報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「羽田空港で過ごす」

2024-09-20 20:36:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日18時30分 天候:雨 東京都大田区羽田空港・第2ターミナル1階→4階レストラン]

 ベルトコンベアから荷物を受け取った後、私達は迎えに来たパールと合流した。

 愛原「悪いな。わざわざ迎えに来てもらって……」
 パール「いいえ。沖縄の事件、テレビなどで知ってます。先生達、大変でしたね」
 愛原「まあ、これも仕事だ。それより、ちょうど夕食時だから、ここのレストランで夕食でも食べてから帰ろうと思うんだが、いいかい?」
 パール「はい、それはもう」
 愛原「パールも留守番頑張ってくれたし、キミにも奢るよ」
 パール「ありがとうございます。御馳走様です」
 愛原「リサがステーキを所望してるから、そういう店でいいかい?」
 パール「はい、結構です」

 高橋も頷いた。
 本当はリサに対して何か言いたいのだろうが、私の言葉であることと、結婚相手のパールが同意したことで、何も言えなくなったのだろう。

 愛原「駐車場、空いてた?」
 パール「はい。空いてました。第3ターミナルの方は混んでいたようですが」
 愛原「第3ターミナルか。国際線の方だな。インバウンド政策で外国人が多いからそうなんだろう」
 高橋「中国人の白タクだったりしてw」
 愛原「ハハハ、どうだろうな……」

 そんなことを話しながら、第2ターミナルの4階に上がる。
 店のショーウィンドウを見ると、リサが……。

 リサ「ハンバーグが多い」
 愛原「ステーキもあるだろう?」
 リサ「生でもいいんだけどな……」
 愛原「そんなことしたら、本当の鬼になるぞ?」
 リサ「むー……。わたしも臭くなるかなぁ……」
 愛原「獣臭ってヤツか?そうかもな」
 リサ「なるほど……」

 リサは私の話を聞いて、少し考え込んだが……。

 リサ「でも、レアは対応してくれるよね?」
 愛原「た、多分な……」

 そんなことを話しながら、ボックス席に座る。
 滑走路に面した店舗であるが、あいにくとそちら側の席は塞がっていた。

 高橋「先生、お疲れでしょう。ビールで一杯やりませんか?」
 愛原「俺はいいが、お前は運転があるだろ?」
 パール「帰りも私が運転しますから、先生もマサも飲んでください」
 愛原「いいのか?」
 パール「沖縄では、色々大変だったでしょうから」
 リサ「じゃあわたしも飲むー」
 愛原「お前はソフトドリンクな?」
 リサ「……はーい」
 愛原「飲み物が決まったところで、次は料理だ」
 リサ「サーロインステーキ……200グラムしか無いのか……」
 愛原「レストランのステーキ肉じゃ、それが普通だろ?」
 リサ「2枚分は食べたいねぇ……」
 愛原「おい!w」

 さすがにそれは窘めた。
 そりゃまあ、ステーキハウスとかにそういうのがあれば、選ばせるのもアリだが、ここではな……。
 それとも空港から出て、焼肉食べ放題の店とかの方が良かったかな?
 まあ、リサはステーキが食べたいと言っていたからこれでいいか。
 私達は主にハンバーグを注文した。
 注文を終えると、まず先に飲み物が運ばれてくる。

 高橋「さあ、先生。まずは一献」
 愛原「ありがとう。お前も飲め」
 高橋「あざっす!」
 愛原「パールはノンアルビールで悪いな」
 パール「いいえ。ありがとうございます」

 私はパールに、アサヒのドライゼロを注いであげた。

 パール「あ、あの……先生」
 愛原「何だ?」
 パール「本当は先生方が無事に帰って来られたということで『乾杯』にしたいのですが、私としましては、御嬢様がお亡くなりになったので、『献杯』にしたいのです」
 愛原「ああ、そうか……。そうだな」
 高橋「まさか、あのレズガキが死ぬなんてよ……」
 リサ「斉藤早苗……許すまじ!」
 パール「奥様は御無事だったのですか?」
 愛原「……ん!?」
 高橋「あっ?」
 リサ「えっ?」

 そういえば、絵恋さんの母親はどうしたんだ?
 まあ、斉藤早苗がそのままにしておくとは思えないから、もしかしたらもうこの世にいない可能性は考えられるが……。

 愛原「ご、ゴメン。今気づいた。そういえば、どうしたんだろ?」
 高橋「ニュースじゃ、何も言ってなかったっスね?」
 愛原「う、うん。ま、まあ、後で……明日にでも、善場係長に聞いてみるよ」
 パール「かしこまりました。それでは、まずは絵恋お嬢様に対する献杯ということで……」
 愛原「そ、そうしよう。『献杯』!」
 高橋「献杯」
 パール「献杯」
 リサ「ケンパーイ」

