報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「BOW達の身体検査」

2022-06-09 20:10:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月9日10:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所前]

 レントゲン技師:「はい、息を大きく吸って」
 リサ:「スーッ!」
 レントゲン技師:「はい、止めます」

 BSAAの医療車のうち、レントゲン車ではリサがレントゲン撮影を行っていた。
 レントゲン車とはいえ、中の構造は医療施設のレントゲン室と同じ。
 レントゲンを撮影する際、上のジャージを脱いで、下の白いTシャツだけになる。

 レントゲン技師:「はい、終了です。次は、採尿をお願いします」
 リサ:「分かりましたー」

 リサは紙コップを受け取ると、ビルの中のトイレに向かった。
 ビルの1階には多目的トイレが1つあり、そこで採尿をすることになる。
 先に採尿を済ませた上野凛が、紙コップを持って出て来た。

 凛:「何か、自分のオシッコを持って歩くのって変な気分ですね」
 リサ:「それをわたしは昨年やったの。途中で先生に飲ませるなよ」
 凛:「飲ませませんよ!?」
 愛原:「誰が飲むか!」
 朴ヨンヒ:「フム。BOWの感覚はヘンタイか……」
 リサ:「BOWの中ではノーマル」
 ヨンヒ:「そうきたか」

 採尿と採血は、別の医療車で行う。
 因みにBOWといえども、血の色は人間と同じ赤である。
 視力検査と聴力検査は第1形態で行われる。

 検査技師:「はい、大きく目を開いて~。虹彩を撮ります」

 第1形態のリサの瞳が赤色だったり金色だったりする理由は不明。
 今回は赤色だった。

 検査技師:「はい、次は視力検査です」
 リサ:「……右!」
 検査技師:「……はい。左目、右目共に5.0です」
 リサ:「エッヘン!」<(`^´)>
 愛原:「アフリカの原住民か!」
 検査技師:「次は聴力検査です」

 リサに対する聴力検査の結果を知ったヨンヒは……。

 ヨンヒ:「『リッカーよりも強力な聴力であり、人間の僅かな呼吸音だけで居場所を当てる確率が高い』」

 と、手帳にメモをしたという。
 尚、ハングル文字で書かれているので、日本人の私は解読不明。

 ヨンヒ:「第1形態だけで大ボスを張る力はあるようですね」
 愛原:「あれのオリジナルは、ラスボスだったわけだからな」

 まあ、こっちのリサも霧生市ではラスボスだったわけだが……。

 女性医師:「じゃあ、胸の音を聴かせてください」

 リサはTシャツを脱いで、黒いスポブラだけになった。

 医師:「はい、背中を向いてー。……はい、また前を向いて。目にライトを当てます」

 医師がペンライトでリサの目を照らすと、今度はリサの目が金色に光った。

 医師:「はい、喉の奥を見ます」

 アイスの棒みたいな木のヘラを使う。
 かつては金属のヘラを使っていたが、今は木製に変わっている。
 多分、清潔性を確保するのと金属アレルギー対策だろう。

 医師:「はい、終わりです」
 リサ:「ありがとうございました」

 リサはTシャツを着込んだ。

 ヨンヒ:「いつもスポブラを?」
 リサ:「今日みたいな日と、体育のある日くらいかな」
 ヨンヒ:「なるほど」
 リサ:「それと、愛原瀬先生の気分に合わせて」
 ヨンヒ:「は?」

 こうして流れ作業的にリサ達への身体検査は終わった。

 愛原:「はい、お疲れさん。着替えていいよ」

 事務所に戻った私は、彼女達を応接室に促した。

 愛原:「高橋もお疲れさんな?」
 高橋:「いいえ、問題ナシっす」
 愛原:「電話はあった?」
 高橋:「何か……探偵の仕事よりも、講演会の依頼の方が多いのは何でですか?」
 愛原:「さあ……何でかな」

