本日11月3日は、全世界が注目するアメリカ大統領選挙が実施される日です。期日前投票が9000万票を超えているとはいえ、投票所における直接的な投票が趨勢を決することとなるでしょう。そして、今回の選挙程、米中対立の背後に潜むアメリカ国内の構造的な問題を明らかにした大統領選挙もなかったのかもしれません。
米ソ冷戦期にあっては、イデオロギーにおいて民主党が社会・共産主義にシンパシーを示しつつも、共和、民主両党とも、ソ連邦との対峙は議論の余地のない共通のスタンスでした。第三次世界大戦の瀬戸際に立たされたキューバ危機も、民主党のケネディー政権にあって起きた事件です。キューバ危機後の米ソデタントはどちらかと言えば共和党政権時代に推進されつつも、ソ連邦を敵国と見なす基本姿勢は貫かれていたのです。
一方、今般のアメリカ大統領選挙において焦点として浮上したのは、米民主党と中国との間の構造的な利権関係です。中国は、鄧小平氏による改革開放路線以降、自由主義諸国に自国の市場を開放すると共に、先進国から資本、製造拠点、先端技術などを貪欲に招き入れてきたのですが、このプロセスにおいて、米中両国、否、中国共産党と米民主党との間に利権を介した強固な繋がりが形成されているのです。昨今、アメリカのみならず、全世界を驚愕させたバイデン親子の醜聞は、まさに巨額の中国利権が絡んでおり、同親子は、自らの私益のために国権を私物化したと言っても過言ではないです。おそらく、民主党幹部の大半が中国利権を隠し持つ、あるいは、不正な資金提供を受けているではないでしょうか。
中国共産党と民主党が利権を共有する状況下にあっては、中国経済が成長するほど米民主党側の懐に巨額のチャイナ・マネーが濡れ手に粟の如くに転がり込んでくることなります。加えて、米民主党には、中国市場への進出チャンスを得たい金融界や米企業群も‘訪中団’を結成し、中国利権を共有することとなったのでしょう。クリント政権やオバマ政権下において中国が急速な経済成長を遂げたことを考え合わせますと、アメリカの政界も財界もチャイナ・マネーに相当程度に汚染され、大手メディアやIT大手もまた懐柔されていたものと推測されるのです。この結果、中国は、常設仲裁裁判所の判決に対して無視を決め込むと共に、南シナ海の軍事拠点化を止めようともせず、際限のない軍拡に走ることとなったのでしょう。
もっとも、米中関係において最初に‘井戸を掘った’のはキッシンジャー元国務長官であり、米中国交樹立に向けて動き始めたのは共和党政権時代のことです。中ソ対立やベトナム戦争の泥沼化を背景とした‘敵の敵は味方’の論理に基づくものであったとはいえ、この頃から両国間では、既に水面下では中国の改革開放路線に向けての協力関係が模索されていたのかもしれません。少なくとも、ニクソン政権からブッシュ政権に至るまでの間に共和党にあっても中国利権に与った政治家が少なくなかったはずです。しばしば、軍事大国中国は、アメリカ民主党が育てたと評されるものの、チャイナ・マネーは、民主・共和両党に亘って浸透していたと推測されるのです。この時期、軍事的にも経済的にも弱小国に過ぎなかった中国はソ連ほどには警戒されてはおらず、中国の脆弱性が、米国民の大半が気が付かぬうちにアメリカ国内に‘中国利権集団’が形成されてしまった背後要因なのでしょう(もちろん、同利権集団は他の先進諸国にも存在し、国境を越えて連携する国際組織でさえあるかもしれない…)。
そして、アメリカ政界にあって珍しくも中国との間に柵がなく、中国色が比較的薄かったのが、トランプ大統領であったのかもしれません(もっとも、中国ではなく、ロシアとの関係が疑われましたが…)。然したる中国利権を持たない‘異端児’であったからこそ、有権者に向けて反グローバリズムを訴え、大胆な対中強硬政策を打ち出すことができたのでしょう(グローバリズムと中国とは半ば一体化している…)。
アメリカに内部化された中国脈の利権集団の存在こそ、今般の大統領選挙が‘アメリカの分断’を伴う混乱が生じた原因の一つとなっているのかもしれません。何故ならば、米中の対立構図は、国内におけるトランプ陣営とバイデン陣営との間の写し鏡となるからです。‘チャイナ・ファクター’は、外政内政両面における対立軸なのです(米ソ冷戦時代における’ソヴィエト・ファクター’は専ら外政問題…)。そして、マスコミ支配の原資ともなる資金力において圧倒的にバイデン陣営が優っていたのも、米国内の‘中国利権集団’が‘バイデン応援団’と化しているからなのでしょう。そして、今般のアメリカ大統領選挙は、‘中国利権集団’が共産主義、あるいは、全体主義とも容易に手を結ぶ‘マネー・ファースト’の集団である点を考慮しますと、民主主義の危機をも示しているのではないかと思うのです。