リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

2012年9月~その2

2012年09月30日 | 昔語り(2006~2013)
飛べないけれどもビジネスクラスの気分

9月16日。日曜日。よく寝たけど、まだ腰が痛い。それでも、きのう遊んだ分だけ気分は元気で、朝食後にさっそくカレシのリクエストでラタトゥイユを作り始める。小ぶりのナスが2個、ズッキーニが2本、トマトの缶詰2個で、ミニのスロークッカー2つ分をまとめて作る。ハーブはあまり使わずに、たっぷりのにんにくと赤ワイン酢、白ワイン、砂糖、胡椒だけでさっぱりした味になる。

ラタトゥイユがゆっくりと煮えている間にワタシはちょこっと仕事。半年以上やっている民事訴訟。日本では双方の弁護士が法廷に出向いて主張や議論をやる代わりに、たいがいの訴訟は要点を書いた紙をやり取りするらしい。おかげさまで、少なくとも一方の当事者が外国人だったり、外国人の権益が絡んでいると、ワタシのような翻訳者がご飯を食べることができる・・・。

きのう買って来た松たけをスライスしてフライにすることにしたけど、汁気のあるラタトゥイユと同じ皿に載せるのはちょっと困りもの。どうしようかと考えているうちに、よし、今夜はさっぱり飛ばない極楽とんぼ航空をちょっと飛ばしてみることにした。

今日のメニュー:
 えびの突き出し風(チリマヨネーズとゆず胡椒ソースの2種類)
 ラタトゥイユ
 イカのリングと松たけのフライ、コリアンダーの葉とレモン添え、
                      蒸したサヤインゲン
 (サラダ)

[写真] 松たけスライス4枚では溶き卵が余ってしまうので、きのうひと袋買って来たばかりのリングにスライスしたイカを6個出して解凍。ついでに目に留まったえびも解凍。イカは別のスープを使うので使わないインスタントラーメンの粉末スープを少々絡めてマリネート。揚げ物は少量にしておけばおなかにどさっとたまらないからいい。きのう使い残したカレシ菜園のサヤインゲンを蒸して、大きなお盆にそれぞれを小皿に盛ってテーブルへ。これならせっかくカリっと揚がった松たけがラタトゥイユの汁でべちゃっとなってしまわずに済むし、食べるのもけっこう楽しい。

では、はいつも視界良好、天候良好で揺れない極楽とんぼ航空000便は(どこへ行くのかパイロットにもわからない盲飛行だけど)まもなく着陸態勢に入りま~す。カレシはあっという間に全部ぺろりと平らげてしまったけど、シートベルト、締められる・・・?

出不精の2人がでかけると

9月17日。月曜日。今日も暑めで、カレシがいつの間にかエアコンをオンにしていた。天気予報は晴れ、晴れ、晴れ。予報最高気温は23~25度。平年並みだと18度前後だから、残暑どころかまさに夏、継続・・・。

朝食後、まっさきに今日の午後5時が期限の仕事を片付けて、送信。カレシがコードにつまづいて壊したUSBポートを修理できるかどうかBest Buyに持って行ってみるというので、おつき合い。前に聞いたときは部品があるという話だったけど、果たして取り替えてもらえるのかどうか。カレシがサービスのカウンターで話をしている間、ワタシはとなりのCanadian Tireをぶらぶら。量販店ではあるけど、郊外と違ってこのあたりの店は単身世帯や子なし世帯向けの小型の家電をけっこう置いてある。対流式のトースターオーブンが欲しいなあ。小さめのフライヤーも欲しいなあ。小さめのスロークッカーも欲しいなあ。だけど、最終的に買ったのはカレシが欲しがっていた新しいコーヒーミル・・・。

パネルを開けてみたら、修理不能で部品交換が必要と言う診断だったそうで、結局メーカーのDellに部品があるかどうか問い合わせなければ交換できるかどうかもわからないとうことになって、修理はお預け。カレシ曰く、「ペーパーワークの方が時間がかかったよ」。カレシがDellのカナダ会社に電話したときはアメリカから持って来れるかどうかわからないと言っていたから、いくら大手の量販店でもたぶんダメだろうな。まあ、ちょっと不便なだけで別に困ることはないらしいからいいんだけど、ほんとに近頃はメーカーが「修理」というものをしなくなったような気がする。新しいのを買えってことか・・・。

駐車メーターの残り時間20分。カレシが生垣のトリマーを買いたいというので、コインを足して1時間に延長。Home Depotでひとつだけ残っていた充電式のヘッジトリマーを買って、カレシ曰く、「ここんところ、ずいぶんいろいろと買い物をしたねえ」。うん、ほんと。食料の買出し以外は家にこもってめったに出かけない2人が食料以外の買い物に出かけると、あれもいる、これもいるということになる。あれやこれやが必要だとか、欲しいとか言いながらもなかなか重い腰を上げないからこうなるんで、まあ、しょうがない。それでも一見してかなり浪費しているようで、クレジットカードの請求を見るとだいたいカレシの年金の範囲内に納まっているからおもしろい。節約はせず、かといって特に浪費と言えるほどの浪費もせず。ワタシたちって、もしからしたら小売業界にはあんがい面白味のない消費者かも・・・。

メーターの残り25分。ジンを買いに道路を渡って酒屋へ。妊婦は飲酒しないようにという、若いカップルを使った啓蒙ポスターがあって、ふと女性は白人(東欧系かな?)、男性はアジア系なのに気がついた。そういえば、ある銀行のウィンドウを覆っている宣伝ポスターも、男性が白人、女性がアジア系のカップルがモデルだったし、異人種カップルがモデルになっている広告にはお目にかかることが多くなったな。他民族都市バンクーバーは異人種カップルの比率がかなり高いので、見慣れてしまって違和感を持つ人はあまりいない。(人種が違うカップルを見ると即「国際結婚」と思うのは日本だけの観念だと思う。冬季オリンピックのときにも、日本の大手新聞がバンクーバーを「多国籍都市」と呼んでいたけど、他民族=多国籍という等式ができあがっているんだろうな。)ちなみに2006年の国勢調査によると、カナダでの異人種婚の比率は、白人以外の移民一世で12%、二世は51%、三世の世代になると69%に達するそうで、広告ポスターがそういう人口構成を反映するようになったのは良いことだと思うな。

帰って来て、納品したファイルがちゃんと届いたかどうかをチェックしたら、入れ替わりにラッシュの仕事。ま~た裁判書類だ。日本の裁判はもっぱら文書で弁論をやるような感じだな。それにしても、大きいなあ。しかも、たっぷり2日はかかりそうな量があるのに、それをった1日半でやるの?あ~あ、何だかいきなりたすきがけのねじり鉢巻モード。ま、いっちょがんばるか・・・。

