[1月3日13:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
稲生勇太:「えっ、先生、本当に今日ご出立ですか?」
昼食を終えた稲生は、イリーナからそのような話を聞いた。
イリーナは急用があって、先に休暇を切り上げるらしい。
イリーナ:「アタシはね。あ、勇太君達はもっとゆっくりしてていいよー」
勇太:「いえ、そういうわけには……。予定通り、今日の夜行バスで帰ります」
イリーナ:「まあ、そこは勇太君に任せるけどね」
勇太:「駅までお送りしましょう」
イリーナ:「あー……うん。じゃあ、お願いしようかな」
マリア:「あ、あの、師匠……私は……」
イリーナ:「何かやることがあるんでしょ?それをやりなさい」
マリア:「はい!」
稲生宗一郎:「先生、私が車を出しますから、それにお乗りください」
イリーナ:「それは助かりますわ」
マリアを除く稲生家全員とイリーナが宗一郎の車に乗り込んだ。
通勤は役員車であるが、マイカーは別にちゃんとある。
勇太:「えっ、母さんも行くの?」
稲生佳子:「あら?言わなかった?夕方までパパと一緒に出掛けて来るって」
勇太:「あ、そうなんだ」
イリーナ:「御夫婦水入らずの予定だったんですか?でしたら、私は……」
宗一郎:「いえいえ、いいんですよ。あくまで、出掛けるついでですから。駅までのお送りで申し訳ありません。できれば、成田空港までお見送りに行きたかったんですが……」
イリーナ:「今度の飛行機は羽田空港から出るようですので、別に構いませんわ」
宗一郎:「おい、勇太。先生を羽田空港までお見送りしろ」
勇太:「ええっ!?」
イリーナ:「いいんですよ。勇太君は、これからマリアの修行に付き合わなければなりませんので」
勇太:「えっ、修行?」
勇太は首を傾げた。
車で家を出る稲生家と師匠を見送ったマリアは、早速近所のスーパーへと向かった。
マリア:(今日は勇太とその御両親に料理の腕を振るって、高く評価を受けるのダ)
[同日13:50.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅西口]
羽田空港行きのバスを待っていると、白と紺色の塗装が特徴の国際興業バスがやってきた。
イリーナは稲生が近くのコンビニで買って来た乗車券を手にしている。
稲生:「バスのチケットはこの通り確保しましたが、飛行機の方は大丈夫ですか?」
イリーナ:「もちろんよ。魔法で移動するのも大変だからね、使える交通手段は使うものよ」
稲生:「そういうもんですか……」
そして、バスが停留所の前に到着する。
イリーナ:「今日は温泉入れなかったわね」
稲生:「今度行きましょう。日本は全国各地に温泉がある国ですから」
イリーナ:「それもそうね」
ぶっちゃけ遠出をしなくても、屋敷から出て来れば白馬駅周辺で温泉に入れる。
イリーナ:「それじゃ、マリアの修行に付き合ってね」
稲生:「はい。マリアさんの修行って、料理を作ることですよね?」
イリーナ:「そしてそれは、あなたの修行でもあるわ」
この時、稲生はマリアの料理を手伝えということだと理解していた。
イリーナがバスに乗り込むと、白い帽子を被った運転手が降りて来て、トランクルームに乗客の大きな荷物を入れ始めた。
案内係も兼ねた警備員も一緒になって積み込んでいる。
このように、係員が別にいる場合は運転手の作業量も小さく済むのだが、さいたま新都心駅のように係員のいない所だと全部運転手が1人でやらないといけないので大変だ。
係員が複数いて、ハッチの開閉状態を確認するだけで良い空港ターミナル側とは雲泥の差である。
稲生:(国際線ターミナルは終点だから、寝ちゃっても起こしてもらえると思うけど……)
早速寝入る体勢を取っているのを車外から見ていた稲生はそう思った。
こうしてバスは、イリーナを乗せて出発して行った。
稲生:「どれ、じゃ、僕も家に帰るとするか」
[同日14:30.天候:晴 稲生家→上落合公園]
家に帰ると早速、夕食の準備に取り掛かっていたマリアが何やら悪戦苦闘していた。
よく見ると、魔道書……ではなく、料理本を見ながら作っている。
もっとも、その通りに作れば良いのだから、あまり苦労は無いかも。
因みにマリアは日本語の本を英訳する為、赤い縁が特徴の眼鏡を掛けている。
本にはフランス料理とあるので、上手くできればなかなか豪勢なものが出て来ると思われるが……。
稲生:「どうですか、マリアさん?僕も何か手伝いましょうか?」
マリア:「あー、いいからいいから。ここは全部私に任せて」
稲生:「で、でも……」
マリア:「いいから!あなたは外で散歩でもしてて!」
と、稲生はマリアに家から追い出されてしまった。
稲生:「先生を送りがてら、ちょっと散歩して来ちゃったのになぁ……」
しょうがないので稲生、近所の公園に行って時間を潰すことにした。
稲生:(それにしても、どんなものが出来上がるのかなぁ……?あの様子だと不慣れみたいだから、怖いような楽しみなような……)
稲生がベンチに座ってそんなことを考えていると……。
エレーナ:「よっス!」
リリアンヌ:「フヒヒ……。こんにちは……」
エレーナとリリアンヌがやってきた。
稲生:「おー、2人とも。ホウキで下りて来なかったの?」
エレーナ:「こんな所にホウキで下りて来たら、大騒ぎになっちゃうよ。人目に付かない所で下りて、そこから歩いて来た」
稲生:「なるほど……」
エレーナ:「それよりどうした?さっきからニヤニヤして。何かいいことあった?……あ、もしかして、ついにマリアンナとヤれたのか!?」
リリアンヌ:「フヒーッ!?」
エレーナ:「童貞卒業おめでとう!」
稲生:「違うよ!そんなんじゃないよ!」
エレーナ:「何だ、違うのか。マリアンナもマリアンナだよな〜。とっくのとうに非処女なんだから、いい加減に稲生氏の筆下ろしを……」
稲生:「何言ってんだ!違うんだって!マリアさん、料理を作ってるんだよ」
エレーナ:「は!?」
リリアンヌ:「!?」
エレーナ:「それ、誰が食うんだ!?」
稲生:「もちろん、僕達だよ。あ、先生は先に出発しちゃったから、僕と僕の両親だね」
エレーナ:「稲生氏、悪いこと言わないから即刻中止させろ」
稲生:「な、何で!?」
エレーナは恐るべしマリアの料理の腕前について語った。
それは一体、どういうものだったと思う?
1:普通の材料を使っていたのに何故か爆発した。
2:食べた者全員が死んだ。
3:料理ではなく魔法薬ができた。
4:無間地獄の如く、どんなものか想像できない。
稲生勇太:「えっ、先生、本当に今日ご出立ですか?」
昼食を終えた稲生は、イリーナからそのような話を聞いた。
イリーナは急用があって、先に休暇を切り上げるらしい。
イリーナ:「アタシはね。あ、勇太君達はもっとゆっくりしてていいよー」
勇太:「いえ、そういうわけには……。予定通り、今日の夜行バスで帰ります」
イリーナ:「まあ、そこは勇太君に任せるけどね」
勇太:「駅までお送りしましょう」
イリーナ:「あー……うん。じゃあ、お願いしようかな」
マリア:「あ、あの、師匠……私は……」
イリーナ:「何かやることがあるんでしょ?それをやりなさい」
マリア:「はい!」
稲生宗一郎:「先生、私が車を出しますから、それにお乗りください」
イリーナ:「それは助かりますわ」
マリアを除く稲生家全員とイリーナが宗一郎の車に乗り込んだ。
通勤は役員車であるが、マイカーは別にちゃんとある。
勇太:「えっ、母さんも行くの?」
稲生佳子:「あら?言わなかった?夕方までパパと一緒に出掛けて来るって」
勇太:「あ、そうなんだ」
イリーナ:「御夫婦水入らずの予定だったんですか?でしたら、私は……」
宗一郎:「いえいえ、いいんですよ。あくまで、出掛けるついでですから。駅までのお送りで申し訳ありません。できれば、成田空港までお見送りに行きたかったんですが……」
イリーナ:「今度の飛行機は羽田空港から出るようですので、別に構いませんわ」
宗一郎:「おい、勇太。先生を羽田空港までお見送りしろ」
勇太:「ええっ!?」
イリーナ:「いいんですよ。勇太君は、これからマリアの修行に付き合わなければなりませんので」
勇太:「えっ、修行?」
勇太は首を傾げた。
車で家を出る稲生家と師匠を見送ったマリアは、早速近所のスーパーへと向かった。
マリア:(今日は勇太とその御両親に料理の腕を振るって、高く評価を受けるのダ)
[同日13:50.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅西口]
