報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「急展開」 2

2024-09-29 20:59:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月13日14時00分 天候:曇 埼玉県川口市前川 イオンモール川口前川1階・いきなりステーキ]

 イオンモールのレストランフロアに移動した私達は、そこで2人のJKに昼食を御馳走することにした。
 リサをここまで連れて来たレイチェルには、当たり前の報酬である。
 リサにステーキを食わせるのは、何も空腹の彼女が暴走しないようにする為だけではなく、肉に夢中になっているうちに、私が善場係長に連絡をする為である。
 ランチタイムだから、比較的安い値段で量の多いステーキのセットを注文することができた。
 注文が終わると……。

 愛原「ちょっと善場係長に電話してくる。検査が終わったら、電話するって約束になってたんだ。料理が来たら、先に食べてていいから」
 レイチェル「分かりました」
 リサ「まだ、連絡してなかったんだ……」
 愛原「ちょっとな……」

 私はスマホを片手に、一旦店を出た。
 昼時も過ぎている為、店の内外は空いている。
 私はすぐに善場係長に電話した。

 善場「はい、善場です」
 愛原「善場係長、愛原です。お疲れ様です」
 善場「愛原所長、お疲れ様です。検査が終わりましたか?」
 愛原「は、はい、先ほど……」
 善場「GPSによれば、リサが近くにいるようですが……」
 愛原「あ、はい。学校が終わった後、来ちゃったんですよ。まあ、レイチェルが一緒ですけど……」
 善場「なるほど。BSAAも、今は沖縄の事件のことについて忙しくなったので、訓練生の面倒を看る暇が無くなったようですね。それで、検査の結果はどうでした?」
 愛原「それが……」

 私は話をする前に、前後左右に上と下を確認した。
 どこでリサが聞いているか分からないからである。
 鬼型とはいえ、BOWのリサは神出鬼没だ。
 リサの姿が無いことを確認すると、私は検査の結果を報告した。

 善場「なるほど……。そういうことでしたか」
 愛原「係長、私は本当に記憶が無いんです」
 善場「そうなると、誰かが意図的に所長にそのようにしたということですね。誰かが」
 愛原「誰かって……誰ですか?」
 善場「最近、所長の周囲の人物で、時々、挙動や現道のおかしい人物はいませんか?」
 愛原「ええ……?」

 その時、私の脳裏に高橋の姿が思い浮かんだ。
 今朝の高橋は様子がおかしかった。
 いやいや、待て待て。
 高橋は新型コロナに感染して、高熱を出しているのだ。
 高熱と激しい頭痛の中、私が事故に遭う夢を見て、それで心配して錯乱気味になっただけだろう。
 いや、その前……。
 高橋のヤツ、コロナに感染する前でも、私が脳検査を受けることに反対していなかったか?
 あの時は、私が重い病気や障害だったという結果が出るかもしれない恐怖からそう言ったのかと思っていたが……。
 今から思えば何だか怪しい。
 しかし……。

 善場「思い当たる人物がいるようですね」

 私が黙っていると、係長の方から口を開いた。

 善場「もちろん今ここで、それが誰なのかを言う必要はありません。恐らく、私共が目を付けている人物と同一でしょうから」
 愛原「係長方も目を付けておられたのですか?」
 善場「まあ、色々と……」
 愛原「それで、私は手術を受けるべきでしょうか?」
 善場「はい、それは受けてください。但し、クリニックの医師に勧められた病院ではありません」
 愛原「えっ?」
 善場「恐らく大病院を紹介されて、紹介状を渡されたと思います」
 愛原「それは確かに……」
 善場「その紹介状は、これから私が紹介する政府指定の医療機関に持って行ってください」
 愛原「政府指定の医療機関?と、仰いますと……」
 善場「所長方は、既に何度も足を運んでいるはずですよ」
 愛原「藤野!……ですか……」
 善場「恐らく高橋助手は、何が何でも所長に検査を受けさせたくなかったのでしょう。当然ながら、悪事がバレるからです」

 高橋って言ったw
 で、でも、どうして高橋が……?

