万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

自然に優しくない太陽光パネル-森林伐採の本末転倒

2018年07月22日 14時44分38秒 | 日本政治
再生エネ法が成立して以来、日本の景観は変化を余儀なくされております。買い取り価格の高値設定による太陽光発電偏重から全国各地にメガ・ソーラが建設され、様々な問題を引き起こしています。このまま、同政策を継続して良いものか、法改正の検討を含め、一旦、立ち止まって考えてみる必要がありそうです。

 再生エネルギーとは、化石燃料による発電からの脱却、並びに、原子力発電に替る自然に優しいエネルギーとしての期待を背負って登場してきました。自然エネルギーとも表現されており、いかにも耳に心地よく響きます。地球温暖化に対する国際社会における取り組みも許可される中、発電に際して温暖化ガスを排出しない再生エネルギーは、同問題解決の‘切り札’ともされたのです。こうしたメリット面を高く評価して、再生エネルギー普及促進に賛成した国民も少なくなかったことでしょう。

 ところが、実際に蓋を開けて見ますと、再生エネルギー、特に、太陽光パネルによる発電は、思わぬ問題を投げかけることとなりました。それは、パネル設置には比較的広い土地を要するため、日本国内の土地利用に著しい変化が生じたことです。乃ち、‘太陽光発電開発’とも言うべき開発事業が全国レベルで展開され、農村における休耕田の転用のみならず、用地確保のために森林等も伐採されるに至ったのです。

 休耕田については、日本国の食糧自給率を考慮すれば、太陽光発電用への積極的な転用は、農政として正しい方向性なのか疑問を抱かざるを得ないのですが、森林伐採に至っては、再生エネ普及の意義からしますと、本末転倒としか言いようがありません。何故ならば、森林こそ、削減対象となっている温暖化ガスを吸収する重要な役割を果たしているからです。ヨーロッパの森林は既に農地として切り開かれており、現在では森林面積が減少しているため、パリ協定などでは、森林の役割は軽視されていますが、森林の保全と植林こそ、二酸化炭素問題の重要な解決手段なはずです。ところが、日本国の場合、メガ・ソーラ建設のために、地球環境を保全するために最も大事にすべき森林が伐採されているのです。再生エネによる自然破壊は、おそらく、政府が、発電事業者の要望にのみ応えた結果なのでしょう。

 加えて、再生エネ法の制定時には、太陽光発電を技術面で牽引してきた日本企業にも恩恵が及び、その波及的な経済効果にも期待が寄せられていました。しかしながら、この側面を見ても、今日、メガ・ソーラ用の太陽光パネルの大半は中国や韓国からの輸入品であり、発電事業者もまた、海外企業がひしめいているのです。国土が荒れ、美しい自然景観が損なわれる上に、事業利益も海外勢に集中し、しかも、電力料金だけは上昇するようでは、この政策、一体、誰のための政策なのか分からなくなります。再生エネが内包する偽善性や矛盾に気が付きませんと、一般の日本国民は、負担ばかりを押し付けられることとなるのではないでしょうか。少なくとも森林伐採を伴うメガ・ソーラの建設については、法律によって歯止めをかけるべきではないかと思うのです。

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