廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

雨の日にはチェット・ベイカーを聴いて

2014年06月07日 | Jazz LP (Pacific Jazz / World Pacific)

Chet Baker Sings ( Pacific Jazz PJ-1222 )


雨の日の薄暗い朝、ぼんやりと何か聴きたい時にターンテーブルに載せるレコードです。 梅雨のこの時期、割とよく聴くような気がします。

不思議なもので、西海岸のレーベルのレコードというのはどれも大体演奏と一緒い乾いた空気も溝に刻まれているものです。
レコードをかける度に乾燥した空気も流れ出してくるような気がします。

このレコードもチェットの湿った声やトランペットの後ろでこのレーベル特有の乾いてシンプルな演奏が対比的で面白い。
"That Old Feelig" でのラス・フリーマンの演奏が本当に見事です。

中古市場では常時出回っているレコードなのに、きれいな状態のものを見つけるのは最近は皆無。 昔は1万円出せばきれいなものが
簡単に買えましたが、だんだん難しくなっているようです。 ただ、これはオリジナルでも音が別にいいわけではないので、あまりそういう
ところにこだわる必要もないように思います。 気軽に楽しめればそれでいい音盤です。




Wiliam Claxton / Jazz

ウィリアム・クラクストンの写真集。 レコード・コレクターにはお馴染みの写真もたくさん載っています。

よくレコードの魅力はジャケット芸術にあるといいますが、やはり写真を見るとその力強さが違います。 たくさんのことを語りかけてくる。
そこには我々がよく知っているミュージシャンが写っていますが、彼らがいる場所、風景が実に質素であることに気が付きます。
みんな、こういうところで生活をしていたんだなあ、という素朴な感慨に打たれます。

簡素な部屋や殺風景な街角にいる彼らの生々しい肉体だけが、そこにくっきりと写っています。 この身体の中から、あの数々のウェストコースト
ジャズが生み出されたんだと思うと、聴き慣れた乾いた音楽たちもまた違った印象で私に迫ってくるような気がします。




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今週の成果

2014年06月07日 | Jazz CD
今週も少しCDを摘まみました





■ Viacheslav "VP" Preobrazhenski / Nightfall ( Dolphin Music 002 )

先日聴いた"Fair Weather"が良かったので、他にはないのかと探してみると2枚見つかりました。 これは同じくストックホルムのスタジオでの録音で、
今度はドラムスが別の人なので期待して聴くと、これがデリケートな演奏で素晴らしい。 全てオリジナル曲ですがどれもストイックに硬派な
演奏が展開されてとてもいい。 この人のテナーの音が好きであれば、全編魅力的な音を楽しめます。 録音もとてもいいです。 こういう現代風な
演奏もきちんとできる人なんですね。 才能の豊かさを感じます。


■ Viacheslav "VP" Preobrazhenski / We All Hope ( Sintez SRCD 00002 )

こちらはレッド・ミッチェル、ホレス・パーランという西側の巨人を迎えたドラムレスのトリオ。 スタンダードを非常にゆったりとムーディーに
演奏しており、これは素晴らしい内容です。 3枚の中では一番ジャケットがチープだけど、私はこれが一番気に入りました。 これはDUでも
頻繁に見かけるような気がしますが、このジャケットのせいかあまり人気がないようです。 でも、ちゃんと聴けばその良さがわかると思います。
もったいないことです。 どうせバラードアルバムを創るんだったら、これくらい徹底して音楽的感動を追及するべきだと思います。 最初の
2曲はオーケストラがバックをつけますが、これが絶品。 ロシアは伝統的にオケが素晴らしいのでこれは当然かもしれませんが、これなら
全編オケ付きでやって欲しかった。 でも、きっと予算が足りなかったんでしょう。 コールマン・ホーキンスがバラードアルバムを創ったら、
きっとこんな感じになっていたはず。 傑作です。






■ Fabrizio Bosso / Fast Flight ( Red Records 123287-2 )

ボッソのファースト・ソロで、イタリア録音。 テナーとの2管編成で若さがほとばしる演奏ですが、楽曲の出来がイマ一つのせいか、あまり印象に
残らない気がします。 しかしこの人は本当に演奏がうまくて、あまりにスムーズで滑らかなので、トランペットを聴いているという感覚を
忘れてしまうくらいです。 こんな人が世に出てきてアルバムをポンポンと出されたら、これからのトランぺッターは大変ですね。


■ Mark Lopeman / Nice Work If You Get It ( レーベル、番号なし )

完全な私家録音のようですが、一応、Ken Peplowskiがプロデューサーを務めており、無名だけど実力を評価されての制作だったのだろうと思います。
曲によってはtpやtbも加わる構成ですが、あくまでもこの人の管を前面に押し出した演奏に好感を覚えます。 アップテンポの曲にはまだまだ
改良の余地がありますが、スローバラードになると魅力が爆発します。 "I'm A Fool To Want You"他、バラードを聴くアルバムと認定。




コメント (2)
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