[12月30日16:30.天候:晴 東京都豊島区某所 日蓮正宗正証寺・集会室]
〔「全く。顕正会員を取り逃がして八つ当たりされても困るんですけどね!」〕
藤谷:「えー、このように、顕正会員の卑劣さは日を追う毎に増しております。我が正証寺においても、御登山の際には十分に注意して頂きたく、このような動画を制作したものです。皆さんもこの動画の内容を心肝に染め、顕正会員の下らぬ揚げ足取りに引っ掛からぬよう、お願い致します。もちろん、私も特に気をつけます」
シーンと静まり返る集会室内。
その雰囲気は明らかに白けたものだった。
藤谷:「動画撮影協力は大石寺塔中の報恩坊様とその御住職様以下、講頭さんや総代さん方であります。この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます」
いや、だからうちはまだ支部認証受けてないから講頭職も総代職も無いって!(byトチロ〜さん)
鈴木:「顕正会の体験発表のシーンは、自分が顕正会時代だったものを流用しています。あんなものパソコンで簡単に作り変えられますんで」
稲生:(やっぱり鈴木君のせいか)
稲生もすっかり呆れていた。
藤谷:「それでは本日の『顕正会対策臨時集会』を終了致します。皆様のご参加、真にありがとうございました」
疎らな拍手。
明らかにこの集会はスベっていた。
集会室から出て行く信徒達。
稲生:「あの、藤谷班長……」
藤谷:「おお、稲生君も参加してくれたか。ということは、マリアンナさんも御一緒かな?」
稲生:「マリアさんは外で待たせてあります」
藤谷:「外で!?こんな寒い中……」
稲生:「あ、いや、もちろんカフェでですよ」
藤谷:「何だ、そうか」
取りあえず片付けだけは手伝う稲生。
実は藤谷が行う臨時集会というのは、ジャイアンのリサイタル並みに不評であることが多い。
それでいて憎まれないのは、会場設営と撤収は他人の手を借りないところである。
従って今、片付けをしているのは藤谷と鈴木と稲生の3人だ。
稲生:「班長、これ、イリーナ先生からです」
稲生は二つ折りにしたメモ用紙を渡した。
藤谷:「おおっ、ありがとう!」
そこには藤谷が馬券を購入する中山金杯の予想が書いてあるはずだ。
いや、予想ではなく予知である。
藤谷:「ふむふむ……なるほど……。そういうことか」
稲生:「報酬は賞金の半額とのことです」
藤谷:「マジか!1000万円以上出すと大騒ぎになるからな……」
稲生:「でも、御自分で予想するよりは先生の予知は確実ですよ?そんじょそこらの予想屋さんとはワケが違います。半分は良心的かと」
藤谷:「そ、それもそうだな」
稲生:「この内容に不満が無ければ、この契約書にサインして欲しいとのことです」
藤谷:「了解だ。……って、もしかして稲生君、今日ここに来たのは集会ではなく、これかい?」
稲生:「ま、そう思われても仕方が無いですねぇ……」
藤谷:「キミというヤツは……。分かったよ。契約書にサインするよ」
藤谷はボールペンを用意した。
稲生:「イリーナ先生はゆるふわな御方ですから、阿漕な内容にはなっていないと思いますが、一応よく読んだ方がいいと思いますよ?」
藤谷:「少しくらいボられてもいいよ。イリーナ先生には世話になってるからな」
魔道師も契約社会。
中には明らかにおかしい内容の契約を盛り込んだ書類を差し出してくる者もいる。
1番多いのが数字のマジックだ。
まだ、言語によっては言い回しを曖昧にしてしまうパターンもある。
曖昧な表現の多い日本語での契約書の場合は、但し書きが多い。
魔道師の掟として、言語は相手の母国語または公用語に合わせることになっている。
この場合は日本語で書かれているはずだ。
弟子である稲生でさえ、イリーナの契約書を勝手に見ることは許されなかった。
藤谷:「……よし、これでいいだろう」
藤谷がサインすると、契約書が青白い光を帯びた。
稲生:「ありがとうございます。これが控えです」
藤谷:「ま、大騒ぎにならない程度にドカッと稼ぐさ。その半分をイリーナ先生に渡せばいいわけだな?」
稲生:「そういうことです」
稲生は大きく頷いた。
藤谷:「よし。夕勤行に参加するだろ?その後で家まで送ってあげよう」
稲生:「ああ、どうもすいません。ただ、今日は家族で外食することになっているんですよ」
藤谷:「そうなのか?」
稲生:「さいたま新都心のホテルメトロポリタンのレストランです」
藤谷:「おお、あの高級ホテルの。さすがは稲生君の御両親だ。イリーナ先生への接待かい?」
稲生:「そうですね」
藤谷:「俺もやっといた方がいいかな」
稲生:「契約が満了した時でいいんじゃないですか?どうせ、勝った馬券は現金で出て来るわけでしょう?」
藤谷:「それもそうだな。その現金を先生の所に持って行くから、それでいいか」
稲生:「そうですね。その方がいいでしょう」
[同日17:40.天候:晴 東京都豊島区某所 某カフェ]
夕刻の勤行が終わった後で、稲生はマリアを迎えに行った。
稲生:「お待たせしました」
マリア:「ああ、お疲れ」
藤谷:「よお、マリアンナさん。お久しぶり」
マリア:「Ah...ミスター藤谷」
稲生:「班長が送ってくれるそうですので、一緒に行きましょう」
マリア:「それは助かる」
マリアは席を立った。
藤谷:「そこのコインパーキングに車止めてるから、会計済ませたら来てくれや。先に行ってるから」
稲生:「分かりました」
といっても、会計などすぐに終わるものだ。
稲生:「Suicaで払います」
店員:「はい、お願いします」
ピピッ♪
店員:「ありがとうございました」
稲生:「どうも」
マリア:「いいのか?」
稲生:「連れて来たのは僕ですから」
マリア:「ありがとう。紅茶だけでなく、ケーキまで食べた後だったのに」
稲生:「別にいいですって」
カフェの外に出ると、駐車場から藤谷のベンツが出て来るところだった。
前は型落ちのEクラスだったが、今は現行車種のGクラスになっている。
藤谷:「じゃ、乗ってくれい」
稲生:「お願いします」
稲生とマリアはリアシートに乗り込んだ。
藤谷:「さいたま新都心なら、首都高をひたすら走れば着けるな」
稲生:「そうですね」
既に日も暮れて暗くなった池袋の街を、大きなSUV車が突き進んで行った。
〔「全く。顕正会員を取り逃がして八つ当たりされても困るんですけどね!」〕
藤谷:「えー、このように、顕正会員の卑劣さは日を追う毎に増しております。我が正証寺においても、御登山の際には十分に注意して頂きたく、このような動画を制作したものです。皆さんもこの動画の内容を心肝に染め、顕正会員の下らぬ揚げ足取りに引っ掛からぬよう、お願い致します。もちろん、私も特に気をつけます」
シーンと静まり返る集会室内。
その雰囲気は明らかに白けたものだった。
藤谷:「動画撮影協力は大石寺塔中の報恩坊様とその御住職様以下、講頭さんや総代さん方であります。この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます」
いや、だからうちはまだ支部認証受けてないから講頭職も総代職も無いって!(byトチロ〜さん)
鈴木:「顕正会の体験発表のシーンは、自分が顕正会時代だったものを流用しています。あんなものパソコンで簡単に作り変えられますんで」
稲生:(やっぱり鈴木君のせいか)
稲生もすっかり呆れていた。
藤谷:「それでは本日の『顕正会対策臨時集会』を終了致します。皆様のご参加、真にありがとうございました」
疎らな拍手。
明らかにこの集会はスベっていた。
集会室から出て行く信徒達。
稲生:「あの、藤谷班長……」
藤谷:「おお、稲生君も参加してくれたか。ということは、マリアンナさんも御一緒かな?」
稲生:「マリアさんは外で待たせてあります」
藤谷:「外で!?こんな寒い中……」
稲生:「あ、いや、もちろんカフェでですよ」
藤谷:「何だ、そうか」
取りあえず片付けだけは手伝う稲生。
実は藤谷が行う臨時集会というのは、ジャイアンのリサイタル並みに不評であることが多い。
それでいて憎まれないのは、会場設営と撤収は他人の手を借りないところである。
従って今、片付けをしているのは藤谷と鈴木と稲生の3人だ。
稲生:「班長、これ、イリーナ先生からです」
稲生は二つ折りにしたメモ用紙を渡した。
藤谷:「おおっ、ありがとう!」
そこには藤谷が馬券を購入する中山金杯の予想が書いてあるはずだ。
いや、予想ではなく予知である。
藤谷:「ふむふむ……なるほど……。そういうことか」
稲生:「報酬は賞金の半額とのことです」
藤谷:「マジか!1000万円以上出すと大騒ぎになるからな……」
稲生:「でも、御自分で予想するよりは先生の予知は確実ですよ?そんじょそこらの予想屋さんとはワケが違います。半分は良心的かと」
藤谷:「そ、それもそうだな」
稲生:「この内容に不満が無ければ、この契約書にサインして欲しいとのことです」
藤谷:「了解だ。……って、もしかして稲生君、今日ここに来たのは集会ではなく、これかい?」
稲生:「ま、そう思われても仕方が無いですねぇ……」
藤谷:「キミというヤツは……。分かったよ。契約書にサインするよ」
藤谷はボールペンを用意した。
稲生:「イリーナ先生はゆるふわな御方ですから、阿漕な内容にはなっていないと思いますが、一応よく読んだ方がいいと思いますよ?」
藤谷:「少しくらいボられてもいいよ。イリーナ先生には世話になってるからな」
魔道師も契約社会。
中には明らかにおかしい内容の契約を盛り込んだ書類を差し出してくる者もいる。
1番多いのが数字のマジックだ。
まだ、言語によっては言い回しを曖昧にしてしまうパターンもある。
曖昧な表現の多い日本語での契約書の場合は、但し書きが多い。
魔道師の掟として、言語は相手の母国語または公用語に合わせることになっている。
この場合は日本語で書かれているはずだ。
弟子である稲生でさえ、イリーナの契約書を勝手に見ることは許されなかった。
藤谷:「……よし、これでいいだろう」
藤谷がサインすると、契約書が青白い光を帯びた。
稲生:「ありがとうございます。これが控えです」
藤谷:「ま、大騒ぎにならない程度にドカッと稼ぐさ。その半分をイリーナ先生に渡せばいいわけだな?」
稲生:「そういうことです」
稲生は大きく頷いた。
藤谷:「よし。夕勤行に参加するだろ?その後で家まで送ってあげよう」
稲生:「ああ、どうもすいません。ただ、今日は家族で外食することになっているんですよ」
藤谷:「そうなのか?」
稲生:「さいたま新都心のホテルメトロポリタンのレストランです」
藤谷:「おお、あの高級ホテルの。さすがは稲生君の御両親だ。イリーナ先生への接待かい?」
稲生:「そうですね」
藤谷:「俺もやっといた方がいいかな」
稲生:「契約が満了した時でいいんじゃないですか?どうせ、勝った馬券は現金で出て来るわけでしょう?」
藤谷:「それもそうだな。その現金を先生の所に持って行くから、それでいいか」
稲生:「そうですね。その方がいいでしょう」
[同日17:40.天候:晴 東京都豊島区某所 某カフェ]
夕刻の勤行が終わった後で、稲生はマリアを迎えに行った。
稲生:「お待たせしました」
マリア:「ああ、お疲れ」
藤谷:「よお、マリアンナさん。お久しぶり」
マリア:「Ah...ミスター藤谷」
稲生:「班長が送ってくれるそうですので、一緒に行きましょう」
マリア:「それは助かる」
マリアは席を立った。
藤谷:「そこのコインパーキングに車止めてるから、会計済ませたら来てくれや。先に行ってるから」
稲生:「分かりました」
といっても、会計などすぐに終わるものだ。
稲生:「Suicaで払います」
店員:「はい、お願いします」
ピピッ♪
店員:「ありがとうございました」
稲生:「どうも」
マリア:「いいのか?」
稲生:「連れて来たのは僕ですから」
マリア:「ありがとう。紅茶だけでなく、ケーキまで食べた後だったのに」
稲生:「別にいいですって」
カフェの外に出ると、駐車場から藤谷のベンツが出て来るところだった。
前は型落ちのEクラスだったが、今は現行車種のGクラスになっている。
藤谷:「じゃ、乗ってくれい」
稲生:「お願いします」
稲生とマリアはリアシートに乗り込んだ。
藤谷:「さいたま新都心なら、首都高をひたすら走れば着けるな」
稲生:「そうですね」
既に日も暮れて暗くなった池袋の街を、大きなSUV車が突き進んで行った。