Thelonious Monk / Monk's Dream ( 米 Columbia CL 1965 )
コロンビア時代のモンクの評価は総じて低い。 というか、そもそもまともに相手にすらしてもらえないような感じだ。
ブルーノートによって見い出され、プレスティッジで飼い殺しの憂き目にあっていたところをリヴァーサイドによって救い出されて芸術性が花開き、
やがてコロンビアの時代に退化していく、というのが一般的な総括のされ方になっている。 まあ、そう言われればそうなのかもしれない。
でも、それならこのアルバムに詰め込まれた素晴らしい音楽をどう説明すればいいのだろう。
このアルバムは、とにかくチャーリー・ラウズの演奏の見事さが全面に押し出されている。 まるで自分が作曲した曲であるかのようになめらかに吹いて
いく。 過去のリード奏者たちがモンクの音楽へ自分を同化させようとしたアプローチをしていたのとは逆に、ラウズはモンクの音楽を自分のほうへと
手繰り寄せるような手綱さばきをしている。 だからフレーズの組み立て方にも特に苦労をしていないし、かと言ってミスマッチな印象などなく、
これ以上ない親和力を見せている。 チャーリー・ラウズという人の音楽家としての本当の凄さは、この作品を聴いて初めてわかるのだ。
モンクのピアノも粒立ちの際立ったキレのあるタッチで、円熟の極みを見せる。 運指もなめらかでスピード感もあり、素晴らしい演奏だ。 "ブライト・
ミシシッピ" や "ボリヴァー・ブルース" などの楽曲の良さもあり、このアルバムの完成度の高さにはため息がでる。 それでいて堅苦しさのようなものは
微塵もなく、親しみやすく穏やかで明るい表情で弾むようなリズム感にこちらの表情も思わずほころんでしまう。
マイナーレーベル時代は一晩のセッションですべての曲を録音せざるを得なかったが、コロンビアと契約後は1日に2曲程度録音するというサイクルに
なった。 そういう環境の変化もいいほうへと作用したのかもしれない。 バンドとしての纏まりで作り上げた素晴らしい音楽になっていると思う。