甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

恋する美人画 疎水の桜

2014年04月06日 21時47分07秒 | 京都のまちかど
 南禅寺境内の水道橋は見てみたいと思っていました。まさかそこが桜の名所とは知らず、うっかり足を踏み入れてしまいました。

 三重県からはるばる4回電車を乗り換えて、3時間少々かけて地下鉄東西線の蹴上に着いて、何だか降りるお客さんが多いけど、みんなどこに行くのだろうと不審に思いつつも、とにかく自分は南禅寺をめざすのだと、地上に出ました。



 すると、もうそこは桜のトンネルが上から下へつながっていて、そこにはたくさんの花見客が見えました。「まさか、自分はそちらに行くのか」と、不安になりながら南禅寺方向へ坂道を降りていきました。カップルや若いお嬢さんたちがものすごく多いのです。少し自分は場違いな感じです。

 頼みの奥さんは、「お父さんと一緒に電車で3時間なんて無理!」ということで、残念ながら来てくれませんでした。だから、折角の桜の坂道にも1人で行くしかありません。例によって、どこで写真を撮ってやろうという下心がいっぱいです。楽しもうという心がありません。そして1つの所にとどまってじっくり見ようということができません。変なアドレナリンが出ていて、とにかく歩き回らないと気が済まないのです。



 入り口が見えました。煉瓦で作られた百何年前の土木工事の門です。これが南禅寺の水道橋と同じような感じのものだと思います。とにかく斜め下から見上げるのではなく、桜のトンネルの中へ入りたい一心で夢うつつでレンガの中を通り抜けると、桜のトンネルへの上がり口が見つかりました。もうたくさんの人々が思い思いに、桜の下で嘆声をあげ、写真を撮り、おしゃべりをしたり、座って眺めたりしています。私は気持ちが焦って、このたくさんの人々から離れてじっくり眺められるところがないものかと、無理なテーマで坂道を上っていきました。

 レールと砂利道と桜のトンネルとたくさんの花見客、耳を澄ますと、中国語や英語、フランス語、この日はお日柄が良かったのか、西欧系の人たちもリュック背負って歩いています。確かに、春の京都は、絶好の日本風味を味わえるところです。桜はとてもビューティフルなのです。でも、私はこのたくさんの人々から1人になれるところを求めて、琵琶湖から引いてきた水が京都の町に顔を出す出口の所まで上り詰めました。



 ここにも当然人はいるのですが、ある程度の皆さんは途中のトンネルで満足されたのか、あまり来られない様子でした。そして行き止まりでもありました。仕方がないので、引っ張ってきた水を各方面に分けたり、プールしたりする施設をのぞいて回ると、その1つの水路がずっと山沿いに、私のめざす南禅寺に向かって北進しているし、犬の散歩の中年カップルもいるので、そのまま歩いていきました。反対側からもいろんな若者、家族連れ、お年寄りグループ、欧米系のはっちゃき若者など、どんどんすれ違います。左手には時々京都の町が見え、平安神宮の鳥居らしきものも見えました。今日の目的の1つである美術館はその両サイドにあります。でも、その前に南禅寺なのです。



 やっとのことで南禅寺に降りてきて、水道橋を見ることができて、ここにも人がたくさんいるので、しみじみと水道橋をながめることができなくて、人の流れに押し流されるようにして南禅寺の山門の方に出てしまいました。悪い癖です。何かをじっくり見るには、他人の視線のないところでないとできないのです。絵でも、風景でも、きれいな女性でも、人がまばらな空間であれば、じっくり見ることができて、それなりに自分の中では満足できるのに、人がたくさんいると、別に他人は私のことなんか全く無関係な石ころと同じなのに、石ころとして石ころのようにあることができず、人がたくさんいると、その他大勢の中の1人になって、本当はそんなことしたくなかったと後で言うくせに、そのまま流されてしまうのでした。



 そして、そのまま京都市美術館にたどり着きました。もうお昼はだいぶ過ぎていました。あまりお腹がすいてなかったのかもしれません。トイレにでも行こうと、公共の建物っぽい所に入りました。するとすぐに受付になっていて、「恋する美人画」一般は500円ということでした。
 「おしっこもしていないのに、美人画もないものだ」と思いつつも、つい今までの流れで入ってしまいました。もっとしっかりトイレにも行き、お昼ご飯をたべてじっくり見ればよいものを、その場任せの私は、入ってしまいます。



 中は、さっきまでの騒然とした雰囲気が全くなくて、お客さんはまばらで、洋画・日本画の京都ゆかりの画家たちの描く女性たちがいっぱいでした。絵の先生らしき人が、お知り合いの方たちと話をしていて、「先生もこんなの描くんでしょ?」「ボクは洋画だから、こんなのは……」とかなんとか。なにやら、どの人もみんな文化人に見えるし、不思議な雰囲気です。里見勝蔵さんという画家がタッチがすごくて迫力を感じ、菊池契月さんはそれはもう誘うような女性で、見ているこちらが絵の中の女性に恋してしまう日本画でした。以前、三重県立美術館でこの人の展示会があって、その時に初めてそういう日本画家がいるのだなと知ったのでしたが、ふたたびその絵に会うことができて、少し幸せになりました。



 国立近代美術館にもはしごして、チェコの映画ポスター展も見て、チェコ独自に映画を自分たち向けにアレンジしていました。「ゴジラ」「蜘蛛巣城」「デルス・ウザーラ」「どですかでん」日本映画も、ビートルズの「イエローサブマリン」も、オードリー・ヘップバーンも、チェコ風にアレンジしてありました。デザインの世界は、わかったような、つかみきれないような気分で、とにかく見終わって、ぼんやり桜を見ていたら、舞妓さんがたくさんのお客さんを引き連れて疎水を走っていきます。橋の上から「舞妓さーん」と誰かが声を掛けると、「はーい」と手を振ってくれたり、もうみんながハイテンションで、私はとにかく満足して京都駅に行き、お餅を買って帰りました。



1 春空や展望塔と餅買う列



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