 私の霧生市内における立ち回り方や、その後のバイオテロ事件の解決などで講演の依頼が来るようになった。
 本業の探偵の仕事の依頼よりも多いくらいだ。
 こっちも生活が掛かってるので、なるべく受けるつもりではいるのだが……。
 こんなことになったのは、暇潰しに書いた回顧録『霧生市のバイオハザード』を書いて新聞社に送ったら、何故か売れてしまったからである。
 某一般紙の書籍案内にも載ってしまったくらいだ。

 リサ:「先生の本が実写ドラマ化したら、わたしが本人役で出るからね?!」
 愛原:「んなワケあるかw」

 内容は私と高橋が霧生市に入ってから、そこでバイオハザードに巻き込まれ、最後はリサや高野君も追加して、共に霧生市を脱出するところまでである。

 ヨンヒ:「本を書かれたのですか?是非、私も一冊頂きたいのですが……」
 高橋:「ちょっと待ってろ。今、Amazonで注文してやっからよ」
 愛原:「Amazonだと『お急ぎ便』でも、届くのは明日だろう?」
 ヨンヒ:「明日でもいいですよ」
 高橋:「よし。オメーんちに届くようにしてやるから、住所教えろ」
 ヨンヒ:「……いえ、近所のコンビニ受け取りでお願いします」
 高橋:「マジかよ」
 愛原:「さりげなく女の子の家の住所を聞くな」

 ヨンヒは大久保駅近くのコンビニを指定した。
 彼女がコリアタウンである大久保に住んでいることは知っているが、この程度なら個人情報の漏洩には当たらないか。
 尚、中央・総武線の大久保駅と山手線の新大久保駅は徒歩連絡が可能である。
 彼女は新大久保駅から山手線に乗り、それで上野の東京中央学園に通っているらしい。

 高橋:「1冊でいいのか?」
 ヨンヒ:「あ……2冊で。1冊は私用、もう1冊は韓国に送る」
 愛原:「日本語版しか無いが、大丈夫か?」
 ヨンヒ:「大丈夫です。自分のは、何とか翻訳してみせます」
 高橋:「先生、良かったっスね。これで2冊売れましたよ?」
 愛原:「ありがとう」
 リサ:「!」

 リサはそのBOWとしての強力な聴力で、私達の会話を聞いたらしい。

 リサ:「リンとリコ!先生の本、買え!1人ノルマ10冊!!」
 凛:「ええーっ!?」
 理子:「じゅ、10冊……」
 愛原:「リサ!押し売りはダメだ!高橋も!!」
 高橋:「えっ?」

 高橋、自分のスマホを取り出し、仲間のグループLINEで、正に購入ノルマを課すところだったらしい。

 善場:「皆さん、お疲れさまでした。検査の結果は、分かり次第、郵送で通知します。もしも再検査となった場合は、それも併せてお知らせします」

 撤収が終わる頃には、昼になっていた。

 愛原:「お昼はピザ頼んでおいたから、それ適当に食べてて」
 リサ:「おお~!先生、太っ腹~!」

 Lサイズのピザを何枚か注文したが、果たして大食のBOW3人の腹を満たせるかどうか……。
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“大魔道師の弟子” 「帰宅の魔道士達。そして……」

2022-06-09 11:16:39 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月8日05:45.天候:晴 長野県北安曇郡白馬村 白馬八方バスターミナル]

〔「ご乗車ありがとうございました。白馬八方バスターミナルです。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください」〕

 バスは無事にバスターミナルに到着した。
 冬ならここで終点なのだが、今はもっと先、栂池高原が終点となる。
 なので、乗り越しに注意である。
 夜行バスと言えども、座席は4列シート。
 しかし、長距離用にシートピッチは広くなっている。
 それに、2人連れなのだから、逆にちょうど良い。
 一人旅は想定していないということなのだろうか。
 バスを降りると、もう1人の運転手がバスから降りていて、乗客の荷物を降ろしていた。
 勇太も預けた荷物を受け取った。

 勇太:「迎えの車は……もう来てるね」
 マリア:「その前にちょっとトイレ」
 勇太:「ああ、行ってらっしゃい」

 マリアはターミナルの中のトイレに向かった。
 その間、勇太はペットボトルの空いたゴミを捨てに行く。
 乗客の降りが終わったか、運転手の1人がバスの荷物室のドアを閉めて、バスに戻って行く。
 そして、バスは乗降ドアを閉めて発車していった。
 次の停車停留所は、白馬岩岳マウンテンリゾートだったか。
 どのくらい乗客が残っていたのかは不明だが、このバスターミナルでだいぶ降りた感じはする。

 マリア:「お待たせ」

 しばらくしてマリアが戻って来ると、2人は待たせていた車の所へ向かった。
 今回は勇太が魔力を使ったこともあり、車種はトヨタ・ジャパンタクシーに酷似したものとなっている。
 傍から見れば、勇太達が既にタクシーを呼んでいて、それに乗り換えたという風に見えるだろう。

 勇太:「屋敷まで戻ってください」

 黒いスーツに白い帽子を目深に被った運転手は頷いて、車を屋敷に向けた。

 マリア:「ふわ……」

 マリアが大きな欠伸をする。

 勇太:「帰ったら少し寝ようか」

 バスの中では、あまり寝られない。
 それでも少し寝落ちした感があるが、それだけでもマシな方であろう。

 マリア:「そうする。どうせ、師匠もしばらくは起きないだろうしね」

[同日06:30.天候:晴 同県北部山中 マリアの屋敷]

 この時期ともなれば雪も無いので、未舗装の道路でもまあまあ走りやすい。
 そして、レンガ造りの長いトンネルを抜けるとマリアの屋敷が現れた。
 正面玄関前のロータリーをグルッと回って車を横付けするのだが、その前に運転手がクラクションを2回ほど鳴らす。
 そうすることで、中にいるメイド人形達に勇太達の到着を教えるのだ。

 勇太:「ありがとう」

 助手席後ろのスライドドアが開くのと、玄関のドアが開くのは同時だった。

 ダニエラ:「お帰りなさいませ。稲生様」
 勇太:「ああ、ただいま」

 車を降りて、屋敷の中に入る。
 メイド人形達が出迎えてくれてはいたが、イリーナの姿は無かった。

 勇太:「先生は?」
 ダニエラ:「お部屋でお休みになってございます」
 勇太:「やっぱりか……」
 マリア:「いいよ。私達も少し寝よう」
 勇太:「そうしようかな」
 マリア:「ミカエラ、私達は昼くらいまで寝てるから」
 ミカエラ:「かしこまりました」
 勇太:「僕の部屋で寝る?それとも、僕がマリアの部屋で寝ていい?」
 マリア:「眠いからまた今度ね。ていうか、バスの中で隣同士だっただろう?」
 勇太:「はは、は……」

 体よく断られた。
 だが、マリアは勇太の頬に軽くキス。

 マリア:「結婚したら、いつでも一緒に寝れるでしょう?それじゃ」
 勇太:「……!」

 マリアは屋敷の西側にある自分の部屋に向かった。

 ダニエラ:「お部屋までご案内致します」
 勇太:「あ、ああ……」

 勇太の専属メイド人形のダニエラが、勇太の荷物を持って、屋敷2階の勇太の部屋に先導する。

 勇太:(『マリアの屋敷』といっても、実質的には先生の屋敷だ。マリアと結婚したら、この屋敷を出ないといけないんだろうか……)

[同日12:30.天候:晴 マリアの屋敷1F西側・大食堂]

 本当に正午に起きた勇太は、顔を洗って着替えてから食堂に向かった。
 それに合わせてメイド人形達も昼食を作ってくれたか、食堂の入口に近づくと良い匂いがしてきた。

 イリーナ:「おや、勇太君。お帰り」

 食堂に入ると、数人のメイド人形が昼食の支度をしており、テーブルにはイリーナが座っていた。

 勇太:「せ、先生!ただいま戻りました!」
 イリーナ:「何だい、そんなに畏まって。別にいいんだよ。アタシの言い付けを守っていたんだからね」

 それは、『日本国内から出てはいけない』というもの。
 この長野から関東、そして東北へ移動はしたが、日本国内はもとより本州からも出ていない。

 イリーナ:「マリアはまだ起きてこないの?……『重い日』かしら?ちょっと様子を見に行ってもらえるかしら?」
 クラリス:「かしこまりました」
 勇太:「夜行バスで帰って来たもので、昨夜はあまり眠れなかったんです。それで帰ってから、少し仮眠していたんですが……」
 イリーナ:「それはもう想定内だよ。ロシアじゃあ、想定外のことばかりが起きていてねぇ……」
 勇太:「そうなんですか。あの……戦争は終わりそうですか?」
 イリーナ:「それを占い、予知できるようになったら、もうハイクラスさ」
 勇太:「ええっ!?」

 マリアが来る前に、料理が運ばれてくる。
 昼はパスタのようだ。
 勇太のは、いつも通りのミートソース。
 イリーナのは、シーフード系のパスタだった。

 イリーナ:「マリアは起きてこないのかい?しょうがないね。麺が伸びる前に、先に食べてしまおう」
 勇太:「は、はい」

[同日14:00.天候:曇 屋敷1F西側・大食堂]

 マリア:「寝過ごした!寝過ごしたーっ!!」

 マリアが慌てて食堂にやってきた。
 余所行き用に着ている制服ファッションではなく、地味な緑色のTシャツにデニムのハーフパンツだった。
 これだけ見れば、魔女や魔道士には見えない。
 もっとも、それらが皆それらしい恰好をするとは限らない。
 魔法具を作る職人も、分類上は魔女や魔道士になるのだが、仕事中は作業服やツナギ服である。

 勇太:「あっ、マリア。やっと起きたの?」
 マリア:「師匠は!?」
 勇太:「さっき出掛けたけど……。今度は魔界経由でロシアに向かったから、またしばらく帰って来ないんじゃない?」
 マリア:「色々聞きたいことがあったのに!」
 勇太:「それより、マリアに渡したい本があるから、後で図書室を探すようにって。それと……これを置いてったんだけど……」

 それは『結婚同意書』。
 弟子であるマリアと勇太が結婚することを、師匠として正式に認めるという書類であった。

 マリア:「お、お~。よ、よし!これで第2関門クリア!」

 第1関門は勇太の両親に認めてもらえるか、というもの。
 酔っ払いながらも、宗一郎の方から2人がいつ結婚するのか聞いて来たくらいだし、それに佳子が反対するような発言はしていないので、認められたも同然であろう。

 マリア:「次は第3関門だ」
 勇太:「まだあるの?」
 マリア:「これを見て!」

 マリアは同意書を広げた。
 サインをする欄が2つあり、1つはイリーナのサインが埋まっている。
 もう1つは……。

 マリア:「大師匠様のサインだよ。大師匠様からサインをもらわなきゃ!」
 勇太:「ええーっ!?だって昨日、大宮に現れたよ!?」

 ということは、次はいつ現れるか分からないということ。

 マリア:「第3関門は厳しいか……」
 勇太:「因みに、これが最終関門でいいんだよね!?」
 マリア:「多分……」

 確実にダンテが現れるのは、昇格の時。
 昇格の最終認定の決定権は当然ダンテにある為、ダンテが自ら認定証を持って来ることが多い。

 勇太:「と、いうことは、やっぱり僕がマスター認定を受けないとダメってことか……」
 マリア:「それ……いつ?」

 ポテンシャルは認められていて、イリーナからはプッシュされているのだが、肝心のダンテが……。
 いくらイリーナが推薦状を送っていたとしても、やはり決定権のあるダンテが動いてくれないと、どうにも……。
 2人の魔道士は、溜め息を吐かざるを得なかった。
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