報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤秀樹からの依頼とデイライト」

2024-12-29 20:38:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月18日11時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 善場係長からついに返信があり、詳しい話が聞きたいので、事務所にお邪魔するということだった。
 車で来るというので、ガレージのシャッターを開けておく。
 ガレージには既に業務用にリースしているライトバンがあるが、その横に1台駐車できるスペースがある。
 更にその横に、ギリギリ軽自動車なら駐車できそうなスペースはあるのだが、ギリギリ過ぎるので、高橋夫婦のバイク置き場にしている。
 やってきたのは、いつもの黒いミニバンではなかった。
 白のコペンである。
 あれ?飛び込みの客でも来たかな?
 私が呆気に取られていると、普通にバックしてガレージの中に入って行った。
 しょうがないのでエレベーターに乗って、ガレージまで迎えに行ってみようと思う。

 愛原「あれ?善場係長!?」

 エレベーターで1階に下りると、車から降りて来たのは善場係長だった。

 善場「愛原所長、お疲れさまです。本日は休日で公用車が使えませんので、私用の車で来ました」

 善場係長、相変わらずスーツ姿ではあったが……それにしても……。

 愛原「意外ですね。意外なお車にお乗りですね」
 善場「よく言われます。それより、斉藤容疑者から連絡があったということで、詳しいお話を」
 愛原「ああ、そうでした。どうぞ、こちらへ」

 私は今しがた乗って来たエレベーターに、係長を案内した。
 あのコペン、もしもマニュアル車だったら、高橋やパールと勝負できるかもな。

 パール「いらしゃいませ」

 エレベーターが2階に到着すると、パールが出迎えた。

 善場「急な訪問、失礼致します」

 外はもう梅雨が終わったのかと思うくらいの暑さだが、事務所内は冷房を効かせている。

 愛原「何か冷たいもの、お出しして」
 パール「かしこまりました」
 善場「おかまいなく」

 私は係長を応接コーナーに案内した。
 すかさずパールが、冷たい麦茶を持って来た。

 善場「恐れ入ります。所長、まずは斉藤容疑者から連絡があった時の状況からお伺いします」
 愛原「はい。私が部屋で就寝していましたら、今朝7時頃に電話がありました」

 私は覚えている限りの事を善場係長に話した。

 善場「電話の内容は録音されていますか?」
 愛原「すいません。寝ている時の電話だったもので、録音ボタンを押していなくて……」
 善場「承知しました。ファックスの送信元と、電話の内容から、容疑者は本当にウラジオストク市内から電話を掛け、ファックスを送った物と思われます。ウラジオストクとの時差は1時間です。向こうが1時間早く進んでいます。今、こちらは午前11時くらいですので、向こうは12時くらいということですね」
 愛原「私は斉藤社長……失礼、斉藤さんの依頼を受けるべきでしょうか?」
 善場「本来なら受けるべきではありません。が、容疑者が何を企んでいるのか気になるので、受けたフリをしてください。表向きには、容疑者の言う通りにしてみてください」
 愛原「わ、分かりました。それには、例の『プラチナカード』が必要のようですが?」
 善場「解析は明日終了しますので、明日の夜までにはお返しします」
 愛原「夜ですか」
 善場「容疑者が何を考えているのか分からないので、行動はなるべく早い方がいいと思います。ただ、今日は日曜日で解析チームも休みですし、明日から再開するにしても、1日掛かりになると思われます」
 愛原「なるほど。どうやって、こちらに返して頂けるのですか?」
 善場「バイク便で返却します」
 愛原「あ、なるほど、バイク便!」

 通常の宅配便よりも料金は高いが、都内であれば、当日配達も深夜配達も可能である。

 善場「発送しましたら御連絡致しますので、お受取りの方、よろしくお願い致します」
 愛原「分かりました。そうなると、明後日には出発しないといけませんね」
 善場「はい。急な事で申し訳ありませんが、宜しくお願い致します」
 愛原「はい。ただ、リサは学校だから連れて行けないですねぇ……」

