[1月10日13:00.天候:晴 東京都千代田区丸の内 サピアタワー→JR東京駅]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は世界探偵協会日本支部の会合があって、サピアタワーまでやってきた。
日本支部事務所は別の場所にあるが、大きな会合がある時は大きな会議場を借りる。
だから、場所はその時によって違う。
愛原:「終わった終わった。昼飯食ってから帰るか」
高橋:「それにしても先生、こんなデカいビルの会議場借りるなんて、協会は金あるんですね」
愛原:「そう思うか?ま、その金の出所は俺達協会員の賛助金なんだがな」
私達はタワーの外に出た。
超高層ビルが建ち並ぶ場所なだけに、強力なビル風が私達を包み込んだ。
愛原:「うー、寒い寒い。早く駅の中に入ろうぜ」
高橋:「はい!」
私達は寒風から逃げるように、東京駅日本橋口から駅の中に入った。
さすが駅の中は暖かい。
高橋:「どこで昼飯にします?」
愛原:「そうだなぁ……。あ、マックでいいや」
高橋はズッコケるような感じになった。
高橋:「先生、マックは駅の反対側ですよ。もっと近場にしましょうよ」
愛原:「つっても、どこにするんだ?俺はあんまり東京駅は来たことないからなぁ……」
高橋:「地下街に行けば何かありますよ。行ってみましょう」
愛原:「あ、ああ」
私達は地下街に下りた。
愛原:「ラーメンでいいよ、ラーメンで」
高橋:「じゃあ、こっちです」
愛原:「オマエ、詳しいな」
まさか高橋、私がここに来ることを既に想定して下調べしていたんじゃあるまいな?
時間帯的にはお昼時のピークを過ぎてはいたが、それでも少し並んでから店内に入ることができた。
高橋:「そういえば先生、リサのことなんですけど……」
愛原:「リサがどうした?」
高橋:「ほら、あいつのダチが言っていたという旅行の話……」
愛原:「ああ、確か温泉がどうとか……」
高橋:「そうなんですよ。あれ、いつどこへ行くんですかね?」
愛原:「そういえばまだ詳しい話を聞いてなかったなぁ。まあ、慰安旅行も兼ねて一緒に行ってもいいんだが……」
高橋:「おおっ!」
愛原:「だけどぶっちゃけ、斉藤社長の家族旅行にくっついて行くようなものだろ?何か気まずいなぁ……」
高橋:「もしも電車で行くなら、離れた席に座ればいいんですよ」
愛原:「いや、そういう問題じゃないだろう」
運ばれて来たラーメンに箸を付ける。
高橋:「先生、コショー……」
愛原:「俺は要らんよ。……あ、オマエが使うのか?ほら」
高橋:「いえ、違いますよ。俺の時計、故障したっぽいです」
愛原:「紛らわしいな、おい!……電池切れか?後で時計屋に持って行けよ」
高橋:「そうします」
[同日14:15.天候:晴 JR東京駅丸ノ内北口バスプール→都営バス20系統車内]
昼食のラーメンを食べた私達はその足でバスプールに向かい、バスに乗った。
愛原:「あとはこのまま帰るだけだな」
高橋:「そうですね。アネゴにこれから帰るってLineしておきましょうか?」
愛原:「ああ、頼む」
高橋がスマホを操作していると、発車の時刻になった。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスは定刻に発車したようだ。
〔毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは東京都現代美術館前経由、錦糸町駅前行きでございます。次は呉服橋、呉服橋。……〕
高橋:「先生」
愛原:「何だ?」
高橋:「温泉旅行の件なんですけど、どうやら今度の3連休はムリぽのようです」
愛原:「斉藤社長にも予定があるんだろ。ってか、どうして高野君がそんなこと知ってるんだ?」
