教に関する組織研究は、カルト教団や隠れた犯罪組織を識別する方法を知る上でも、大いに役立つ可能性があります。あらゆる権威が揺らぐ今日、知らず知らずの内に、‘悪しき組織’の協力者にさせられてしまうリスクは、誰にでもあるのですから。

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