報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔王城新年会」

2019-01-09 18:56:41 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月1日16:30.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 藤谷:「えーと……ここか?」
 稲生:「そうです!」

 稲生は車を降りた。

 稲生:「送ってくれてありがとうございました」
 藤谷:「おう。マリアさんとイリーナ先生によろしくな」
 稲生:「はい」
 藤谷:「支部総登山、2月にあるからな。なるべく参加してくれよ?」
 稲生:「はい、班長。前向きに検討します」
 藤谷:「じゃあな」

 藤谷のシルバーのベンツGクラスは、持ち前の排気量を駆使して稲生の元を走り去った。

 稲生:「さて……と」

 稲生はホテルの中に入った。

 稲生:「こんにちはー」
 オーナー:「これはこれは稲生さん、いらっしゃいませ」
 稲生:「マリアさんは来ていますか?」
 オーナー:「はい。先ほどそこのロビーにいたのですが、恐らくお手洗いに……」

 と、奥からマリアが出て来た。

 マリア:「勇太」
 稲生:「マリアさん、お待たせしました」
 マリア:「あとは師匠だけか……」
 稲生:「えっ?先生、先に行ってらっしゃるんじゃ?」
 マリア:「まだなんだ、それが」
 稲生:「意外ですね」
 マリア:「魔王城の新年会開始まで、もう少しあるけどさ。それとも先に行く?」
 稲生:「いえいえ、そこは師弟の節目というものが……。日蓮正宗でもそこは厳しく指導されて……」
 マリア:「ダンテ一門だって、ここでは」
 稲生:「ま、ちょっと一息させてください」
 マリア:「ああ」

 稲生もトイレに行った後、自販機コーナーでジュースを買い、ソファに座って待つことにした。

 マリア:「クリスチャン共は寺に来たのか?」
 稲生:「来ましたよ。嫌な予感が的中しましたね。マリアさんには、ここにいてもらって良かったですよ」
 マリア:「うん。それにしても、破門団体から嫌がらせされたり、クリスチャンから嫌がらせされたり、忙しい宗派だな」
 稲生:「広宣流布の道は長くて険しいということですよ」

 と、そこへエントランスの前に1台の黒塗りの高級車が停車した。
 どうも、ロールスロイスっぽい。

 稲生:「誰か来たみたいですよ。アナスタシア組かな?」
 マリア:「いや、アナスタシア組は基本、日本では日本車しか乗らないはずだから……」
 稲生:「そういう拘りが!?」
 マリア:「あいつらが1番、日本かぶれになってるんだよ」
 稲生:「ということは、誰でしょうねぇ?」

 ヤクザA:「ど、どうぞ。先生」
 イリーナ:「ありがとさん」

 何故かケガをしている暴力団員と思しき男達が、恭しくイリーナを車から降ろした。

 イリーナ:「いい?このことは全て忘れるのよ?さもないと、あなた達の組長さんに……」
 ヤクザA:「へ、へい!もちろんです!」
 ヤクザB:「絶対に口外致しません!」
 ヤクザC:「ですからどうか、お許しを!」
 イリーナ:「よろしい。じゃあね」

 イリーナは颯爽とホテルの中に入った。

 イリーナ:「ハーイ、お待たせー」
 稲生:「先生!?何ですか、今の!?」

 逃げるように急発進で立ち去って行くロールスロイス。
 よく見たら、車もあちこち傷だらけである。

 イリーナ:「ま、ちょっと色々ね。ロシアンマフィアの怖さをレクチャーしてあげただけよ」
 マリア:「騒ぎは程々にしてくださいよ」

 アナスタシア組を『ロシアンマフィア』と揶揄するイリーナであるが、本人自身もまたロシアの裏社会とパイプがあるようである。

 イリーナ:「それじゃ、魔王城へ行きましょう。私達が最後になるかしら?」
 マリア:「いつも私達が最後ですよ」
 オーナー:「地下階へは行けるようにしてありますので」
 イリーナ:「ありがとう」

 稲生達は小さなエレベーターで地下階へと下りて行った。

[同日17:00.天候:晴 魔界王国アルカディア 王都アルカディアシティ 魔王城]

 稲生:「魔王城も久しぶりだなー」
 イリーナ:「あまりウロウロしてはダメよ」
 稲生:「はーい」

 大ホールを通過する稲生達。
 かつてこの大ホールで、『魔王城決戦』が行われた。
 即ち、新政府軍と旧政府軍の戦争である。
 女王ルーシー・ブラッドプール1世を現魔王として担ぎ上げる新政府側(魔界共和党)と、前魔王バァル大帝にあくまで付く者達(旧・魔王軍閥)との最後の戦闘がここで行われた。

 稲生:「あの時の大時計もまだある」

 高さ30メートルの大時計。
 その振り子はとても大きく、コーンコーンという規則正しい振り子の音がホール内に響いている。

 イリーナ:「稲生君を地獄界から連れ戻すのに凄い苦労して、1度は失敗して、マリアったら大泣きしたもんね」
 マリア:「そ、そりゃ泣きの1つでも入りますよォ……」

 魔王城の中では明るい大ホール。
 しかしそこを抜けると、また薄暗い廊下が続く。
 いかにも、勇者一行が通れば高いエンカウント率を誇りそうな廊下である。
 だが、首相・安倍春明主催の宮中新年会に正式に招かれているイリーナ達を襲おうとする魔族達は誰1人としていない。
 衛兵として雇われているモンスター達も、イリーナ達には敬礼をくれるだけだ。
 その安倍も、かつてはこの魔王城を目指す魔王討伐隊の勇者の1人であった。
 そんな彼は非公式であるが、日本の内閣総理大臣の遠い親戚に当たるらしい。

 稲生:「うっ……!」

 控え室に向かう稲生達の所に、ある人物が現れた。

 横田:「クフフフフフ……。イリーナ組の皆さん、明けましておめでとうございます」
 イリーナ:「おめでとさん」
 横田:「クフフフフ……。今年もよろしくお願いしますよ。先生方の控え室は、あちらになります」
 イリーナ:「分かってるわ」
 横田:「そうそう、稲生さん」
 稲生:「な、何だ?」
 横田:「うちの顕正会員がとんだ御迷惑をお掛けしましたねぇ。彼らはすぐに除名処分にしましたからね。どうか、それで穏便に……」
 稲生:「それってつまり、あの事件を顕正会内部で『無かったこと』にしたいだけだろ!?」
 横田:「おやおや……」
 稲生:「会員を尻尾切りにしただけじゃないか!」
 横田:「クフフフフフフ……。何を勘違いされておられるか分かりませんが、あれは一部会員の単なる暴走です。それに団体組織として処分しただけのこと。何も問題は無いはずですが?クフフフフフ……」
 稲生:「ま、待てっ!」
 イリーナ:「稲生君」
 稲生:「先生!」
 イリーナ:「ここではあなたは、ダンテ一門イリーナ組の見習弟子よ?日蓮正宗法華講信徒としての顔は忘れてちょうだい」 
 稲生:「……!」
 イリーナ:「横田理事も、ここでは顕正会の理事ではなく、魔界共和党の理事としているんだから」
 マリア:「スケベオヤジである点に、変わりはありませんがね」

 マリアは吐き捨てるように言った。
 マリアに言わせると、ずっと横田はイリーナの豊かな胸や尻にエロい目を向けていたというが、当のイリーナ本人は気にしていなかった。
コメント (13)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「新年早々」 2

2019-01-09 10:13:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月1日14:00.天候:晴 東京都豊島区某所 日蓮正宗正証寺]

 藤谷:「はーい!元旦勤行に参加の方はこちらー!」

 ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ……。

 藤谷:「えー、このタイミングで御受誡、御勧誡を受けられる方はこちら」

 シーン……。

 藤谷:「ま、これが現実だ……」
 稲生:「班長!」
 藤谷:「うおっ!」
 稲生:「またこのネタですか」
 藤谷:「ほんと、作者も好きだねぇ。ま、法道院さんだったらガチで正月から御受誡、御勧誡はあるらしいけどな」
 稲生:「あそこは大規模ですから。うちみたいな小規模な所は……」
 藤谷:「まあな。……あ、そうそう。明けましておめでとう」
 稲生:「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
 藤谷:「こちらこそ。さ、早く中へ」

 境内に入ると、まだ規制線が張ってあった。

 稲生:(エレーナのヤツ、あそこでイオラを唱えたのか……)

 やむにやまれぬ事情があったとはいえ、イオラは少し強かったのではないかと稲生は思った。
 尚、ちゃんと鈴木はエレーナに契約通りの額を支払ったとのこと。

 藤谷:「あの魔女っ娘、『御本尊よりアタシとの契約の方が確実に願い事が叶えられて功徳〜〜〜〜〜〜!!』なんて言ってたけども……」
 稲生:「ま、ウソは言ってませんね。その代わり、契約者から金をふんだくるので、その分、罰も大きいですよ」
 藤谷:「これがホントの『魔の通力』ってか」
 稲生:「あ、班長、上手い!」

 稲生は集会室から座布団を1枚持って来た。

 藤谷:「こらこら。御本尊様の御前で座布団を使用するべからず」
 稲生:「分かってますよぉ……」
 藤谷:「俺は正座椅子だ。これは使っていい」
 稲生:「そんなに足が?」
 藤谷:「俺もトシかね」
 稲生:「イリーナ先生は正座なさっても、意外と大丈夫でしたね」
 藤谷:「ほお……。じゃあ、歳以外に原因があるのかな?」
 稲生:「どうでしょうねぇ……。(体型じゃないかなぁ……)」

 こうして2人は午後は行われた元旦勤行に参加した。

[同日15:30.天候:晴 正証寺境内]

 御住職:「稲生さんが来てから、このお寺では不思議なことばかり起こるようになったような気がします」
 稲生:「ぐ、偶然じゃないですかね。アハハハハ……」
 藤谷:「稲生君の縁で御受誡した者もそれなりにいますから、きっとそれは魔の揺さぶりですよ」
 御住職:「ですかねぇ」
 藤谷:「俺も彼も今年1年、魔に負けないように頑張りますから。な?」
 稲生:「そ、そうですよ」
 御住職:「それは頼もしい限りです」

 と、その時、外から街宣車の音がした。

〔「こちらは敬虔なるイエス・キリストの教団、聖ジャンジョン教会である。陰険なる魔女共に告ぐ。直ちに神への抵抗を止め、その汚らわしき魂を……」〕

 御住職:「昨年からあの邪教徒達は何を言ってるんですか?」
 稲生:「創価学会や顕正会ならよくあることだけど、まさかこっちはキリスト教に目を付けられるとは……」
 藤谷:「ったく、うるせぇヤツらだな!」

〔「……神は全てを御照覧あそばされている。邪な力を用い、この町に災厄を齎そうとしていることも全て把握している。我々は神の命により、その邪悪な野望を打ち砕くべく……」〕

 稲生:「本当だ!邪教を信仰するとこうなるんだな!」
 藤谷:「その通りだ!こっちはエレーナが魔法使ったくらいしかしてねーぞ!この邪教どもが!」
 稲生:「そうそう!……って、いやいやいや!それですよ、原因!え?なに!?もしかして、魔法使うところ、あいつらに見られた!?」
 藤谷:「いや、その時奴らはいなかったと思うが……」

 ザシャアァァァァァ〜ッ!(妙観講員達が教会の街宣車を取り囲む)

 稲生:「おおっ!ちょうどいいタイミングで妙観講の人達が!」
 藤谷:「ありがたい!あとは彼らにお任せしよう!」

 ↑他力本願な時点で、正証寺の今年の誓願達成率が【お察しください】。

 キリスト教徒A:「魔女だよ!魔女がこの寺にいるんだよ!」
 妙観講員A:「さっきからワケの分からんこと言ってるんじゃない!」

 稲生:「良かったぁ……、マリアさん連れて来なくて」
 藤谷:「そうだな。取りあえず、俺達も退散するとしよう。裏門から駐車場に行ける」
 稲生:「はい」

 キリスト教徒B:「魔女を匿うつもりか!神に仇なす者共め!」
 妙観講員B:「当たり前だ!いもしない神や魔女に踊らされる邪教徒共が!」

[同日15:45.天候:晴 東京都豊島区某所 首都高速内]

 稲生:「ふ〜、危なかったぁ……」
 藤谷:「あとはマリアさんをピックアップするだけだな」
 稲生:「はい、お願いします」
 藤谷:「どこにいるんだ?」
 稲生:「森下のワンスターホテルです」
 藤谷:「なるほど。『魔女の巣窟』だな。奴らに言わせればな」
 稲生:「ま、そういうことになりますかね」
 藤谷:「別に魔法を使うだけで、キリストをバカにするわけでもないだろうに、何であいつらはキレるんだ?」
 稲生:「分かりませんねぇ……」
 藤谷:「火病か?あの教団、朝鮮系だしな」
 稲生:「特殊な力を使えるのは神のみであり、神でもないのに特殊な力を使いやがって怪しからんということですかね」
 藤谷:「大きなお世話だっつーの」
 稲生:「多分、僕達からしてみれば、大聖人様でもないのに火球を飛ばして来てみたり、暴風雨を起こして船団を2回も潰したという奇跡を起こすようなものでしょう。因みにイリーナ先生のお力でしたら、どちらも可能です」
 藤谷:「……今度、ロト7の予知もお願いしようかな?」
 稲生:「大聖人様と似た力を持った人に、そんなことお願いするんですか?報酬は半分ですよ?」
 藤谷:「う、うん、そうだな。……ご、御供養だよ、御供養」
 稲生:「これから競馬で稼ぐお金も、ちゃんと宗門に御供養するんですよ?」
 藤谷:「ば、バクチで稼いだ汚い金を御供養するのは大聖人様に対する御不敬……」
 稲生:「何言ってるんですか!」

 変な所でケチる藤谷であった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする