万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

危うい日産の独立性-持ち株会社型統合のリスク

2019年04月27日 13時31分39秒 | 日本政治
ルノー 日産との「対等な統合」計画か 仏メディア
日産の前会長であるカルロス・ゴーン容疑者が逮捕された際に、日産社内のみならず、日本国内にあっても、ゴーン独裁体制からの脱却のチャンスが到来したとする安堵感が流れました。しかしながら、ここに来て、仏ルノー側が新たな統合案を日産側に迫っていると報じられております。

 同問題に関連して来日したルノー側のスナール会長は、日産の独立性の尊重を明言し、統合案については消極的な見解を示していましたので、今般の提案の背後には、仏ルノーの筆頭株主であるフランス政府の意向が強く働いていたのでしょう。マクロン大統領がロスチャイルド財閥の代理人であるとしますと、日本国の日産とフランスのルノーの両者の経営を一手に握る同財閥の世界戦略の一環であるのかもしれません。

 ゴーン容疑者による仏ルノー、日産、三菱自動車の三社による連合の形成過程を見ますと、グローバル志向、あるいは、脱国家志向を見出すことができます。三社を統括する連合の本部はルノー本社の所在するパリでも、日産が本社を置く横浜でもなく、第三国となるオランダのアムステルダムに設けられていました。グローバル化の時代にあっては本社を最も条件が有利な国を選んで国外に置くことは当然のように見なされがちですが、ゴーン容疑者は、三社から離れたアムステルダムという地にあって日産や三菱自動車から資金を吸い上げ、中東人脈等を介して私的に流用していた疑いが濃いのです。ここに、グローバル化が、マネーロンダリング等の腐敗や不正の隠れ蓑になるリスクも見えてきます。

 この段階では、カリスマ性を纏っていたゴーン容疑者によるパーソナルな独裁体制の色彩が強く、それ故に、ゴーン容疑者の逮捕は、同体制崩壊の序曲としての期待が高まったとも言えます。しかしながら、今般のフランス側は、パーソナルな独裁体制から同体制の制度的固定化への移行を提案している可能性があります。つまり、ゴーン容疑者の位置に持ち株会社を据え、連合三社を子会社、あるいは、孫会社となせば、永続的に連合三社を配下に置くことができるのです。この意味においてゴーン容疑者の役割は既に終わっており、むしろ、中東人脈への偏重等からしますと、同統合案にとりましては邪魔な存在となっていたのかもしれません。

同統合案では、ゴーン容疑者が敷いてきた脱国家志向はさらに強化され、報道に拠りますと、フランス政府がルノーへの出資を引き揚げる可能性もあるようです。理由としては、表向きは対等性への配慮、即ち、フランス政府の影響力を懸念する日産、並びに、日本国政府への譲歩とされていますが、その真の狙いは、日仏両政府のチェックの行き届かない場所に本部を移すことにあるのかもしれません。第一候補地として挙がっているのはシンガポールであり、同地もまた、国際金融の影響力が強い国柄です。本部所在地の選定にも、中国、あるいは、華僑との間にコネクションを有するロスチャイルド財閥の影が見るのはいささか穿ちすぎでしょうか。

そして、ここで問題となるのは、三社連合の上に君臨する持ち株会社の問題です。同社の出資比率、あるいは、株主の顔ぶれ、並びに、意思決定手続きの如何によっては、三社とも持株会社レベルでの決定事項を忠実に実行する下部組織に過ぎなくなるからです。同社の理事については、日産とルノーが同数を指名するとされていますが、その人選、並びに、経営方針に対して株主権を背景とした介入がないとも限りません。

仮に、この統合案が実現すれば、念願の日産独立の夢は潰えてしまいますし、日本企業としての日産側の事情は全く考慮されなくなりましょう(日本人社員のリストラや国内生産拠点の海外移転もあり得る…)。日産は同案に対して否定的なそうですが、一旦、制度的に組み込まれますと、そこから抜け出ることは極めて困難となります。ここは、長期的なマイナス影響を考慮し、日本国政府も、日産も、経営の独立性を手放してはならないと思うのです。

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