朝鮮戦争とは北朝鮮が起こした対韓侵略戦争であり、米軍を主力とする‘国連軍’は、この侵略を阻止するために闘った、とする見方は、最もシンプルな朝鮮戦争理解です。こうした国際社会の一般的な見解に対して、北朝鮮は内戦論を主張しており、両者の見解の溝は埋まっていません。見解が真っ向から対立する状況下にあって平和的な解決を希求するならば、一先ずは、両者が自らの行動の正当性を主張し得る国際裁判が最も適した方法となりましょう。しかしながら、その一方で、冷戦期に発生した朝鮮戦争には、もう一つ、同問題を複雑にし、明快なる司法解決を阻害している要因があります。
その要因とは、朝鮮戦争が、‘熱戦’と称されたように米ソを盟主とする東西陣営による代理戦争であったとする側面です。第二次世界大戦の末期には、独裁者スターリンが率いるソ連邦は、ナチス・ドイツからの‘解放’を大義名分として掲げつつ、軍事力、並びに、全世界に張り巡らした共産党の組織力を以って周辺諸国を社会・共産主義陣営に組み込んでゆきます。この行為に対し危機感を覚えた米英は、大戦末期にはソ連邦を連合国の一員、即ち、‘味方’ではなく、半ば‘敵国’と見なすに至っており、特に朝鮮半島においては、米ソが南北から占領地の確保を競う形となったのです。こうして1948年には、韓国と北朝鮮の両国が独立国家として誕生しますが、南北は、それぞれアメリカとソ連邦を後ろ盾としたのです。
南北両国が、米ソの事実上の‘傀儡国家’であるならば、朝鮮戦争の背景にも超大国の‘世界戦略’があったはずです。実際に、侵略を開始するに先立って、北朝鮮の金日成はソ連邦のスターリンに‘お伺い’を立てていますので、同国が、純粋な独立国家でなかったことは確かです。仮に、スターリンが許可を与えなければ、朝鮮戦争は起きなかったことでしょう。ソ連邦は、社会・共産主義陣営の版図拡大のために朝鮮戦争を後押ししたのであり、ソ連欠席の内に安保理決議を成立させた国連の対応は、勢力圏の拡大を目指す東側陣営の拡張主義に対する西側諸国のリアクションであったことになります。そして、北朝鮮側の戦局の悪化を受けて開始された義勇兵派兵による中国の介入は、社会・共産主義諸国の間では、この時、暗黙の軍事同盟が成立していたことを示唆しているのです。
西側陣営の行動は東側陣営の攻勢に対する受け身であれ、朝鮮戦争が冷戦期における米ソ代理戦争の側面を帯びていたことは、今日にあって、なおも同戦争の終結を困難としています。何故ならば、仮に‘平壌裁判’の設置によって司法解決に至ったとしても、東アジアにおける軍事バランスの問題が残されてしまうからです。現状を見れば、ソ連邦の後継国であるロシアは、ウクライナやクリミア半島で牙を剥いたようにその覇権主義の旗印を降ろしていませんし、中国に至っては、共産党一党独裁体制の下で軍事大国化の道を邁進しております。‘東側陣営’の世界戦略は朝鮮戦争当時と変わっていないどころか、むしろ、中国の台頭によって強化されていると考えざるを得ないのです。言い換えますと、中ロの覇権主義が終焉しない限り、根本的な問題は全く解決されないのです。
このことは、朝鮮戦争を完全に終結させるには、司法解決のみでは不十分であることを意味します。朝鮮半島の安定には、まずは、米中ロの軍事大国を含む当事国間による、朝鮮半島の勢力圏に関する合意の形成という方法が検討されましょう。もっとも、この方法、極めて平和的な解決手段にも見えますが、中国が勢力拡大の意図を隠さなくなった今日、一時的な妥協としての大国間合意も根本的な解決をもたらさないかもしれません。近い将来、米中の軍事力が逆転した途端、この手の弥縫策的な合意は、即、空文化することでしょう。八方塞に見える中、それでは人類は、どのようにしてこの問題に対応すべきなのでしょうか。
仮に、朝鮮戦争のみならず、国際社会における様々な紛争の背景に、大国の覇権主義という問題が潜んでいるならば、実のところ、人類は、この扱い難く、かつ、大国からの抵抗も受け易い問題にこそ真摯に取り組むべきなのかもしれません。特に中国は、全世界の諸国を支配下におさめかねない極めて危険な軍事大国に成長しつつあります。基本に立ち返ってみますと、共通のルールや行動規範の下で、全ての諸国が相互に権利と自由とを享受し得る状態こそ、国際社会の理想でもあります。人類が理想に近づくためには、日米を含め、自由主義諸国は、他国の安全保障を脅かす中国の国家体制を崩壊に導き、法の支配に基づく国際法秩序を構築すべく、より高度な戦略を展開する必要があるように思えるのです。