高橋:「リサが帰って来てるようですね。……あ、また来た。……えー、何でも、『斉藤絵恋さんが中間テストで赤点を取ったので、3連休は補習と追試で【お察しください】』?」
愛原:「リサは赤点取らなかったのかな?」
高橋:「せっかくの3連休を……!」
愛原:「長期休暇の宿題が少ない代わりに、終了直後に試験を行うことによって、遊び過ぎを防止する策か。考えたな」
私が感心していると……。
高橋:「先生、笑い事じゃないですよ。俺、楽しみにしてるんですから」
愛原:「そんなに行きたいのかい?」
高橋:「もちろんですよ!」
愛原:「ふーん……」
まあ、荒れた10代を過ごした高橋だから、家族で温泉旅行なんて機会も無かったのだろう。
私の場合は……まあ、いいじゃないか。
で、結局いつ行くことになるのか。
それはそれで気になるなー。
[同日15:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
〔5階です。ドアが開きます〕
事務所のビルに無事帰り着く私達。
エレベーターを降りて、数歩左斜めに歩くとすぐに事務所の入口だ。
愛原:「ただいまァ」
高野:「先生、お疲れ様です」
リサ:「お帰り、愛原さん」
愛原:「おう」
高野:「ちゃんと先生のサポートは上手くできた?」
高橋:「当たり前だ。ナメんじゃねぇ」
高野:「今、お茶お入れしますね」
愛原:「ありがとう」
私はコートを脱いで、自分の席に座った。
愛原:「リサ、何か旅行が延期になったっぽいなー?」
リサ:「大丈夫。元々想定内だったから」
愛原:「想定内?」
リサ:「どうせサイトー、追試と補習は込みで計画してたみたい。だから、次の土日だって」
高橋:「ただの負け惜しみにしか聞こえねーなー」
愛原:「こらこら。俺達は連れて行ってもらう側なんだぞ?」
リサ:「ところがその土日は、サイトーのお父さんとお母さんが行けない」
愛原:「ん?じゃあ、また次の週か?いっそのこと、2月の方が閑散期で料金も安いんじゃないのか?」
高野:「今月下旬も変わりませんよ」
肝心の言い出しっぺ本人が決めてくれないと、私達もこれ以上何もできない。
幸か不幸か、今のところ来週の土日は全く仕事は入っていないが……。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は世界探偵協会日本支部の会合があって、サピアタワーまでやってきた。
日本支部事務所は別の場所にあるが、大きな会合がある時は大きな会議場を借りる。
だから、場所はその時によって違う。
愛原:「終わった終わった。昼飯食ってから帰るか」
高橋:「それにしても先生、こんなデカいビルの会議場借りるなんて、協会は金あるんですね」
愛原:「そう思うか?ま、その金の出所は俺達協会員の賛助金なんだがな」
私達はタワーの外に出た。
超高層ビルが建ち並ぶ場所なだけに、強力なビル風が私達を包み込んだ。
愛原:「うー、寒い寒い。早く駅の中に入ろうぜ」
高橋:「はい!」
私達は寒風から逃げるように、東京駅日本橋口から駅の中に入った。
さすが駅の中は暖かい。
高橋:「どこで昼飯にします?」
愛原:「そうだなぁ……。あ、マックでいいや」
高橋はズッコケるような感じになった。
高橋:「先生、マックは駅の反対側ですよ。もっと近場にしましょうよ」
愛原:「つっても、どこにするんだ?俺はあんまり東京駅は来たことないからなぁ……」
高橋:「地下街に行けば何かありますよ。行ってみましょう」
愛原:「あ、ああ」
私達は地下街に下りた。
愛原:「ラーメンでいいよ、ラーメンで」
高橋:「じゃあ、こっちです」
愛原:「オマエ、詳しいな」
まさか高橋、私がここに来ることを既に想定して下調べしていたんじゃあるまいな?
