報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「三学期の始まり」

2019-01-26 20:08:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月7日08:00.天候:晴 東京都墨田区内某所 東京中央学園墨田中学校]

 冬休みが終わった最初の日、リサ・トレヴァー(人間名:愛原リサ)は1人で登校した。
 昇降口で靴から上履きに履き替えていると……。

 斉藤絵恋:「リサさん、おはよう」
 愛原リサ:「サイトー、おはよう。……!」

 その時、リサは斉藤の荷物がやたら大きいことに気づいた。

 リサ:「サイトー、何それ?」
 斉藤:「あら?冬休みの宿題よ?リサさん、まさか忘れてきちゃった?」
 リサ:「い、いや……ちゃんとやって来た……はず」

 リサは慌てて周りを見渡した。
 幸いなことに大きな荷物を持っているのは斉藤だけであった。

 リサ:「サイトーだけどうして荷物が大きいの?」
 斉藤:「ふふーん♪教室に着いたら教えてあげる」
 リサ:「???」

 具体的に言えば、斉藤だけ海外旅行に行くかのような大きなキャリーケースを持っていたのだった。

 リサ:(サイトーの家、お金持ちだから、海外旅行に行ってそのまま学校へ来た?)

 しかしその割にはちゃんと制服を着ている。
 まさか制服を着たまま海外旅行に行ったわけでもあるまい。
 リサは答えが分からぬまま斉藤と一緒に教室へ向かった。

 女子生徒A:「愛原さん、明けましておめでとう」
 女子生徒B:「今年もよろしくー」
 リサ:「明けましておめでとう。今年もよろしく」

 リサ、不思議そうな顔をして2人のクラスメートに返した。

 斉藤:「ちょっと!リサさんは外国に住んでいたんだから、そんな挨拶不自然よ!」

 もちろん、リサの海外在住経験は単なる建前である。

 リサ:「大丈夫。初詣に行った時、そういう挨拶をサイトーとしたから」
 女子生徒A:「なーんだ!やっぱりしたんじゃん!」
 女子生徒B:「ホント斉藤さんは素直じゃないよねー」
 斉藤:「う、うるっさいわね!お黙んなさい!」
 リサ:「それより、その大きな荷物は何?海外旅行の帰り?」
 斉藤:「もちろん、そのお土産よ!さぁ皆!この斉藤絵恋様が直々にハワイ旅行のお土産を皆に配るわよー!?並んで並んでー!」

 先に並ぶのは男子生徒達であった。

 男子生徒A:「斉藤のヤツ、お土産をクラス全員に配る所だけは憎めないよなー?」
 男子生徒B:「それすら無かったら最悪じゃね?」
 男子生徒C:「んだんだ」

 だが、斉藤が配っているのはどう見てもマカデミアナッツである。
 それだけでキャリーケースに入れるほどのものなのだろうか。

 リサ:(一体、他に何が入っている?)

 リサが覗き込もうとすると、先に別の男子生徒が覗き込んだ。

 男子生徒D:「あーっ!おい、斉藤!何だよ、これ!?」

 男子生徒がバッグの中から取り出したのは、リサの写真パネルであった。

 斉藤:「ちょっと!返しなさいよ!厭らしいわね!それはこれから提出する冬休みの宿題なんだから!」
 リサ:「冬休みの宿題?」
 斉藤:「冬休みの自由研究よ!」
 女子生徒C:「冬休みの自由研究であんなもの作って……。愛原さん、許可したの?」
 リサ:「ううん。してない」
 女子生徒C:「……だと思った。いい肖像権の侵害だね」
 リサ:「ショーゾーケンノシンガイ?」
 女子生徒C:「本人の許可無くその人の姿を写真で撮ったり、絵に描いて公開すること」
 リサ:「この小説の写真みたいに?」
 女子生徒C:「まあ、そんなところだね」

 著作権フリーのウィキペディアの写真以外、ちゃんと承諾を取って掲載しています!
 あとは作者自身が撮影した写真も使用している為、問題ありません。

 斉藤:「でやぁーっ!」

 斉藤の空手技が男子生徒Dに炸裂する。
 斉藤はこれでも小学校の時から空手を習っているが、この中学校には空手部が無い為、専ら帰宅部である。
 東京中央学園では入りたい部活が無く、且つ他に習い事をしている場合には帰宅部が認められる。
 斉藤の場合は今でも空手道場に通っている為、この例外が認められていた。
 斉藤が埼玉の実家から出て来て、墨田区のマンションにメイドと2人暮らしをしている理由の1つに、空手道場に通う関係もあった。
 何でも、その道場の師範と斉藤の父親の秀樹は友人同士なのであるとか。
 大富豪の御嬢様とはいえ、いざという時は自分の身は自分で守る必要があるという秀樹の教育方針によるものだ。

 男子生徒D:「ひでぶっ!」
 斉藤:「返してもらうわよ!」
 男子生徒A:「なあ、斉藤!今度は瓦割ってくれよ?」
 男子生徒B:「10枚くらい割れんだろ?」
 佐藤:「はあ?あんた達に見せる技は無いわよ」
 リサ:「ていうか……これが自由研究?」

 リサは呆れて自分の着物姿のパネルを手に持った。
 恐らくこれは初詣の時に撮影したものだろう。
 何故かプロのカメラマンが同行しており、よく写真を撮られた記憶がある。
 どうしてこんなことするのかと思っていたが……。

 リサ:「わざわざ冬休みの宿題の為だけに……」
 斉藤:「当たり前よー!どお?綺麗に撮れてるでしょー?」
 リサ:「う、うん。違った意味でサイトーが怖い……」

[同日12:30.天候:晴 東京都墨田区内某所]

 今日は始業式だけであったので、リサ達は昼に下校することができた。
 本格的な授業は明日からであるが、そもそも冬休み終了直後にいきなりテストがあるのだった。
 冬休みの宿題は書初めと自由研究しか無いのだが、それにかまけて勉強をサボると大変なことになるというシステムである。
 塾通いなどをしている者は心配無いだろうが、そうでないこの2人は……。

 斉藤:「ねえねえ、リサさん。リサさんは冬休み、どこか旅行行った?」
 リサ:「行ってない。先生……オジさん達、仕事が忙しくて……」

 あくまでもリサは斉藤ら一般人の前では帰国子女で、今現在は親戚である愛原に引き取られているという設定になっている。
 富裕層が多く通う東京中央学園ならではだ。

 斉藤:「あら、そう。残念ねぇ……」
 リサ:「いい。今度、連れて行ってもらう」
 斉藤:「ねぇ、だったらさ、私達と一緒に行かない?」
 リサ:「サイトーと一緒?」
 斉藤:「うんうん!」
 リサ:「どこ行くの?オジさん達、きっとパスポート持って無いし、忙しいからそんなに休み取れない」
 斉藤:「もちろん、国内よ。一泊二日くらいなら大丈夫でしょう?温泉とかどう?」
 リサ:「温泉……楽しい?」
 斉藤:「楽しいわ!り、リサさんと……は、裸の付き合い……!」
 リサ:「何だかよく分からないけど、オジさん達に聞いてみる」
 斉藤:「お願いね!テストと追試と補習が終わった後の土日がいいわね!」
 リサ:「うん、分かった。(サイトー、追試と補習受ける前提……)」

 斉藤絵恋、空手の腕っぷしには自信があるものの、学校の成績は今1つのようである。
コメント
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