 パールは事務所で留守番していてもらわなくてはならない。
 超絶久しぶりに、私が1人で調査に向かうのか……。

 愛原「いや、ちょっと危険な場所ですので、護衛は必要なんですが……。高橋を超法規的な措置で釈放してもらえませんか?」
 善場「それは無理ですねぇ……。BSAAに依頼することも可能だったのですが、どうも心配です」
 愛原「レイチェルは……レイチェルも学校か」
 善場「斉藤容疑者が愛原所長に依頼するくらいですから、そんなに危険ではないと思いますが……。もちろん銃の携行は許可しますし、危険だと判断されたら、発砲も許可します」
 愛原「はあ……」

 まあ、そりゃかつては1人で調査していた時期もあったけどね。

 愛原「それではこの契約書は、ファックスして構いませんね?」
 善場「結構です。もちろん、コピーは取ってありますね?」
 愛原「もちろんです」

 私は契約書をロシアのウラジオストクのホテルに向けて送信した。

 善場「ここから斉藤容疑者に電話できないのですか?」
 愛原「それが、電話番号見たら、ロシアの番号で……」

 私はスマホを見せた。

 善場「なるほど。滞在先のホテルの電話から掛けたようですね。恐らく、ここからホテルに掛けたところで、ホテル側は斉藤容疑者への取り次ぎを拒否することになっているわけですね。考えたものです」

 そして、斉藤元社長へのファックスが届いたら、自分の所へ持って来るようにとでも命じているのだろう。
 彼の滞在先のホテルはどこなのかは不明だが、安宿ではないと思われる。
 何せ、シベリア鉄道のロシア号でも1等車に乗っていたというのだから。

 善場「それでは移動しましょう」
 愛原「移動?」
 善場「新幹線のキップを購入しないといけませんね?車でJRの駅まで送りしますよ」
 愛原「は、はあ……。ありがとうございます」

 初めてオープンカーに乗るのだと理解した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「斉藤秀樹からの連絡」

2024-12-29 12:53:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月18日07時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・愛原の部屋]

 今日は日曜日だ。
 ゆっくり寝ていよう。
 そう思ったのだが、枕元においたスマホがアラームを鳴らした。
 時間設定を間違えてしまったのだろうか?
 それにしては、メロディが違う。
 これは……起床のアラームではなく……音声着信のメロディだ。
 私はパッと飛び起きると、すぐに電話に出た。

 愛原「も、もしもし!?」
 ???「私だ。仕事の依頼だ」
 愛原「ぼ、ボス!?……って、ええっ!?」

 電話からは懐かしい声がした。
 零細探偵事務所の私は、探偵協会から依頼人を斡旋されることが多い。
 そんな時、協会幹部が、何故か『私だ』と名乗るので、高橋からは、『私田さん』と呼ばれていた。
 その正体は、探偵協会に出資していた斉藤秀樹元社長であったのだが。
 てことは、つまり……。

 斉藤「あれ?もしかして、朝早かったですかね?こちらはもう午前8時なんですが……」
 愛原「斉藤社長!?」
 斉藤「はっはっは!私はもう社長をクビになった男です。『斉藤』で結構」
 愛原「し、しかし……」

 斉藤元社長が私のスマホの電話番号を知っていることは、何ら不思議なことではない。
 ただ、よく掛けられたものだ。

 愛原「いいんですか?私の電話にのんきに掛けて……」
 斉藤「大丈夫。安全は確保されている。イエメンやレバノンよりもロシアの方が安全だよ」
 愛原「ウクライナと戦争中なのに!?」
 斉藤「戦争中だからこそ、却って安全なこともある。ロシア政府はそれを理由に、BSAAの介入を認めていない」
 愛原「そういうもんですか。移動はシベリア鉄道で?」
 斉藤「ああ。ロシア号だよ。是非とも、今度は愛原さんとシベリア鉄道旅行をしたいものです」
 愛原「私もロシアに逃亡するようなことになったら、宜しくお願います」
 斉藤「ああ、いいでしょう。それより、仕事の依頼があるのですがね?」
 愛原「ほ、報酬はあるのですか?」
 斉藤「私の家から、『プラチナカード』は受け取りましたかね?」
 愛原「はい」
 斉藤「結構です。それを持って……」

