Roger Kellaway / A Jazz Portrait Of Roger Kellaway ( 米 Regina Records LPR-298 )
Reginaレーベルのこの "Portrait In Jazz" シリーズはジャケットの趣味が悪く、まったく手に取る気になれないものばかりだけど、これは聴けば
驚く傑作。新しい才能に出会った時に感じるあの独特の興奮が脳内を駆け巡る。
硬質なタッチと斬新なフレーズで構成される演奏は素晴らしく、耳を奪われる。自作の楽曲が多いがどれもセンスがよく、音楽的な才能も十分。
その高いレベルのピアニズムには鮮やかな輝きがあり、ピアノ音楽の愉楽がぎっしりと詰まっている。
ピアノ・トリオ、ジム・ホールが加わったカルテット、ソロのバリエーションがあり、飽きることがない。ベースとドラムの記載がなく、公式には
誰が演奏しているかは不明だが、ベン・タッカーやスティーヴ・スワロウ、デイヴ・ベイリーの名前が挙がっている。デイヴ・ベイリーは違うんじゃ
ないかなと思うが、ベースの2人はどうもそれっぽい。それくらいベースの存在感が強い。
シドニー・ベシェの古い楽曲を取り上げたり、ロック・テイストの曲もあったりと音楽の振れ幅も大きく、単純なジャズ・ピアノではないところが
ミソで、それらが浮き上がることなく上手くブレンドされている。硬派な切れ味と抒情性のバランスもよく、とにかく圧倒される。
これがデビュー作で、以降たくさんの作品を残しているがあまりパッとしなかったのは残念。でも、このアルバムの出来の良さがそういうところを
帳消しにしてくれる。ピアノ・トリオの名作の系譜に残る作品だ。