[5月11日20時00分 天候:雨 東京都大田区羽田空港 羽田空港第2ターミナル4階]
夕食を食べ終え、私達はレストランを後にした。
高橋「ゴチっス!」
リサ「ゴチっス!」
パール「御馳走様でした」
愛原「いやいや……。じゃあ、トイレ行って一服して帰るか」
高橋「はい!」
トイレも喫煙所も、同じフロアにある。
だが、吹き抜けを挟んで男女別に分かれている。
トイレは当たり前だが、喫煙所もだ。
愛原「変わってるなァ……」
高橋「まあ、男と一緒に吸いたくないって女もいるみたいっスよ。俺はパールがいるからいいっスけど……」
愛原「まあ、だから結婚したんだろうがな」
トイレから出た後、高橋は喫煙所で一服。
まあ、吸い溜めしててもらおう。
吸わない私は、喫煙所の外で待つ。
愛原「ん?」
その間、スマホを確認していると、善場係長からメールが来ていることが分かった。
それは、私に脳神経クリニックを紹介してくれる件であった。
場所は何と、埼玉県。
埼玉県川口市だというから、東京都との境の町ではある。
ここから東京都へ通勤する県民、つまり『埼玉都民』も多い。
そこを善場係長は、紹介してくれた。
脳ドッグを受けに行くのだから、予約しないといけないだろうと思ったが、簡易的なコースであれば、予約無しでOKとのこと。
善場「通常の脳ドッグですと、脳の検査や脳の血管の検査の他、動脈硬化の検査や末梢神経検査などが入って来ます。あくまでも所長の場合、記憶障害が脳の病気や障害から来ていないかの検査ですので、MRIやMRAだけで宜しいかと思われます」
愛原「了解しました」
確か、こういう脳ドッグは自由診療扱いになると聞いたことがある。
つまり、料金は通常の保険診療よりも高く、しかもその値段も病院によってまちまちである。
幸い善場係長は、そのクリニックの公式サイトのURLも送信してくれたので、ここにアクセスしてみることにした。
高橋「お待たせしました。先生」
愛原「あ、ああ」
確認しようとすると、高橋が喫煙所から出て来た。
愛原「早いな。吸い溜めはいいのか?」
高橋「そうっスね。飛行機から降りた時も吸い溜めさせてもらいましたし、何だか今は1本だけで十分っス」
愛原「そうなんだ」
高橋と合流して、女子トイレの方向に向かう。
高橋「それよりスマホ、何かあったんですか?」
愛原「あ、いや。善場係長からメールが来てたんだよ」
高橋「ねーちゃんから?」
愛原「ほら、俺の頭の件。脳神経クリニックを紹介してくれるって話。あの件だよ」
高橋「そ、そうっスか……。い、いつ行くんスか?」
愛原「うーん……善場係長はなるべく早くって言ってたけど、明日は無理っぽいなぁ……。緊急保護者会があるし、その後、緊急役員会もあるし……」
高橋「そ、そうっスよね!」
愛原「さすがに土日祝日は休みだろうから、何とか平日に時間を作って行ってみるさ」
高橋「そ、その方がいいですよ……」
愛原「ん?何を狼狽えてるんだ?」
高橋「い、いえ……。何でもないっス」
愛原「んん?」
その後、私達は女子トイレに向かう通路の前でリサやパールと合流し、それから駐車場に向かった。
[同日20時15分 天候:雨 羽田空港第4ターナミナル5階]
エスカレーターで3階に下り、それから駐車場に向かう。
パール「こちらです」
愛原「おっ、ここか」
そこには見覚えのあるNV200が止まっていた。
パールがハッチを開けてくれた。
そこにキャリーバッグなど、大きな荷物を載せる。
こういう時、荷物を積むことを強く意識して設計されているライトバンは有利だ。
愛原「言い忘れたが、パールにも土産があるんだ」
パール「えっ、そうなんですか?」
愛原「ああ。沖縄の泡盛。帰ってから飲んでくれ」
パール「ありがとうございます!」
愛原「リサが飲みたがって大変だったんだ」
リサ「“鬼ころし”ばっかりじゃ飽きる!」
高橋「何言ってんだ、オメーは!本当はまだ飲める歳じゃねーんだぞ!」
愛原「ハハハ……。まあ、リサには別の酒を紹介することも、あるかもな」
リサ「えっ、本当!?」
愛原「ああ」
高橋「先生、それ、リサが20歳になってからっスよね?」
愛原「未成年の時からタバコ吸ってたオマエが心配することはない」
高橋「い、いや、タバコはそうっスけど、酒はちゃんと20歳になってからのみはじめましたよ!?」
パール「20歳の成人式を少年院で迎えただけでしょうが」
高橋「ぐっ……!」
愛原「少年刑務所に入るのは、その後になってからなのね……」
高橋「さ、サーセン」
少年刑務所といっても、必ずしも少年だけが入っているとは限らない。
比較的刑の軽い中年受刑者も収容されているという。
もちろん、少年と雑居房が同じになることはないそうだが。
高橋の場合は20代前半で収容された為、少年達と同じ房に入れられたのだとか。
年齢的にギリギリ少年院に入るかどうかだったらしいが、何度か出入りを繰り返していた為、裁判所もついにブチギレて少年刑務所行きを決定したようである。
パール「先生方はリアシートにどうぞ」
愛原「ああ」
荷物を積み込み、ハッチを閉めると、パールは助手席後ろのスライドドアを開けてくれた。
タクシーにも使われる5ナンバーのワゴンタイプだとパワースライドドアになっているようだが、4ナンバーのバンではそれが無い。
それでもバンタイプの中では、グレードの高いタイプをリースしていた。
私が先に乗り、リサが後から乗り込む。
高橋は助手席に乗り込んだ。
パール「私が運転しますから、皆さんは休んでてください」
愛原「悪いな」
パールは運転席に座ると、車のエンジンを掛けた。
パールはどちらかというと、車よりもバイクの運転の方が得意らしいが、もちろん、車の免許もある。
何しろ、かつては大型バイクを乗り回し、時にサイドカーを取り付けて、そこに人間だった頃の我那覇絵恋を乗せていたくらいである。
パール「それでは出発します」
愛原「ああ、よろしく。それから、駐車場料金なんだが……」
パール「はい」
愛原「領収証を発行してもらってくれ。後で経費で落とすから」
パール「は、はい」
パールは車を出すと、まずは地上に下りるスロープに向かった。
夕食を食べ終え、私達はレストランを後にした。
高橋「ゴチっス!」
リサ「ゴチっス!」
パール「御馳走様でした」
愛原「いやいや……。じゃあ、トイレ行って一服して帰るか」
高橋「はい!」
トイレも喫煙所も、同じフロアにある。
だが、吹き抜けを挟んで男女別に分かれている。
トイレは当たり前だが、喫煙所もだ。
愛原「変わってるなァ……」
高橋「まあ、男と一緒に吸いたくないって女もいるみたいっスよ。俺はパールがいるからいいっスけど……」
愛原「まあ、だから結婚したんだろうがな」
トイレから出た後、高橋は喫煙所で一服。
まあ、吸い溜めしててもらおう。
吸わない私は、喫煙所の外で待つ。
愛原「ん?」
その間、スマホを確認していると、善場係長からメールが来ていることが分かった。
それは、私に脳神経クリニックを紹介してくれる件であった。
場所は何と、埼玉県。
埼玉県川口市だというから、東京都との境の町ではある。
ここから東京都へ通勤する県民、つまり『埼玉都民』も多い。
そこを善場係長は、紹介してくれた。
脳ドッグを受けに行くのだから、予約しないといけないだろうと思ったが、簡易的なコースであれば、予約無しでOKとのこと。
善場「通常の脳ドッグですと、脳の検査や脳の血管の検査の他、動脈硬化の検査や末梢神経検査などが入って来ます。あくまでも所長の場合、記憶障害が脳の病気や障害から来ていないかの検査ですので、MRIやMRAだけで宜しいかと思われます」
愛原「了解しました」
確か、こういう脳ドッグは自由診療扱いになると聞いたことがある。
つまり、料金は通常の保険診療よりも高く、しかもその値段も病院によってまちまちである。
幸い善場係長は、そのクリニックの公式サイトのURLも送信してくれたので、ここにアクセスしてみることにした。
高橋「お待たせしました。先生」
愛原「あ、ああ」
確認しようとすると、高橋が喫煙所から出て来た。
愛原「早いな。吸い溜めはいいのか?」
