[2月24日21時00分 天候:曇 宮城県仙台市若林区某所 愛原家地下1階・愛原公一の隠れ家]
私とリサは公一伯父さんの夕食を下げに向かった。
愛原公一「おー、来たか。節子さんの料理は美味かったと伝えておいてくれ」
節子とは私の母親の名前である。
愛原学「あ、うん。水とかはどうしてるの?」
公一「ペットボトルの水を差し入れしてもらっとるよ。あとはそれで茶とかコーヒーとか、適当に作って飲んでおる」
学「そうなんだ」
公一「それより、お前が連れて来た2人の若者達じゃが……」
学「うん?」
公一「本当に、お前の事務所の従業員で間違い無いのじゃな?」
学「そうだけど、どうして?」
公一「本当に何も知らんのか?」
学「な、何だよ?」
公一「『知らぬが仏』というしな」
学「そりゃあ2人とも、服役の経験があるけどさ……」
公一「フム……」
学「日野博士のことを知らないんじゃ、しょうがないよ」
公一「アンブレラの研究所にいたのでは、ロクでもない研究者じゃっただろうがな」
リサ「それはそうですね」
リサは手に持っていたノートを取り出した。
リサ「これ、学校の新聞部から借りて来たノートです。昔の新聞部の先輩、日野さんが書いた日記と思われるものです」
公一「日記とな?」
リサ「『恨みのノート』なんですけど、後半辺りからヤバいことが書いてあったので……」
学「よくこんなのあったな?」
リサ「部長代行の先輩のノートだったから、捨てるに捨てれなかったみたいだよ」
学「そうなのか」
パラパラとノートの中を見ていた公一伯父さんだったが、リサの言う後半辺りでその速度が落ちた。
公一「ふーむ……」
学「何か、マズいことでも書いてあった?」
公一「そうじゃな。日本アンブレラは、色々な薬を開発しておった」
学「そりゃ製薬会社だからね」
公一「この日野とやらは、父親もまた日本アンブレラの研究員じゃったと」
学「らしいね」
公一「その研究員は、精神病関係の薬を開発するチームにおったようじゃ」
学「精神病?向精神薬とか?」
公一「そうじゃな。じゃが、そこはあのアンブレラ。ただの薬だけを開発するわけがない」
学「うんうん」
公一「どうもこの日野という男、父親から試薬を受け取って被験者となっていたらしい」
学「ええっ!?」
公一「普段は『いい人』じゃったらしいが、その『いい人』を演じられたのも、薬によるものじゃったようじゃ」
学「そうだったのか……」
公一「そして、事態はマズい方向へと向かう」
学「なに?」
公一「薬でも抑えられないほどの殺したい相手を薬殺すると、足が付いてしまう。さあ、どうしよう?みたいなことが書いてある」
学「どうしようたって、どうしようもないだろう」
公一「自制心を壊す薬がアンブレラにはある。それを飲めば、たちどころに自制心が無くなり、人を殺すことにも何の躊躇いも無くなるという」
学「ま、まさか、日野という男はそれを……」
公一「手に入れようとしたのじゃが、さすがに情報が無い。そこで当時、学校の科学講師をやっておった白井伝三郎に何としてでも話を聞こうということで……それで日記は終わっとる」
学「まんまと白井の罠に嵌まったってことか。それにしても、色んな薬があったんだね」
公一「あるじゃろうな。アメリカのアンブレラ本体はウィルス研究に特化しておったが、日本アンブレラはウィルス研究はサブで、メインは製薬じゃ。そのおかげで学、お前がバイオハザードに巻き込まれた霧生市でも、薬が豊富にあったじゃろう?」
学「そういえば……」
ハーブも沢山あった。
リサ「これがヒントになりませんかね?」
公一「どこの部門にいたのか分かれば、そこから辿れば行き着くじゃろうな。じゃが、ワシも逃亡の身。少し時間を頂こう」
愛原「頼むよ。栗原蓮華を鬼型BOWにした薬の開発者だ。そのレシピが分かれば、逆に鬼化を解く薬ができるかもしれないってことだよ」
公一「果たして、そう上手く行くかね?」
愛原「な、何だよ?」
公一「いや、恐らくワシの薬は役に立たんじゃろうなと思っただけじゃ」
