Charles Mingus / Town Hall Concert, 1964, Vol.1 ( 米 Charles Mingus JWS005-S )
ジャッキー・バイアードの美しいピアノが聴けるアルバムとして私の中で不動の地位を占めるのは先のピアノトリオではなく、こちらの方。 B面冒頭の
ドルフィーのフルートへのブリッジの美しさは忘れ難い印象を残す。 巨大なミンガス六重奏団の音楽の塊の中でも、バイアードのピアノは随所で光る。
このアルバムの一般的な焦点はドルフィーの演奏になるわけだが、私にはそれと同じくらいバイアードのピアノの印象が強い。
ドルフィーが亡くなる2カ月前のライヴであり、ここでの彼の演奏は意外と穏やかだ。 ミンガス・バンドの一員という立場だったこともあるだろうけど、
それにしても全盛期の彼の演奏を想うとこの演奏はおとなしめではないだろうか。 おそらく体調が既にあまりよくはなかったのではないかと想像する。
元々ドルフィーが嫌いな私にはこれくらいがちょうどよく、他のメンバーとのバランスのよさからこのアルバムは好きでよく聴く。
ブルーノートやリヴァーサイドのリーダー作を聴いてもどこがいいのかさっぱりわからないクリフ・ジョーダンも、同じくエピック盤を聴いてもどこが
いいのかさっぱりわからないジョニー・コールズも、ここでの演奏はまったく別人のようで圧倒的に素晴らしい。 特にジョニー・コールズの音色の良さ
が強く印象に残る。
アンサンブルにこだわり、楽曲そのものにもこだわったミンガスらしく、演奏力の際立つメンバーを擁したバンドでのライヴであっても音楽を俯瞰的に
眺めたコントロールが効いており、演奏の素晴らしさだけではなく音楽的な感動もしっかりとやってくる。 急逝したドルフィーへの追悼盤として
リリースされたという要素を抜きにしても、素晴らしい音楽として聴くことができる。 残念なのはこの1枚では短すぎるということくらいだ。
自主レーベルにも関わらずプレスの品質が良く、音質も何も問題ない十分なレベル。 debutレーベルの時の反省が効いているのかしれない。
もっとたくさんレコードを出して欲しかったと思う。