[同日09時00分 天候:晴 愛原家3階ダイニング]

 

 今朝はハムエッグとロールパン。

 愛原「はぁぁ……」
 リサ「先生、どうしたの?」
 愛原「ちょっと……今日は日曜日だが、休めそうにない……」
 リサ「これのこと!?」

 リサはテレビを指さした。

〔「……斉藤秀樹容疑者は、シベリア鉄道でウラジオストク市内に入り、現在はホテルに滞在しているものと見られています。ウラジオストク市と日本との時差は僅か1時間ほどであり、今日は日曜日ということもあって、日本国総領事館の職員の接触も月曜日以降になると見られ……」〕

 愛原「そうだな。斉藤元社長絡みだ」

 私は溜め息をついた。

 リサ「わたしは出かけない方がいい?」
 愛原「いや、アキバや錦糸町くらいならいいよ。何かあったら、連絡するから」
 リサ「分かった」

 因みに私は善場係長にメールを送ってみたが、日曜日ということもあって、まだ返信は来ていない。
 斉藤元社長が日曜日に連絡してきたのは、役所関係が休みになるからだろうか。
 リサが手に入れた『プラチナカード』は、まだデイライトに貸したままである。
 明日以降に解析と複製を終えて返却されるものと思われる。
 なので、私は今日は動けない。

[同日09時30分 天候:晴 愛原学探偵事務所2階]

 朝食を食べ終えた後で2階の事務所に行ってみると、ファックスが受信されていた。
 これは仕事の依頼書である。
 発信元はウラジオストクであった。
 ロシア語は読めないが、ロシア語が書かれていた時点でお察しだろう。
 もちろん、依頼書を作成したのは斉藤元社長だから、内容は日本語であったが。
 試しにロシア語の部分を翻訳アプリで翻訳してみたら、ウラジオストク市内のホテルからだと分かった。
 報道の通り、今はウラジオストク市内のホテルに滞在しているのだろう。
 もちろんその町とて、純然たるロシア国内。
 BSAAが介入できない国となっている。
 ロシアは世界一広い国土を持っており、いくら戦争中と言っても、全土が戦闘地域というわけでもない。
 さすがに世界大戦や冷戦の時は全土が危険地域だっただろうが、ウクライナとの戦争中に現時においては、極東地域はそんなに危険というわけでもないようだ。

 愛原「これもコピーして、保存しておくか……」

 依頼書は契約書ではない。
 あくまでも依頼書であり、この仕事を引き受けるといった場合は契約書を作成してそれを取り交わすのが通例となっている。
 多分、デイライトから何か言われるだろうが、一応、契約書の作成まではしておこう。

 リサ「先生……」

 その作業をやっていると、リサが上階から下りて来た。
 体操服にブルマから、Tシャツとデニムのショートパンツに着替えている。

 リサ「わたしは出かけて来るけど……」
 愛原「ああ、気をつけて。Pasmoはチャージしてあるな?」
 リサ「……チャージするから、おこづかいw」
 愛原「……あんまり無駄遣いはするなよ?」
 リサ「ついでにお使いやるよ?このレターパック、ポストに入れておけばいいんでしょ?」

 それはデイライトに出す物だった。
 先日の出張に絡み、それに掛かった費用を先に精算する為の書類等が入っている。

 愛原「ああ、宜しく頼む」

 私は追跡番号が書かれているラベルを剥がすと、リサに渡した。

 愛原「ポストの場所は分かるか?」
 リサ「郵便局の前でいいんでしょ?」
 愛原「そうそう」

 郵便局なら菊川駅からそんなに離れていないから、まだリサが単独行動が許される範囲で済むはずだ。
 リサの単独行動が認められるのは、通学のみ。
 菊川駅~岩本町駅~秋葉原駅~上野駅である。

 リサ「行ってきます」
 愛原「行ってらっしゃい」

 リサはレターパックを持って、事務所の外に出ていった。
 今のところ、まだ善場係長からの連絡は無い。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする