報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「流出」

2023-09-02 20:12:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月10日16時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 愛原「ん?」

 2階の事務所で事務作業を続けていた私だったが、突然スマホからアラームが鳴り響いた。
 それはBSAAが独自に作ったアプリからだった。
 なので、そのアプリを落としている高橋のスマホも同時に鳴る。
 パールは今のところ、当事務所の臨時雇用の事務員という扱いである為、アプリのインストールが許可されていない。
 アプリでの警告の内容になるリサも同様である。
 リサにはリサ仕様のアプリがあるので。
 今のところ、リサだけであるようだ……。
 で、そのアラームの内容というのは……。

 愛原「『Tウィルス流出の恐れあり。直ちに防護服の着用並びに外出の自粛を!』だって?」
 高橋「ついに、東京にもTウィルスがばら撒かれたんスか!?」
 愛原「ば、バカな!?一体、誰が!?」
 高橋「……リサっスか?」

 高橋は上を指さした。

 愛原「なワケないだろw」

 今のリサはTウィルスを保有していない。
 Gウィルスと特異菌だけだ。
 かつては寄生虫も保有していたが、それも排除された。
 その寄生虫は、今になって『日本版プラーガ』という名前が付けられた。
 2004年にスペインの片田舎で発生したバイオハサード。
 これはウィルスではなく、ブラーガという寄生虫によるものだった。
 性質はやや違えど、支配種(リサ)、上位種(四天王経験者)、下位種(一般メンバー)というヒエラルキーを見事に構築し、有り得ないはずのブルマ復活を成功させたということで。

 高橋「じゃあ、誰がばら撒いたんですか?」
 愛原「それよりもパール、お前、気をつけろよ?お前は抗体が無い上、まだTウィルスワクチンを接種してないんだから」
 パール「明日、打ちに行きますけどね」
 愛原「そうだったな。Tウィルスのワクチンは、ゾンビ化する前だったら、ちゃんと効くから」
 パール「らしいですね」

 かつては初期症状(代謝機能の暴走による全身の痒み、発熱、知能の低下)が出た時点で手遅れとされていたが、今はゾンビ化さえしなければワクチンは有効とされている。
 ゾンビ化した場合、『医学的には死亡扱い』となる為。

 高橋「それと、俺もサツに出頭です」
 愛原「あ!?何したんだよ?」
 高橋「俺は何もしてません。昔、つるんでた元仲間がやらかしたんで、その事情聴取です」
 愛原「だから、何やったんだよ?」
 高橋「中央高速をバイクや車でちょっとフザけた上、パトカーに火ィ点けやがりまして。んでもってそのアホが1人、俺の名前を出しやがったんで、ちょっとサツまで来いと」
 愛原「俺も一緒に行こうか?」
 高橋「大丈夫っス。俺にはアリバイがありますから」
 愛原「いつの話だ?」
 高橋「日光で鬼の兄妹と戦った時ですよ。どうです?完璧なアリバイでしょ?」
 愛原「なるほど。で、中央道のどこだって?」
 高橋「山梨なんで、ちょっと車借りていいっスか?」
 愛原「アホか。電車で行ってこい」
 高橋「……へーい」
 愛原「お土産は桔梗信玄餅でよろしく」
 高橋「了解しました」

 私は事務所内のテレビを点けた。
 この時間、ワイドショーをやっているチャンネルに合わせると、やはり速報が流れていた。

〔「……繰り返し、お伝えします。先ほど16時頃、国連機関BSAAの発表によりますと、東京都墨田区内におきまして、警察車両が事故起こしたことで、積まれていたTウィルスのサンプルが漏れ出てしまったという知らせが入って来ました。墨田区の○×警察署に保管されていましたTウィルスのサンプルを、東京大学に輸送途中、大型トラックに追突されたものです。この事故で、Tウィルスを積んでいた警察車両の後部が大破。積み荷のコンテナが破損したことにより、その中に入っていたTウィルスのサンプルの容器が破産し、車外に流出したとのことです」〕

 愛原「や、ヤベェ……!」
 高橋「何やってんだ……」

〔「尚、BSAA極東支部日本地区本部の発表によりますと、このTウィルスというのは長期に渡って保管されていたこともあり、かなり弱毒化されているとのことです」〕

 愛原「えっ、そうなの?」

〔「従いまして、○×県霧生市のような大規模な生物災害は起きないものと考えられているそうです。但し、例えば、昆虫や鳥類などが感染した場合、何らかの影響があるとの見方を強めています」〕

 愛原「昆虫ったって、こんな真冬に昆虫なんかいないだろうが……」
 高橋「でも先生、下水道とかにはゴキとかクモとかいますよ?」
 愛原「あ、そうか……」

 Tウィルスに感染してゾンビ化するのは、哺乳類のみ。
 虫類は感染すると、巨大化するという性質がある。
 蜘蛛の場合、網を張るタイプは網を張らなくなり、獲物を求めて自ら歩き回るタイプになる。
 要はハエトリグモとかアシダカグモのような感じだ。
 霧生市の霧生電鉄霞台団地駅には、そのようなタイプの蜘蛛がいた。

 愛原「それでも、他の季節に比べれたら、まだ数は少ないだろう。真冬なのが幸いだったな」
 高橋「そうですね」

 鳥類の場合は感染すると、凶暴化する。
 霧生市では見かけなかったが、アメリカのラクーン市では、カラスが積極的に人間を襲っていた例が報告されていたという。
 中には、窓ガラスをブチ破り、中にいた人間に襲い掛かった例もあったとのこと。
 尚、いずれにしても、感染拡大の原因となる。
 襲われてケガでもしたら、その傷口からウィルスが入って感染するからだ。
 私は元から抗体があり、高橋も後にワクチンを接種して抗体を手に入れている。
 テレビでは念の為、屋外で飼育しているペットなどは屋内に入れ、老人や病人、子供などの免疫の弱い人も、滅菌が終了するまでは外出を自粛するようにということが伝えられた。
 コロナの第1波や第2波並みの警戒に、プラス他の動物にも注意せよということか。
 とんでもないことになったな。

 愛原「! そうだ。上にいる淀橋さんや小島さんに、早く帰るように言っておこう」

 私はスマホを手に取ると、リサにLINEでその旨、送信した。
コメント
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