リサ「お祖父さんの化学肥料で、人間をBOWにできるなんて凄いですね」
公一「おいおい。前にも言ったが、ワシの薬だけでそんなことはできんからな?アンブレラが、わしの薬を勝手に材料にしただけに過ぎんよ。ワシは味噌を作っただけ。そこから醤油を作ったのは、あいつらじゃ」
学「あ、なるほど。そういう例えか」
たまり醤油は味噌から造る。
日本における起源は、鎌倉時代の僧侶が中国で修行した際に覚えた製法で味噌を造ったところ、間違えて醤油ができてしまったことによるものだという。
醬油メーカーのヤマサはそのように説明している。
学「分かったよ。ありがとう。それじゃ、おやすみ」
公一「鬼型BOWを製造する方法は、行き詰ったバイオテロ組織から注目されつつある。リサを浚ったのは栗原家じゃったが、本物のテロ組織に狙われんようにしろよ?」
学「気をつけるよ」
公一「まあ、BSAAやら日本政府やら、他の諜報組織やらがこのコに注目しているうちは大丈夫じゃと思うがな」
この時、私は伯父さんの言う『他の諜報組織』とは、“青いアンブレラ”のことだと思っていた。
〔上に参ります。ドアが閉まります〕
私とリサはホームエレベーターに乗り込んで、伯父さんの隠れ家をあとにした。
[同日22時00分 天候:雪 愛原家1階ダイニング・リビング]
高橋「先生、また雪が降ってきましたよ」
愛原学「そうなのか。降ったり止んだりだな」
高橋「この辺は雪が積もるんですか?」
愛原「いや、平地だからそんなに積もらないな。積もっても5cmがいいところだろう。特に今夜は降ったり止んだりみたいだから、積もっても数cmってところじゃないか」
高橋「山の方はもうメートルで積もるみたいですね」
愛原「そうだ。何しろ、スキー場まであるくらいだから」
高橋「なるほど、そうですか」
愛原「それより、明日と明後日は俺の両親サービスデーだ。付き合いの方、頼むぞ」
高橋「もちろんです。これも先生の為です。お任せください」
母親「お風呂空いたわよ。そろそろ入りなさい」
愛原「はーい!」
私は一旦2階の自室に行くと、着替えを取りに向かった。
私とリサは公一伯父さんの夕食を下げに向かった。
愛原公一「おー、来たか。節子さんの料理は美味かったと伝えておいてくれ」
節子とは私の母親の名前である。
愛原学「あ、うん。水とかはどうしてるの?」
公一「ペットボトルの水を差し入れしてもらっとるよ。あとはそれで茶とかコーヒーとか、適当に作って飲んでおる」
学「そうなんだ」
公一「それより、お前が連れて来た2人の若者達じゃが……」
学「うん?」
公一「本当に、お前の事務所の従業員で間違い無いのじゃな?」
学「そうだけど、どうして?」
公一「本当に何も知らんのか?」
学「な、何だよ?」
公一「『知らぬが仏』というしな」
学「そりゃあ2人とも、服役の経験があるけどさ……」
公一「フム……」
学「日野博士のことを知らないんじゃ、しょうがないよ」
公一「アンブレラの研究所にいたのでは、ロクでもない研究者じゃっただろうがな」
リサ「それはそうですね」
リサは手に持っていたノートを取り出した。
リサ「これ、学校の新聞部から借りて来たノートです。昔の新聞部の先輩、日野さんが書いた日記と思われるものです」
公一「日記とな?」
リサ「『恨みのノート』なんですけど、後半辺りからヤバいことが書いてあったので……」
学「よくこんなのあったな?」
リサ「部長代行の先輩のノートだったから、捨てるに捨てれなかったみたいだよ」
学「そうなのか」
パラパラとノートの中を見ていた公一伯父さんだったが、リサの言う後半辺りでその速度が落ちた。
公一「ふーむ……」
学「何か、マズいことでも書いてあった?」
公一「そうじゃな。日本アンブレラは、色々な薬を開発しておった」
学「そりゃ製薬会社だからね」
公一「この日野とやらは、父親もまた日本アンブレラの研究員じゃったと」
学「らしいね」
公一「その研究員は、精神病関係の薬を開発するチームにおったようじゃ」
学「精神病?向精神薬とか?」
公一「そうじゃな。じゃが、そこはあのアンブレラ。ただの薬だけを開発するわけがない」
学「うんうん」
公一「どうもこの日野という男、父親から試薬を受け取って被験者となっていたらしい」
学「ええっ!?」
公一「普段は『いい人』じゃったらしいが、その『いい人』を演じられたのも、薬によるものじゃったようじゃ」
学「そうだったのか……」
公一「そして、事態はマズい方向へと向かう」
学「なに?」
公一「薬でも抑えられないほどの殺したい相手を薬殺すると、足が付いてしまう。さあ、どうしよう?みたいなことが書いてある」
学「どうしようたって、どうしようもないだろう」
公一「自制心を壊す薬がアンブレラにはある。それを飲めば、たちどころに自制心が無くなり、人を殺すことにも何の躊躇いも無くなるという」
学「ま、まさか、日野という男はそれを……」
公一「手に入れようとしたのじゃが、さすがに情報が無い。そこで当時、学校の科学講師をやっておった白井伝三郎に何としてでも話を聞こうということで……それで日記は終わっとる」
学「まんまと白井の罠に嵌まったってことか。それにしても、色んな薬があったんだね」
公一「あるじゃろうな。アメリカのアンブレラ本体はウィルス研究に特化しておったが、日本アンブレラはウィルス研究はサブで、メインは製薬じゃ。そのおかげで学、お前がバイオハザードに巻き込まれた霧生市でも、薬が豊富にあったじゃろう?」
学「そういえば……」
ハーブも沢山あった。
リサ「これがヒントになりませんかね?」
公一「どこの部門にいたのか分かれば、そこから辿れば行き着くじゃろうな。じゃが、ワシも逃亡の身。少し時間を頂こう」
愛原「頼むよ。栗原蓮華を鬼型BOWにした薬の開発者だ。そのレシピが分かれば、逆に鬼化を解く薬ができるかもしれないってことだよ」
公一「果たして、そう上手く行くかね?」
愛原「な、何だよ?」
公一「いや、恐らくワシの薬は役に立たんじゃろうなと思っただけじゃ」
リサ「お祖父さんの化学肥料で、人間をBOWにできるなんて凄いですね」
公一「おいおい。前にも言ったが、ワシの薬だけでそんなことはできんからな?アンブレラが、わしの薬を勝手に材料にしただけに過ぎんよ。ワシは味噌を作っただけ。そこから醤油を作ったのは、あいつらじゃ」
学「あ、なるほど。そういう例えか」
たまり醤油は味噌から造る。
日本における起源は、鎌倉時代の僧侶が中国で修行した際に覚えた製法で味噌を造ったところ、間違えて醤油ができてしまったことによるものだという。
醬油メーカーのヤマサはそのように説明している。
学「分かったよ。ありがとう。それじゃ、おやすみ」
公一「鬼型BOWを製造する方法は、行き詰ったバイオテロ組織から注目されつつある。リサを浚ったのは栗原家じゃったが、本物のテロ組織に狙われんようにしろよ?」
学「気をつけるよ」
公一「まあ、BSAAやら日本政府やら、他の諜報組織やらがこのコに注目しているうちは大丈夫じゃと思うがな」
この時、私は伯父さんの言う『他の諜報組織』とは、“青いアンブレラ”のことだと思っていた。
〔上に参ります。ドアが閉まります〕
私とリサはホームエレベーターに乗り込んで、伯父さんの隠れ家をあとにした。
[同日22時00分 天候:雪 愛原家1階ダイニング・リビング]
高橋「先生、また雪が降ってきましたよ」
愛原学「そうなのか。降ったり止んだりだな」
高橋「この辺は雪が積もるんですか?」
愛原「いや、平地だからそんなに積もらないな。積もっても5cmがいいところだろう。特に今夜は降ったり止んだりみたいだから、積もっても数cmってところじゃないか」
高橋「山の方はもうメートルで積もるみたいですね」
愛原「そうだ。何しろ、スキー場まであるくらいだから」
高橋「なるほど、そうですか」
愛原「それより、明日と明後日は俺の両親サービスデーだ。付き合いの方、頼むぞ」
高橋「もちろんです。これも先生の為です。お任せください」
母親「お風呂空いたわよ。そろそろ入りなさい」
愛原「はーい!」
私は一旦2階の自室に行くと、着替えを取りに向かった。