高橋「そうっスね。飛行機から降りた時も吸い溜めさせてもらいましたし、何だか今は1本だけで十分っス」
愛原「そうなんだ」
高橋と合流して、女子トイレの方向に向かう。
高橋「それよりスマホ、何かあったんですか?」
愛原「あ、いや。善場係長からメールが来てたんだよ」
高橋「ねーちゃんから?」
愛原「ほら、俺の頭の件。脳神経クリニックを紹介してくれるって話。あの件だよ」
高橋「そ、そうっスか……。い、いつ行くんスか?」
愛原「うーん……善場係長はなるべく早くって言ってたけど、明日は無理っぽいなぁ……。緊急保護者会があるし、その後、緊急役員会もあるし……」
高橋「そ、そうっスよね!」
愛原「さすがに土日祝日は休みだろうから、何とか平日に時間を作って行ってみるさ」
高橋「そ、その方がいいですよ……」
愛原「ん?何を狼狽えてるんだ?」
高橋「い、いえ……。何でもないっス」
愛原「んん?」
その後、私達は女子トイレに向かう通路の前でリサやパールと合流し、それから駐車場に向かった。
[同日20時15分 天候:雨 羽田空港第4ターナミナル5階]
エスカレーターで3階に下り、それから駐車場に向かう。
パール「こちらです」
愛原「おっ、ここか」
そこには見覚えのあるNV200が止まっていた。
パールがハッチを開けてくれた。
そこにキャリーバッグなど、大きな荷物を載せる。
こういう時、荷物を積むことを強く意識して設計されているライトバンは有利だ。
愛原「言い忘れたが、パールにも土産があるんだ」
パール「えっ、そうなんですか?」
愛原「ああ。沖縄の泡盛。帰ってから飲んでくれ」
パール「ありがとうございます!」
愛原「リサが飲みたがって大変だったんだ」
リサ「“鬼ころし”ばっかりじゃ飽きる!」
高橋「何言ってんだ、オメーは!本当はまだ飲める歳じゃねーんだぞ!」
愛原「ハハハ……。まあ、リサには別の酒を紹介することも、あるかもな」
リサ「えっ、本当!?」
愛原「ああ」
高橋「先生、それ、リサが20歳になってからっスよね?」
愛原「未成年の時からタバコ吸ってたオマエが心配することはない」
高橋「い、いや、タバコはそうっスけど、酒はちゃんと20歳になってからのみはじめましたよ!?」
パール「20歳の成人式を少年院で迎えただけでしょうが」
高橋「ぐっ……!」
愛原「少年刑務所に入るのは、その後になってからなのね……」
高橋「さ、サーセン」
少年刑務所といっても、必ずしも少年だけが入っているとは限らない。
比較的刑の軽い中年受刑者も収容されているという。
もちろん、少年と雑居房が同じになることはないそうだが。
高橋の場合は20代前半で収容された為、少年達と同じ房に入れられたのだとか。
年齢的にギリギリ少年院に入るかどうかだったらしいが、何度か出入りを繰り返していた為、裁判所もついにブチギレて少年刑務所行きを決定したようである。
パール「先生方はリアシートにどうぞ」
愛原「ああ」
荷物を積み込み、ハッチを閉めると、パールは助手席後ろのスライドドアを開けてくれた。
タクシーにも使われる5ナンバーのワゴンタイプだとパワースライドドアになっているようだが、4ナンバーのバンではそれが無い。
それでもバンタイプの中では、グレードの高いタイプをリースしていた。
私が先に乗り、リサが後から乗り込む。
高橋は助手席に乗り込んだ。
パール「私が運転しますから、皆さんは休んでてください」
愛原「悪いな」
パールは運転席に座ると、車のエンジンを掛けた。
パールはどちらかというと、車よりもバイクの運転の方が得意らしいが、もちろん、車の免許もある。
何しろ、かつては大型バイクを乗り回し、時にサイドカーを取り付けて、そこに人間だった頃の我那覇絵恋を乗せていたくらいである。
パール「それでは出発します」
愛原「ああ、よろしく。それから、駐車場料金なんだが……」
パール「はい」
愛原「領収証を発行してもらってくれ。後で経費で落とすから」
パール「は、はい」
パールは車を出すと、まずは地上に下りるスロープに向かった。