報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「修学旅行3日目」 4

2024-09-07 20:39:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月10日14時00分 天候:曇 沖縄県国頭郡本部町 海洋博公園駐車場→琉球バス交通貸切バス車内]

 出発の時刻になり、2台のバスは海洋博公園を出発した。
 空はどんよりと曇っていて、いつ雨になってもおかしくない。

 バスガイド「皆様、お疲れ様でした。美ら海水族館、いかがでしたか?ジンベエザメは御覧になりましたでしょうか?」

 リサ「食べれなくて残念だった……」
 愛原「だから、食べ物じゃないって」
 高橋「食う事ばっかw」

 バスガイド「バスはこれより沖縄自動車道を通り、再び那覇市内へと参ります。宿泊先のホテルまでの所要時間は、およそ2時間30分程度を予定してございます。尚、今回が1番長い道のりですので、途中でトイレ休憩を挟みたいと思います。一応予定としましては、沖縄自動車道の伊芸サービスエリアを予定してございます。ただ、他にもお手洗いに行きたいといった場合は、どうぞご遠慮無くお申しつけくださいませ。また、これから雨が降る予報となってございます。天候の悪化により、渋滞が発生する恐れがございます。その場合は、予定の時間を過ぎてしまう場合もございますが、予め御了承くださいませ」

 愛原「確かに、これは一雨来そうだな」
 高橋「つーか先生、雷注意報とか出てるんスけど……ゲリラ豪雨っスかね?」
 愛原「まだ5月だで?……あー、まあ、沖縄と東京の気候を同じに考えない方がいいか……」
 高橋「そうっス」
 愛原「分かったよ。傘が無いからなぁ……」
 高橋「こういう時にこそ、アンブレラ(雨傘)は必要ってことっスね!」
 愛原「誰が上手いこと言えと……」

[同日15時20分 天候:雨 沖縄県国頭郡金武町 沖縄自動車道上り線・伊芸サービスエリア]

 観光バスの大きなフロントガラスの上を、大型のワイパーブレードが規則正しく動いている。
 高速道路に入る辺りから、雨が降り出して来た。

 バスガイド「沖縄自動車道は、沖縄県唯一の高速道路として開通し……」

 しかし、沖縄自動車道が唯一の高速道路ということもあって、ETCの普及率は頗る悪いとのこと。
 このバスは仕事柄、高速道路はよく通るのでETCは導入されているが。
 バスは減速すると、サービスエリアの中に入った。

 バスガイド「お疲れ様でした。こちらで、少々休憩を取りたいと思います。外は雨ですし、また、車道を横断する形になりますので、どうか他の自動車などには注意して渡ってくださいますよう、お願い致します」

 とはいえ、遠くの空には晴れ間が見えており、雨も弱くなったような気がする。
 ただ、本格的に降るのは夕方以降になってからとのこと。
 それまでは降ったり止んだりの天気になるらしい。
 バスは空いている大型駐車場に停まった。

 バスガイド「30分ほど休憩致します。出発は15時50分でお願いします。それまでにはバスに戻られますよう、お願い致します」

 ブシューッと大きなエアー音がしてドアが開く。

 愛原「どれ、俺達も降りるか」
 高橋「俺は一服してきます」
 愛原「ああ」

 生徒達にゆっくり休憩してもらうというよりは、高橋達のような喫煙者がゆっくりタバコ吸いたいだけだと思う。
 ただおかげで、非喫煙者の私らもゆっくりトイレに行けるんだがな。
 走っている最中はそれなりに強い雨が降っていたが、今はかなり弱くなっている。
 まあ、傘があったら差すくらいの強さではあるが。
 高橋は喫煙所に行き、私はトイレに向かった。
 それだけだと当然時間が余るので、コーヒーを飲むくらいの時間はあるだろう。
 トイレを済ませると私は自販機コーナーに行き、そこでコーヒーを買い求めて、スマホを覗いた。
 因みに休憩時間を30分くらい取った理由は他にもあって、このサービスエリアの女子トイレも比較的広いのだが、やはり団体客が集中すると混雑するようで、既に修学旅行生だけで列ができるほど。
 そういう事情もある。
 で、スマホには善場係長からのメールが来ている。

 善場「緊急事態発生です。斉藤早苗は、確かに我那覇絵恋の家に現れました。しかし、何らかの事情により、調査員がTウィルスに感染したもようです」
 愛原「えっ……?」

 Tウィルスって……ええ!?
 今はもうワクチンもあって、BSAAやデイライトの職員達はそれを接種しているから、感染しないはずじゃ?
 私がその旨の返信をすると……。

 善場「例外があります。例えばBSAAのジル・ヴァレンタイン氏もTウィルスには最初から抗体がありましたが、ネメシスから高濃度のTウィルスを投与された際にはさすがに感染した例があります。今回も同じです。意図的に強化されたTウィルスを、何らかの方法で投与されたようです」
 愛原「すると、その調査員の人達はゾンビ化したのですか?」
 善場「はい。幸いゾンビ化直後に駆け付けたBSAAに射殺され、事無きを得ました。その後、家の中に突入しましたが、家の中はもぬけの殻だったとのことです」
 愛原「斉藤早苗は?」
 善場「BSAAが駆け付ける前に、逃走したもようです。恐らく、まだ那覇市内に潜伏しているものと思われます」
 愛原「えぇえ……」
 善場「修学旅行ですから、いきなり予定を変更することはほぼ不可能でしょう。我那覇絵恋は、沖縄中央学園にいることは分かっています。狙いはリサだと思いますので、どうか警戒を強化してください。恐らくこの話は、レイチェル養成員にも行っていると思われます」

 それでレイチェルのヤツ、バスの中では随分と静かだったわけだ。
 元からそんなに話すわけではないのだが、ノリは悪くなく、リサや他の生徒達からのフリにはそれなりにノるコではあるので。
 それが今回は、明らかにノリが悪くなっていた。
 それは、こういう理由だったのか。

 愛原「我那覇絵恋は、そのことを知ってるのでしょうか?」
 善場「分かりません。ですが、定期的に彼女の家に通っていたということは、我那覇絵恋が斉藤早苗の手に堕ちている可能性はあります」
 愛原「学校が終わったら保護する形ですか?」
 善場「そこまではしなくていいでしょう。ただ、尾行などの監視は行う予定です。代わりの調査員を大至急派遣する予定ですので。今は地元警察に依頼して、警察の方で監視をしてもらっています」
 愛原「分かりました。実は今夜も、絵恋と会う予定になっています。合流したら、御連絡しましょうか?」
 善場「是非とも宜しくお願い致します」

 まずいな……。
 ついに斉藤早苗が動いたか。
 リサをどうするつもりなのか知らないが、少なくとも私達人類に友好的なことをするとは思えないな。
 一応、レイチェルにも話をしてみよう。
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“私立探偵 愛原学” 「修学旅行3日目」 3

2024-09-07 16:36:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月10日11時00分 天候:曇 沖縄県国頭郡本部町 海洋博公園(美ら海水族館)]

 オキちゃん劇場にて、イルカショーを見物する。

 リサ「あれは魚じゃない!」
 愛原「そりゃイルカは哺乳類だからな。漢字で『海豚』と書く」

 体型的にはマナティーの方がよっぽど豚って感じなのだが、イルカの方が海の豚扱いされてしまっている。

 愛原「イルカかぁ……イルカなぁ……」
 高橋「どうかしたんスか?」
 愛原「いや……仙台に、イルカがマスコットキャラのパチンコチェーンがあるんだ」
 高橋「はあ……パラディソですかね」
 愛原「うん……。 出なかったわぁ……。大赤字叩き出して、当時の給料使い果たして両親にメチャクチャ怒られたわ……」
 高橋「た、大変でしたね……」
 愛原「あの時は凄いパチンカスだったから……」
 高橋「お、俺もです!」
 愛原「今でもあのCMを見る度に、『嗚呼……どうしてあそこで席を立たなかったのか』と悔やまれる……」
 高橋「お、俺もです!」
 愛原「嗚呼……」
 高橋「嗚呼……」
 淀橋「リサ、先生達、また具合悪いみたいだよ?」
 リサ「大丈夫。たまにパチンコの話して、お兄ちゃんと一緒に頭抱えてること、あるから」
 小島「パチンコ依存症?」
 リサ「それなら、多分ここにはいない」
 小島「それもそうか」
 リサ「それよりも……」

 リサは口を少し開けて牙を覗かせた。

 リサ「あれはどこで食べられるの?」
 イルカ「ピ!?」
 淀橋「イルカは食べ物じゃないっスよ、魔王様?」
 リサ「え、でも哺乳類なんでしょ?」
 小島「魔王様にとっては、肉食獣も食料だからね……」
 リサ「肉食獣は、さすがにマズいね。人間の肉は美味そうだけど……」
 淀橋「わ、私は不味いですよ。ハハ……」
 小島「お、同じく……」
 リサ「遠慮しなくていいのにぃ……!」

