廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

今週の成果

2014年06月28日 | Jazz CD
今週のとある日の、DU新宿ジャズ館の2F中古CDフロアにて。

店員A 「これ、出しといてくれる?」
店員B 「ええっ、これ出すんですかぁ? 勿体なくないっすか?」
店員A 「んー、普通だったらセール行きなんだけど、ほら、今月はヤバいから、そんなこといってられないんだよね」
店員B 「あー、そうっすねえ、ヤバいっすねえ」

きっと売上目標に届いてないんでしょうね。 ふむふむ。 確かに、今月の中古の新入荷はいつもよりショボかったぞ。
頑張れ、若者よ。 買取りに力を入れて、いいのをたくさん出しておくれ。

若い店員BはCDの束を抱えて、新入荷の棚へ補充していきます。 すかさずそれらをチェックしてみましたが、さて、どれのことだったんだろう?
確かに2千円台のものがいくつかありますが、どうも私にはその価値がわかりませんでした・・・・ 残念。
中古音盤は、やっぱり趣味で買う側のほうがいいですね、気楽で。


さすがに2週間もブランクが空くと、いくつか目の前に現れてくれます。 少しつまむことができました。





■ Jerry Weldon / Midtown Blues  ( Amosaya Music AM-2535 )

税込みで3,086円。 私のルールに抵触する値段ですね。 でも、2週間振りなんだし、まあいいでしょう。 この程度のゆる~いルールです。
このテナーは全然知らない人です。 tsとtpのクインテット。 迷いましたが、ここは直感に従え、という声がするので買ってみました。 

で、これがとてもよかったです。 とても骨太で、無骨で、余計なことは何もせず、ただひたすらハードバップを演奏しています。
これこそがミュージシャン魂ですね。 たくさんの演奏家とスタッフたちがいろんな音楽を試行錯誤する中でこういう何の衒いもないジャズを聴くと、
心底嬉しくなります。 

この人はライオネル・ハンプトンやジャック・マクダフのバンドで活躍したそうで、この盤は1995年のFat Tuesdayでのライヴです。
こういうミュージシャンはたくさんいるんでしょう。 多くのこういう人にチャンスを与えて欲しいです。 それは結局、我々のような
愛好家のためにもなるのです。


■ Matt Otto / Dig  ( JMJ discs CD 12292 )

西海岸の無名のミュージシャンで、完全私家録音だそうです。 テナーとソプラノのワンホーンです。 ネットで調べると、2~3年前に
盛んに行われていた廃盤CDセールに時々出ていたようで、当時は5,000円前後だったようです。 しかしブームが去ると、こうやって
3Fでいつまでも売れ残ることになるんですね。 15% offで1,500円です。

ロリンズばりの豪放なテナーによるハードバップ、とのことで、おいおい、またかよ、と思いましたが、いつものように騙されてみました。
で、聴いてみると、演奏は悪くないです。 一生懸命な熱意は伝わってくる。 ただ、全曲オリジナルの楽曲の半分くらいが出来が悪いです。 
ちょっと頑張り過ぎたのか、欲を出し過ぎたのか、こんな曲を書くくらいなら普通にブルースを演奏してくれればよかったのですが・・・・

まあ、でもアメリカのジャズの層の厚さを実感できる音盤です。 ざらっとした録りっぱなしの音もなかなか味があります。





■ Marty Krystall / Plays Herbie Nichols  ( K2B2 Records K2B2 3469 )

うーん、苦手なハービー・ニコルズです。 テナーにヴァイオリンも加わるクインテットで、ますます怪しい。 でも、怪しければ怪しいほど
興味が出てきます。 700円と安いし、買ってみました。 こういう迷ったりするのも、楽しいですね。

聴いてびっくり、深みのある音です。 テナーも太く伸びやかな音で、ヴァイオリンは全然うるさくなく鑑賞を邪魔しません。 なんだかドルフィーの
レコードを聴いているみたいな演奏です。 ニコルズの曲想を活かそうとしているのでしょうし、ドルフィーのことも多分に意識しているのでしょう、
それに演奏自体も上手いです。 調べてみると、この人は録音がたくさんあるようで、ブラームスやウェーベルンのクラリネット・ソナタも
録音している。 本格派なんですね。

なんか不思議な快感がある音盤ですので、もうしばらく聴き込んでみようと思います。


■ Richie Beirach - George Coleman / Convergence  ( Triloka Records 320182-2 )

これが今週一番の成果でした。 ジョージ・コールマンのサックスがこんなきれいな音で全編堪能できたのは初めてです。 サックスとピアノの
デュオ作品というのは、大体が室内楽的な退屈さに終わるものですが、これはリッチー・バイラークが上手く音楽全体を制御しているからだと
思います。 しっとりと落ち着いていて、それでいてジャズのフィーリングを忘れない素晴らしい音楽に仕上がっています。

ジョージ・コールマン、この不遇な演奏家の実像を掴むのは難しい。 マイルスのバンドで、あの永遠に忘れられない名盤たちの中でイマイチ
実力を発揮できずに終わってしまったおかげで、その後はあまり恵まれなかったようですが、私のような人間はますます興味を惹かれます。

数少ない音盤を探しては聴いてきてもなかなかこの人の魅力がわかる盤に出会えなかったのですが、これでようやく溜飲が下がりました。
いつまでも我が家のラックの中で大事にされる音盤になることでしょう。



コメント (2)
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