報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道師の年末」 2

2019-01-03 20:00:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月29日19:16.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

 稲生達を乗せた埼京線快速電車が与野本町駅を発車した。
 この駅はさいたま市中央区役所の最寄り駅であり、それで快速停車駅に指定されている。
 ……のだが、実際に乗降客数が多いのは隣駅の南与野であるという。
 こちらは各駅停車しか停車しない上、副線上にホームがある(本線は優等列車の通過線)。
 尚、平日限定の通勤快速は中央区内の駅には一切停車しない。
 埼京線でも屈指の小さな駅とされる北与野駅を軽やかに通過する。
 確かに静かな駅ではあるが、そこまで寂しい所でもないというのが作者の主観。
 右手にはさいたまスーパーアリーナが見えてくる。

 マリア:「凄い人……」
 稲生:「年末に何かイベントがあるんですよ。まあ、そういう施設ですから」
 マリア:「私はあまり人の多い所は好きじゃない」
 稲生:「分かります」

 この2人が未だに遊園地デートをしないのはその理由。
 それでも新宿駅や大宮駅構内を移動しているのだから、まんざらではないと思うのだが。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく大宮、大宮です。地下ホームの21番線に到着致します。お出口は、左側に変わります。大宮から新幹線、高崎線、宇都宮線、京浜東北線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。埼京線内快速運転をして参りましたが、大宮から先の川越線内は各駅に停車致します」〕

 りんかい線の車両には自動放送が無い為、最初から車掌が肉声で放送する。

 稲生:「そろそろ先生を起こした方がいいですね」
 マリア:「うん。師匠、そろそろ起きてください」
 イリーナ:「……んにゃ?……おお、もうウラジーミルスカヤ?」
 マリア:「Huh?」
 稲生:「サンクトペテルブルグの地下鉄じゃありません!」

 奇しくも地下に潜っていく電車。

 イリーナ:「ゴメンゴメン。日本の鉄道だったね」
 マリア:「そうですよ」
 稲生:「ちょっと乗ってみたい気がしますけどね」
 イリーナ:「しばらくの間は、やめた方がいいよ」
 稲生:「どうしてですか?」
 イリーナ:「爆弾テロされる夢見た」
 稲生:「ええっ!?マジですか!?」
 マリア:(嫌な予知夢しか見ないんだから、この大魔道師は……)

 安全な日本の電車は、無事に大宮駅に到着する。

〔おおみや、大宮。ご乗車、ありがとうございます〕
〔「21番線の電車は、各駅停車、川越行きです」〕

 ぞろぞろと降りて行く乗客達。
 もちろん稲生達もそれに続く。

 稲生:「あ、そうそう。藤谷班長から依頼がありましたよ」
 イリーナ:「また競馬の予想かい?」
 稲生:「はい。来年1月5日の中山金杯の予知をお願いしますと」
 イリーナ:「あいよ。もちろん、報酬はちゃんと頂くよ」
 稲生:「それについて、じっくりとお話ししたいそうです」
 イリーナ:「了解。明日はヒマそうだから、明日でいいかい?」
 稲生:「分かりました。藤谷班長に連絡しておきます」

 そんなやり取りを聞きながら、マリアは改札口までの階段を先に上がった。

 マリア:(私も占いが完璧にできるようになったら、ああいうので稼げるんだろうな)

 稲生にはマリアが短いスカートを穿きつつ、黒いストッキングに包まれた足が気になってしょうがなかったが。
 前方はそれ、後方は稲生の下をイリーナが上っている。
 占い師が着るようなエキゾチックな衣装をイリーナは着ているのだが、胸元が大きく開いたものである為、上から覗くと谷間が見える。
 これはこれで……。

 ゴッ!

 稲生:「ぶっ……!」

 マリアの足が稲生の顔に痛烈ヒットした。

 マリア:「Oh,sorry!足が当たっちゃった

 絶対わざと蹴ったとしか思えない。
 顔は笑っているが、明らかに怒筋を浮かばせていた。

 マリア:(どこ見てんだ、このスケベ!)
 イリーナ:「まあまあ、いいじゃない、マリア。減るもんじゃないんだしw」
 マリア:「本来は師匠が注意するんですよ、そこは!」
 イリーナ:「マリア、今年が終わるまであと2日ちょっとあるわ」
 マリア:「だから何ですか?」
 イリーナ:「今年のダンテ一門のスローガンを言ってみて」
 マリア:「『先輩は後輩を大事にしよう』です」
 イリーナ:「はい、正解。分かったら、もう少し優しくしてあげなさい」
 マリア:「だからって甘やかしていいものでもないと思います!」
 イリーナ:「マリア、最近厳しくなったわねぇ……」
 マリア:「これが普通ですよ、きっと」
 イリーナ:「分かったから、早いとこ行きましょう。勇太君の御家族を待たせているわ」
 稲生:「あ、そうです。夕食の用意ができているらしいので、早くタクシーで向かいましょう」

 稲生達は駅前のタクシー乗り場に移動すると、それで稲生家へと向かった。

[同日19:35.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 タクシーが稲生家の前に到着する。

 運転手:「ありがとうございます。ちょうど1000円です」
 イリーナ:「じゃあ、これで」

 イリーナがリアシートからアメリカンエキスプレスのプラチナカードを運転手に渡した。
 たった1000円のタクシー代にプラチナカードは何とも勿体無いような気がするが、あまりイリーナは気にしていないようだ。
 イリーナがタクシー代を払っている間、稲生はトランクを開けてもらってそこから荷物を降ろした。

 イリーナ:「支払い、かんりょ〜!」
 稲生:「ありがとうございました」
 マリア:「いつになったら、ブラックカードを渡されるんですか?」
 イリーナ:「いや、勧誘は来てるのよ」
 稲生:「ええっ!?」
 イリーナ:「だけど断ってる」
 稲生:「勿体無い。ブラックカードって、プラチナカードを持っている人でも必ず招待されるわけじゃないんでしょう?」

 大相撲で言えば大関止まりであるようなものか。

 イリーナ:「別に、これだけでも十分に買い物はできるしね。知ってる?あのビル・ゲイツさんでも、ブラックカードは持っていないのよ?」
 稲生:「へえ、そうなんですか」

 因みに都市伝説でブラックカードには利用限度額が無いと言われるが、実はそうではないらしい。
 アメリカンエキスプレス側の匙加減で、フレキシブルに決められているという。
 だから例えばAさんは2000万円までなのに、Bさんは2億円までOKとかそんな感じである。
 そんな話をしながら、イリーナ組の面々は稲生家の中に入っていった。
コメント (4)
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