報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道師の嘆き」

2016-01-29 22:53:02 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月24日01:00.天候:曇 魔界レッドスターシティ郊外山中・魔道研究所 マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、サンモンド・ゲートウェイズ、アリッサ・バラム・ハミルトン]

 サンモンドの快進撃により、本当に硫酸弾3発で大蛇(オロチ)は血反吐を吐きながら倒れた。
「よし。私の手に掛かれば、こんなものだ。しかし、材料とやらはどこに……?まあいい」
 サンモンドは部屋の外で待っている魔女2人を呼びに言った。
「キミ達、大蛇は倒したよ」
「さすがだな」
「マジか……」
「立てるか、アリッサ?」
「ああ、何とか……」
 アリッサはマリアに肩を貸してもらいながら立ち上がった。
「ところで、さっきから気になっていることがある」
 と、マリア。
「何だい?」
「ユウタの話では、船長は目が殆ど見えないと聞いている。確かに今も薄いサングラスを掛けているが、だいぶ見えてるように見える。どういうことだ?」
「その目が見えるようになる薬を、この研究所で手に入れたんだ。ただ、飲み続けなければいけないものらしいからね。いずれまた目が見えなくなってしまうそうだ。そんな時、この研究所で事故が起きたと聞いて、駆け付けてみたらこのザマだ」
「そうだったのか」
「それよりアリッサ君、材料とやらはどこだい?」
「あの棚の中にワクチンベースが入っているはず……。まずは、あれが無いと話にならない」
「了解」
 サンモンドは棚の中からワクチンベースを取り出した。

 と!

「!!!」
 壁が突然壊され、そこから大蛇が飛び出してきた。
 大蛇は一匹だけではなかったのだ!
 大蛇はサンモンドをかわして、魔女達に突っ込んでいった。
「マリアンナ!」
 アリッサは自分の肩を貸しているマリアンナを振り解くと、それを突き飛ばした。
「うわっ!」
 大蛇はアリッサに食らい付いた。
「アリッサ!!」
 マリアは魔法の杖を出した。
「ぱ、パペ、サタン、パペサタ……がっ!」
 あまりの展開に舌が回らない上、舌を噛んでしまった。
 そうしているうちに、大蛇はアリッサを丸飲みしてしまった。
「リロード終わった。行くぞ、蛇の化け物め!」
 実はその間、サンモンドは空になったグレネードガンに硫酸弾をリロードしていたのだった。
 サンモンドは確実に弾を大蛇に当て、大蛇は最後に頭部を吹き飛ばされ、血を噴き出して、仲間の死体の上に折り重なるようにして死んだ。
「あ、アリッ……サ……」
「大丈夫か、しっかりするんだ!」
「ぶっ……!」
 マリアは仲間の死に直面し、ついに胃の内容物を吐き散らした。
「ま……また……死ん……!」
 サンモンドは手持ちの大型ナイフで、アリッサを丸飲みした大蛇の体を掻っ捌いてみたが、既に消化された後だった。
「短時間で完全に消化させるとは、何て蛇だ!」
「ううう……アリッサ……どうして……」
「嘆くのは後にしなさい!このままグズグズしていたら、今度は稲生君の命が危ないぞ!」
「……ユウタが……!」
「ワクチンベースは手に入れた。どうやら、他にまだ必要な物があるらしい。急いでそれを探すんだ!」
 幸いワクチンベースの入ったキットの中に、ワクチンを作る為に必要な物が書かれていた。

[同日02:00.魔道研究所地下1階 サンモンド&マリア]

 見た目は何だか錬金術にでも使いそうな変な形の器械。
 しかしそれこそが、ワクチンの製造機であった。
 他に手に入れた培養液などと一緒に、その器械に入れる。
 その間もドアを突き破って、ゾンビだけでなく、皮を引ん剝いたゴリラのような化け物が襲い掛かったりしてきたが、サンモンドやマリアが迎撃したりしているうちに、そして誰もいなくなったようだ。
「早くしてくれ!このままだとユウタが……!」
「落ち着きなさい。今は器械に任せるしかない」
 だいたい10分ほど待たされて、ようやっと試作ワクチンが出来上がった。
「よし!これで……」
「数人分はあるな。よし、そこのまだ開けてない新品の注射器も何本か頂戴していこう」
「数人分?数回分ではないのか?」
「いや、回数は1回が御の字だろう。いかにワクチンとはいえ、元はゾンビウィルスであることに変わりはない。多用すると、逆に感染してしまう。そこはインフルエンザのワクチンと同じだよ」
 インフルエンザの予防接種だって、弱らせて毒性を抜いたインフルエンザウィルスの培養液を注射するものである。
 つまり、わざと症状が出ない程度に感染させて、抗体を作るのが目的なわけだ。
 ただ、元がウィルスなだけに、人によっては微熱などの弱い症状が出ることはある。
「では?」
「キミとアレクサンドラ、そして私も接種しておくんだ。あいにくとだが、私達も奴らの攻撃を受けてしまったからね。この時点で症状が出てないということは、ある程度の抗体は私達も最初から持っていたのだろう。とはいえ、ワクチンを打っておくことに越したことはない」
「……分かった」

[同日02:30.魔道研究所1階・医務室 マリア、サンモンド、稲生勇太、アレクサンドラ・エヴァノビッチ(サーシャ)]

「遅かったじゃないか」
 サーシャは手を腰にやって苛立ちをぶつけてきた。
「しょうがないだろう。私達だって、遊んでいたわけではない」
「とにかく、首尾はバッチリだ。これを早速、稲生君に注射しよう」
 稲生は痙攣などを起こすこともなく、昏睡状態に陥っていた。
 これがゾンビ化する直前の状態。
 次に目が覚めた時、稲生はゾンビ化する。
 サンモンドは稲生の右手にワクチンを注射した。
「この後で、私達もワクチンを打っておく必要がある」
「そ、そうかもしれないね……」
「サーシャ?」
「私も背中がとても痒いし、熱っぽい……」
 確かにサーシャの顔も赤かった。
 よくよく考えてみれば、サーシャの方が受けた傷は大きい。
 サーシャが1番感染の確率は高かったのだ。
 逆に、あまり攻撃を受けていなかった稲生が真っ先にゾンビ化するところであったのだが。
 やはりゾンビ化する速度は、個人差が激しいらしい。
「わああああああっ!!」
「稲生君!?」
「ユウタ!?」
 突然、稲生が絶叫を上げて飛び起きた。
「稲生君!落ち着きたまえ!サーシャ、稲生君を押さえるの手伝ってくれ!」
「あいよ。……って、コラ!暴れんなっつーに!!」
「マリアンナ君も手伝ってくれ!」
「あ、ああ!……いたっ!」
 稲生はとにかくひどい暴れようで、サンモンドもサングラスが飛ぶほどの顔面パンチを受けた。
「……てかさ、もうぶった切った方が早くね?」
 と、サーシャ。
「何だか私もそんな気がしてきたよ」
「ダメーッ!!」

 で、結局稲生はどうなったのかというと……。
「落ち着いたと思ったら、眠ってしまったか」
「本当に大丈夫なんだろうね?」
 稲生が落ち着いた後で、同じワクチンを打つ3人。
「さっきまでと違って、肌の色も元に戻っているし、顔色も良くなった。多分もう大丈夫だ」
「うう……稲生の気持ちが少し分かる。か、体が……け、け、け……」
 稲生の次に症状が進んでいたサーシャも、大きく体を震わせた。
 恐らく、体内のウィルスが必死の抵抗を行っているのだろう。

 とはいえ、まだ初期症状で済んでいたサーシャと、そもそもまだ症状が出ていないマリアやサンモンドはともかくとして、ゾンビ化直前まで症状の進んでいた稲生は実際にワクチンが間に合ったのだろうか。
 最悪は【お察しください】。

 主人公死亡で、この物語は強制終了だ。ヒャッハー!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする