報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「善場との再会」

2024-12-19 20:15:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月16日10時03分 天候:晴 東京都台東区上野 JR上野東京ライン1853E列車・4号車内]

 品川止まりの電車のせいか、電車が都心に近づく度に車内が空いてくる。
 普通車の様子は分からないが、少なくともグリーン車はそうだった。

〔次は、東京です〕

 上野駅を定刻に発車し、下車駅の新橋駅はもうすぐである。
 ここまで何も起こらなかったことに、私は少し安心していた。
 だが、それは突然現れる。
 電車が上野駅を発車すると、すぐに中央通りとの立体交差が現れる。
 都営バスも走っているバス通りで、交通量も人通りも多い。
 私達は進行方向左側に座っているのだが、その窓側に座っているリサが目を丸くした。

 リサ「レイチェルだ!レイチェルがいる!」
 愛原「えっ、どこだ!?」
 リサ「今の、駅前の横断歩道の所!目が合った!きっとバレた!!」
 愛原「ええっ!?」

 この時にはもう既に電車は上野駅前商店街の横を走行していて、私が確認しようとした時には、もう見えなかった。

 愛原「本当にレイチェルだったのか?」
 リサ「間違い無いよ!目があったから気づかれた!」
 愛原「この時間、学校はまだ授業中だろ?どうして上野駅前にレイチェルがいたんだ?」
 リサ「今、ヨドバシからLINEがあって、学校に“コネクション”を名乗る所から爆破予告があったんだって。それで急きょ、学校は2時間目途中で終わりになったらしいよ」
 愛原「“コネクション”が今さらそんなチンケなテロするわけないだろう!」

 バイオテロ組織が、新型のウィルスをばら撒くというのならまだしも、爆弾テロだなんて……。
 でもまあ、学校としては大事を取らざるを得ないか。
 当然、警察なども大勢駆け付けることになるだろう。

 リサ「うわ!レイチェルから鬼LINE来たーっ!」

 リサのスマホの画面を見せてもらうと、『今はどこにいますか?』『今は列車に乗っていますか?』『これからどこへ行きますか?』『あなたが答えない場合、BSAAの緊急出動案件となります』と、恐らく英語を翻訳機能で日本語に直訳したようなメッセージが載っていた。

 愛原「安心しろ。この電車に乗っていたとしても、どこに行くか想像なんて付かないだろ」

 最近の行き先表示器がLEDタイプの車両は、省電力の為、走行中は側面の行き先表示を消している場合が殆どである。
 当然この電車も例外ではない。
 但し、運転室上の行き先表示器や列番表示機は常時点灯している。
 横断歩道でレイチェルを見たということは、前後の行き先表示は見えないはずだ。
 この電車は品川止まりだが、東海道本線に直通する熱海行きだとでも思ってくれれば、どこで降りるかは分からないだろう。
 もしかしたら、品川乗り換えの羽田空港でこれから高飛びする予定かもしれんw

[同日10時30分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 新橋には予定通り到着した。
 そこから徒歩で、デイライトの事務所に向かう。

 善場「愛原所長、お疲れさまです」
 愛原「善場係長も御無事で何よりです」
 善場「情報交換だけで時間が掛かりそうですね。まずは会議室へ。お手洗いなど、先に済ませて頂いて結構です」
 リサ「じゃあ、わたし行ってくる」

 リサはトイレに向かった。
 私達は先に会議室に入る。

 愛原「リサから聞いたのですが、何か、東京中央学園で爆発物の脅迫があったとか……」
 善場「そのようですね。今、警視庁が出動しているようですので、対応はそちらに任せることと致します」

 係長は他人事のようだった。
 まあ、気持ちは分かる。
 バイオテロ組織の“コネクション”が、どうして爆弾テロなんかするのかと。
 恐らくは“コネクション”の名前を勝手に使った愉快犯だろうが、その愉快犯が本物の爆発物を使わないとは限らないので、警察が出動するわけだ。

 愛原「それと、ここに来る途中なのですが……」
 善場「はい?」

 私は電車が上野駅を発車した時の話をした。
 すると、係長の顔色が変わった。

 善場「直ちに地下に避難しましょう!まだ、霞ケ関はBSAAとの交渉を終えていません!」
 愛原「ええっ!?」
 善場「リサを呼んできてください!」
 パール「か、かしこまりました!」
 愛原「係長?」
 善場「愛原所長!所長が乗られた電車は、遅延していましたか?」
 愛原「いいえ。ほぼダイヤ通りだったかと思いますが……」
 善場「少し調べれば、あの電車の行き先が分かります!そして、新橋に止まることも分かるでしょう。BSAAはリサが愛原所長と共に行動していることを知っているはずです。そして、新橋に止まる電車に乗っているのを見たということは、ここに向かったと推理するでしょう。私もここにいると知っていますからね」
 愛原「な、なるほど……!」
 リサ「ねぇねぇ!一体何があったの!?」
 善場「移動しますよ!」
 リサ「えっ!?」

 善場係長は、ビルのエレベーターに乗り込んだ。
 そして、エレベーターの操作盤を開けて、地下へのボタンを押す。
 まるで、斉藤家のエレベーターのようだ。
 そして、エレベーターのドアが閉まって、下階へと移動した。
 会議室フロアは3階にあるから、3フロア分移動するわけだな。

 愛原「ん!?」

 エレベーターが1階を通過する。
 ここは雑居ビルのエレベーターということもあり、斉藤家のホームエレベーターのような、ドアに窓は無い。
 それでも、1階から怒号が聞こえたような気がした。

 善場「どうやら、本当にBSAAが攻め込んで来たようですね」
 愛原「ま、マジですか……」
 リサ「レイチェルがチクッたんだ!今度はレイチェルを『授業中おもらし』の刑に……」
 愛原「ロケランで仕返しされるからやめなさい」

 エレベーターが『B2』階に到着する。
 ドアが開くと、四方をコンクリートに挟まれた無機質な空間が広がっているだけだった。

 リサ「先生、ここスマホの電波が入らないよ?」
 愛原「マジか」

 その代わり、何故かエレベーターの横には壁掛けの電話機が置いてある。
 また、通路の向こうからは、地下鉄の電車が走行する音が聞こえた。
 善場係長はその電話の受話器を取ると、どこかへ電話を始めた。

 善場「お疲れさまです。○○○の善場です。緊急事態発生です」

 時折何か暗号なのか専門用語なのか分からない単語が出ていたが、どうやら外部に、BSAAに攻め込まれて退避中である旨を関係先に報告しているようだった。
 それが公安調査庁なのかは不明だ。
 デイライトは今や、BSAAからは悪魔に魂を売った組織扱いされているようだ。

 善場「取りあえず、関係機関には報告しておきました。取りあえず、ここから離れましょう」
 愛原「まさか、BSAAが敵に回るとは……。欧州本部は既にグダグダだって聞いてはいたけど……」
 善場「今回はまあ、仕方がありません」

 “青いアンブレラ”が実は1番正義だったりして?
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“私立探偵 愛原学” 「東京へ」

2024-12-19 14:11:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月16日08時00分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区宮町 イージーステイ大宮1階イートインスペース]

 ここで最後の朝食。
 カレーはいくら食べても飽きない。
 ……と、思っていたが、もうしばらくはいいかな。
 リサはビーフカレーをガツガツと食べていたが。

 愛原「食べたらチェックアウトして、デイライトの事務所に向かうぞ」
 リサ「はーい」
 パール「かしこまりました。警察の方は大丈夫なのでしょうか?」
 愛原「善場係長の話では、公安調査庁が動いているらしいから、特に心配はしなくていいらしい。もしも、それでも警察が来たら、善場係長達に振っていいってさ」
 リサ「なるほど……」
 愛原「問題は、BSAAだ。そっちはまだ偽情報に踊らされているらしいから、BSAAが拘束してくる恐れがある」

 因みに公安調査庁が調査機関を設けて……というのは、本来は秘密なので、公言してはいけない。
 本当は善場係長達は、私達にもそれは内緒にしたかったのだろうが、そうもいかなくなってきたということだ。

 愛原「だからGPSは、事務所に着くまで切ったままでいいとのことだ」
 リサ「なるほと、分かった」

 滞在先が窓の少ない……というか、殆ど無いカプセルホテル兼ネカフェで良かったと思う。

 パール「途中、郵便ポストに立ち寄っても宜しいですか?」
 愛原「ん?」
 パール「マサ宛てに書いた手紙を出したいので」
 愛原「ああ、いいよ。確か、途中にあったな……」
 リサ「駅前ならあるよね?」
 愛原「最悪、駅の中にもある」

 ここに来る直前に立ち寄ったコンビニで、パールは便箋と封筒と切手を買っていた。
 あれはそういうことだったのか。

 愛原「今日は金曜日だから、今日出しても、届くのは来週月曜日になりそうだな」
 パール「ええ。でも、特に急ぎというわけではございませんので」
 愛原「そうか」

[同日09時30分 天候:晴 さいたま市大宮区錦町 JR大宮駅→高崎線1853E列車・4号車内]

 カプセルホテルをチェックアウトして、大宮駅に向かう。
 埼玉県の代表駅のすぐ近くということもあり、商店街や駅前の道は多くの人が往来していた。
 普通、警察はこういう所では容疑者を捕まえないらしい。
 人通りの少ない場所などに来た時に、ようやく捕まえに来るのだそうだ。
 刑事ドラマでも、東京駅などの巨大な駅の構内で犯人を捕まえる描写が無いのは、何も撮影現場に困るからではなく、事実だからである。
 但し、痴漢などの現行犯は除く。
 因みに駅に向かう途中の道に、郵便ポストがあったので、パールの手紙はそこに投函した。
 この辺だと、集配局はさいたま新都心の郵便局になるだろうか。
 高橋も、消印がそこだと首を傾げるかもしれない。

 愛原「一応、グリーン券を買っておこう」

 朝ラッシュのピークは過ぎたとはいえ、まだまだ多くの人が行き交う大宮駅。
 券売機で、紙のグリーン券を3枚買い求めた。
 平日だとやや高いが、これも安全にデイライト事務所まで行く為だ。

 パール「先生、警察が……」
 愛原「ん?」

 改札口は手持ちのICカードで入ろうとしたところ、パールが耳打ちしてきた。
 パールの視線に目を移すと、改札口を入った先に、制服警官が立哨していた。

 愛原「あれは、ただ単に警戒警備中の鉄道警察だ。俺達を捕まえに来たんじゃない」

 仮に公安調査庁の通達が間に合わず、埼玉県警が捕まえに来たとしても、恐らく部署が違う。
 ああいった制服警官ではなく、私服警官が捕まえに来るだろう。

 愛原「ただ、挙動不審にしていると、さすがに職質されるからな?しれっとしてろ」
 パール「はい……」

 パールもかつては、散々っぱら警察に追われる毎日を過ごしていたクチだ。
 今でも苦手意識があるのだろう。
 むしろ挑発してナンボの高橋とは、その辺り対照的である。
 改札口を通過して、乗車予定の電車が来るホームに下りた。

 

〔本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の、6番線の列車は、9時33分発、普通、品川行きです。この列車は、4つドア、10両です。グリーン車が付いております。……〕

 愛原「たったの10両か。まあ、グリーン車にしといて良かったかもな」

 そう言って、10両編成でグリーン車の来る位置に並ぶ。

〔「今度の高崎線の電車は、上野東京ライン経由の普通列車、品川行きです。短い10両編成で参ります。ホームの中ほどでお待ちください。停車位置にご注意ください。品川から先においでのお客様は、その後の9時44分発の上野東京ライン、国府津行きをご利用ください」〕
〔まもなく、6番線に、上野東京ライン、普通、品川行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、4つドア、10両です。……〕

 下り方向から眩いHIDランプを光らせて、電車がやってきた。
 フルカラーLEDの行き先表示がよく見える。
 いくら朝ラッシュのピークが過ぎているとはいえ、たったの10両では、普通車はそれなりに賑わっていた。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。6番線の電車は、上野東京ライン回りの品川行きです。品川止まりの電車です」〕

 大宮駅でぞろぞろと降りて来る。
 目視で確認できた所、まるっと2人席が空いたのは平屋席の方だったので、そちらに向かった。

 

 パールには申し訳無いが、近くの空いている通路側の席に座ってもらうことにする。
 平屋席のメリットは、荷棚があること。
 なので、機内持ち込み可程度の荷物なら、そこに置くことができる。

〔「この電車は、上野東京ライン直通、普通列車の品川行きです。まもなく、発車致します」〕

 座席に座ると、ホームから発車メロディが聞こえて来た。

〔「6番線から、上野東京ライン、品川行き、発車致します」〕
〔6番線の、上野東京ライン、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 電車のドアが閉まり、スーッと動き出した。

〔この電車は、高崎線、上野東京ライン直通、普通電車、品川行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。グリーン券を車内でお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、御了承ください。次は、さいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

 愛原「今日は蒸し暑くなりそうだな……」
 リサ「ねー?服全部脱ぎたい」
 愛原「ここではダメだぞ?」
 リサ「家に着いてからね」
 愛原「着替えるか、風呂入る時だけにしてくれよ?」
 リサ「ずっとシャワーだけだったから、今夜はお風呂に浸かりたいね」
 愛原「それは確かに」
 リサ「先生と一緒に」
 愛原「……それはまた別の機会に」
 リサ「えー?」

 私はスマホを取り出すと、善場係長に上野東京ラインの電車に大宮駅から乗った旨をメールで報告した。
 ここから新橋までは、およそ40分の鉄道旅である。
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