万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

消費税増税は日本の独立性の問題?

2019年04月19日 10時52分18秒 | 日本政治
菅官房長官、消費増税方針は不変 萩生田氏の延期論否定
消費税率を5%から10%とする方針は、民主党政権時代の2011年11月に野田毅首相がカンヌで開催されたG20に出席した際に初めて公にされました。税負担の当事者である日本国民に先んじての異例の海外公表となったのですが、その背景には、何らかの国際圧力があったとも推測されます。現に、先日、OECDは、日本国の財政再建のためにはさらに26%まで消費税率を上げるべきとする、内政干渉まがいの提言をしています。

 消費税上げを求める海外圧力とは、バブル崩壊以来、日本国政府は金融救済や景気対策等を理由に国債発行額を増やし続けてきたため、日本国国債の値崩れによる損失を怖れた海外投資家や金融機関の要請であったのでしょう。もしくは、消費税率上げの経済に与える景気減速効果を期待した上での’日本経済の勢いを削ぐ’、あるいは、‘日本潰し’であったのかもしれません。何れにしましても、日本経済や日本国民の利益を優先的に配慮した親切な提言ではなかったはずです。

 海外での公表当時、野田首相は、‘2010年代後半までに段階的に消費税率を上げる’と説明しており、2019年を迎えた今日、延期を繰り返しつつも、消費税率上げのスケジュールが当初の計画通りに進められていることが分かります。このことは、民主政権から自民・公明連立政権へと政権が交代したにもかかわらず、消費税増税の基本方針が引き継がれていることを意味しています。民主主義国家では、各政党がそれぞれの政策綱領を作成して選挙に臨み、特に税制については与野党間の違いが際立つ争点ともなるのですが、2011年以降の国政選挙を見ましても、実施時期の延期や使途の変更が問われても、自民党が民主党との対立軸として消費税増税の完全中止を選挙公約として訴えたことはないのです。また、増税による景気後退に配慮してさらに財政規模を拡大させる予算を組むに至っては、全く以って意味不明の域に達しています。いわば、消費税率10%上げは‘国際公約化’しており、日本国政府は、日本国民ではなく海外に対して実施義務を負っているが如きなのです。

 ‘国際公約を守る’という態度は律儀で誠実なようにも見えるのですが、そもそも消費税率上げは国際法上の条約でもなければ経済協定でもなく、法的な拘束力のない‘口約束’に過ぎません。野田首相は、国内で増税の是非をめぐる政策論争を闘わせることも、国民的なコンセンサスを得ることもせず、国際会議の場で突然に同方針を打ち出しています。しかも、政府の税率に関する決定権、即ち、財政権限は国家の主権的な権限とされており、外部からの干渉が許されない国内管轄権に含まれているのですから、日本国政府は、国際圧力に屈しての‘口約束’を履行する義務を負っているわけではないのです。

 今般の日本国内の経済状況を見ますと、今年の10月に消費税率が10%に上げられるとしますと、消費税の税収は市場における売買数や取引回数に比例しますし、国民の可処分所得も減少しますので、景気は後退することでしょう。そして、消費税増税が、‘国際公約’、否、海外からの内政干渉を意味するならば、同問題は、日本国の独立性に関わる重大問題ともなるのではないでしょうか。

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コメント (4)
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