[2月9日20時18分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東海道新幹線742A列車1号車内→JR東京駅]
〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、東京、東京です。到着ホームは15番線、降り口は左側です。本日、お忘れ物が大変多くなっております。網棚、座席の上、網ポケットの中など、今一度よくお確かめください。携帯電話など、車内マナーへの御協力ありがとうございました。また、お降りの際、電車とホームの間が広く空いている所がございます。お足元にも、ご注意ください。本日も新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕
品川駅を出た“こだま”742号は、今度は東海道線や山手線などと並走する。
ここまで来たら、もう帰って来たという気になる。
私は席を立ち、網棚に乗せていたコートを羽織った。
そうしているうちに、列車がホームに入線する。
14番線と15番線ホームは、16番線から19番線ホームと比べても、ホームが湾曲している。
しかもよく見ると、東北新幹線などのJR東日本のホームと並行している。
これはかつて国鉄時代に、東海道新幹線と東北新幹線の相互直通計画があった際、それ用ホームとして設計されたから……という噂があるが、これはガセ。
実際は急増する東海道新幹線の列車本数に対応する為、国鉄時代に東北新幹線用のホームを融通してもらったからというのが実話である。
まあ、旧国鉄時代でないとできないことだろう。
旅客導線としてはそんなに違和感が無いように駅は改良されたが、バックヤード的には歪な箇所も存在する。
これ以上は作者の警備機密に関わるので、お話しできない。
〔とうきょう、東京です。とうきょう、東京です。ご乗車、ありがとうございました〕
列車からホームに降りると、私達は階段の方に向かって歩き出した。
高橋「先生、ちょっと一服して行っていいですか?」
高橋はホーム上の喫煙所を指さして言った。
愛原「しょうがないな。じゃあ、俺は下のトイレに行ってるから、そこで落ち合おう」
高橋「分かりました。ダッシュで行ってきます!」
愛原「ああ」
高橋はホーム上の喫煙所に小走りに向かい、私は下りエスカレーターに乗った。
そして、スマホの画面を見る。
実はさっき、リサからLINEが来ていたのだ。
その内容は、『もう東京駅着いた?』であった。
そこで私は今、着いたから、これからタクシーに乗って帰る旨を伝えた。
[同日20時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]
東京駅からタクシーに乗り、それで事務所まで戻る。
高橋「チケットでオナシャス」
運転手「はい、ありがとうございます」
愛原「お前も、こういうのに慣れてきたな」
高橋「あざっす」
チケットでの支払いは高橋に任せ、私は先にタクシーを降りた。
すると、正面のガラス扉が内側から開けられる。
リサ「お帰りィーっ!」
そこからリサが飛び出してきた。
真冬だというのに、上はパーカーだけ羽織り、その下は体操服とブルマであった。
リサ「日帰りになってくれて嬉しい!」
そう言ってリサが抱き着いてくる。
愛原「日帰りになった理由が大変だったんだからな」
私はそう言って、リサを引き剝がした。
そうしているうちに、高橋もタクシーから降りて来る。
高橋「先生。チケットの控えと領収証です」
愛原「ああ、ありがとう」
タクシーがドアを閉めて、走り去った。
高橋「アプリの支払いができないタクシーでしたねぇ……」
愛原「たまに、そういうのもあるさ。それより中に入ろう」
リサ「寒かったでしょお?一緒にお風呂入ろ!」
愛原「ええっ!?」
高橋「くぉらっ!」
リサ「夫婦が一緒にお風呂入って何が悪いの?」
高橋「誰が夫婦だ!」
愛原「悪いな、リサ。今日は先に1人で入っててくれ。これから、事務作業があるんだ」
リサ「ええー……」
リサは残念そうにした。
愛原「これ、お土産。富士山サブレーな。おやつの時間の時にでも食べてくれ」
リサ「わぁ!」
愛原「じゃあ、報告書作成するから高橋も手伝ってくれ」
高橋「了解っス!コーヒー淹れましょうか?」
愛原「あー……じゃあ、お願いしようかな」
リサ「わたしは?わたしは?」
愛原「お前は学校に行く準備でもしてろ。もうすぐ学年末テストなんだろ?」
リサ「うん。来週」
愛原「来週かよ。勉強しないとマズいだろ」
リサ「まあ、まだ明日、学校あるし」
愛原「だったら……」
リサ「お兄ちゃん、コーヒーはわたしが淹れるね!」
高橋「なぁにぃ!?俺の仕事取るんじゃねぇ!」
リサ「お兄ちゃんの分も淹れるから」
高橋「な、なに!?」
私は溜め息をついた。
愛原「分かった分かった。じゃあ、コーヒー淹れはリサにお願いするから、コーヒー淹れたら寝るんだぞ」
リサ「はーい」
リサは紺色のブルマを穿いた尻をプルンプルン振るわせて答えた。
高橋「先生、報告書って、どうしますか?」
愛原「やっぱり、ガス爆発のせいで予定が狂ったわけだから、そこから書いた方がいいだろう。民宿の近くまで行くバスに乗ったところまでは、予定通りだったんだから」
高橋「そうっスね」
愛原「現場の写真……あ、そうだ!リサ、俺宛てに何か届いてなかったか?」
リサ「いや、見てないねぇ……」
高橋「俺、ちょっとポスト見てきます!」
愛原「ああ、頼む」
高橋は再び事務所を出ると、玄関の方に向かった。
リサはネスカフェバリスタで、一杯ずつコーヒーを淹れている。
リサ「はい、先生のコーヒー」
愛原「ありがとう」
リサ「先生、少しお酒の臭いがするね。飲んできたの?」
愛原「ちょ、ちょっとだけな。あの後、水やお茶を飲んだけど、まだ臭うかな?」
リサ「わたしはね。お兄ちゃんはどっちかっていうと、タバコ臭い」
愛原「あー、まあ、そうか。まあ、今夜はもう飲まないから、明日までには抜けるだろう。早いとこリサも、高橋にコーヒー淹れてやれよ」
リサ「分かった」
リサが給湯室に行くとのと、高橋が戻って来るのは同時だった。
高橋「先生!ありました!」
愛原「本当にあったか!」
茶封筒の中にあり、開けると、USBメモリーが入っていた。
それをPCに接続すると、正に高野君が見せてくれた動画が保存されていた。
愛原「あとはこれを明日、善場主任に渡すだけだな」
高橋「アネゴに会ったことは内緒にするんスね?」
愛原「一応な」
リサ「高野さんに会ったの?」
愛原「向こうでちょっとな。重要な情報を手に入れたんだ。一応、高野君に会ったことは、善場主任には内緒な?」
リサ「分かったよ。はい、コーヒー」
高橋「おう、サンキュ」
愛原「急いで仕上げるぞ。明日の午前中に提出だ」
高橋「了解です」
とはいうものの、結局作成が終わったのは、日付が変わる前くらいであった。
〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、東京、東京です。到着ホームは15番線、降り口は左側です。本日、お忘れ物が大変多くなっております。網棚、座席の上、網ポケットの中など、今一度よくお確かめください。携帯電話など、車内マナーへの御協力ありがとうございました。また、お降りの際、電車とホームの間が広く空いている所がございます。お足元にも、ご注意ください。本日も新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕
品川駅を出た“こだま”742号は、今度は東海道線や山手線などと並走する。
ここまで来たら、もう帰って来たという気になる。
私は席を立ち、網棚に乗せていたコートを羽織った。
そうしているうちに、列車がホームに入線する。
14番線と15番線ホームは、16番線から19番線ホームと比べても、ホームが湾曲している。
しかもよく見ると、東北新幹線などのJR東日本のホームと並行している。
これはかつて国鉄時代に、東海道新幹線と東北新幹線の相互直通計画があった際、それ用ホームとして設計されたから……という噂があるが、これはガセ。
実際は急増する東海道新幹線の列車本数に対応する為、国鉄時代に東北新幹線用のホームを融通してもらったからというのが実話である。
まあ、旧国鉄時代でないとできないことだろう。
旅客導線としてはそんなに違和感が無いように駅は改良されたが、バックヤード的には歪な箇所も存在する。
これ以上は作者の警備機密に関わるので、お話しできない。
〔とうきょう、東京です。とうきょう、東京です。ご乗車、ありがとうございました〕
列車からホームに降りると、私達は階段の方に向かって歩き出した。
高橋「先生、ちょっと一服して行っていいですか?」
高橋はホーム上の喫煙所を指さして言った。
愛原「しょうがないな。じゃあ、俺は下のトイレに行ってるから、そこで落ち合おう」
高橋「分かりました。ダッシュで行ってきます!」
愛原「ああ」
高橋はホーム上の喫煙所に小走りに向かい、私は下りエスカレーターに乗った。
そして、スマホの画面を見る。
実はさっき、リサからLINEが来ていたのだ。
その内容は、『もう東京駅着いた?』であった。
そこで私は今、着いたから、これからタクシーに乗って帰る旨を伝えた。
[同日20時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]
東京駅からタクシーに乗り、それで事務所まで戻る。
高橋「チケットでオナシャス」
運転手「はい、ありがとうございます」
愛原「お前も、こういうのに慣れてきたな」
高橋「あざっす」
チケットでの支払いは高橋に任せ、私は先にタクシーを降りた。
すると、正面のガラス扉が内側から開けられる。
リサ「お帰りィーっ!」
そこからリサが飛び出してきた。
真冬だというのに、上はパーカーだけ羽織り、その下は体操服とブルマであった。
リサ「日帰りになってくれて嬉しい!」
そう言ってリサが抱き着いてくる。
愛原「日帰りになった理由が大変だったんだからな」
私はそう言って、リサを引き剝がした。
そうしているうちに、高橋もタクシーから降りて来る。
高橋「先生。チケットの控えと領収証です」
愛原「ああ、ありがとう」
タクシーがドアを閉めて、走り去った。
高橋「アプリの支払いができないタクシーでしたねぇ……」
愛原「たまに、そういうのもあるさ。それより中に入ろう」
リサ「寒かったでしょお?一緒にお風呂入ろ!」
愛原「ええっ!?」
高橋「くぉらっ!」
リサ「夫婦が一緒にお風呂入って何が悪いの?」
高橋「誰が夫婦だ!」
愛原「悪いな、リサ。今日は先に1人で入っててくれ。これから、事務作業があるんだ」
リサ「ええー……」
リサは残念そうにした。
愛原「これ、お土産。富士山サブレーな。おやつの時間の時にでも食べてくれ」
リサ「わぁ!」
愛原「じゃあ、報告書作成するから高橋も手伝ってくれ」
高橋「了解っス!コーヒー淹れましょうか?」
愛原「あー……じゃあ、お願いしようかな」
リサ「わたしは?わたしは?」
愛原「お前は学校に行く準備でもしてろ。もうすぐ学年末テストなんだろ?」
リサ「うん。来週」
愛原「来週かよ。勉強しないとマズいだろ」
リサ「まあ、まだ明日、学校あるし」
愛原「だったら……」
リサ「お兄ちゃん、コーヒーはわたしが淹れるね!」
高橋「なぁにぃ!?俺の仕事取るんじゃねぇ!」
リサ「お兄ちゃんの分も淹れるから」
高橋「な、なに!?」
私は溜め息をついた。
愛原「分かった分かった。じゃあ、コーヒー淹れはリサにお願いするから、コーヒー淹れたら寝るんだぞ」
リサ「はーい」
リサは紺色のブルマを穿いた尻をプルンプルン振るわせて答えた。
高橋「先生、報告書って、どうしますか?」
愛原「やっぱり、ガス爆発のせいで予定が狂ったわけだから、そこから書いた方がいいだろう。民宿の近くまで行くバスに乗ったところまでは、予定通りだったんだから」
高橋「そうっスね」
愛原「現場の写真……あ、そうだ!リサ、俺宛てに何か届いてなかったか?」
リサ「いや、見てないねぇ……」
高橋「俺、ちょっとポスト見てきます!」
愛原「ああ、頼む」
高橋は再び事務所を出ると、玄関の方に向かった。
リサはネスカフェバリスタで、一杯ずつコーヒーを淹れている。
リサ「はい、先生のコーヒー」
愛原「ありがとう」
リサ「先生、少しお酒の臭いがするね。飲んできたの?」
愛原「ちょ、ちょっとだけな。あの後、水やお茶を飲んだけど、まだ臭うかな?」
リサ「わたしはね。お兄ちゃんはどっちかっていうと、タバコ臭い」
愛原「あー、まあ、そうか。まあ、今夜はもう飲まないから、明日までには抜けるだろう。早いとこリサも、高橋にコーヒー淹れてやれよ」
リサ「分かった」
リサが給湯室に行くとのと、高橋が戻って来るのは同時だった。
高橋「先生!ありました!」
愛原「本当にあったか!」
茶封筒の中にあり、開けると、USBメモリーが入っていた。
それをPCに接続すると、正に高野君が見せてくれた動画が保存されていた。
愛原「あとはこれを明日、善場主任に渡すだけだな」
高橋「アネゴに会ったことは内緒にするんスね?」
愛原「一応な」
リサ「高野さんに会ったの?」
愛原「向こうでちょっとな。重要な情報を手に入れたんだ。一応、高野君に会ったことは、善場主任には内緒な?」
リサ「分かったよ。はい、コーヒー」
高橋「おう、サンキュ」
愛原「急いで仕上げるぞ。明日の午前中に提出だ」
高橋「了解です」
とはいうものの、結局作成が終わったのは、日付が変わる前くらいであった。