報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「眼の検査」

2022-06-15 20:18:05 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月30日07:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター2F・宿泊室]

 私は何とか寝入ることができた。
 しかし、悪夢というか何というか……おかしな夢を見た。
 それは廃墟の病院のような場所で、リサと上野母娘達に追い回される夢だった。
 その中で、私の手持ちはハンドガンのみ。
 ロケランでようやく倒せるか否かの鬼達に、ハンドガンなんて草が生えるものだ。
 イーサン・ウィンターズ氏の気持ちが分かるというもの。
 しかし、氏は最終的に自分を追い回した連中の弱点を掴み、自分もそれなりの攻撃力を得て、連中を倒すことに成功している。
 翻って、夢の中の私は……。

 愛原:「あれは恐ろしい夢だった……」
 高橋:「だ、大丈夫ですか、先生!?」
 愛原:「ああ……」

 何とか朝の身支度を済ませ、朝食会場へ向かう。

 リサ:「先生、おはよ」
 上野凛:「おはようございます!」
 上野理子:「おはようございます」
 愛原:「うわっ、出たーっ!」

 下は中学生の鬼に『性的に』襲われたのだぞ!?夢の中の私は!

 高橋:「テメェら!夢ん中で先生に何しやがる!」

 高橋はマグナムを取り出した。
 マグナムか……。
 これでようやく上野母娘とは渡り合えるような気はするが、それでもリサは倒せない。

 リサ:「な、何が?」
 凛:「な、何ですか!?」
 理子:「私、何もしてません!」
 愛原:「いや、高橋、いいんだ。夢の中の話だ……」
 リサ:「わたし、夢の中で先生とイチャラブできたよ!?」

 リサは鼻息を荒くして言った。

 愛原:「ああ……うん。それは良かった」

 似たような夢を、私は見た。
 もっとも、私の場合は他に上野母娘も飛び入り参加してたがな。
 良く言えばラブラブハーレム、悪く言えばホラーハーレムといったところか。

 愛原:「と、とにかく朝飯食いに行くぞ」

 私が行こうとすると、リサが私の腕にしがみついてきた。
 本人は甘えているつもりなのだろうし、今はまだ人間の姿だからいいのだが、これで正体を曝け出そうものなら……。

 愛原:「こらこら、リサ」
 リサ:「いいじゃなーい!」

 やれやれ……。
 食欲が全開なうちは、可愛いものなのに……。

[同日07:30.天候:晴 同センター1F食堂]

 朝食は和食であった。
 焼き魚と納豆と温泉卵がメインであり、御飯と味噌汁はお代わり自由というもの。

 リサ:「わたし、やりたい!」
 愛原:「アホか!」

 私は話のネタに、昨夜見た夢の話をした。
 するとリサが鼻息を荒くして、身を乗り出してきたのである。

 リサ:「旧校舎なら廃墟みたいなものだし!」
 愛原:「やだよ!だいたい、このコ達にも参加してもらうのか?」
 リサ:「……それはヤダ。お前ら、先生に手を出したら……!」
 凛:「そ、そんなことしませんよ!」
 理子:「リサ先輩は、愛原先生の御嫁さんですもんね!」
 リサ:「その通りだ」
 愛原:「勝手に吹聴すんな!」
 高橋:「先生、そろそろマグナム撃ち込んだ方が……」
 愛原:「まあ、待て」
 凛:「というか先生、よく私達の正体に気づきましたね?私はともかく、理子はまだ『鬼の姿』を見せていませんよ?」
 愛原:「それはきっと、経験則によるのものだろうな。もう身近にリサというBOWがいるものだから……」
 リサ:「さすがは先生。私の将来の旦那様。……いや、もう今の旦那様」
 高橋:「誰がだ、コラ」

 それにしても、ここにはまだ高橋がいるからいいようなものの、私だけだったら、彼女らのズレた感覚に、私もズレそうになる。

[同日08:30.天候:晴 研修センター地下研究施設]

 先に上野姉妹が母親の所へ面会に向かう。
 それから別導線で、私達は研究施設に向かった。
 これは上野利恵が私達と鉢合わせにならないようにする為である。
 まず、会議室のような部屋に通されて、今日はどのような検査をするのかの説明を受けた。
 今日はリサの目について、調べたいという。

 研究員:「例えばここに収監されている上野利恵は、片目を外して、自由に飛ばすことができます。そして、飛ばした先の視覚を得られるという能力を持っています」
 愛原:「凄い能力だ」
 高橋:「無理やりな千里眼っスね」
 研究員:「これはウィルスというより、特異菌の力によるものと思われています。しかし、日本版リサ・トレヴァーには特異菌はありません。そこで、比較実験をしたいと思います」
 愛原:「リサにはそのような能力は無いですよ?」
 リサ:「うん。わたしにはできない」
 研究員:「しかし、瞳の色が変化するということから、片鱗はあるのではないかとの声が出ています。それを確認したいのです」
 愛原:「なるほど……」

 ここでの私達は、あくまでリサへの付き添い。
 リサが1人だと不安になり、それだけならまだしも、ふとしたことから恐慌を来して暴走することを防止する為である。
 ついでに私達も、健康診断を受けることになった。
 一緒に検査を受ければ、リサも不安にならないだろう。

 検査技師:「はい、目を大きく開いて。虹彩を撮ります」

 第0形態のリサは、普通の黒い瞳。

 検査技師:「はい、それじゃ今度は第1形態に戻って下さい」

 リサは大きく息を吸って吐いた。
 見る見るうちに額には1本角が生え、両耳は長く尖り、両手の爪も長く鋭く伸びる。
 口を開けば、牙が覗く。
 この時、リサの瞳は金色であった。

 リサ:「ウゥウ……」
 検査技師:「はい、もう1度この穴を覗いて」

 私はリサの肩を後ろから叩いて宥める。

 検査技師:「はい、目を大きく開いて。虹彩を撮ります」

 写真を撮られても、リサの瞳は金色のままだった。
 赤色になることはない。
 本当、何の法則で色が変わるのかよく分からない。
 もちろん、本人にも分かっていない。

 リサ:「お腹空いた……」
 愛原:「休憩の時におやつが出るから、もう少し我慢しろ」
 リサ:「おやつ……」
 検査技師:「それでは、次は眼底検査を行います。こちらへ来てください」
 リサ:「おやつは何が出る?」
 愛原:「ここの自販機コーナーに、パンとかお菓子の自販機があっただろ?あれの好きな物を買ってやるよ」
 検査技師:「ビーフジャーキーもありますよ」
 リサ:「ビーフジャーキー!?」

 リサは涎を垂らした。

 愛原:「買ってやるから、もう少し頑張れ」
 リサ:「頑張る……」

 リサはヨタヨタと歩き出した。
 まるで、アメリカのオリジナルのリサ・トレヴァーのように。
 彼女の生物としてのDNAを継ぐ者はいないが、彼女が生み出したGウィルスを受け継ぐ者はここにいる。
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“私立探偵 愛原学” 「藤野での一夜」

2022-06-15 16:05:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月29日18:00.天候:雨 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター本館1F食堂]

 部屋に荷物を置いて、それから私達は食堂に向かった。
 合宿所ではあるが、頼めば夕食時にビールを飲むことは可能。
 また、自販機コーナーにもビールやタバコの自販機がある。
 ここが学生向けではなく、社会人向けの合宿所であることが分かる。
 夕食にはトンカツ定食と煮魚が出た。
 御飯と味噌汁はお代わり自由で、お櫃が2つと味噌汁の入った鍋が2つ出て来た。
 5人分の食事としては多いと思うが、多分リサ達の存在を意識してのことだろうと思われる。

 愛原:「今日はもう面会時間を過ぎているが、明日の朝8時半から面会できるそうだ。午前と午後の2回。午前は11時半まで。午後は13時から16時まで」

 私は食事をしながら、上野姉妹に言った。

 高橋:「まるでムショの面会時間ですね」
 愛原:「この辺は、そういった施設の時間を参考にしてるんだろうな」

 守衛さん達の階級も刑務官に準じていたり、やはりここは国家公務員を対象にした研修施設は隠れ蓑で、実際は政府主導のBOW研究施設か。
 私達がいつ来ても、このセンターを使っている他の人達と会ったことはない。
 一応、平日は使用されることがあるらしいが……。
 尚、この食堂の真下の地下階には研究施設の食堂があって、食事はここの厨房で作られた物が配膳用エレベーターで下ろされる仕組みである。

 上野凛:「じゃあ、明日は……」
 愛原:「キミ達は朝一でお母さんと面会すればいいし、俺達はリサに付き添って研究施設に行くよ」
 凛:「分かりました」

 上野姉妹の母親、上野利恵の罪状は、夫であり、この姉妹の父親でもあった人間男性を食い殺した既遂罪と、私を食い殺そうとした未遂罪である。
 人間なら死刑になっても良さそうな案件(殺人罪と殺人未遂罪)だが、政府のモルモットになることを条件に無期禁固(または懲役)刑に処されている。
 但し、BOWである為、人間と同じ裁判を受けるのではなく、そこは動物と一緒である(上野利恵に戸籍が無かったからだろう。尚、それはリサも同じ。上野姉妹には戸籍がある)。

[同日20:00.天候:雨 同センター本館B1F・小浴場]

 夕食の後、私達は入浴することにした。
 小浴場といっても洗い場は7つくらいあって、風呂釜は3人くらいなら余裕で足を伸ばせる広さがある。

 高橋:「先生!この不肖の弟子、高橋が!先生の、あ!お背中を、あ!お流し奉り候~也~!!」
 愛原:「フザけてないで、さっさとやってくれ。後がつかえてるんだからな」
 高橋:「……あ、はい。失礼します」

 大浴場に行けば、いつでもどこでも高橋の背中流しが付いて回る。

 愛原:「……なあ、高橋」
 高橋:「何すか、先生?今日は変な所、触ってないスよ?」
 愛原:「今日『は』って何だよ!?今日『は』って!……読者が誤解するからやめろ」
 高橋:「さ、サーセン。で、何スか?」
 愛原:「いや、何かさ、妙な気配を感じるとは思わないか?」
 高橋:「マジっスか!?それは名探偵のカンってヤツっスか!?」

 高橋は何も感じないのか。

 愛原:「勘なのかどうかは分からないけど、何か視線を感じるんだよなぁ……」
 高橋:「何ですって!?」

 私は周りを見渡したが、そんな人物などどこにもいない。
 ここには私と高橋だけだ。
 例えて言うなら、幽霊に見られているといった感じか。
 いや、そんな不確かなものではない。

 愛原:「昔、霧生市内を走り回っていた頃、そういうことがあったような気がする。大山寺……いや、霧生開発センターを走り回っている時だったかもしれない」
 高橋:「リサ!オマエか!?」

 高橋は何処とも無く叫んだ。
 だが、リサの反応は無い。
 恐らくだが、リサ達は今、部屋にいるはずだ。
 念の為、高橋に脱衣所や窓の外を確認してもらったが、怪しい人物はいなかった。
 だが、私達は知らなかった。
 ダクトの中から、私の裸体を食い入るように見ていた『目』があったことを……。

[同日20:30.天候:不明 国家公務員特別研修センター地下研究施設・BOW収容施設]
(ここのみ三人称です)

 見た目は人間用の独居房。

 上野利恵:「はぁ……はぁ……!愛原先生……ステキだわ……!」

 未亡人となり、高校生と中学生になったばかりの娘2人を抱えている身でありながら、『人食い鬼』となった彼女の性欲はまだまだ衰えていないようだ。
 リサとは違う経緯で『鬼』となった彼女には、リサとは違う変化をすることができた。
 それは片目を外して、ダクトや小さな隙間から自由に移動させて、その先の視覚を得るというもの。
 利恵は看守から今夜、愛原達が上の研修センターに前泊していることを聞いていた。
 上のセンターの入浴時間も知っていたので、片目を男湯に潜ませていたのだった。

 利恵:「はっ!?」

 そこへ看守の気配を察知した。
 急いで片目を戻す。

 看守:「就寝30分前!在室確認を行う!」
 利恵:「はい!異常ありません!」
 看守:「……明日は娘さん達との面会だからな?就寝時間になったら早く寝ろよ」
 利恵:「はい。ありがとうございます」
 看守:「娘さん達、感心だなぁ?東京に住んでるのに、わざわざこんな山奥まで来てくれて。なあ?」
 利恵:「はい。父親を早くに亡くしたもので、私しか親はいないもので……」
 看守:「それがいつまでもこんな所にいちゃイカンぞ。早く仮釈放が出るように頑張れよ」
 利恵:「はい」

 あくまでも人間とは違うので、どのタイミングで仮釈放が決定するのは不明である。
 それから就寝時間になり、布団に入った利恵は、片目に焼き付けた愛原の裸体を思い出して自慰に耽ったのだった。

[同日23:00.天候:晴 同センター2F・宿泊室]
(ここも三人称です)

 愛原は壁の向こうから時折聞こえる、壁をカリカリと引っ掻く音と、その向こうから感じる何とも言えない圧力で、あんまり眠れなかったという。
 それというのも……。

 リサ:「先生……先生……」

 リサはベッドに横になって、壁の向こう側で寝ているはずの愛原への想いを吐きながら壁を引っ掻いていたのだった。
 姿は鬼姿の第1形態になっている。
 雨はすっかり止み、空には月が見えるほどに晴れた。
 その月が満月に近い状態だった為、リサは覚醒したのである。
 但し、理性までは飛んでいないので、長く尖った爪で壁を引っ掻く程度で済んでいる。
 この壁をブチ破って、愛原の所へ行きたい衝動を抑えながら……。
 鬼の姉妹は、満月と同時に性欲もピークに達する。
 1人の男をその対象に想像しながら……。
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