[5月11日18時30分 天候:雨 東京都大田区羽田空港・第2ターミナル1階→4階レストラン]
ベルトコンベアから荷物を受け取った後、私達は迎えに来たパールと合流した。
愛原「悪いな。わざわざ迎えに来てもらって……」
パール「いいえ。沖縄の事件、テレビなどで知ってます。先生達、大変でしたね」
愛原「まあ、これも仕事だ。それより、ちょうど夕食時だから、ここのレストランで夕食でも食べてから帰ろうと思うんだが、いいかい?」
パール「はい、それはもう」
愛原「パールも留守番頑張ってくれたし、キミにも奢るよ」
パール「ありがとうございます。御馳走様です」
愛原「リサがステーキを所望してるから、そういう店でいいかい?」
パール「はい、結構です」
高橋も頷いた。
本当はリサに対して何か言いたいのだろうが、私の言葉であることと、結婚相手のパールが同意したことで、何も言えなくなったのだろう。
愛原「駐車場、空いてた?」
パール「はい。空いてました。第3ターミナルの方は混んでいたようですが」
愛原「第3ターミナルか。国際線の方だな。インバウンド政策で外国人が多いからそうなんだろう」
高橋「中国人の白タクだったりしてw」
愛原「ハハハ、どうだろうな……」
そんなことを話しながら、第2ターミナルの4階に上がる。
店のショーウィンドウを見ると、リサが……。
リサ「ハンバーグが多い」
愛原「ステーキもあるだろう?」
リサ「生でもいいんだけどな……」
愛原「そんなことしたら、本当の鬼になるぞ?」
リサ「むー……。わたしも臭くなるかなぁ……」
愛原「獣臭ってヤツか?そうかもな」
リサ「なるほど……」
リサは私の話を聞いて、少し考え込んだが……。
リサ「でも、レアは対応してくれるよね?」
愛原「た、多分な……」
そんなことを話しながら、ボックス席に座る。
滑走路に面した店舗であるが、あいにくとそちら側の席は塞がっていた。
高橋「先生、お疲れでしょう。ビールで一杯やりませんか?」
愛原「俺はいいが、お前は運転があるだろ?」
パール「帰りも私が運転しますから、先生もマサも飲んでください」
愛原「いいのか?」
パール「沖縄では、色々大変だったでしょうから」
リサ「じゃあわたしも飲むー」
愛原「お前はソフトドリンクな?」
リサ「……はーい」
愛原「飲み物が決まったところで、次は料理だ」
リサ「サーロインステーキ……200グラムしか無いのか……」
愛原「レストランのステーキ肉じゃ、それが普通だろ?」
リサ「2枚分は食べたいねぇ……」
愛原「おい!w」
さすがにそれは窘めた。
そりゃまあ、ステーキハウスとかにそういうのがあれば、選ばせるのもアリだが、ここではな……。
それとも空港から出て、焼肉食べ放題の店とかの方が良かったかな?
まあ、リサはステーキが食べたいと言っていたからこれでいいか。
私達は主にハンバーグを注文した。
注文を終えると、まず先に飲み物が運ばれてくる。
高橋「さあ、先生。まずは一献」
愛原「ありがとう。お前も飲め」
高橋「あざっす!」
愛原「パールはノンアルビールで悪いな」
パール「いいえ。ありがとうございます」
私はパールに、アサヒのドライゼロを注いであげた。
パール「あ、あの……先生」
愛原「何だ?」
パール「本当は先生方が無事に帰って来られたということで『乾杯』にしたいのですが、私としましては、御嬢様がお亡くなりになったので、『献杯』にしたいのです」
愛原「ああ、そうか……。そうだな」
高橋「まさか、あのレズガキが死ぬなんてよ……」
リサ「斉藤早苗……許すまじ!」
パール「奥様は御無事だったのですか?」
愛原「……ん!?」
高橋「あっ?」
リサ「えっ?」
そういえば、絵恋さんの母親はどうしたんだ?
まあ、斉藤早苗がそのままにしておくとは思えないから、もしかしたらもうこの世にいない可能性は考えられるが……。
愛原「ご、ゴメン。今気づいた。そういえば、どうしたんだろ?」
高橋「ニュースじゃ、何も言ってなかったっスね?」
愛原「う、うん。ま、まあ、後で……明日にでも、善場係長に聞いてみるよ」
パール「かしこまりました。それでは、まずは絵恋お嬢様に対する献杯ということで……」
愛原「そ、そうしよう。『献杯』!」
高橋「献杯」
パール「献杯」
リサ「ケンパーイ」
それから料理が運ばれてくる。
ハンバーグは焼くのに少し時間が掛かるせいか、リサのレアステーキの方が早く来た。
リサ「わーい!いただきまーす!……あ」
愛原「ん?」
リサ「その前に……」
リサは自分のスマホを取り出すと、それでステーキやセットのライス、サラダを撮影した。
高橋「何だァ?インスタ蝿か?」
リサ「違うよ。ミキに送ってあげるの」
愛原「なるほど、そうか……」
高橋「何だか知らんが、リサがいつの間にか新しく作った友達だよ」
高橋が妻のパールに説明した。
パール「そうですか。さすがリサさんは、陽キャですね」
リサ「うーん……。陽キャは、むしろミキの方かも。だって、ミキの方が加勢に来たからね」
愛原「あ、なるほど。美樹の方は、明日帰るんだろ?」
リサ「らしい。飛行機乗り継ぎだから大変だ」
愛原「秋田空港とかから、那覇空港への直行便も無いんだな」
よくよく考えてみたら、仙台空港でさえ、那覇空港との直行便は1往復しか無いのだ。
東北地方で最も賑わう仙台空港ですらそのザマなのだから……秋田では無いのも仕方が無いか。
パール「明日は学校はお休みなんですね」
愛原「ああ。緊急の保護者会をやるんで、臨時休校だ。リサには朝飯だけじゃなく、昼飯も用意してやってくれ」
パール「かしこまりました」
リサ「土曜日は、学校に行けるといいねぇ……」
愛原「そうだな。あと、俺にはもう1つやることがある」
高橋「何スか?」
私は自分の頭を指さした。
愛原「脳の検査だよ。俺にたまに起こるフラッシュバックと激しい頭痛の原因、突き止めておきたい。多分、明日には善場係長からクリニックを紹介されるはずだ」
高橋「……そうですか」
何故か高橋は浮かない顔をしていた。
愛原「どうしたんだ?」
高橋「いえ……。もしも先生が、実は重い病気でしたなんてなったら、どうしようと今から心配です」
愛原「おいおい、縁起でも無いこと言うなよ。……と言いたいところだが、何しろ脳だからな。確かに、最悪の事態を想定した方がいいのかもしれない」
リサ「私のGウィルス、少し分けてあげようか?Gウィルスなら、脳の病気なんか関係無いよ?」
愛原「いらんっちゅーに!」
高橋「なに先生をしれっと化け物にしようとしてんだ、コラ!」
リサ「ぴえん」
ベルトコンベアから荷物を受け取った後、私達は迎えに来たパールと合流した。
愛原「悪いな。わざわざ迎えに来てもらって……」
パール「いいえ。沖縄の事件、テレビなどで知ってます。先生達、大変でしたね」
愛原「まあ、これも仕事だ。それより、ちょうど夕食時だから、ここのレストランで夕食でも食べてから帰ろうと思うんだが、いいかい?」
パール「はい、それはもう」
愛原「パールも留守番頑張ってくれたし、キミにも奢るよ」
パール「ありがとうございます。御馳走様です」
愛原「リサがステーキを所望してるから、そういう店でいいかい?」
パール「はい、結構です」
高橋も頷いた。
本当はリサに対して何か言いたいのだろうが、私の言葉であることと、結婚相手のパールが同意したことで、何も言えなくなったのだろう。
愛原「駐車場、空いてた?」
パール「はい。空いてました。第3ターミナルの方は混んでいたようですが」
愛原「第3ターミナルか。国際線の方だな。インバウンド政策で外国人が多いからそうなんだろう」
高橋「中国人の白タクだったりしてw」
愛原「ハハハ、どうだろうな……」
そんなことを話しながら、第2ターミナルの4階に上がる。
店のショーウィンドウを見ると、リサが……。
リサ「ハンバーグが多い」
愛原「ステーキもあるだろう?」
リサ「生でもいいんだけどな……」
愛原「そんなことしたら、本当の鬼になるぞ?」
リサ「むー……。わたしも臭くなるかなぁ……」
愛原「獣臭ってヤツか?そうかもな」
リサ「なるほど……」
リサは私の話を聞いて、少し考え込んだが……。
リサ「でも、レアは対応してくれるよね?」
愛原「た、多分な……」
そんなことを話しながら、ボックス席に座る。
滑走路に面した店舗であるが、あいにくとそちら側の席は塞がっていた。
高橋「先生、お疲れでしょう。ビールで一杯やりませんか?」
愛原「俺はいいが、お前は運転があるだろ?」
パール「帰りも私が運転しますから、先生もマサも飲んでください」
愛原「いいのか?」
パール「沖縄では、色々大変だったでしょうから」
リサ「じゃあわたしも飲むー」
愛原「お前はソフトドリンクな?」
リサ「……はーい」
愛原「飲み物が決まったところで、次は料理だ」
リサ「サーロインステーキ……200グラムしか無いのか……」
愛原「レストランのステーキ肉じゃ、それが普通だろ?」
リサ「2枚分は食べたいねぇ……」
愛原「おい!w」
さすがにそれは窘めた。
そりゃまあ、ステーキハウスとかにそういうのがあれば、選ばせるのもアリだが、ここではな……。
それとも空港から出て、焼肉食べ放題の店とかの方が良かったかな?
まあ、リサはステーキが食べたいと言っていたからこれでいいか。
私達は主にハンバーグを注文した。
注文を終えると、まず先に飲み物が運ばれてくる。
高橋「さあ、先生。まずは一献」
愛原「ありがとう。お前も飲め」
高橋「あざっす!」
愛原「パールはノンアルビールで悪いな」
パール「いいえ。ありがとうございます」
私はパールに、アサヒのドライゼロを注いであげた。
パール「あ、あの……先生」
愛原「何だ?」
パール「本当は先生方が無事に帰って来られたということで『乾杯』にしたいのですが、私としましては、御嬢様がお亡くなりになったので、『献杯』にしたいのです」
愛原「ああ、そうか……。そうだな」
高橋「まさか、あのレズガキが死ぬなんてよ……」
リサ「斉藤早苗……許すまじ!」
パール「奥様は御無事だったのですか?」
愛原「……ん!?」
高橋「あっ?」
リサ「えっ?」
そういえば、絵恋さんの母親はどうしたんだ?
まあ、斉藤早苗がそのままにしておくとは思えないから、もしかしたらもうこの世にいない可能性は考えられるが……。
愛原「ご、ゴメン。今気づいた。そういえば、どうしたんだろ?」
高橋「ニュースじゃ、何も言ってなかったっスね?」
愛原「う、うん。ま、まあ、後で……明日にでも、善場係長に聞いてみるよ」
パール「かしこまりました。それでは、まずは絵恋お嬢様に対する献杯ということで……」
愛原「そ、そうしよう。『献杯』!」
高橋「献杯」
パール「献杯」
リサ「ケンパーイ」
それから料理が運ばれてくる。
ハンバーグは焼くのに少し時間が掛かるせいか、リサのレアステーキの方が早く来た。
リサ「わーい!いただきまーす!……あ」
愛原「ん?」
リサ「その前に……」
リサは自分のスマホを取り出すと、それでステーキやセットのライス、サラダを撮影した。
高橋「何だァ?インスタ蝿か?」
リサ「違うよ。ミキに送ってあげるの」
愛原「なるほど、そうか……」
高橋「何だか知らんが、リサがいつの間にか新しく作った友達だよ」
高橋が妻のパールに説明した。
パール「そうですか。さすがリサさんは、陽キャですね」
リサ「うーん……。陽キャは、むしろミキの方かも。だって、ミキの方が加勢に来たからね」
愛原「あ、なるほど。美樹の方は、明日帰るんだろ?」
リサ「らしい。飛行機乗り継ぎだから大変だ」
愛原「秋田空港とかから、那覇空港への直行便も無いんだな」
よくよく考えてみたら、仙台空港でさえ、那覇空港との直行便は1往復しか無いのだ。
東北地方で最も賑わう仙台空港ですらそのザマなのだから……秋田では無いのも仕方が無いか。
パール「明日は学校はお休みなんですね」
愛原「ああ。緊急の保護者会をやるんで、臨時休校だ。リサには朝飯だけじゃなく、昼飯も用意してやってくれ」
パール「かしこまりました」
リサ「土曜日は、学校に行けるといいねぇ……」
愛原「そうだな。あと、俺にはもう1つやることがある」
高橋「何スか?」
私は自分の頭を指さした。
愛原「脳の検査だよ。俺にたまに起こるフラッシュバックと激しい頭痛の原因、突き止めておきたい。多分、明日には善場係長からクリニックを紹介されるはずだ」
高橋「……そうですか」
何故か高橋は浮かない顔をしていた。
愛原「どうしたんだ?」
高橋「いえ……。もしも先生が、実は重い病気でしたなんてなったら、どうしようと今から心配です」
愛原「おいおい、縁起でも無いこと言うなよ。……と言いたいところだが、何しろ脳だからな。確かに、最悪の事態を想定した方がいいのかもしれない」
リサ「私のGウィルス、少し分けてあげようか?Gウィルスなら、脳の病気なんか関係無いよ?」
愛原「いらんっちゅーに!」
高橋「なに先生をしれっと化け物にしようとしてんだ、コラ!」
リサ「ぴえん」