羽田空港行きのバスを待っていると、白と紺色の塗装が特徴の国際興業バスがやってきた。
イリーナは稲生が近くのコンビニで買って来た乗車券を手にしている。
稲生:「バスのチケットはこの通り確保しましたが、飛行機の方は大丈夫ですか?」
イリーナ:「もちろんよ。魔法で移動するのも大変だからね、使える交通手段は使うものよ」
稲生:「そういうもんですか……」
そして、バスが停留所の前に到着する。
イリーナ:「今日は温泉入れなかったわね」
稲生:「今度行きましょう。日本は全国各地に温泉がある国ですから」
イリーナ:「それもそうね」
ぶっちゃけ遠出をしなくても、屋敷から出て来れば白馬駅周辺で温泉に入れる。
イリーナ:「それじゃ、マリアの修行に付き合ってね」
稲生:「はい。マリアさんの修行って、料理を作ることですよね?」
イリーナ:「そしてそれは、あなたの修行でもあるわ」
この時、稲生はマリアの料理を手伝えということだと理解していた。
イリーナがバスに乗り込むと、白い帽子を被った運転手が降りて来て、トランクルームに乗客の大きな荷物を入れ始めた。
案内係も兼ねた警備員も一緒になって積み込んでいる。
このように、係員が別にいる場合は運転手の作業量も小さく済むのだが、さいたま新都心駅のように係員のいない所だと全部運転手が1人でやらないといけないので大変だ。
係員が複数いて、ハッチの開閉状態を確認するだけで良い空港ターミナル側とは雲泥の差である。
稲生:(国際線ターミナルは終点だから、寝ちゃっても起こしてもらえると思うけど……)
早速寝入る体勢を取っているのを車外から見ていた稲生はそう思った。
こうしてバスは、イリーナを乗せて出発して行った。
稲生:「どれ、じゃ、僕も家に帰るとするか」
[同日14:30.天候:晴 稲生家→上落合公園]
家に帰ると早速、夕食の準備に取り掛かっていたマリアが何やら悪戦苦闘していた。
よく見ると、魔道書……ではなく、料理本を見ながら作っている。
もっとも、その通りに作れば良いのだから、あまり苦労は無いかも。
因みにマリアは日本語の本を英訳する為、赤い縁が特徴の眼鏡を掛けている。
本にはフランス料理とあるので、上手くできればなかなか豪勢なものが出て来ると思われるが……。
稲生:「どうですか、マリアさん?僕も何か手伝いましょうか?」
マリア:「あー、いいからいいから。ここは全部私に任せて」
稲生:「で、でも……」
マリア:「いいから!あなたは外で散歩でもしてて!」
と、稲生はマリアに家から追い出されてしまった。
稲生:「先生を送りがてら、ちょっと散歩して来ちゃったのになぁ……」
しょうがないので稲生、近所の公園に行って時間を潰すことにした。
稲生:(それにしても、どんなものが出来上がるのかなぁ……?あの様子だと不慣れみたいだから、怖いような楽しみなような……)
稲生がベンチに座ってそんなことを考えていると……。
エレーナ:「よっス!」
リリアンヌ:「フヒヒ……。こんにちは……」
エレーナとリリアンヌがやってきた。
稲生:「おー、2人とも。ホウキで下りて来なかったの?」
エレーナ:「こんな所にホウキで下りて来たら、大騒ぎになっちゃうよ。人目に付かない所で下りて、そこから歩いて来た」
稲生:「なるほど……」
エレーナ:「それよりどうした?さっきからニヤニヤして。何かいいことあった?……あ、もしかして、ついにマリアンナとヤれたのか!?」
リリアンヌ:「フヒーッ!?」
エレーナ:「童貞卒業おめでとう!」
稲生:「違うよ!そんなんじゃないよ!」
エレーナ:「何だ、違うのか。マリアンナもマリアンナだよな〜。とっくのとうに非処女なんだから、いい加減に稲生氏の筆下ろしを……」
稲生:「何言ってんだ!違うんだって!マリアさん、料理を作ってるんだよ」
エレーナ:「は!?」
リリアンヌ:「!?」
エレーナ:「それ、誰が食うんだ!?」
稲生:「もちろん、僕達だよ。あ、先生は先に出発しちゃったから、僕と僕の両親だね」
エレーナ:「稲生氏、悪いこと言わないから即刻中止させろ」
稲生:「な、何で!?」
エレーナは恐るべしマリアの料理の腕前について語った。
それは一体、どういうものだったと思う?
1:普通の材料を使っていたのに何故か爆発した。
2:食べた者全員が死んだ。
3:料理ではなく魔法薬ができた。
4:無間地獄の如く、どんなものか想像できない。