報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「旅行1日目」

2024-01-23 20:43:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月24日15時50分 天候:曇 東京都台東区上野 JR東北新幹線6033B列車1号車内]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、上野です。上野を出ますと、次は、大宮に止まります〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから2泊3日の予定で、仙台に帰省する予定だ。
 今は私と助手の高橋、そして住み込み事務員のパールと一緒に新幹線に乗っている。
 実質的に、帰省にかこつけた慰安旅行だな。
 今、リサはこの列車には乗っていない。
 彼女は学校が終わってからすぐ乗るようにする為、上野駅でこの列車を待っているはずである。
 何事も無ければ良いのだが。

〔「まもなく上野、上野です。お出口は、左側です。上野を出ますと、次は大宮に止まります。上野駅からご乗車のお客様がいらっしゃいます。空いている座席には、お荷物など置かぬようお願い致します」〕

 列車が地下深くのホームに停車する。
 新幹線の駅で、地下ホームにあるというのは珍しいだろう。
 私は上野駅以外に、あまり思い当たらない。

 高橋「先生、リサが乗って来ます」
 愛原「そうか。ちゃんと間に合ったようだな」

 全車両指定席の“はやぶさ”号では、上野駅で下車する乗客もいまい。
 ドアが開くと、リサはすぐに乗って来た。

 リサ「先生!」

 リサは制服姿に、何やら食べ物や飲み物の入ったビニール袋を持っていた。

 愛原「ちゃんと乗れたな。よしよし」

 すぐに発車時間になる為、ホームから発車ベルの音が聞こえて来る。
 私は一瞬席を立つと、リサを窓側に座らせた。
 その隣に私が座る。
 高橋とパールは、その後ろに座っていた。
 リサは自分の荷物をヒョイと持ち上げて、網棚に乗せた。
 小柄な体なので、持ち上げる時にピョッと背伸びをするところが可愛い。
 荷物を乗せると、列車はドアを閉めて発車した。
 リサは座席からテーブルを出して、おやつと飲み物を置いた。

 愛原「しっかり買い食いか」
 リサ「学校帰りはお腹が空くんだよ。……あ」
 愛原「何だ?」

 リサは着替えなどの入っているキャリーバッグではなく、網棚には置かなかった通学鞄の中を開けた。
 そこから、充電器を取り出す。

 リサ「スマホ充電する」
 愛原「窓の下にあるよ、コンセント」

 窓の下にあるので、実質的に窓側席専用のようなものか。
 リサは前屈みになると、充電コンセントを挿した。

 リサ「あとはWiFiに接続」
 愛原「あー、新幹線にはWiFiがあるな……」

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も東北新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は、“はやぶさ”号、仙台行きです。次は、大宮に止まります。お客様にお願い致します。車内はデッキ、トイレも含めまして全車両禁煙です。……〕

 リサ「『新幹線なう』と」

 リサはデッキに出るドアの上にあるLED表示板を撮影して、それをLINEにアップした。
 そのLINEとは、『魔王軍』のグループLINEである。

 リサ「ヨドバシとコジマとレイチェルにお土産頼まれた」
 愛原「何だ?」
 リサ「萩の月」
 愛原「萩の月か」
 リサ「甘くて美味しいんだって」
 愛原「そうだな。もう、仙台定番の土産だぞ。ほら」

 私は進行方向右側を指さした。
 列車はトンネルから出て、高架線を走行している。
 在来線で言えば、田端~上中里間くらいだろうか。
 その辺りの進行方向右側には、萩の月の大きな看板が掲げられているのだ。

 リサ「おー!あれがコジマの言ってた看板か」
 愛原「そうか。小島さん、王子だったか東十条だかに住んでるんだっけか」
 リサ「そうそう。朝は東十条始発の各駅停車で座って行くんだって」
 愛原「始発駅、いいなぁ」

 但し、東十条始発の電車は、朝方は6時56分発で無くなるので、それに乗って来たとしても、上野にはかなり早く着く。
 その為、小島さんは予習の時間に当てているのだとか。
 日直の仕事も、元々早く来てるので苦にならないと。
 『魔王軍』の中では、優等生なのだ。

 リサ「ヨドバシも北千住だから、地下鉄で始発駅だよね」
 愛原「あー、確かにな」

 たまにJRで帰ることもあるという。
 日比谷線が止まった時とか、今回みたいにリサの見送りついでとか。
 JRはJRで上野始発の電車があるので、こちらも座って帰れるわけだ。

 愛原「何だな……。お前の為に、始発駅の近くに引っ越しても良かったなぁ」
 リサ「わたしは別にどっちでもいいけどね」

 リサはそう言うと、おやつに買ったビーフジャーキーに噛み付いた。

[同日17時17分 天候:曇 宮城県仙台市青葉区中央 JR東北新幹線6033B列車1号車内→JR仙台駅]

