Chet Baker Sings ( Pacific Jazz PJ-1222 )
雨の日の薄暗い朝、ぼんやりと何か聴きたい時にターンテーブルに載せるレコードです。 梅雨のこの時期、割とよく聴くような気がします。
不思議なもので、西海岸のレーベルのレコードというのはどれも大体演奏と一緒い乾いた空気も溝に刻まれているものです。
レコードをかける度に乾燥した空気も流れ出してくるような気がします。
このレコードもチェットの湿った声やトランペットの後ろでこのレーベル特有の乾いてシンプルな演奏が対比的で面白い。
"That Old Feelig" でのラス・フリーマンの演奏が本当に見事です。
中古市場では常時出回っているレコードなのに、きれいな状態のものを見つけるのは最近は皆無。 昔は1万円出せばきれいなものが
簡単に買えましたが、だんだん難しくなっているようです。 ただ、これはオリジナルでも音が別にいいわけではないので、あまりそういう
ところにこだわる必要もないように思います。 気軽に楽しめればそれでいい音盤です。
Wiliam Claxton / Jazz
ウィリアム・クラクストンの写真集。 レコード・コレクターにはお馴染みの写真もたくさん載っています。
よくレコードの魅力はジャケット芸術にあるといいますが、やはり写真を見るとその力強さが違います。 たくさんのことを語りかけてくる。
そこには我々がよく知っているミュージシャンが写っていますが、彼らがいる場所、風景が実に質素であることに気が付きます。
みんな、こういうところで生活をしていたんだなあ、という素朴な感慨に打たれます。
簡素な部屋や殺風景な街角にいる彼らの生々しい肉体だけが、そこにくっきりと写っています。 この身体の中から、あの数々のウェストコースト
ジャズが生み出されたんだと思うと、聴き慣れた乾いた音楽たちもまた違った印象で私に迫ってくるような気がします。