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その要因とは、朝鮮戦争が、‘熱戦’と称されたように米ソを盟主とする東西陣営による代理戦争であったとする側面です。第二次世界大戦の末期には、独裁者スターリンが率いるソ連邦は、ナチス・ドイツからの‘解放’を大義名分として掲げつつ、軍事力、並びに、全世界に張り巡らした共産党の組織力を以って周辺諸国を社会・共産主義陣営に組み込んでゆきます。この行為に対し危機感を覚えた米英は、大戦末期にはソ連邦を連合国の一員、即ち、‘味方’ではなく、半ば‘敵国’と見なすに至っており、特に朝鮮半島においては、米ソが南北から占領地の確保を競う形となったのです。こうして1948年には、韓国と北朝鮮の両国が独立国家として誕生しますが、南北は、それぞれアメリカとソ連邦を後ろ盾としたのです。
南北両国が、米ソの事実上の‘傀儡国家’であるならば、朝鮮戦争の背景にも超大国の‘世界戦略’があったはずです。実際に、侵略を開始するに先立って、北朝鮮の金日成はソ連邦のスターリンに‘お伺い’を立てていますので、同国が、純粋な独立国家でなかったことは確かです。仮に、スターリンが許可を与えなければ、朝鮮戦争は起きなかったことでしょう。ソ連邦は、社会・共産主義陣営の版図拡大のために朝鮮戦争を後押ししたのであり、ソ連欠席の内に安保理決議を成立させた国連の対応は、勢力圏の拡大を目指す東側陣営の拡張主義に対する西側諸国のリアクションであったことになります。そして、北朝鮮側の戦局の悪化を受けて開始された義勇兵派兵による中国の介入は、社会・共産主義諸国の間では、この時、暗黙の軍事同盟が成立していたことを示唆しているのです。
西側陣営の行動は東側陣営の攻勢に対する受け身であれ、朝鮮戦争が冷戦期における米ソ代理戦争の側面を帯びていたことは、今日にあって、なおも同戦争の終結を困難としています。何故ならば、仮に‘平壌裁判’の設置によって司法解決に至ったとしても、東アジアにおける軍事バランスの問題が残されてしまうからです。現状を見れば、ソ連邦の後継国であるロシアは、ウクライナやクリミア半島で牙を剥いたようにその覇権主義の旗印を降ろしていませんし、中国に至っては、共産党一党独裁体制の下で軍事大国化の道を邁進しております。‘東側陣営’の世界戦略は朝鮮戦争当時と変わっていないどころか、むしろ、中国の台頭によって強化されていると考えざるを得ないのです。言い換えますと、中ロの覇権主義が終焉しない限り、根本的な問題は全く解決されないのです。
このことは、朝鮮戦争を完全に終結させるには、司法解決のみでは不十分であることを意味します。朝鮮半島の安定には、まずは、米中ロの軍事大国を含む当事国間による、朝鮮半島の勢力圏に関する合意の形成という方法が検討されましょう。もっとも、この方法、極めて平和的な解決手段にも見えますが、中国が勢力拡大の意図を隠さなくなった今日、一時的な妥協としての大国間合意も根本的な解決をもたらさないかもしれません。近い将来、米中の軍事力が逆転した途端、この手の弥縫策的な合意は、即、空文化することでしょう。八方塞に見える中、それでは人類は、どのようにしてこの問題に対応すべきなのでしょうか。
仮に、朝鮮戦争のみならず、国際社会における様々な紛争の背景に、大国の覇権主義という問題が潜んでいるならば、実のところ、人類は、この扱い難く、かつ、大国からの抵抗も受け易い問題にこそ真摯に取り組むべきなのかもしれません。特に中国は、全世界の諸国を支配下におさめかねない極めて危険な軍事大国に成長しつつあります。基本に立ち返ってみますと、共通のルールや行動規範の下で、全ての諸国が相互に権利と自由とを享受し得る状態こそ、国際社会の理想でもあります。人類が理想に近づくためには、日米を含め、自由主義諸国は、他国の安全保障を脅かす中国の国家体制を崩壊に導き、法の支配に基づく国際法秩序を構築すべく、より高度な戦略を展開する必要があるように思えるのです。
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