ひとり暮らしが新しいステータスシンボル

9月19日。水曜日。午前11時半起床。暑くなりそうな予感。もぞもぞと身支度をして、キッチンに下りて、カレシがきのうのパスタソースはほんとにうまかったな」と言っているのを半分夢うつつに聞いて・・・きのうはびっしり仕事に頭を使ったので、とにかく眠い。ふだんのペースを50%アップして、なんとか期限に間に合いそうなところまでこぎつけたけど、手の関節炎がしくしく・・・。

なにしろ、原稿が何とか国際協定がなんたらかんたら、何とか条約の第何条にああたらこうたらと、やたらと引用するもので、それだけで頭痛がして来るのに、引用は日本語だから、それ英語に訳さなければならない。自分で訳してもいいけど(昔はそうするしかなかった)、今はインターネットと言う便利な「教えてちゃん」ツールがある時代だから、仕事の効率化のため(つまり、めんどうを省くため)にも、まずは必死でググリまくって原文を探す。なんとまあ国際条約や国際協定の数の多いこと!そして、条約や協定をこと細かに解説する文書や本やウェブサイトの多いこと!それでも(というか、それだからこそなのかもしれないけど)もめごとは起きるし、戦争も起きるし、騙し合いや殺し合いも起きるんだから、人間というのは何をかいわんやだな、まったく。

今日、去年の国勢調査の結果のうちで、家族構成に関するデータが発表された。事実婚世帯や単親家庭が増えて、比例して法律婚世帯の割合が低下。単親家庭で増加が目立ったのが「シングルファザー」の家庭。最近は子育てに積極的に関与する男性が増えているそうだから、離婚家庭の場合は親権は共同でも子供は父親と住むケースが増えているんだろうな。同性カップルの割合が増え、そのうちでも(合法化に伴って)法律婚が飛躍的に増加。既婚世帯では子なし夫婦の割合(35.1%)が子供のいる夫婦の割合(31.9%)よりも高くなった。成人しても親と同居している年令20歳から29歳の割合は42.3%。失業や離婚などで親元に戻った成人の子供を「ブーメランキッズ」と呼ぶけど、子供が配偶者連れで同居している世帯は2.1%。ただし、夫婦で同居と言っても日本の「同居」とはちょっと違って、親の家に間借りする形になる。大都市ほど20代になっても親と同居している割合が高いのは、自立したくてもひとりでは家賃などの生活費をまかない切れなくなって来たからだろうな。

そういえば、カナダの新聞サイトに若い人たちの間で「ひとり暮らし」がひとつのステータスシンボルになりつつあるという記事があった。ルームメイトとの共同生活や交際相手との同棲が若い世代のごくふつうの生活様式になっている今、あえて「ひとり暮らし」を選択する人たちが増えているというのはおもしろい。これまで孤独な存在でかわいそうと同情されることが多かった「ひとり暮らし」を選択する最大の理由は「Because I can(自分にはそれができるから)」なんだそうな。つまり、自分にはアパートを借りるかコンドミニアムを買うかして、独立したライフスタイルを構築できるだけの所得があるから「ひとり暮らし」を選ぶということらしい。世界的な景気の停滞で失業率も高止まりし、多額の学生ローンの返済に追われて経済的に苦しい若い人たちが多い中で、自活を可能にする余裕があるということがステータスシンボルになるんだろうな。

現代人の「三種の神器」とも言える「自由」、「自己管理」、「自己実現」を促進し、大人になったと実感させてくれるのが今どきの「ひとり暮らし」で、経済的に少々きつくても工夫によってひとり暮らしを心豊かに楽しむ男女が増えているという。自分の城を持ったおひとり様たちにとって、ひとりでいたければひとりで、ひとりでいたくないときは友だちと一緒というライフスタイルはある意味ぜいたくな生活で、結婚はひとつのオプション。記事に登場した若い女性(30歳)は「誰かに出会って結婚したらそれはそれですばらしいけど、そうならなくてもひとりで生きて行くことに不安はない」と胸を張っていた。

対照的に、日本の新聞サイトを見ると、婚活会社の広告で、前はヨメさんを欲しがっていた冴えない独身クンのコピーが「オレ、ずっと独身で頑張るの?」に変わっていて、ある記事のページを開いたら「そろそろ結婚とかどうなの?」と「おかん」が心配しているという漫画になり、別の記事を見たらその「おかん」がさっぱり結婚する気配のない息子に「いい年して友達と遊んでばっかりで!」と拳骨を振り上げて怒っている。日本では大学生の就活に関わる親が増えたという記事をどこかで読んだけど、「おかん」はとうとう息子の婚活にも乗り出して来たというわけか。まあ、結婚観が根本的に違っているということもあるけど、自立した大人の「ひとり暮らし」がステータスシンボルになる日はまだまだ遠いみたいだなあ・・・。

フリーザーがもう1台あれば

9月20日。木曜日。今日はカレシの英語教室があるので午前11時半に目覚ましをかけておいたのに、何だか涼しい感じがしてそれより先に目が覚めてしまった。いつの間にかカレシがエアコンをオンにしたらしい。寝なおしの時間がないので、そのまま起床。このインディアンサマー、いつまで続くのかなあ・・・。

カレシを送り出して、メールをチェックしてから、運動がてらモールまでてくてく。真っ先にアンナとジュゼッペがいるサロンへ。ジュゼッペが「ほお、ずいぶん伸びたねえ」。それを聞いたアンナが「伸びすぎっ!」うん、そのうち、そのうちと思っているうちに髪が伸びすぎて手に負えないの。もう。伸びすぎてじゃまっけ。パスポートの写真を撮らなければならないから、何とかして・・・ということで、土曜日の午後に予約。長すぎるから、いつもと逆の手順でまずジュゼッペがカットしてから、アンナがカラーを入れる。良かった。これで来週は見苦しくないかっこうで芝居と友だちとのランチにでかけられる。

次にモールの郵便局。私書箱はカタログがぎっしり。ははあ、クリスマス商戦の火蓋が切って落とされる予兆。たくさんあって重いのでモールのベンチに陣取って、アドレスをむしり取ったカタログを積み上げて、ささっと立ち去る。手に取ってみる人がいるかどうか知らないけど、興味のある人はど~ぞ。ずっと閉店セールをやっているキッチン用品店に何かいいものが残っているかどうかチェック。まあ、残り物には福があるというから。すてきな赤の楕円形のおひとり様用キャセロールを2個。シリコーンの油はね防止用のふたを2枚。ぜんぶ75%オフ。トートバッグが重くなったけど、その足でセーフウェイへ。カレシが寝酒の肴にチーズがいいというので、粒胡椒入りのグーダと緑の胡椒入りのハヴァーティ、それとプロシュットを巻き込んだモッツァレラのロール。ついでにワタシ用に丸いブリー。