 リサは瞳を鈍く赤く光らせた。

 淀橋「マズッ!」
 小島「目を見ちゃダメ!」
 リサ「ちっ、バレたか……」
 レイチェル「Hypnosis!?」
 小島「そうよ!」
 淀橋「え、何て?」
 小島「催眠術かって」
 淀橋「似たようなもんだね」
 リサ「寄生虫が使えなくなったから、代わりに……」
 レイチェル「Vampireみたいなこと、できるようになりましたねぇ……」
 リサ「ねー?まだ寄生虫使ってる方がBOWって感じだったよね」
 レイチェル「……自分で言いますか」

[同日12時00分 天候:曇 美ら海水族館・カフェオーシャンブルー]

 巨大な水槽の前にあるカフェで昼食を取ることにする。

 リサ「おー!」
 愛原「こういう所で食う機会は滅多に無いからな、ここで食おう」
 リサ「あの水槽の中から、食べる魚選ぶの?」
 愛原「寿司屋じゃねーよw」

 さすがに水槽の前の特等席は、指定席らしく、テーブルチャージが掛かるようだ。
 そこから離れた普通席であっても、別に水槽は見える。
 私達はソファ席とテーブル席に、それぞれ別れて座った。
 引率者が、生徒達と一緒に食べるのはどうかと思ったからだ。

 愛原「凄いな。青いカレールーのシーフードカレーとか」
 高橋「たまに、海軍カレーとかでこういうのありますよね」
 愛原「そうだったか?」
 高橋「少し前、東京湾フェリーに乗りましたよね?あの時、土産物コーナーで見ましたよ」
 愛原「あー……そういえばあったかもしれんなぁ……」
 高橋「どうします?」
 リサ「あのジンベイザメの活け造り」
 淀橋「何人分ですか!」
 レイチェル「また捕鯨すると、ゲルマン連中が文句言いに来ますよ」
 愛原「あ、やっぱあれ、ゲルマン系だったのね」

 レイチェルはれっきとした白人だが、あの言い方ではゲルマン系ではないようだ。
 アメリカ人は旧称インディアンと呼ばれた民族以外は、移民ばかり。
 レイチェルも先祖はヨーロッパからの移民だと思うが、どこから来たのか。
 後で聞いてみよう。

 愛原「決めた!『美ら海シーフードカレー』」
 高橋「ドリンクはどうしますか?セットで付けられるみたいっスけど?」
 愛原「アイスコーヒーにしよう。高橋は?」
 高橋「あ、俺も同じので。ちょっと、注文してきます」
 愛原「ああ、頼む」

 高橋は注文カウンターへと向かった。
 リサ達も決まったようだ。

 愛原「リサは何にするんだ?」
 リサ「『青いチキンカレー』!」
 愛原「やっぱり肉にするか」
 リサ「もち!本当は、あのサメ食べたかったけど」
 ジンベイザメ(;゚Д゚)
 愛原「だから、生け簀じゃないって!」

 これだからリサは、水族館とか動物園には連れて行けないんだ。
 ペンギンも絶対お持ち帰りして食べようとするだろうな。

 高野芽衣子「『青いカレー』だけじゃなくて、たまには“青いアンブレラ”のことも思い出してね?」
 愛原「分かってるって。……え?」

 私はバッと後ろを振り向いた。

 高野「お久しぶりです、愛原先生」
 愛原「高野君!?どうしてここに!?」
 高野「もちろん、BOW対策の為ですよ」
 愛原「リサは大人しくしてるが……。まあ、今現在、あそこで泳いでるジンベイザメ食べたがってるけど、人食いしようしているわけじゃない」
 高野「ええ、ええ。もちろん、リサちゃんじゃないですよ。今、“青いアンブレラ”では、沖縄本島全域が警戒区域ですから」
 愛原「そ、そうなのか」
 高野「特に那覇市内はご注意ください」
 愛原「県庁所在地がヤバいのか」
 高野「何しろ今回のBOWは、エブリンみたいに人間に化けてますからね」
 愛原「エブリンか。リサと同じだな」
 高野「今夜は那覇市内にお泊りでしょう?お気をつけくださいね」
 愛原「おいおい。そんなこと言うんだったら、そっちで掴んでる情報、こっちにもくれよ」
 高野「多分、BSAAで掴んでる情報と五十歩百歩だと思うので、それは向こうのテーブルに座ってるBSAAに聞いてください。では」

 そう言うと、高野君は悠然と去って行った。
 何故か、高橋の方に目配せしていたような気がするが……。
 確かに、午後は再び那覇市内に戻って、そこのホテルに宿泊するんだった。
 最初に泊まったホテルとは、また違うホテルである。
 ランキング的には、沖縄ホテル以上シェラトン沖縄未満といったところか。
 そして、ホテルに荷物を置くと、夕食まで市内散策。
 明日の最終日は、空港へ集合まで自由行動である。
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