時間帯的にはお昼時のピークを過ぎてはいたが、それでも少し並んでから店内に入ることができた。
高橋:「そういえば先生、リサのことなんですけど……」
愛原:「リサがどうした?」
高橋:「ほら、あいつのダチが言っていたという旅行の話……」
愛原:「ああ、確か温泉がどうとか……」
高橋:「そうなんですよ。あれ、いつどこへ行くんですかね?」
愛原:「そういえばまだ詳しい話を聞いてなかったなぁ。まあ、慰安旅行も兼ねて一緒に行ってもいいんだが……」
高橋:「おおっ!」
愛原:「だけどぶっちゃけ、斉藤社長の家族旅行にくっついて行くようなものだろ?何か気まずいなぁ……」
高橋:「もしも電車で行くなら、離れた席に座ればいいんですよ」
愛原:「いや、そういう問題じゃないだろう」
運ばれて来たラーメンに箸を付ける。
高橋:「先生、コショー……」
愛原:「俺は要らんよ。……あ、オマエが使うのか?ほら」
高橋:「いえ、違いますよ。俺の時計、故障したっぽいです」
愛原:「紛らわしいな、おい!……電池切れか?後で時計屋に持って行けよ」
高橋:「そうします」
[同日14:15.天候:晴 JR東京駅丸ノ内北口バスプール→都営バス20系統車内]
昼食のラーメンを食べた私達はその足でバスプールに向かい、バスに乗った。
愛原:「あとはこのまま帰るだけだな」
高橋:「そうですね。アネゴにこれから帰るってLineしておきましょうか?」
愛原:「ああ、頼む」
高橋がスマホを操作していると、発車の時刻になった。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスは定刻に発車したようだ。
〔毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは東京都現代美術館前経由、錦糸町駅前行きでございます。次は呉服橋、呉服橋。……〕
高橋:「先生」
愛原:「何だ?」
高橋:「温泉旅行の件なんですけど、どうやら今度の3連休はムリぽのようです」
愛原:「斉藤社長にも予定があるんだろ。ってか、どうして高野君がそんなこと知ってるんだ?」
高橋:「リサが帰って来てるようですね。……あ、また来た。……えー、何でも、『斉藤絵恋さんが中間テストで赤点を取ったので、3連休は補習と追試で【お察しください】』?」
愛原:「リサは赤点取らなかったのかな?」
高橋:「せっかくの3連休を……!」
愛原:「長期休暇の宿題が少ない代わりに、終了直後に試験を行うことによって、遊び過ぎを防止する策か。考えたな」
私が感心していると……。
高橋:「先生、笑い事じゃないですよ。俺、楽しみにしてるんですから」
愛原:「そんなに行きたいのかい?」
高橋:「もちろんですよ!」
愛原:「ふーん……」
まあ、荒れた10代を過ごした高橋だから、家族で温泉旅行なんて機会も無かったのだろう。
私の場合は……まあ、いいじゃないか。
で、結局いつ行くことになるのか。
それはそれで気になるなー。
[同日15:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
〔5階です。ドアが開きます〕
事務所のビルに無事帰り着く私達。
エレベーターを降りて、数歩左斜めに歩くとすぐに事務所の入口だ。
愛原:「ただいまァ」
高野:「先生、お疲れ様です」
リサ:「お帰り、愛原さん」
愛原:「おう」
高野:「ちゃんと先生のサポートは上手くできた?」
高橋:「当たり前だ。ナメんじゃねぇ」
高野:「今、お茶お入れしますね」
愛原:「ありがとう」
私はコートを脱いで、自分の席に座った。
愛原:「リサ、何か旅行が延期になったっぽいなー?」
リサ:「大丈夫。元々想定内だったから」
愛原:「想定内?」
リサ:「どうせサイトー、追試と補習は込みで計画してたみたい。だから、次の土日だって」
高橋:「ただの負け惜しみにしか聞こえねーなー」
愛原:「こらこら。俺達は連れて行ってもらう側なんだぞ?」
リサ:「ところがその土日は、サイトーのお父さんとお母さんが行けない」
愛原:「ん?じゃあ、また次の週か?いっそのこと、2月の方が閑散期で料金も安いんじゃないのか?」
高野:「今月下旬も変わりませんよ」
肝心の言い出しっぺ本人が決めてくれないと、私達もこれ以上何もできない。
幸か不幸か、今のところ来週の土日は全く仕事は入っていないが……。