フリーザーにはでっかい七面鳥の山。10月8日はカナダの感謝祭。ご馳走を考えなくちゃね。2人だけだから鴨にしようかなあ。ま、考えておかなきゃ。長~いフリーザーに沿って中を覗いて歩いていたら、おお、ズワイガニの足の身。もちろん、ズワイガニもどき。カレシが気に入っておやつや肴にするので、1キロ近い大袋を2つ。ついでにニシンの酢漬けの大瓶。だんだんバスケットが重くなって来た。メキシコ風味とプレーンの「ひき肉もどき」を買い、インスタントラーメンを買って、最後に歯磨き。前回うっかりいつもとは違うブランドのを買って、そのせいかこのところずっと口の中の粘膜が荒れてヒリヒリ。一種のアレルギーかもしれないから、いつものブランドに代えたら解決するかどうか実験。ドナルドダックの口になってはかっこ悪いもの。トートバッグはすでに重いし、バスケットもそれ以上にずっしりと重くなったので、携帯を取り出して、「カレシ」タクシーを呼ぶ・・・。

カレシ菜園のトマトとサヤインゲンは人の気も知らずにどんどん熟するもので、少々手に負えなくなって来た感じ。特にトマトは真っ赤に熟れたのがカウンターに30個くらいごろごろ。カレシ特製のV3ジュースがおいしかったから、また作って漉しかすを冷凍すればいいな。それとパスタソースも作ってね、食べきれないほどできたらそれも冷凍すればいいから。だけど、あんまりたくさん作ったらフリーザーに入り切らなくなるなあ。いっそのこと、貯蔵用フリーザーをもうひとつ買おうか。とりあえずカレシに提案したら「置く場所がないよ」。たしかに。でも、ベースメントの廊下をつぶして作った納戸に押し込んであるガラクタを始末すればキッチンのと同じ200リットルのフリーザーを置けると思うし、もうひとつあればサケや鴨(や鶏や七面鳥)を丸ごとストックできるし、野菜が採れすぎたら保存処理して冷凍しておけるねえ。それと、自家製のトマトソースとかも。(お、カレシ、だんだん乗り気になって来たような感じ・・・。)

男が料理をすると

9月21日。金曜日。目が覚めて、うわっ、寒い!思わず暑がりのカレシが早々とエアコンをオンにしたのかと思ったけど、エアコンはまったくの音なし。正午を過ぎていたので起き出して、サーモスタットを見たら華氏であと3度下がったら自動的にヒーターが入るところ。何でこんなにいきなり寒くなるの?

日本が土曜日なので、金曜日と土曜日が実質的にワタシの「週末」。まだ「未決箱」に残っている仕事は月曜日に回すことにして、この週末はダウンタイム。エイミスの『Lucky Jim』を読み終わったので、今度はH.E.ベイツの『The Darling Buds of May』。20年ちょっと前にイギリスでテレビシリーズになって、長女マリエットを演じたキャサリン・ゼタ=ジョーンズのハリウッドスターへの道を開いた。まずのっけから総勢8人のラーキン一家の超が付く大らかさぶり。そこへロンドンから来た冴えない徴税官が(所得税の申告をしていない)ラーキン親父に申告書を書かせようと躍起になるものの、親父にはのらりくらりとはぐらかされ、マリエットにはほんわかと誘惑され、親父に何杯もカクテルを飲まされ、とうとう帰れなくなって泊まることに。しかもマリエットのパジャマで・・・。さて、どうなることやら、読んでのお楽しみ。

今日はカレシがキッチンでトマトソース作り。セカンドキッチンのカウンターやラックを占領しているトマトの数を数えてみたら34個もあった。少なくとも4種類の違ったトマト。最初は名前を書いた札を立てていたのが、植え替えしたりしているうちにどれがどれだかわからなくなったそうで、ひと目で見て識別できるのは「Black Russian」くらいのもの。でもまあ、種類が何であれトマトはトマトに変わりがないし、勝手にどんどん赤くなる。(菜園にはまだいったいどのくらいあるやら。)特に大きくていびつなのを5、6個選んで、庭からバジルをひとつかみ採ってきて、玉ねぎ、セロリ、ピーマン、にんじん、にんにくを冷蔵庫から出して来て、塩コショウの調味料も手近にそろえて、カレシ専用のカウンターで「男の料理」の始まり。

[写真] 作業開始・・・ 前にもやったから慣れたもんさ。
[写真] 切って・・・ うう、玉ねぎで目がうるうるして、もう手元がかすんで来たぞ。
[写真] 刻んで・・・ セロリをざくざく。細かく刻むものが多くてタイヘンだ・・・。
[写真] かき混ぜて・・・ とろ火ってのはじれったいなあ・・・。
[写真] できた! あんなにたくさん入れたのに、こんなに減った。このままでも・・・。

まだトマトの皮やセロリの筋、バジルの茎が残っているので、まずざっとピューレ。(熱いなべの中で使えるワタシのハンドミキサーを貸してあげた。)目の粗いプラスチックのざるを使って固形分を漉す作業に入ったけど、なかなかすんなりと行かない。そこで、ワタシがじゃがいも潰しに使っているカクテル用のマドラーを持ち出して来て、ごしごし、ごりごり。「そんなこと、レシピに書いてなかったよ」とカレシ。(まあねえ、食材そのものにばらつきがあるんだから、レシピというのは単なる「枠組み」だと思って、その場その場で考えながら調理する方がわりと失敗が少ないように思うけどね。)漉せるだけの固形分を取り除いたら滑らかなソースのできあがり。あとは冷ましてからフリーザー用の袋に小分けして冷凍保存。3回分くらいあるかな。冬の間、このトマトソースをベースにして、パスタを楽しもうという心づもり。

まだまだラックにごろごろとある赤いトマトを見て、「この冬は必ず納戸のガラクタを整理する。約束するから、もう1台フリーザーを買えよ」と。お、いいね!ばんざ~い!

車を売るのはやめた

9月22日。土曜日。午前11時半、目覚ましで起床。秋分の日で、今日から公式に「秋」が始まる。朝方にちょっとだけ雨が降ったらしい。ポーチの気温は14度。ついおとといくらいまでは気温が平年より5度くらい高かったのに、今度は5度くらい低い。どうして?

今日はヘアカットの予約があるので、大急ぎで身支度をして、大急ぎで朝食。土曜日の昼だからモールの駐車場は混んでいると思って、急ぎ足で歩いて行くつもりで靴を履いていたら、カレシが「送って行くつもりだったのに」。それを早く言ってくれればいいのに、もう。帰りに切らしている玉ねぎを買ってくるねと言ったら、「あ、にんじんも。それとセロリ。それから、ジュースもなくなりそうだし・・・」。おいおい。結局、ヘアカットが終わったら電話して、スーパーで落ち合うことになった。

いやに積極的にタクシーサービスを買って出てくれるのは、車を売るのをやめたからだろうな。3、4日前に「車を売って、トラックは買い替えず、カーシェアリングに登録して、人を乗せるときに利用する」ということで話がまとまって、タイミング良く前に問い合せて来た人から買う気満々の留守電が入っていた。なるほど、いざ買い手がついたとたんに手放したくない心境になったというわけか。(売れるとわかったんだから、今売らなくてもいい・・・と。)まあ、そこがカレシらしいところなんだけど、じゃあトラックを処分するのかと聞いたら、「あれはオレのベイビーだからダメ」。ということは白紙に戻って現状維持。出不精の2人に車2台は不要ということで売ろうとしたんだから、2台ともキープするんだったら両方を適度に走らせないとダメだよと、こんこん?と諭して「不精せずに出かけてバッテリが上がらないようにする」という約束を取り付けた。それで今のところはいそいそとタクシーサービスをしてくれる、ということらしい。

だけど、いつまで現状維持できるのかなあ。どう考えたって、近くに地下鉄の駅ができた今では、ワタシたち出不精な2人には車とトラックは不要で、どちらか1台でも十分すぎるくらいだと思う。でも、カレシには、そのあたりを理性では理解していても、心の深いところで「自分のもの」を手放すこと、あるいは自分から離れて行くことにパニックに近いストレスを感じるらしいところがある。モノを捨てられない人はストーカーの素因があると言われるし、一説にはADHD(注意欠陥多動性障害)があるとも言われるし、見捨てられ不安のようなものがあって心理的に不安定だったり、気になることが頭から離れない強迫傾向の強い人が多いとも言われるけど、カレシの「手放したくない」心理の根っこにはそうした要素が少なからずあるように思う。

もっとも、ヨーロッパではどうなのか知らないけど、北アメリカでは趣味は何かと聞かれて「ドライブ」と答える人はまずいないから、よっぽどのカーキチとか、ランボルギーニやフェラーリを持っているなら別だけど、普通の人で車を走らせること自体を目的にして出かける人はいない。カレシも生来めんどうくさがりだから、そのうちに「出かけるのめんどくせ~」が打ち勝って、いざと言うときにバッテリが上がっているということになるんじゃないかと思うけど。ま、とりあえず、これからカレシとバッテリを充電するための「ドライブ」をする機会が増えて、2人だけの空間でのクオリティタイムができれば、当面だけでもエコーを売るのを取り止めにしたことで、逆に恩恵があるかも・・・。

人口構成と国の将来性の関係

9月23日。日曜日。よく眠れた気分で、起床は午後12時半。毛布を取り替えたおかげかな。子供は「寝る子は育つ」で大いにけっこうなんだけど、大人になると逆に「寝ない子は育つ」ということになるらしいから、望ましくない方向に育たないようにするには、何よりもしっかり睡眠を取ることが大切(なんだそうな)。

今日のNational Postに、アルバータ州バンフで開かれていた会議での人口統計学者の講演の記事があって、人口動態統計学の観点から世界各国の経済成長性を予測していた。要は、経済発展とその持続の鍵を握るのは人口構成における若者と老人のバランスだという話で、なかなかおもしろい。まず、「アラブの春」の勃発は若年人口の失業率の高さから予測できたとし、これらの諸国での出生率の急上昇と女性の教育水準の低さによって若年層の就職難が恒久化されるから、独裁政権が倒れた後も不安定な状態が続き、民主化が進まないことも予測し得たという。これら諸国に比べると、トルコとイランは女性の教育水準が高く、出生率は低めで、若年層と老年層のバランスが取れているので将来性は高い。ただし、イランでは政治がせっかくの経済的成功を台無しにしているとか。

大規模経済の中で、ドイツ、ロシア、日本は高齢化があまりにも急速で、衰退あるのみ。(やけにあっさり言ってくれるなあ・・・。)ただし、ドイツは積極的な自動化による生産性の向上で高齢化を克服し、輸出を通じた経済成長を実現している。ヨーロッパ全体を見ると、南欧は出生率、経済活動共に「絶望的」で、社会政策によって出生率を維持して来たフランスと北欧は例外的存在。中国は一人っ子政策によって若年層が縮小して相対的に高齢化が進むものの、日本がそうだったように高級市場へ移行して付加価値製品を作れば豊かになれる。でも、若年層の人口が多ければいいというものでもなく、中国と並んで注目されているインドは、その大人口が市場で言われるような競争力の源泉にはならず、将来は失業が増えて政情不安が起きる危険性を抱えているそうな。

もっとも、人口構成だけが経済成長の成否を占うわけではなく、政治の役割がきわめて大きい。(そりゃ当然だな。)政治を勘案すると、最も将来性が見込まれるのはブラジル、トルコ、メキシコで、インドネシアとベトナムは人口構成から見ると有望でも政策が足を引っ張っている。人口の多い国で人口構成と政策がうまくかみ合っているのはアメリカとブラジル。北米自由貿易協定(NAFTA)3国ではメキシコが一番「若く」、アメリカも比較的若いけど、カナダは急速に高齢化しつつあり、年間25万人の移民を受け入れ続けても追いつかない。カナダの移民大臣が外国人留学生の受け入れ拡大を検討しているのは、少子化による大学入学者の減少を埋められるだけでなく、留学生たちが将来カナダに移民として戻ってくる可能性に期待を寄せているからだとか。

ケニー移民大臣は一番近いメキシコが狙い目だと考えているそうだけど、最近イギリスで大問題になったような、金儲けが目当ての「お留学ビジネス」が、ただ「移民権」なるもの(そんなものないんだけど)が欲しいだけでカナダなんかに興味はないという「なんちゃって移民」希望者を留学生として送り込むのを阻止する方策さえしっかり講じれば、カナダの将来のためにもいいアイデアだと思う。たしかに、外国人留学生の教育はカナダ側の負担にはならないし、卒業する頃には移民を悩ます「言葉の壁」もなくなっているだろうし、カナダの文化や社会習慣も経験済みだから、カナダ社会に根を下ろしやすいかもしれない。実際に、留学が終わってもそのままカナダに留まりたいという人たちは多い。大学を卒業した後で一定期間の就労許可をもらえる制度もあるし、カナダでの就学就労経験によって優先的に永住権を得ることもできるから、帰国しても戻って来やすいと思う。でも、あくまでもカナダを選んでくれた人を優先すべきで、ふらふらした「腰かけ移民」は人口構成がどうであっても願い下げにしておいた方がいいと思うけど。

講演は「老年人口はより多くの電気とガスを消費し、スポーツをする人が減り、スポーツの試合を見に出かけることも少なくなり、ゴルフ人口は増えるが、テニスやホッケーは減り、フィットネス教室やガーデニング、散歩を好む」から、上は国から下は市町村まで、行政はその政策決定に人口動態統計の現実を反映させなければならないと言っている。それは言うまでもないことだと思うんだけど、バンクーバーなんかマイホームが高嶺の花だったりして若年層には住みにくいところなのに、市政の中心が「若い」もので、やれ自転車専用レーンを増やすとか、何とかと若年層向けの施策が多い。老年層の入り口にいて、年金受給申請書を書き始めたワタシとしては、自転車レーンなんかよりも電動車椅子が楽々すれ違えるように歩道を拡張してくれた方がいいと思うんだけど・・・。

ちょっぴりノスタルジックなご飯

9月24日。9月23日(日曜日)‐えびとたけのこのチリソース炒め、サヤインゲンの唐辛子炒め、ゆかり麦ご飯、サラダ

[写真] 冷蔵庫をかき回して在庫調べをしていたら、真空パックのたけのこが出てきた。さて、何を作れるかなあと考えて、車えびとペアリングすることにした。殻なしの車えびを解凍しておいて、久しぶりに電気中華なべを持ち出して、少し残ったアスパラガスも加えて炒め、にんにく風味のチリソースで中華風の味付け。サヤインゲンは太いのを斜めにスライスして、ごま油で炒めて、醤油と七味唐辛子、かつおぶしで味付け。ずっと昔に母がよく作ってくれた味に近いと思うけど、どうかなあ。ワタシが「嫁入り前の娘」だった頃、食事の支度を手伝っていたときに、母が鍋の出汁を箸の先ですくってワタシの掌に落とし、「この味を舌に覚えさせなさい」と言ったことがあった。神妙に手をなめて、わかったと言ったワタシ。「その味だからね」とうれしそうにうなずいた母の顔が何となく浮かんで来た・・・。

9月24日(月曜日)-豚(ぶた)汁、ししとうご飯(雑穀ご飯)、蒸した青梗菜、トマトサラダ

[写真] きのう冷蔵庫の在庫調べをしたときに出て来たごぼうとししとうの使い残し。ちょっと古いけど、どっちもまだ大丈夫。食べられるうちに食べてしまおうと、使い道を考えていて思いついたのが「豚汁」。きのう出汁の味を舌で覚えさせられたことを思い出して、舌がなんだかノスタルジックになっているのかな。大根があるし、にんじんがあるし、小さいじゃがいももあるし、味噌もある。豚肉はブルゴキ用の薄切りがあるから、材料は揃っている。ということで、今夜は豚汁・・・。

どうやら「豚汁」にはご当地レシピがいろいろとあるらしく、津軽海峡以南では「とんじる」と呼ぶところが多いらしいと知ったのはけっこう最近のことで、里芋が入った「とんじる」というのは未だかって食べたことがない。(里芋はあまり好きじゃないし・・・。)ワタシが食べて育った北海道の豚汁はほこほこしたじゃがいもが入っている「ぶたじる」。津軽海峡以南には「芋煮会」という行楽があると、これもごく最近になって知ったけど、北海道ではたぶん「ぶたじる会」ということになるのかな。(そういえば、日本ではお弁当を持って出かけたことはあっても、野外で料理した経験はないような・・・。)どっちにしても、秋の風物詩だそうだから、収穫を祝う感謝祭の饗宴の日本版というところか。

カレシ菜園で収穫したサヤインゲンも加えて、ほんっとに久しぶりに食べた道産子風「ぶた汁」は格別においしかった!(塩分の摂り過ぎにうるさいカレシが味噌汁をきれいに飲んでしまったからびっくり。)

ガラパゴスのゾウガメと冷蔵庫

9月25日。火曜日。なぜか身体がなかなか楽にならなくて寝返りばかり。おかげでよく眠れなかったのに、カレシに起こされて、寝ぼけたままでしばしの間いっちゃいっちゃ。「腹減った。起きよう」って、ワタシは眠いのよ。眠いけど、もうひと眠りするには中途半端な時間だしなあ・・・。

のんびり納期の仕事のその納期が今週いっぱいと言うところまで迫って来て、やっときのうから作業開始。そこまでは良かったんだけど、何だ、これ?アルファベットスープみたいに数式がぞろぞろ出て来るすごく長ったらしい論文。数式は訳さなくてもいいとしても、どうやら数学だか経済学だかのモデル理論か何かの何とか分析のようで、チンプンカンプンもいいところ。おまけに日本語の文章が何ともわかりにくいので、よけいにチンプンカンプン。あ~あ、し~らない。量的に2日で済むだろうと高を括っていたけど、3日はたっぷりかかりそう。とりあえず、半日キーワードでググリまくって、集めた資料を読みまくって、基礎知識の仕込み。ま、おぼろげながらもどうやら数学ではなくて、数学的な経済学の話だと結論。

こんなややこしいことを常日頃あれこれと考えるだけでも頭がどうにかなりそうなのに、それを長々と論文に書いて発表しなければならないんだから、学者ってけっこうタイヘンな稼業だなあと思う。「Publish or perish(発表、つまり成果を出せなければ消えるのみ)」という言葉があるけど、世はグローバル時代に成果主義。その論文を世界の学会機関誌に掲載してもらわないことには、成果を出したと見なされずに十分な研究予算をもらえないかもしれないし、何よりも住み慣れた「象牙の塔」に籠っていてはいずれガラパゴスのゾウガメになってしまうかもしれないしね。

この夏だったか、ガラパゴス諸島である島に最後に残ったゾウガメの「ひとりぼっちのジョージ」が死んで、その島のゾウガメは絶滅したと考えられると言うニュースがあった。そのときになぜか思い出したのが、ずっと昔のNHKの子供番組で現代人のレポーターが地球上最後の恐竜の死を「実況中継」していたことがあった。着ぐるみらしい「恐竜」が横たわっていて、ときどき長い首を持ち上げて悲しそうに吼え、やがてガクッと首を落として息絶え、レポーターが「とうとう恐竜が絶滅しました~」みたいなことを言っていた。まあ、子供番組だから子供にわかりやすいように「その瞬間」の中継という形にしたんだろうけど、なぜかワタシは、地球上に栄えた生物種が死に絶えるのを実況で放送するなんて、大人って何だかなあと漠然とした違和感を抱きつつ、地球上最後の人類が死ぬときには「人類絶滅」をレポートする人も、それをテレビで見る人もいないんだなあと、子供心に寂寞とした気分になったような記憶がある。

島国日本についても「ガラパゴス化」が言われるようにだいぶ経つ。携帯電話などが日本市場の事情に合わせて独自に発達しすぎて、気がついてみたら世界の事情と大きく乖離していたからであって、別に技術力が衰退しているわけではないと思う。まあ、法規制やら日本独自の規格やら行政の方針やらに縛られていた結果そうなったんだろうけど、日本の消費者の要求もかなり特異だったということはないのかな。鬱陶しくなるような過剰サービスだって、客を大事にするというよりは、消費者の「サービス」への期待が特異化した結果、そこから外れるとクレームがつくので、それを回避するためにそうしているのではないかと思う。(それで鬱陶しく感じるのかもしれないな。)まあ、日本独特の「察してちゃん」文化にうまく適合しているということかもしれないけど、せりふからスマイルまでが見事に同じなのは、サービスのJIS規格みたいなものがあるのかな・・・。

たとえば、6ドア冷蔵庫。何で冷蔵庫に6つもドアが必要なのかと思ったけど、除菌に除臭に真空何とかになんちゃら機能と実に細かくて、さすがニオイやばい菌に神経質な日本人向けだな。(そのうちパックの「消費期限」を読み取ってピーコピーコと警告してくれるようになったら、ヒットしそう。)おまけに、このドアは野菜、こっちのは肉類、これは氷用と収納領域が決まっていて、温度の設定が別だったりするから、電力消費量がすごそう。(実際に北米のものよりも消費電力が大きいらしい。)北米では未だに昔ながらの2ドアか、冷蔵庫がフレンチになった3ドアを使っていて、家庭用に6ドアなんてのは見たことがない。まあ、こっちにも除菌好きな人はいるけど、ばい菌が気になるならまめに掃除をすればいいし、ニオイ移りが気になるなら密閉容器に入れればいい。つまり、日本のメーカーは使う人がやればいいことまでやってくれて親切なんだろうけど、ところ変わればよけいなお世話だったりするという例だな。もっとも、「そっちのメーカーがずぼらで進化していないだけのことでしょ」と言われたらそれまでなんだけど。

何となくガラパゴスな私

9月26日。水曜日。カレシにつられて正午前に起床。いい天気。このまま月が替わるまで雨が降らなければ、降水量がもっとも少なかった9月として新記録を樹立すると言う話だけど、いつだったか、雨の日の連続記録を更新するかどうかと騒いだことがあって、そのときは今日も降ればタイ記録という日になぜか1滴も雨が降らなくてみんな何となくがっかりしたものだった。マザーネイチャーはむら気だから、もしかしたら9月最後の日にどぼ~っと大雨を降らせたりして・・・。

きのう通販の注文品がどさっと段ボール箱で届いて、今日はさっそく新しいスカートを着用。選んだのはカーゴパンツ風のデザインで、両側にフラップ付きの大きなポケットがついている、ちょっとタイトなミニスカート。とはいってもせいぜい膝上8センチくらい。東京あたりではいていたら「その年でミニスカートはありえないっ」と言われそうだけど、ワタシはこの年になってもミニが好き。ミニスカートやドレスを着ると、なぜか意識的に背筋をすっと伸ばして、おなかをぐっと引っ込めて歩くようになるから不思議。少なくとも良い姿勢を保つ上ではいい運動になっていると思うけど、背筋が伸びるから自然に気持も若やぐのかもしれないな。いくら若くてかわいくたって、背中を丸めて歩いていたら老けて見えるもの。

きのうガラパゴス化のことをごちゃごちゃ書いて、ふと何だかワタシもかなりガラパゴス化しているんじゃないかなあと思ってしまった。もちろんワタシは日本生まれの日本育ちで、人生の最初の27年は日本であたりまえに日本人として暮らしていたし、日本の(旧)文部省の検定教科書で教育を受けたから、日本という国の歴史はちゃんと知っている。ところが、カナダに移り住んでからは自分があまりにも「日本」という国を知らなすぎるのではないかと思うようになった。つまり、ワタシが日本だと思っていたのは「北海道」という島でしかなくて、日本文化だと思っていたのはその北海道の地域文化に過ぎなかったのではないかという疑問を長いこと持ち続けて来た。島国の中の島国とでもいうのか、もしかしたら、ワタシは最初からガラパゴスのゾウガメみたいなものだったのかもしれない。

さらに、生まれ故郷で小学校の同級生たちと昔話をしていてワタシの家庭環境が友だちのそれとはかなり違っていたことを知り、そして「ひとり暮らしが新しいステータス」とという記事を読んで、何だかワタシが育った世界は島国の中の島国の、その中の小さな孤島だったのではないかという気がして来た。小学校時代は普通に友だちと行き来して遊んでいた。転校してからの中学時代にはそういう友だちはひとりだけ。高校を転校してからは学校の外で一緒に遊ぶ友だちはいなかったように思う。新しい土地で成人してからのワタシは何をしていたんだろうな。オフィスと家を往復していただけだったような気がする。ワタシにとっての外界は望遠鏡の視野に見える宇宙と本の中の未知の世界。やれやれ、何だかすごく狭い閉ざされた空間で育てられたような気がしないでもない。

まあ、カレシと結婚することになってやっとその「島国の中の島国の中の小さな島」から出て来たわけだけど、その頃にはすでに「ワタシ規格」にガラパゴス化していたんだろうな。それが元の島から遠く離れたカナダに来て、まったく新しい環境に合わせて37年の間にさらに進化を続けて、自分でも気がつかないうちに日本から見たらとんでもなくおかしな「日本人」に変わってしまったんだろうな。でも、外国にカブれて突然変異したわけじゃないし、伝統的な日本で大人の生活をしたことがないんだから、「日本」のことを知らなくたってしかたがないか。ちょっとググって「へえ、そうなんだ」と知ることができればそれでいいような気がする。何だかずっとガラパゴスだったワタシが自分の島を見つけて、やれやれと腰を落ち着けたということで、それが適者生存と言えるのかどうかわからないけど、もっと年をとってご隠居さんになったら、ガラパゴスのゾウガメみたいにのっそり、のんびり、ゆっくり、まったりで行こうっと。

でも、その前に仕事を片付けてしまわないと・・・。

ネットで寄付と称して物乞い‐その2

9月28日。金曜日。曇り。起床午後12時45分。何だか寝すぎて腰が痛いなあ。きのうは買い物に行けなかったので、今日は切らしているシリアルの代わりにオートミール。涼しくなったから熱々のオートミールにミルクをたっぷりかけて食べるのも乙なもの。きのうは友だちとほんとに久しぶりのランチ(ワタシには朝ごはん)に出かけて、カジノの中にあるブッフェでローストビーフを初め、牛肉ばかりがつがつと食べて来た。楽しくおしゃべりをしながら、どんと肉を食べるともりもりと元気が出るなあ、やっぱり。

でも、帰って来た後は脳みそがぐちゃぐちゃになりそうな仕事の続き。とにかく、この数式であれがこうなって、するとこれがああなるから、今度はこの数式でなんたらかんたら・・・というのが延々30ページ。こういうことを考えるのが仕事の学者さんたちなら何の話をしているのかスパッとわかるんだろうけど、こっちはキーを叩いているうちにおぼろげにわかったようなわからないような気分になって、薄っすらと浮かんできたイメージが頼りの翻訳作業。大学で経済学専攻だったカレシさえ「新しい理論はわからないよ」。それでも、訳上がりを見てもらったら、赤ペンを入れながら「ふむふむ、なるほど、ははあ。だいたいわかるから、まあ合格だな」。カレシが天使に見えたことって今まであったかなあ。難易度はワタシの「確実にできる」自信レベルより2段か3段くらい上だったかもしれないけど、たまにはこういう仕事で背伸びをするのもいい刺激になる。学習には終わりというものがないし・・・。

ファイルを最終的に仕上げて、校正担当者に送って、やれやれとひと息。しばしネットをうろうろ。ふむ、在日外国人のニュースブログにまたぞろヘンなガイジンのヘンな「寄付金募集」の話が載っている。日本で起きていることだけど、日本のメディアにはまず出て来ない話で、この前は九州住まいのアメリカ人が「フクシマの放射能が怖いので、日本人妻共々アメリカに帰るための資金を寄付して」というのだったけど、今度のはビザ切れが見つかって逮捕されたニュージーランド人を助けるために「弁護士を雇う費用を寄付して」という話。SNSの隆盛でサイバー乞食も増殖中というところかな。

でも、今度のはやたらときな臭い。まず、寄付金集めのサイトの写真というのが、ネオングリーンのふわふわしたかつらを被った何とも軽薄そうな顔の人で、SNSを使ったビジネスをしているとか、していないとか。いるか漁のドキュメンタリー(また?)を作るという人の通訳と言う触れ込みで太地に行って、そこで有効な滞在ビザがないことがばれたということらしい。いつから日本にいたのかわからないけど、日本で「一生の恋人」ができて、このまま日本にいたいと言っている、と。だけど、ビザの期限が切れていたなら「不法残留」。間違いなく強制送還だろうな。ま、そのときは自分で飛行機代を払わなければならないから、奇特な人の寄付金は助かるんじゃないかな。でも、ビザの延長を申請したのに日本政府が書類を紛失したために手続きができていなかったと主張しているそうだけど、いったい何のビザ?

何やってんだろうなあと思っていたら、この人を知っていると言うアメリカ人が、「実はニュージーランドには別れた妻と子供が2人いて、日本には3年住んで2人の日本女性との間に子供が2人。一生の恋人(婚約者)というのは3人目。定職はなく、もっぱら活動家ぶってイベントなどに首を突っ込んではただ飯食いをして来た」と裏の事情を投稿。女性にも食べさせてもらっていたということか。ビザはどうやら「観光ビザ」らしく、ニュージーランドはビザ免除国なので実際にはパスポートに貼られる90日の「入国許可」。延長を申請したと言うけど、あれって延長できるのかな。第一、観光ビザでは働けない。(あ、だからただ飯食いだったのか。)それにしても、今の婚約者という女性は「日本で2度結婚して離婚、子供2人」ということを知っているのかな。いや、日本にいた3年間に2度結婚して離婚したというのも嘘っぽいな。だって国際結婚だったら婚姻具備証明書というのが必要で、日本人同士のように婚姻届と離婚届を出せば済むってわけじゃないもの。第一、日本人の配偶者がいるのに正規のビザを取らなかったのかなあ。

いろいろと突っ込みどころ満載なのを指摘されて、今度は「パスポートを所持していなかったのは盗まれたからだ」と言い出したそうで、言い訳がころころ変わるのはまったくもって怪しい。(パスポートを盗まれたらまず警察に届けるでしょう、フツー。)ま、良くして寄生虫、悪くして詐欺師。ニュージーランド行きの航空券を買えるくらいの寄付が集まったそうだから、こんな人は早々に強制退去させちゃった方が日本の(特に女性の)ためだと思うね。

生まれた甥孫はバイリンガルに育つのか

9月29日。土曜日。いい天気だ。今日もシリアルがないから、何年ぶりかで普通にベーコンを焼いて、ついでにトマトもスライスして焼いて、その間にカレシがスクランブルエッグを作って、しっかりと朝ごはん。

メールをチェックして、きのう送ったファイルが無事に届いたことを確認して、シリアルを買いにWhole Foodsへ出かけた。土曜日の午後だから、道路はそれほど混んでいないと思ったのに、この平日のラッシュみたいな混みようは何なんだ?別に連休でもないけど、秋の好日という感じの空模様につられて、買い物に行楽にとみんな出て来たのかな。もう9月も終わりだし・・・。

お気に入りのシリアルを1キロと、オレンジジュースやらランチ用の食材やらを買い込んで帰って来たら、トロントのデイヴィッドからのボイスメールが入っていた。長女のスーザンが午後1時半に第1子を出産。体重3200グラム。35歳の初産だったけど、安産で母子とも元気。ワタシたち、また大伯父さん、大伯母さんになって、これで甥孫、姪孫合わせて5人。だけど、なのだ。赤ちゃんは男の子?女の子?どっち?初孫の誕生で興奮したのかどうか、「kid(子供)」というだけで肝心の情報がない。カレシが電話したら留守電だったので、ちょっといたずら心を起こして「性別が判明したら知らせてくれ」とメッセージ。夕方に返電があって、赤ちゃんは男の子で名前はジャクソン(綴りは今どきっぽくJaxon)。実はかなり前から超音波検査で男の子とわかっていたんだそうな。じゃあ、男の子のお祝いを考えないとね・・・。

スーザンのパートナーのモンティはケベック州の生まれだけど、両親がフランスからの移民一世だったことから、純正フランス語(カナダではケベックのフランス語と区別するために「Parisian French(パリのフランス語)」と呼んでいる)で育ったそうな。本国から離れて何百年も経ったケベックのフランス語とはかなりの違いがあるそうで、子供の頃にはずいぶんいじめにも遭ったらしい。(その後何年も英語圏に住んだので今は完全に英仏バイリンガル。)その純正フランス語をちょいと田舎っぽく崩して話すとケベックのフランス語になるんだそうで、そうやって「Pure laine(純毛)ケベコワ」との摩擦を避けていると笑っていた。フランスでもフランス語の「純血」を守るために「国語審議会」みたいなうるさい組織があるという話だけど、純毛ケベコワのフランス語死守へのこだわりには、ある意味で宗教の原理主義に通じるところがあるようにも感じられる。(ま、自分が属する国や民族の文化や習慣を守るために束になって異端者を排斥しようとする行動そのものが、ワタシには宗教に近いものに見えるけど。)

生まれたばかりのジャクソン君がバイリンガルに育つかどうかはまだわからないけど、最近カナダ政府はこの11月から市民権を取得する人に英語かフランス語の運用能力の証明を要件に加えることになったそうな。市民権(国籍)を持っていても英語/フランス語を話せない人はけっこういる。ワタシが申請した頃には市民権判事と1対1の差し向かいでの面接試験があって、カナダに関する知識について質問に答える仕組みだった。それが移民の数が大幅に増えて対応できなくなった今は4つか5つから正しい答を選ぶという筆記試験になって、英語/フランス語で会話ができなくても、送られて来るガイドブックの内容を暗記すれば合格できるようになった。(それでも不合格になる人がけっこういるらしい。)おかげでカナダの公用語で機能できない「カナダ人」が増えてしまった。まあ、自由党のトルドー政権時代あたりからやたらと条件を緩めて来た結果でもあるんだけど、それでは国として困るから、英語/フランス語が「できる」という証明を求めることにしたらしい。

でも、IELTSにしてもTOEICにしても、(特に試験勉強に長けた日本人の場合は)スコアが高くても必ずしも英語の運用能力が高いということにはならないんだけど、言語能力を正確に測定できる方法はないと思うから、何もしないよりはましというところかな。たかが英語、されど英語で、いくらTOEICのスコアが900点以上あっても、(特に会話という双方向の)コミュニケーションに活用することができなければ、ただの「知識」でしかない。知識は「勉強」すれば受け身でいても取得できるけど、活用となるとそうは問屋が卸さないから難しいところだな。カレシのところにはさっそく口コミで英語教室のことを聞きつけた人たちから入れて欲しいというメールが舞い込み始めているとか。ワタシが来た頃は移民のための英語学校などなかったから、ひたすら活用あるのみだったけど、今考えてみると、そういういきなり深みに飛び込むような環境だったのが幸いしたのかも・・・。

いったいどういう発想なんだろう

9月30日。日曜日。いい天気。普通に起きて、普通に朝ご飯を食べて、さっそく仕事。何しろ、大型台風が東京を吹き抜けている間に、こっちにも大型の「何だ、これ」台風・・・。

どどっと来た2つのファイルの小さい方、パッと見たところは似たりよったりの表がずらり。まあ、Wordのファイルだから、表の扱いは慣れたもんだし、元原稿の量からして普通に4時間もあればできそうだし、似たような項目がたくさんあるから「コピペ」もできそうで、要するに「あ、こんなの軽い、軽い」という感じの仕事・・・のはずだった。ところが、表のセルに見えたのは、実はテキストボックス。日本語と英語の訳文では長さが違うから、元の大きさのボックスには訳文が入り切らないのが普通で、図の中のボックスなら訳文が納まるように大きさを調整すればいいんだけど、これはページいっぱいの大きな表。10個も20個もあるボックスをジグソーパズルみたいに寸分の隙もなくきっちりと組み合わせてきれいな「表」の形にしてあるから、どれかひとつのサイズを1ミリでも変えたら作った人の苦労は水の泡・・・。

いやはや、20年以上ありとあらゆる形式や構成の文書を訳して来て、びっくりするような「何だ、これ」には慣れていたつもりだけど、これはもう芸術品だな。期限が今日の夕方で、どうにもならないことと格闘していてもしょうがないから、原稿を印刷して、まっさらのWordファイルを作って作業。たぶん、書式を作れと命じられた人はWordの表機能の使い方を知らなかったんだろうな。そうとしか思えない。そうでなければ、いったいどういう発想なんだろうな。昔はExcelをまるで線を引いた筆記用紙のように使った文書によく遭遇したけど、それが400字詰め原稿用紙の発想だということは想像に難くなかった。日本から送られて来る日本語文書で(たとえば「MS P明朝」のような)プロポーショナルフォントが使われることはまずない。(各行の文字の位置が揃わないから嫌いなんだろうな。)上書き処理で英語をポンポンと打ち込み始めて「ん?」と思ったときはたいてい1ページ何行、1行何文字と設定されている。まさに原稿用紙的なんだけど、それはそれでグリッドを解除すれば済むこと・・・。

それにしてもあまりにも奇抜な表作り技術に感心しながら、作業を進めて行くうちに、いくら進んでも終わりが見えて来ないことに気がついた。3時間やってもまだ全体の半分。ははあ、わかった。テキストボックスの中の文字はカウントされない。つまり、最初に言われた原稿の文字数には十何ページもある表の中の文字数が入っていないということで、ざっと見渡したところでは仕事量が倍かそれ以上になって、とっても期限には間に合わない。えらいこっちゃ。これをさっさと片付けて次にかからないと2つ目の期限の方が詰まってしまうというのに、もう。でも、お客さんの方でも「表」が表ではないことに気づかずに、普通に文字をカウントして発注元に見積もりを出しただろうから、それを訂正できるかどうかはわからないけど、とりあえず台風一過の月曜の朝の東京にバッドニュースを伝えるメールを飛ばした。

まあ、何とか無事に片付けて、半日遅れながら納品を済ませたけど、それにしても、見れば見るほどため息が出るような精巧な「作品」。印刷してじ~っくり調べたらほんのたまにごくごくわずか角がずれているところがあったりするけど、それでも1ミリ以下で、普通に見ていて気がつく人はまずいないだろうな。Wordの表機能を使えば半日でできてしまうものを、いったいどれだけの時間をかけたんだろう。マウスを動かす手が痙攣を起こしたんじゃないだろうか。完璧を要求し、完璧をめざし、完璧な結果にこだわる人の発想なのかもしれないけど、この人も原稿用紙型の思考パターンの持ち主なのかなあ。いや、もしかしたら驚異的な独創性を持った人かもしれない。いったいどんな人なのか、会ってみたいような気もするなあ。この年になったら少々のことには驚かないけど、いやはや、ほんっとにぶったまげた。