 “はやぶさ”号の最高時速は320キロ。
 大宮以北でその真価が発揮される。
 ドアの上の表示板にも、『只今、時速320kmで走行中です』と表示されたりする。
 普通鉄道では最高速度の京成スカイライナーはその半分だが、特にそういった表示がされた記憶は無い。
 今は徐々に速度を落としている。
 ATCによる自動ブレーキで減速しているといった感じだ。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と東西線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 リサ「だいぶ、外が暗くなってきた」

 リサは自分の顔を窓ガラスに押し付ける勢いで、窓の外を見た。
 それまで何にも無かった車窓に、少しずつ街の明かりが見えてくるようになる。

 愛原「少しずつ日は長くなっているんだろうが、今日は曇りだからかな」
 リサ「なるほど。雪、降るのかな?」
 愛原「仙台の平野部は雪が少ないからな。まあ、天気が悪くなったら雪が少し降るって感じかな」
 リサ「ふーん……」

〔「……11番線に入ります。お出口は、右側です。ホーム進入の際、ポイント通過の為、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、ご注意ください。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 電車が更に速度を落とし、在来線電車とそんなに変わらないスピードて走る頃、車窓はもう市街地の風景になる。

 愛原「荷物下ろすか」

 私は席を立って、まずは自分の荷物を下ろし、座席の上に置いた。
 それから、リサの荷物。

 愛原「はいよ」
 リサ「ありがとう!」
 高橋「外は寒そうっスね」
 愛原「そりゃ東北だからな。東京よりは寒いよ」

 列車は仙台駅・新幹線下り副線ホームに入線した。

〔ドアが開きます〕

 東海道新幹線のドアチャイムと違い、東北新幹線では自動放送で持ってドアが開閉する。

〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。階段、エスカレーターご利用のお客様は……」〕

 ホームに降りると、確かに気温は東京駅より低いように思われた。
 ホームでアナウンスする駅員、東京駅では着ていなかったのに、仙台駅ではコートを着ている。

〔「……11番線に到着の電車は、車庫に向かう回送列車です。ご乗車にはなれませんので、ご注意ください」〕

 ここで言う車庫とは、新利府駅前にある車両基地のことだろう。
 確かに在来線でも行けるが、博多南線のように営業運転すれば、利府方面の需要が……無いか。
 博多南線の場合、それまで在来線すら無かったから需要があるのだ。

 愛原「あー、確かにちょっと冷えるな」

 私はコートのボタンを一番上まで止めた。
 風は少し吹いていて、それが東京より冷たい。
 こんな時でもリサはブレザーの上には、何も羽織っていない。
 せいぜいマフラーを締めているだけ。
 ブレザーの下には、ニットのベストを着用しているだけである。

 高橋「先生、ここからどうするんスか?」
 愛原「地下鉄に乗り換えるよ。ついて来てくれ」

 私達はエスカレーターに乗り、まずは改札口に向かった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「旅行出発当日」

2024-01-23 16:14:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月24日08時15分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校2年5組]

 淀橋「へー!魔王様、今日出発なんだー!」
 リサ「うん。学校が終わったら、すぐに」
 小島「制服のままで行くってこと?」
 リサ「今日のところはね。でも私服も持って行くから、愛原先生の実家で着替えるよ」
 淀橋「愛原先生の実家って、太いんでしょ?」
 リサ「太い?」
 小島「要は、お金持ってるってこと」
 リサ「どうなんだろう?でも確かに駐車場を経営していて、裏庭には地下空洞まであったりするしねぇ……」
 淀橋「地下空洞!?」
 リサ「それも、地下鉄のトンネルと直結」
 小島「逆に愛原先生の実家って、何やってるの?」
 リサ「先生曰く、普通のサラリーマンで、今は悠々年金生活」
 小島「いや、聞く限り、家の状態からして、そういう風には想像できないんだけど」
 淀橋「いつ帰ってくるの?」
 リサ「今週の日曜日。要は2泊3日だね」
 淀橋「いいなぁ。制服で新幹線なんて、修学旅行みたい」
 リサ「逆にわたし達、修学旅行で新幹線に乗ることは無かったね」
 小島「無かったねぇ……」

 小島は眼鏡を外し、フッとレンズに付いた埃を吹いた。

 淀橋「中等部の時に乗ったあれは?」
 リサ「あれはスキー合宿でしょ。新潟に行った時の」
 小島「ガーラ湯沢ね。修学旅行とはまた別だよね。確かに、上越新幹線で行ったけど」
 淀橋「本当だったら中3の時、修学旅行で関西方面に行くことになっていたから、その時新幹線に乗れるはずだったんだけどね」

 残念ながら、コロナ禍で中止になった。
 しかし、そこが中高一貫校のメリットで、コロナが少し落ち着いた次の年、代替修学旅行が行われた。
 とはいえ、南会津方面になってしまったが。
 新幹線ではなく、今や珍しい夜行列車に乗れたことが最大の思い出だという生徒もいる。

 リサ「で、来年度は飛行機で沖縄と」
 淀橋「羽田から飛行機だから良かったね。LCCでケチられなくて」
 小島「いや、分かんないよ」
 淀橋「えっ?」
 小島「羽田からでも、LCC出てるし」
 淀橋「マジ!?」
 小島「マジです」
 リサ「愛原先生が、『せめてスカイマークにでも乗れればなぁ』とか言ってたけど?」
 淀橋「PTAでそんなこと言ってるの?」
 小島「いや、スカイマークなら全然マシだよ。あれ、厳密にはLCCじゃないから」
 淀橋「斉藤……じゃなかった。えー……」
 リサ「ガナハ」
 淀橋「そうそう!我那覇さんと会うんだね?」
 リサ「そのつもり。エレンのヤツ、わたし達と同じホテルに泊まるつもりでいやがる」
 小島「いいのかな?飛行機代はヘタするとケチられるかもしれないけど、ホテルは豪華なんでしょ?」
 リサ「愛原先生が、『海の近くのリゾートホテルに泊まりたい』って言ったら、何だか校長先生達がノリノリだったみたいだよ」
 淀橋「何で校長が出て来るの!」
 リサ「わたしが校長先生のレクサス反転したから、目ェ付けられてるみたい」
 小島「また女子レスリング部と勝負したみたい」
 淀橋「懲りないねぇ……」

[同日15時30分 天候:曇 東京都台東区上野 JR上野駅改札外コンコース→新幹線改札内コンコース]

 学校が終わってから、リサとその取り巻き達は上野駅まで行った。

 レイチェル「今度は東北新幹線ですか。リサはよく乗りますね」
 リサ「先生が乗せてくれるんだよ。いいでしょー?」
 淀橋「お土産よろしくね」
 リサ「何がいい?」
 淀橋「“かもめの玉子”」
 小島「それ、仙台じゃないし!」
 淀橋「えっ、違うの?」
 小島「どっちかっていうと、三陸の方」
 淀橋「えーと……」
 小島「とにかく、仙台のお土産じゃない」
 淀橋「そ、そう」
 小島「やっぱり“萩の月”でしょ」
 淀橋「そう、それ!聞いたことある!」
 小島「尾久駅辺りの上に、でっかい看板があるでしょ?」
 淀橋「あったっけ?」
 リサ「後で確認しとく。先生は『笹かまぼこ買って行きたい』とか言ってたな」
 小島「ああ、あれ。愛原先生のことだから、お酒のつまみにするつもりでしょ。うちのお父さんも、仙台に出張に行った時、そうしてたから」
 リサ「なるほど。じゃあ、“萩の月”買って来る」
 淀橋「あざっす!」

 リサはコインロッカーから荷物を取り出すと、そこのポケットに入れていた新幹線のキップを取り出した。

 リサ「15時50分発、“はやぶさ”33号、仙台行き。1号車」
 レイチェル「1番前の車両ですか?」
 小島「いや、1号車だと1番後ろだね」
 レイチェル「OK.ちゃんと決まりは守っていますね」
 リサ「先生はそういうの、ちゃんと守る人だから」

 リサはキップを制服のブレザーのポケットに入れた。
 そして、まずは在来線の改札口へ向かう。
 他の3人も、自分の通学定期なら、在来線コンコースにまでは入れる。
 小島や淀橋は京浜東北線や常磐線でそのまま帰ればいいし、レイチェルも山手線で秋葉原までなら日比谷線に乗り換えることができる。
 そして、新幹線改札口でお別れ。

 

 小島「それじゃ気をつけてね」
 淀橋「お土産よろしく!」
 レイチェル「何かあったら、ヘリで駆け付けます」
 リサ「それじゃ、行ってきまーす」

 リサはキップを自動改札機に突っ込んだ。
 ゲートが開くと、リサは新幹線コンコースに入った。
 そして、『魔王軍』らの見送りを受けて、新幹線ホームに向かった。

 

 リサ「地下深いな。何か、鬼が出て来そう」

 長いエスカレーターで地下ホームに向かう。
 地下にある新幹線ホームというのも、珍しいのではないだろうか。

 リサ「NewDays発見!」

 リサは人間形態をしていたが、コンコース内にある売店を見つけると、一瞬だけ瞳を赤く光らせた。

 リサ「まだ時間あるし、おやつとジュース買って行こー!」

 リサはスタコラとNewDaysに入って行った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする