報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「1月10日」

2019-01-27 19:17:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月10日13:00.天候:晴 東京都千代田区丸の内 サピアタワー→JR東京駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は世界探偵協会日本支部の会合があって、サピアタワーまでやってきた。
 日本支部事務所は別の場所にあるが、大きな会合がある時は大きな会議場を借りる。
 だから、場所はその時によって違う。

 愛原:「終わった終わった。昼飯食ってから帰るか」
 高橋:「それにしても先生、こんなデカいビルの会議場借りるなんて、協会は金あるんですね」
 愛原:「そう思うか?ま、その金の出所は俺達協会員の賛助金なんだがな」

 私達はタワーの外に出た。
 超高層ビルが建ち並ぶ場所なだけに、強力なビル風が私達を包み込んだ。

 愛原:「うー、寒い寒い。早く駅の中に入ろうぜ」
 高橋:「はい!」

 私達は寒風から逃げるように、東京駅日本橋口から駅の中に入った。
 さすが駅の中は暖かい。

 高橋:「どこで昼飯にします?」
 愛原:「そうだなぁ……。あ、マックでいいや」

 高橋はズッコケるような感じになった。

 高橋:「先生、マックは駅の反対側ですよ。もっと近場にしましょうよ」
 愛原:「つっても、どこにするんだ?俺はあんまり東京駅は来たことないからなぁ……」
 高橋:「地下街に行けば何かありますよ。行ってみましょう」
 愛原:「あ、ああ」

 私達は地下街に下りた。

 愛原:「ラーメンでいいよ、ラーメンで」
 高橋:「じゃあ、こっちです」
 愛原:「オマエ、詳しいな」

 まさか高橋、私がここに来ることを既に想定して下調べしていたんじゃあるまいな?
 時間帯的にはお昼時のピークを過ぎてはいたが、それでも少し並んでから店内に入ることができた。

 高橋:「そういえば先生、リサのことなんですけど……」
 愛原:「リサがどうした?」
 高橋:「ほら、あいつのダチが言っていたという旅行の話……」
 愛原:「ああ、確か温泉がどうとか……」
 高橋:「そうなんですよ。あれ、いつどこへ行くんですかね?」
 愛原:「そういえばまだ詳しい話を聞いてなかったなぁ。まあ、慰安旅行も兼ねて一緒に行ってもいいんだが……」
 高橋:「おおっ!」
 愛原:「だけどぶっちゃけ、斉藤社長の家族旅行にくっついて行くようなものだろ?何か気まずいなぁ……」
 高橋:「もしも電車で行くなら、離れた席に座ればいいんですよ」
 愛原:「いや、そういう問題じゃないだろう」

 運ばれて来たラーメンに箸を付ける。

 高橋:「先生、コショー……」
 愛原:「俺は要らんよ。……あ、オマエが使うのか?ほら」
 高橋:「いえ、違いますよ。俺の時計、故障したっぽいです」
 愛原:「紛らわしいな、おい!……電池切れか?後で時計屋に持って行けよ」
 高橋:「そうします」

[同日14:15.天候:晴 JR東京駅丸ノ内北口バスプール→都営バス20系統車内]

 昼食のラーメンを食べた私達はその足でバスプールに向かい、バスに乗った。

 愛原:「あとはこのまま帰るだけだな」
 高橋:「そうですね。アネゴにこれから帰るってLineしておきましょうか?」
 愛原:「ああ、頼む」

 高橋がスマホを操作していると、発車の時刻になった。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは定刻に発車したようだ。

〔毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは東京都現代美術館前経由、錦糸町駅前行きでございます。次は呉服橋、呉服橋。……〕

 高橋:「先生」
 愛原:「何だ?」
 高橋:「温泉旅行の件なんですけど、どうやら今度の3連休はムリぽのようです」
 愛原:「斉藤社長にも予定があるんだろ。ってか、どうして高野君がそんなこと知ってるんだ?」
 高橋:「リサが帰って来てるようですね。……あ、また来た。……えー、何でも、『斉藤絵恋さんが中間テストで赤点を取ったので、3連休は補習と追試で【お察しください】』?」
 愛原:「リサは赤点取らなかったのかな?」
 高橋:「せっかくの3連休を……!」
 愛原:「長期休暇の宿題が少ない代わりに、終了直後に試験を行うことによって、遊び過ぎを防止する策か。考えたな」

 私が感心していると……。

 高橋:「先生、笑い事じゃないですよ。俺、楽しみにしてるんですから」
 愛原:「そんなに行きたいのかい?」
 高橋:「もちろんですよ!」
 愛原:「ふーん……」

 まあ、荒れた10代を過ごした高橋だから、家族で温泉旅行なんて機会も無かったのだろう。
 私の場合は……まあ、いいじゃないか。
 で、結局いつ行くことになるのか。
 それはそれで気になるなー。

[同日15:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

〔5階です。ドアが開きます〕

 事務所のビルに無事帰り着く私達。
 エレベーターを降りて、数歩左斜めに歩くとすぐに事務所の入口だ。

 愛原:「ただいまァ」
 高野:「先生、お疲れ様です」
 リサ:「お帰り、愛原さん」
 愛原:「おう」
 高野:「ちゃんと先生のサポートは上手くできた?」
 高橋:「当たり前だ。ナメんじゃねぇ」
 高野:「今、お茶お入れしますね」
 愛原:「ありがとう」

 私はコートを脱いで、自分の席に座った。

 愛原:「リサ、何か旅行が延期になったっぽいなー?」
 リサ:「大丈夫。元々想定内だったから」
 愛原:「想定内?」
 リサ:「どうせサイトー、追試と補習は込みで計画してたみたい。だから、次の土日だって」
 高橋:「ただの負け惜しみにしか聞こえねーなー」
 愛原:「こらこら。俺達は連れて行ってもらう側なんだぞ?」
 リサ:「ところがその土日は、サイトーのお父さんとお母さんが行けない」
 愛原:「ん?じゃあ、また次の週か?いっそのこと、2月の方が閑散期で料金も安いんじゃないのか?」
 高野:「今月下旬も変わりませんよ」

 肝心の言い出しっぺ本人が決めてくれないと、私達もこれ以上何もできない。
 幸か不幸か、今のところ来週の土日は全く仕事は入っていないが……。
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“私立探偵 愛原学” 「探偵の初月」

2019-01-27 11:20:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月7日13:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を経営している。
 今日は仕事も緩やかなものであり、いつものように泊まり掛けの身辺調査とか何日も必要な浮気調査などの依頼は無かった。
 ここしばらくは、またヒマな日々がやってくるのかな。
 そう言えばリサの冬休み期間中は、特にどこにも連れて行ってやれなくて可哀想だった。
 年末に、高橋君とコミケに行ったくらいかな。

 愛原:「うーむ……」
 高橋正義:「どうしました、先生?今日の昼飯、どこかマズかったですか?」
 愛原:「あ、いや。高橋君は料理が上手くて最高だよ。そうじゃない。別の考え事さ」
 高橋:「何か悩み事ですか?俺で良かったら話聞きますよ?」
 愛原:「違う。いいからお前は、食器の片付けでもしてろ」
 高橋:「はあ……」

 高橋が給湯室に行くと、斜向かいの机に座る高野君が話し掛けて来た。
 彼女は事務所の経理などを担当しており、今は直接探偵の仕事をすることはない。
 だが、私は知っている。
 霧生市での活躍からして、彼女は政府エージェント並みの働きぶりを発揮することを。

 高野芽衣子:「マサじゃないけど、悩み事ですか?」
 愛原:「いや、そんな大した話じゃないんだ。リサの冬休み期間中、どこにも連れて行ってやれなかっただろ?」
 高野:「ちょうど仕事が集中しましたからねぇ。身辺調査に浮気調査……」
 愛原:「せいぜい年末、高橋がコミケに連れて行ったくらいだ」
 高野:「あれは遊びに行くというより、ゲームを売りに行くという『仕事』みたいなものですからねぇ……」
 愛原:「そうなんだ。高野君も行けば良かったのに」
 高野:「ええ?」
 愛原:「ボーカロイドのMEIKOまたは“バイオハザードシリーズ”のエイダ・ウォンのコスプレでもしてさ……。俺的には後者キボン」
 高野:「何言ってるんですか。私は興味ないです」
 高橋:「先生!俺は!?俺は何のコスプレしたらいいですか!?」
 愛原:「サークル参加者側がコスプレすんな!……あ、いや、いいのか、コスプレして。“バイオハザード6”のジェイク・ミュラー(ウェスカー)じゃねーの」
 高野:「いや、どちらかというとピアーズ・二ヴァンスじゃない?」
 愛原:「見た目はジェイク、中身はピアーズってところか」
 高橋:「はあ……」

 私はどのキャラにも似てないから、私はコスプレは無理だな。

 高橋:「先生、食後のお茶入れます」
 愛原:「ああ、悪いな」
 高野:「私、アメリカンコーヒー」
 高橋:「アネゴは自分で入れろよ」
 高野:「何でだよ!」

 と、そこへ電話が掛かって来た。

 高野:「お電話ありがとうございます。愛原学探偵事務所でございます」
 ボス:「私だ」
 高野:「あ、ボス。明けまして、おめでとうございます」
 ボス:「……私は今年初めて電話したのか?」
 高野:「そうですよ」
 ボス:「……そうか。まあ、今年もよろしく頼むよ」
 高野:「こちらこそよろしくお願い致します」
 ボス:「愛原君に話がある。替わってくれるか?」
 高野:「少々お待ちください」

(ここから一瞬だけ三人称になります)

 高野は保留ボタンを押して、受話器を置いた。
 保留音は何故か“バイオハザードリベレーションズ”のメインテーマ。

 高野:「先生、ボスからお電話ですよぉ!」

 高野が大きな声を上げたのは、愛原がトイレに行ってたからだ。
 直後、ザザザーと水の流れる音。

 愛原:「マジかよ!タイミング悪ィな!」

 急いでトイレから出て来た愛原、自分の机の受話器を取った。

 愛原:「あ、もしもし。お待たせしました。愛原です」
 ボス:「何でキミの事務所の電話の保留音は、毎日コロコロ変わるのかね?」
 愛原:「え?何ですか?」
 ボス:「何でもない。世界探偵協会日本支部の会合のお知らせをメールで送ったから確認しておいてくれ」
 愛原:「分かりました」
 ボス:「それと、明けましておめでとう」
 愛原:「ああ、どうも。おめでとうございます」
 ボス:「年賀状、今日届いたぞ」
 愛原:「おー!良かった!抽選日に間に合って!」
 ボス:「そういう問題じゃない!」
 愛原:「ていうかボス」
 ボス:「何かね?」
 愛原:「私、まだボスの名前から年齢やら姿形まで全く知らないんですよ」
 ボス:「だからどうした?」
 愛原:「年賀状の送り先が世界探偵協会日本支部の事務所宛てだけで、よくボスに届いたものですね」
 ボス:「協会をナメるな。それだけでちゃんと私の所に届くようになっている」
 愛原:「なるほど……」
 ボス:「とにかく、ちゃんと読んで出席するように。分かったね?」
 愛原:「分かりました。それじゃ、失礼します」

(再び愛原の一人称です)

 私は電話を切った。

 高野:「先生。きっと協会には、担当ボスがいるんですよ。で、この事務所からの年賀状が届いた時点で、担当ボスの所に転送されるシステムなのでは?」
 愛原:「なるほど。随分非効率的なことをするもんだな。仕分けする方は大変だ」
 高野:「ですね」

 と、そこへ事務所のドアが開いた。

 リサ:「ただいま」
 愛原:「おー、リサ。お帰り。高橋君、リサにもジュース入れてやってくれ」
 高橋:「分かりました。激辛ハバネロジュースでいいですね」
 愛原:「こら!オレンジジュースだ!」
 リサ:「ねぇ、愛原さん」

 リサは鞄を空いている椅子に置いて話し掛けて来た。

 愛原:「何だい?」
 リサ:「サイトーがね、温泉に連れて行ってくれるんだって」
 愛原:「おー、そりゃ良かったな。やっぱり、持つべきものは友達だ。特に、中学校辺りからの付き合いは一生モノだからな、大事に……」
 リサ:「愛原さん達も来ないかって」
 愛原:「俺達も?」
 リサ:「サイトーが、私や愛原さん達を招待してくれるって」
 愛原:「おいおい。それって結局は斉藤社長が招待してくれるってことじゃないか。それは悪いよ」
 リサ:「大丈夫。何も心配無いって言ってた」
 愛原:「いや、でもねぇ……。リサだけ行って来いよ。こっちは仕事があるし……」
 高野:「しばらくまた仕事は無いみたいですけどね」
 愛原:「いや、にしてもだよ!?」
 リサ:「サイトーも行きたいって言ってた。サイトー、いつも海外旅行ばっかりだから」
 愛原:「さすが、セレブですなぁ……」
 リサ:「たまには近場に行きたいって」
 愛原:「どうせ週末かそこらだろ?冬休みも終わって受験シーズンになると、ビジネスホテルは満室になりやすいが、温泉旅館とかは閑散期になるか」
 高橋:「いえ、先生。ここは1つ、こいつの話に乗ってやりませんか?」

 何と!高橋君が意外なことを言い出した!

 リサ:「お兄ちゃん……」
 高橋:「リサ、それってつまりアレだろ?泊まり掛けってことだろ?」
 リサ:「うん」
 高橋:「俺も学生の頃は、ロクな旅行をしませんでした。こういう多感な時期に、非日常を体験することはとても大切です」
 高野:「あんたは盗んだバイクで走り回ったり、夜の校舎の窓ガラスを割りまくった中学校生活だったんじゃないの?」
 高橋:「アネゴ、うるせぇ!」
 愛原:「うーん……まあ、まずは話を聞いてみるか」

 高橋君が何故この時ばかりはリサの申し出に真っ先に乗ったのか分からなかった。

 高橋:(先生と……は、裸の付き合い……(;゚∀゚)=3ハァハァ)

 斉藤絵恋:(り、リサさんと……は、裸の付き合い(;゚∀゚)=3ハァハァ)

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