 善場「新型コロナに感染したのは本当のこと。そしてそれは、彼にとっては想定外のことだったのでしょう。であれば、今がチャンスです。所長、今の高橋助手の容態は如何ですか?」
 愛原「今朝、熱を測ったところ、39度くらいでした。もう起き上がるのも辛そうな状態で……」
 善場「それは好都合というものです。彼の体の具合が良くなる前に移動しましょう」
 愛原「今から藤野へ行けと!?」
 善場「所長はそれを希望されますか?」
 愛原「い、いえ!さすがにそれは……。色々と準備をしなければなりませんし……」
 善場「そうですよね。準備の為に、1度帰宅する必要があります。高橋助手……いえ、容疑者には、解熱鎮痛薬でも投与しておいてください。確か、催眠作用もあるはずです」
 愛原「パ、パールに伝えておきます……」
 善場「藤野側の受け入れ態勢も整えなくてはなりませんので、月曜日からと致しましょう。但し、それまで八王子市内のホテルに宿泊して頂きます。ホテルはこちらで手配致しますので」
 愛原「ほ、本当に急展開ですね……」
 善場「顕正号につきましては、こちらもブラックボックス的な所があります。所長の脳に埋め込まれたというチップが、それを開く鍵となると良いのですが……。まずは事務所に戻ってください。……あ、昼食の後でで構いませんので」
 愛原「……はい」

 私は電話を切って、店内に戻った。
 その頃には既にステーキが到着していて、リサはそれを頬張っているところだった。

 リサ「あっ、先生!もうステーキ来ちゃったよ!?」
 愛原「う、うん、そうだな」

 私は1番サイズの小さいハンバーグステーキを注文していた。
 何だか、食欲が湧かない。

 リサ「先生、どうしたの?」
 愛原「り、リサ。良かったら、俺の分も食っていいぞ」
 リサ「ええっ?」
 レイチェル「愛原センセイ、どうしたのですか?」
 リサ「ま、まさか、検査で悪い所が見つかった?」
 愛原「……そのまさかだよ」
 レイチェル「What!?」
 リサ「ええっ!?」
 愛原「それも、ただの病気や障害じゃない。ただ、来週には手術しないといけないんだ。何しろ、頭の手術だ。何日かは入院することになるだろうさ」
 リサ「ち、近くの病院だよね!?」
 愛原「いや……少し遠いんだよ。そこでないとダメだって、善場係長に言われた……」
 リサ「そんなぁ……」
 愛原「心配するな。別に死ぬってわけじゃない。検査で悪い所が見つかるかもしれないってのは、想定してただろ?」
 リサ「そ、それはそうだけど……」
 レイチェル「しかも、ただの病気や障害ではないってどういうことですか?」
 リサ「まさか、特異菌に感染して?」
 愛原「違う違う。内容は今は言えない。ただ、命に関わるものではないようだから、それは心配しないでくれ。ただ、大掛かりな手術にはなるらしい。だから、普通の病院じゃダメなんだとよ」

 リサとレイチェルは顔を見合わせた。

 レイチェル「デイライトがそう言って来たということは、バイオテロに関係しているということですね?」
 愛原「俺の口からは何とも言えないが、そういう想像をされても仕方が無いだろうな。とにかく、食べたら一旦帰ろう。詳しいことは、道すがら話すよ」
 リサ「う、うん……」
 レイチェル「わ、私も御一緒して宜しいですか?」
 愛原「うん。いいんじゃないかな」

 私は取りあえず、ソフトドリンクだけ追加注文し、それを飲むに留まった。
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“私立探偵 愛原学” 「急展開」

2024-09-29 16:37:32 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月13日13時00分 天候:曇 埼玉県川口市某所 某脳神経クリニック]

 看護師「愛原さん、愛原学さん!診察室へどうぞ!」
 愛原「はーい」

 いやあ、長い検査だった。
 そりゃ確かに、大病院と違って即日検査してくれるのは確かだ。
 しかし、土曜日ということもあって、混雑していると、やはり、かなり長く待たされるものだな。
 今はようやくMRI検査などが終わり、診察室に呼ばれたところだ。
 ここでやっと院長先生からの診察が始まるというわけだ。

 愛原「宜しくお願いします」
 院長「はい、愛原さん。検査、ご苦労様でした。……えーと……ですね……」

 何故だか院長先生は深刻な顔をしている。
 やはり、ヤバい状態なのだろうか。

 院長「まずはモニタを一緒に見て行きましょう」
 愛原「あ、はい」

 院長先生は机の上のPCのモニタを、少し私の方に向けてくれた。

 院長「これが先ほど愛原さんの頭の中を撮影した写真、画像になります。一応、比較対象として、検査で何とも無かった患者さんの画像も横に表示しています」

 と、ということは、やっぱり私の脳は何とも無いわけではないのだ!

 愛原「い、院長先生、それってつまり……」
 院長「愛原さん、過去に頭の手術を受けられたことはありますか?」
 愛原「い、いいえ?」
 院長「本当に?絶対?」
 愛原「あ、はい。全く記憶にありません」
 院長「子供の頃とか、もっと小さい頃とか……」
 愛原「い、一体、何を仰りたいんですか?」

 もしもそうなら、とっくに両親から聞いているはずだが……。

 院長「……頭の中に、金属片が入っているんですよ」
 愛原「はい!?」

 院長先生はPCを操作した。

 院長「こちらが健康だった患者さんの脳ですね。で、こちらが愛原さんの脳です。ここに何か写ってるの、分かりますか?」
 愛原「は、はい。確かに……」

 数cm程度の長方形のような物?が、確かに写り込んでいた。

 院長「恐らくこれは、マイクロチップか何かだと思います」
 愛原「マイクロチップ!?何でそんなものが!?」
 院長「ですから、それで先ほど手術歴についてお聞きしたのです。この大きさだと、子供のうちに埋め込むのは無理です。恐らく愛原さんが成人されてから、こういった物を埋め込む手術をされたのかと思いまして……」
 愛原「い、いえ……全く記憶に無いです。これが、私の記憶障害や頭痛、フラッシュバックの原因だと仰るのですか?」
 院長「少なくとも、この検査の結果の上では、そう言わざるを得ません。他の箇所も御覧になれば分かると思いますが、このように、健康な患者さんの脳と殆ど同じ状態です。明らかに違うのは、このマイクロチップのような金属片の部分だけです。よって、愛原さんの身に起きている症状の原因は、これだと思われます。実はこの部分は記憶などを司る所でして、仮に愛原さんが過去に大きな事故や病気などで脳の手術をされたとしても、このような所にこのようなマイクロチップを埋め込むことは通常有り得ないです」
 愛原「こ、これは手術をして取り除いた方がいいですよね?」
 院長「それらも含めて、次はより設備の整った大きな病院での検査を強くオススメします。紹介状を書きますので、それを持って、なるべく早く脳神経外科のある大きな病院に掛かってください」
 愛原「は……はい」
 院長「場合によっては、警察への通報も有り得ます」
 愛原「け、警察……」
 院長「紹介状を書くまでの間、待合室でお待ちください」
 愛原「は、はい……。ありがとうございます……」

 私は半ば放心状態で診察室を出た。
 意外過ぎる検査結果に、放心せざるを得なかった。
 これがもし何らかの病気や障害だというのなら、まだ冷静になれたかもしれない。
 一応、それを想定してここに来たからだ。
 しかし、病気でも障害でも、かといって原因不明というわけでもなく、マイクロチップが埋め込まれていたことが原因たったとは……。
 院長先生に言った通り、私は脳手術を受けたことなど1度も無い。
 少なくとも、そんな記憶は無い。
 本当はこの結果を善場係長に連絡しなければならないのだが、あまりにも放心状態で、それはできなかった。

 受付係「愛原さーん、愛原学さーん!」
 愛原「……! あっ、はい!」

 しばらくボーッとしていると、受付係の女性に呼ばれた。

 受付係「こちらが院長先生の紹介状になります。お会計が……」

 脳検査は自由診療なので、やや高い。
 もちろん、公式サイトに値段が書いてあるので、一応現金は持って来ている。
 実際はそれだけでなく、初診料や紹介状の作成費用なども請求された。

 受付係「……お大事になさってください」
 愛原「はい。ありがとうございました」

 私は紹介状と明細とお釣りをもらって、クリニックをあとにした。

 愛原「あ、そうだ……。善場係長に電話……」

 私がスマホを取り出そうとした時だった。

 リサ「先生!」

 クリニックの敷地を出たところで、リサに呼び止められた。

 愛原「リサ!?どうしてここへ?!」
 リサ「先生のことが心配で、どうしても……。学校が終わって、すぐこっちに向かったの」

 その通り、リサは家を出る時の姿そのままだった。

 愛原「向かったのって、単独行動は禁止されてるだろ?どうやって……」
 レイチェル「私です!」

 後になってレイチェルが走ってきた。
 どうやら途中でリサが走り出して、レイチェルを撒いたらしい。

 レイチェル「リサに頼まれて、ここまで来てしまいました」

 レイチェルもまた制服姿のままだった。

 愛原「そ、そうだったのか……。な、何か悪いな……うちのリサが……」
 レイチェル「いえ、これも任務です」

 レイチェルはBSAA養成学校の学生だ。
 つまり、正式なBSAA隊員ではないが、日本には訓練生として来日している。
 リサの『監視役』も、訓練の一環とされている。
 つまり、レイチェルが一緒にいれば、私がいなくても『監視役』が付いていることになり、単独行動にはならない。

 リサ「検査結果はどうだったの!?」
 愛原「そ、それは……」

 私が回答に迷っていると、リサの腹が大きく鳴った。
 明らかな空腹状態である。

 リサ「あ……」
 愛原「……先に、昼飯食べてからにしようか」
 リサ「エヘヘ……」
 愛原「レイチェルも来てくれ。リサをここまで連れて来てくれた御礼に、昼食を御馳走させてもらうよ」
 レイチェル「ありがとうございます」

 私達は近くのイオンモールに向かった。
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