報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「高橋のダウン」

2024-09-24 20:32:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月12日15時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 事務所に1本の外線電話が入る。

 パール「お電話ありがとうございます。愛原学探偵事務所でございます」

 リサがパールのすぐ近くに行って、聞き耳を立てる。
 聴力向上の為に、人間形態から鬼形態に戻るのを忘れない。
 尖った耳をピクピク動かして、パールの電話に耳を傾ける。
 受話器の向こうからは、愛原の声が聞こえた。

 愛原「もうすぐ事務所に到着する。ちょっと下に下りて来てくれ」

 というもの。

 パール「承知しました」

 パールが電話を切ると同時に、事務所の前には1台のタクシーが止まった。

 パール「ちょっと行ってきます!リサさんはここにいてください!」
 リサ「あっ……!」

 パールはリサが呼んでいたエレベーターに乗り込んで行ってしまった。

 リサ「先を越された……。まあ、いいか」

 リサは事務所内にある監視カメラのモニタを見た。
 モニタには、1階のガレージが映し出されている。
 タクシーから降りてきたのは、愛原と高橋。
 高橋はフラつきながら、タクシーを降りていた。
 そこへパールが合流し、高橋の手を取りながら、ガレージの中に入る。
 そして、3人がエレベーターに乗り込んだ。
 リサはエレベーターの方に近づく。
 案の定、エレベーターは2階に止まった。
 そこから降りて来たのは愛原だけ。
 エレベーターは愛原を降ろすとドアを閉め、3階に上がって行った。

 愛原「ただいま」
 リサ「お帰り。お兄ちゃん、ダウンしたって?」
 愛原「ああ、コロナ陽性だ」
 リサ「マジ!?」
 愛原「熱も出ている。40度近く」
 リサ「40度!?」
 愛原「しばらくは安静だろう」
 リサ「入院しないんだね」
 愛原「第1波、第2波の時ではないからな。まるで、インフルエンザみたいな症状だ。高熱と頭痛と咽頭痛だよ」
 リサ「薬はもらったの?」
 愛原「ああ。それを飲めば、まあ大丈夫だろう」
 リサ「先生は感染していない?」
 愛原「俺は陰性だな。あとはパールだが……」
 リサ「パールさん、検査キット買って来てたよ」
 愛原「マジか。さすがはメイド、用意がいいな」
 リサ「私のGウィルスを飲めば、たちどころに治るよ?」

 リサは口を開けた。
 そこから小さくて薄緑色をしたイソギンチャクのような『胚』が現れる。
 薄い緑色はGウィルスとTウィルスを融合したもののシンボルカラーであり、リサの体内からは無くなったはずのTウィルスが、Gウィルスに取り込まれていることが分かる。
 あくまでも偽性特異菌は、Gウィルスに取っての噛ませ役であり、生物兵器として使用できるものではない。

 愛原「化け物を増やす気か。体の外に出さない!BSAAが出動してくるよ?」
 リサ「はーい」

 リサは『胚』を体内に戻した。
 この『胚』を植え付けられた生物は、Gと呼ばれる化け物に変化する。
 リサみたいな鬼の姿になるわけではない。
 とにかく、リサは本当に特異中の特異なのだ。
 今でもGウィルスが使用されたバイオテロが発生したとなった場合、BSAAの警戒レベルは最高の10に引き上げられ、支部を越えての協力体制が求められるとされている。

 愛原「今日の夕食当番は、高橋なんだよな……。また、パールに作らせるのも悪いなぁ……」
 リサ「この場合は仕方無いんじゃない?」
 愛原「うーむ……」

 しばらくして、パールが下りて来た。

 愛原「どうだった?」
 パール「取りあえず、寝かせています。氷枕と冷却シートを使用しています」
 愛原「ああ。熱は大変だからな。ケチらず、ガンガン使ってくれ」
 パール「ありがとうございます」
 愛原「オマエも感染するとヤバい。高橋が治るまで、別の部屋で寝た方がいいかもな?」
 パール「はい。そうさせて頂きます」
 リサ「別の部屋に寝るって、どこで寝るの?」
 パール「リビングで寝ますよ。カウチソファがありますから、そこで寝ます」
 愛原「そ、そうか。何なら、事務所の倉庫に折り畳みベッドがあるから、それを引っ張り出してきて……」
 パール「いえいえ。それで結構です。マサの看病もしたいですし」
 愛原「あ、ああ、分かった」
 パール「先生こそ、マサから感染させられないように、お気をつけくださいね」
 愛原「分かってるよ。それと、食事当番だが……」
 パール「マサが治るまで、私が務めさせて頂きます」
 愛原「そ、そうか」
 リサ「わたしも手伝うー」
 愛原「そうしてやってくれ」
 パール「かしこまりました。それでは先生、食材の買い出しに行って参りますので……」
 愛原「ああ。リサも連れて行け。荷物運びに使わせろ」
 リサ「鬼の腕力、お任せあれ」
 パール「ありがとうございます。それではちょっと、冷蔵庫などを確認してきますので、少々お待ちください。あと、マサ用に何か食べれる物でも作れればと思いますので……」
 愛原「高熱が出ていたりしてると、食欲なんて無くなるからなぁ……」
 リサ「わたしがお兄ちゃんの分も食べるー」
 愛原「おいw」

 パールが再び3階に行っている間、リサは愛原と話した。

 愛原「オマエは明日、学校に行くんだろ?」
 リサ「うん。お昼までだけどね」
 愛原「土曜日だからな。じゃあ、俺は1人で行くか」
 リサ「どこに?」

 すると、愛原は自分の頭を指さした。

 愛原「脳の検査だよ。善場係長が、クリニックを紹介してくれたんだ。土曜日もやってるから、ちょっくら行ってくるよ」
 リサ「どこにあるの?」
 愛原「埼玉だよ。但し、昔、絵恋が住んでいたさいたま市までは行かないけどね」
 リサ「やだなぁ……」
 愛原「何が?」
 リサ「それで先生、『入院です』ってなったらどうしよう……」
 愛原「まあ、その可能性は低いと思うけどな。その時は連絡するよ」
 リサ「可能性あるんだ……」
 愛原「何しろ、脳の事だから、検査してみないと分からんよ。変な脳の病気が見つかるかもしれないし……」

 するとリサ、口を開けて、Gウィルスの『胚』を覗かせた。

 リサ「これを体に取り込めば、脳の病気ですらも治るよ!」
 愛原「だから、いらんっちゅーに!」

 危うくBSAA案件になるところであった。
コメント
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