 それから料理が運ばれてくる。
 ハンバーグは焼くのに少し時間が掛かるせいか、リサのレアステーキの方が早く来た。

 リサ「わーい!いただきまーす!……あ」
 愛原「ん?」
 リサ「その前に……」

 リサは自分のスマホを取り出すと、それでステーキやセットのライス、サラダを撮影した。

 高橋「何だァ?インスタ蝿か?」
 リサ「違うよ。ミキに送ってあげるの」
 愛原「なるほど、そうか……」
 高橋「何だか知らんが、リサがいつの間にか新しく作った友達だよ」

 高橋が妻のパールに説明した。

 パール「そうですか。さすがリサさんは、陽キャですね」
 リサ「うーん……。陽キャは、むしろミキの方かも。だって、ミキの方が加勢に来たからね」
 愛原「あ、なるほど。美樹の方は、明日帰るんだろ?」
 リサ「らしい。飛行機乗り継ぎだから大変だ」
 愛原「秋田空港とかから、那覇空港への直行便も無いんだな」

 よくよく考えてみたら、仙台空港でさえ、那覇空港との直行便は1往復しか無いのだ。
 東北地方で最も賑わう仙台空港ですらそのザマなのだから……秋田では無いのも仕方が無いか。

 パール「明日は学校はお休みなんですね」
 愛原「ああ。緊急の保護者会をやるんで、臨時休校だ。リサには朝飯だけじゃなく、昼飯も用意してやってくれ」
 パール「かしこまりました」
 リサ「土曜日は、学校に行けるといいねぇ……」
 愛原「そうだな。あと、俺にはもう1つやることがある」
 高橋「何スか?」

 私は自分の頭を指さした。

 愛原「脳の検査だよ。俺にたまに起こるフラッシュバックと激しい頭痛の原因、突き止めておきたい。多分、明日には善場係長からクリニックを紹介されるはずだ」
 高橋「……そうですか」

 何故か高橋は浮かない顔をしていた。

 愛原「どうしたんだ?」
 高橋「いえ……。もしも先生が、実は重い病気でしたなんてなったら、どうしようと今から心配です」 
 愛原「おいおい、縁起でも無いこと言うなよ。……と言いたいところだが、何しろ脳だからな。確かに、最悪の事態を想定した方がいいのかもしれない」
 リサ「私のGウィルス、少し分けてあげようか?Gウィルスなら、脳の病気なんか関係無いよ?」
 愛原「いらんっちゅーに!」
 高橋「なに先生をしれっと化け物にしようとしてんだ、コラ!」
 リサ「ぴえん」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「沖縄より帰京の旅」

2024-09-20 13:38:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日15時50分 天候:晴 沖縄県那覇市上空 ソラシドエア24便機内]

 私達を乗せた飛行機は、10分ほど遅れて那覇空港を離陸した。
 ソラシドエアは、かつてスカイネットアジア航空と呼ばれた航空会社で、今ではLCCの仲間と思われがちだが、実はスカイマークと同様、厳密にはLCCではない。
 飛行機が水平飛行に入ると、ポーン♪というチャイムが鳴って、シートベルト着用サインが消える。

〔「シートベルト着用サインが消えましたが、フライト中、急な乱気流などで、飛行機が大きく揺れる場合がございます。お座席に着席の際、シートベルトの着用をお願い致します。只今より、キャビンアテンダントが、シートサービスにお伺い致します。……」〕

 スカイマークと同様、飲み物のサービスはある。

 愛原「ホットコーヒーを」
 CA「かしこまりました」

 私と高橋はコーヒーを希望し、リサはいつもの通り、アップルジュースを希望した。
 ようやく空弁に有りつけたリサが、夢中でそれを頬張っている。
 人間の食いもんガバガバ食いやがって。

 リサ「ふー……少しは満足」
 愛原「そうか。……少しだけ満足か」
 リサ「ステーキは絶対食べるからね?」
 愛原「う、うむ……。わ、分かってるよ」

 ステーキに有りつけなくなってしまったら、リサは暴走を起こすだろう。
 羽田空港第2ターミナル……いや、第1ターミナルも含めてゾンビパラダイスとなるかもしれない。
 結局私達は、斉藤早苗に遭遇することは1度も無かった。
 遭ったのは、早苗に化け物にさせられた我那覇絵恋である。
 絵恋が持って来たクッキーとジュースには、特異菌の成分が検出された。
 リサはともかく、他のコ達が飲んでいたら、あっという間にモールデッドになっていただろう。
 特異菌には予防薬が無く、対症療法としての投薬治療しか無い。
 水虫に予防薬が無いのと同じである。

