

Charles Mingus / My Favorite Quintet ( 米 Charles Mingus JWS 009 )
ドルフィーが亡くなった後、フロントを刷新してライヴをした模様を収めたアルバム。 ドルフィーの後釜に座った気の毒なマクファーソンは指示を
受けたのか自ら進んでそうしたのかはよくわからないけれど、精一杯ドルフィーを演じている。 トランペッターもコールズを比べると格落ちで、
管楽器群が一時的に弱くなったのは、まあしかたないのかもしれない。
そのせいか、セットリストもスタンダードが半分を占めていて、ミンガスらしくない内容だ。 このバンドがスタンダードを演奏しても、それはいわゆる
スタンダードを美しく聴かせることが目的ではないわけで、バンドの音楽性を表現するには不向きな器だった。 そういう根本的なところがうまく噛み
合っていないせいで、おとなしい印象だ。 ライヴらしいおふざけタイムもあって会場の雰囲気はとてもいいが、ミンガスの音楽を聴こうとする向きには
いささか拍子抜けする。 特別な音楽の記録ということではなく、ミンガスがたまに見せる陽気で朗らかな一面を切り取ったポートレートだった。
このライヴが行われた頃はマイルスやコルトレーン以外のジャズミュージシャンたちは一体何をすればいいのかよくわからなくなっていた時期で、
それはミンガスも同じだったのかもしれない。 残酷なことに、ここでミュージシャンたちは一旦ふるいにかけられることになる。 そして残った
ミュージシャンたちは徐々に幅を利かせてくるロックの波に揉まれながら自分の道を模索することになる厳しい時代に入っていくのだ。
ミンガスが興したこの自主レーベルからのレコードリリースもこの後のUCLAでのライヴが最後になり、その後はミンガスのレコードを追い駆けるのは
難しくなる。 60年代の後半の5年間はミンガスでさえ音楽活動するのが難しくなる、ジャズミュージシャンにとっては一番つらい時期だった。
これはそのギリギリの際でミンガスが何をやっていたのかがわかる貴重なアルバムで、そういう背景がわかっていても聴いていて切なくなってくる。