万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

個人情報の脅迫材料化のリスク-5G時代の備えを

2019年04月18日 14時06分02秒 | 日本政治
GAFA規制へ新法 自民が提言案
 ‘情報を制する者が世界を制す’と称されるように、情報は、権力の源泉ともなれば、富の源ともなります。他者に先駆けて逸早く情報を掴んだことで成功者となった事例は枚挙に遑がなく、ネイサン・メイアー・ロスチャイルドは、ナポレオン敗北となるワーテルローの戦いの情報を先んじて入手し、詐術的投機を仕掛けて巨万の利益をその懐に入れています。その一方で、情報が漏れたことで多大な損害を被る事例も少なくありません。情報の有無は運命をも決するのであり、徹底した情報管理を要する理由は、まさに歴史を動かすほどの情報の重要性にあるのです。

 こうした情報の重要性に鑑みますと、デジタル社会を迎えた今日の状況は、個人にとりましては薄ら寒いとしか言いようがありません。政府レベルでは海外勢力からのサイバー攻撃や盗取に備えて防御的な技術やシステムの開発に熱心に取り組み、特に5Gの整備に際しても政府調達からファウエイ製品の排除措置を決定していますが、国家機密を護ることはできても、個々の国民の個人情報が充分に保護されるのかと申しますと、これは怪しい限りです。そして、兎角に軽視される傾向にある個人情報の漏洩が、その実、国家を傾ける結果を招くケースがあることに思い至りますと、あらゆるモノが高速で繋がり、個々の行動が悉く情報化され得る5G時代に対する不安は一層募ることとなるのです。

 個人情報の漏洩が国家的危機を招いた事例としては、1990年代に発生した4人の女子小学生監禁事件であるプチエンジェル事件を挙げることができます。同事件は、皇室をも巻き込むスキャンダルとしてネット上では知られていましたが、日本国の政財官界等の所謂‘上層部’に対する脅迫として利用された可能性が否定できないそうです。顧客名簿には2000名にも上る各界の名士が名を連ね、フェイクニュースの可能性もあるものの、中には、その後、中央銀行総裁や宮内庁長官といった要職にまで上り詰めた人も少なくないというのです。

犯人の自殺にも疑わしい点があり、マスコミも大騒ぎするはずの一大スキャンダルにも拘わらず、警察当局による捜査が短期間で打ち切りとなり、有力な証拠となるはずの同名簿も消却されたとも言われています。捜査が打ち切られた理由は、同名簿に記された氏名は偽名であった、即ち、リストに記された顧客名は本人ではなかった、というものですが、偽名であれ、本名であれ、事件は事件なのですから、組織犯罪の可能性を含め、警察は徹底した捜査を行うべきでした。近年発生した座間市の連続殺人事件についても、組織犯の線は消されて個人的な犯罪として矮小化されていますが、警察の対応が不自然な場合、一般の国民は、外部から政治的圧力がかかったのではないかと疑うのです。

ネット上ではその真相をめぐって様々な憶測が飛び交い、外国の諜報機関等の関与等も取り沙汰されていますが、この事件が示すリスクとは、たとえ私的な行動であったとしても、同人物が政治家や高級官僚といった国家の要職にあったり、企業のトップのポストにある場合には、国家機密に匹敵、あるいは、それ以上に国家に危険を及ぼすという厳粛なる事実です。暴露を仄めかすことで、いとも簡単にこれらの要人をコントロールすることができるからです。言い換えますと、日本国にとりまして致命傷ともなる売国行為でも、脅迫によって為さしめることができるのです。

同事件の真相は不明であり、いわば、‘消された事件’なのですが、その真偽に拘わらず、個人情報が盗取される恐ろしさを余すところなく表しています。同事件が発生した1990年当時とは比較にならない程、5G時代は外部からの情報入手が可能となり、プチエンジェルといった犯罪組織兼情報収集網を裏社会に造らなくても、スマホや監視カメラ、顔認証システム等を介して容易に個人のスキャンダルを掴むことができるのです。その実行者は、国家の諜報機関や事業者であるIT大手のみならず、先端的なサイバー技術を有する犯罪組織であるかもしれません。高い情報・通信技術力を有する日本企業が存在しながら、LINEをふくめてSNSの運営事業者の大半が外資系である点も、脅迫といった何らかの外部圧力の結果なのかもしれません。

何らかの政策的対応がない限り、国民は、今後とも、個人情報盗取のリスクに対して無防備な状態に置かれたままとなりましょう。このようなリスクを考慮しますと、独占禁止法上の規制強化やプライバシーの保護の観点に加えて、国民の個人情報を脅迫材料として利用させないための措置が必要なのではないでしょうか。もちろん、公人や要人が品行方正であることに越したことはないのですが、国家的な損失をもたらす事態を防止するためにも、国家と国民の安全に責任を負う政治家こそ、自らの問題として積極的に取り組むべきではないかと思うのです。

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