イラン、核合意離脱で米を国際司法裁に提訴
報道に拠りますと、トランプ政権によるイラン核合意からの一方的な脱退を受けて、イランは、アメリカによる制裁再開の停止や同国が被った被害の補償等を求めて、ICJ(国際司法裁判所)に提訴したそうです。しかしながら、このイラン側からの訴訟、違和感を覚えざるを得ないのです。
訴状の具体的な内容については詳らかではありませんが、おそらく、一方的な合意離脱の国際法上の合法性が問われるものと予測されます。条約の無効や脱退の条件等を定める「条約法に関するウィーン条約」を読みますと、確かに、締約国の一国による一方的な合意からの脱退は、国際法上の違法行為とする見方もあり得るかもしれません。しかしながら、イラン核合意は極めて特異なケースです。
そもそも、2015年のイラン核合意は、イランによる国際法違反に端を発しています。イランは、NPT(核拡散防止条約)に1970年の発足当初から加盟しており、締約国としての核不拡散の義務を負っているはずでした。ところが、通常の原子力発電では必要のない高濃度イランの製造をイランが始めたことから、秘密裏に核開発を進めているのではないか、とする疑いが持ち上ったのです。
このことは、イランは、自らのNPT違反疑惑を全く無視して、イラン核合意の違法性だけを切り取ってICJに提訴したことを意味します(なお、ICJの手続き上、提訴には相手国政府の合意が必要ですが、ICJは、イランからの提訴を受理した模様…)。NPTは、国際社会の‘刑法’に喩えるべき一般国際法ですが、イラン核合意は、関連諸国による任意の多国間合意に過ぎません。しかも、核合意の内容には重大な欠陥があり、確実、かつ、永続的にイランが核開発計画を放棄する保証はどこにもないのです。果たして、イランからの提訴を受けたICJは、どのように対応するのでしょうか。
こうした経緯から考えますと、イランの核開発問題に対して、関連諸国による国際合意による開発停止という解決手段が適切であったのか、という疑問も湧いてきます。乃ち、この時、NPT条約違反の疑いありとして、ICJといった国際司法機関にストレートにイランを訴えた方が法的にはすっきりとした解決が実現したかもしれないのです。そして、この方法は、今からでも遅くはないのかもしれず、イランもアメリカをICJに提訴した以上、自らも司法解決の提案を受け入れざるを得ず、判決が下されれば、当然に従うべき立場に置かれます。
加えて、国際司法機関への提訴は、北朝鮮の核問題に対しても取り得る選択肢の一つともなります。仮に、既に核保有を宣言している北朝鮮に対してこの方法を適用するならば、NPT締約国としての義務違反、NPTからの一方的脱退の合法性、並びに、国連安保理決議の不履行等が訴因となりましょう。イランによるICJへの提訴は、同国の思惑とは全く違った影響を国際社会にもたらすかもしれないと思うのです。
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報道に拠りますと、トランプ政権によるイラン核合意からの一方的な脱退を受けて、イランは、アメリカによる制裁再開の停止や同国が被った被害の補償等を求めて、ICJ(国際司法裁判所)に提訴したそうです。しかしながら、このイラン側からの訴訟、違和感を覚えざるを得ないのです。
訴状の具体的な内容については詳らかではありませんが、おそらく、一方的な合意離脱の国際法上の合法性が問われるものと予測されます。条約の無効や脱退の条件等を定める「条約法に関するウィーン条約」を読みますと、確かに、締約国の一国による一方的な合意からの脱退は、国際法上の違法行為とする見方もあり得るかもしれません。しかしながら、イラン核合意は極めて特異なケースです。
そもそも、2015年のイラン核合意は、イランによる国際法違反に端を発しています。イランは、NPT(核拡散防止条約)に1970年の発足当初から加盟しており、締約国としての核不拡散の義務を負っているはずでした。ところが、通常の原子力発電では必要のない高濃度イランの製造をイランが始めたことから、秘密裏に核開発を進めているのではないか、とする疑いが持ち上ったのです。
このことは、イランは、自らのNPT違反疑惑を全く無視して、イラン核合意の違法性だけを切り取ってICJに提訴したことを意味します(なお、ICJの手続き上、提訴には相手国政府の合意が必要ですが、ICJは、イランからの提訴を受理した模様…)。NPTは、国際社会の‘刑法’に喩えるべき一般国際法ですが、イラン核合意は、関連諸国による任意の多国間合意に過ぎません。しかも、核合意の内容には重大な欠陥があり、確実、かつ、永続的にイランが核開発計画を放棄する保証はどこにもないのです。果たして、イランからの提訴を受けたICJは、どのように対応するのでしょうか。
こうした経緯から考えますと、イランの核開発問題に対して、関連諸国による国際合意による開発停止という解決手段が適切であったのか、という疑問も湧いてきます。乃ち、この時、NPT条約違反の疑いありとして、ICJといった国際司法機関にストレートにイランを訴えた方が法的にはすっきりとした解決が実現したかもしれないのです。そして、この方法は、今からでも遅くはないのかもしれず、イランもアメリカをICJに提訴した以上、自らも司法解決の提案を受け入れざるを得ず、判決が下されれば、当然に従うべき立場に置かれます。
加えて、国際司法機関への提訴は、北朝鮮の核問題に対しても取り得る選択肢の一つともなります。仮に、既に核保有を宣言している北朝鮮に対してこの方法を適用するならば、NPT締約国としての義務違反、NPTからの一方的脱退の合法性、並びに、国連安保理決議の不履行等が訴因となりましょう。イランによるICJへの提訴は、同国の思惑とは全く違った影響を国際社会にもたらすかもしれないと思うのです。
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