 リサ「先生、どうするの?今後のこと……」
 愛原「明日は緊急の保護者会に専念させてもらうさ。リサはリサで、家でゆっくりしてるといい」
 リサ「土曜日は授業あるんだろうか……」
 愛原「それも含めて明日、学校と相談するよ」

 分かっていることは、明日は臨時休校、そして緊急の保護者会が行われるということ。
 そして、スクールカウンセラーの数を増やし、事件のことで精神的ダメージを受けた生徒達のケアに当たるということである。
 なので、臨時休校でも、カウンセラーとの相談を希望する生徒は登校することになる。

 愛原「リサは怒ってるんだよな?昨夜の事件のこと……」
 リサ「うん!わたしから『デザート』を奪った!斉藤早苗、許すまじ!」

 リサにとっては、私が『メインディッシュ』で、我那覇絵恋は『デザート』という認識である。
 この辺は、まだ人食い鬼としての感覚だということが分かる。

[同日18時10分 天候:雨 東京都大田区羽田空港 羽田空港第2ターミナル]

 飛行機は途中で乱気流などに巻き込まれるわけでもなく、順調に航行した。
 往路と同様、富士山を見ることができた。
 上から富士山を見下ろすことができるのは、飛行機ならではであろう。
 しかしながら、関東地方に入ると、視界が悪くなった。
 どうやら、関東地方は雨とのこと。

 愛原「天気がコロコロ変わるのも、日本の気候だねぇ……」
 リサ「傘持って来てないよ?」
 愛原「パールが迎えに来てくれることになってる」
 リサ「おー!」

 本当は電車で帰るつもりだったのだが、さすがに事件に巻き込まれたこともあって、非常に疲れた。
 高橋からパールに頼んで、事務所の車で迎えに来てくれることとなった。

 愛原「ついでに夕食を食べて帰ろう」

 私は後ろを振り向いた。
 後ろにはレイチェル、淀橋さん、小島さんがいる。

 愛原「3人とも。私達は羽田に着いたら夕食を食べるつもりだけど、キミ達はどうする?」

 と、聞くと……。

 レイチェル「私はすぐ兵舎に戻らないといけませン。こちらのHQにも報告に行くよう命令が出ています」
 淀橋「親が車で迎えに来てくれることになっているので……」
 小島「同じく」

 とのことだった。
 事件のこともあり、生徒達の親はとても心配で、学校に問い合わせが殺到したのこと。
 かくいう私も、PTA役員達から問い合わせの電話に対応しなければならなかった(その間、リサに主人公を任せたのはこの為)。

 愛原「そうか。気をつけて帰るんだよ」
 淀橋「はい」
 小島「はい」
 レイチェル「Yes,sir.」

 晴れていれば西日が眩しい羽田空港だろうが、今は雨天の為に薄暗い。
 JALやANAだったら、モニタやスクリーンに機体前方のカメラ映像が観られるのだろうが、ソラシドエアには無い。
 ドスン!という衝撃があって、飛行機は無事に羽田空港の滑走路に着陸した。
 そして、強いブレーキでもって減速する。

 愛原「着いたか……」

 着陸しても、すぐに降りられるとは限らない。
 搭乗口に横付けして、ボーディングブリッジに接続してようやく降りられるわけである。
 基本的には進行方向前方左側のみが出口となるので、前の席に座る乗客から降りる形となる。

 愛原「無事に着いた……。雨は降ってるけど」

 五月雨ですぐに止むかなと思ったのだが、案外結構本格的に降っている。
 夏場のゲリラ豪雨みたいな強過ぎる雨プラス雷が鳴っている、というわけではないが。

 坂上「沖縄でも言ったように、明日は臨時休校です。ただ、スクールカウンセラーは増員しますので、もしも相談がある場合は学校に来てもらって構いません。荷物を受け取ったら、そのまま解散となります。土曜日、授業があるかどうかは明日、学校からメールでお知らせします。それでは、お疲れ様でした!」

 引率教師の1人でリサの担任の坂上先生が、最後にそう挨拶した。
 私と高橋は一応、後ろから生徒達が忘れ物無いかどうかをチェックしてから、飛行機を降りた。
 生徒達の中には、具合悪そうにしているコもいる。
 元気なのは、リサくらいか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする