[1月1日09:15.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京駅丸の内北口です」〕
私達を乗せた都営バスが終点に着くと、少ない乗客達は中扉から下車した。
もちろんその中に、私達もいる。
菊川駅前から乗った時、元日にしてはそこそこ乗っていたバスも、門前仲町でぞろぞろ降りて行った。
やはり、殆どが初詣客だったらしい。
本来なら私達のような帰省客も終点か、或いは1つ手前の呉服橋バス停(東海道新幹線に乗り換えるなら、このバス停で降りた方が良い)までそこそこ乗っていていいだろうに、数少ないのは、そもそも帰省客自体が少ないからだろう。
それほどまでにコロナ禍の影響は大きいのだ。
愛原:「外は寒いな。だけど、仙台はもっと寒い。何しろ、雪が降ったって言うからな。というか、今も現在進行形で雪が降ってるらしい」
リサ:「雪かぁ。1年生の時のスキー合宿以来だね」
愛原:「そうか。リサ達は学校でスキー合宿があったんだったな」
リサ:「そう!ガーラ湯沢」
愛原:「で、昨年は無かったと」
リサ:「修学旅行もね」
修学旅行を決行した学校もあれば中止になった学校もあり、悲喜こもごもである。
その代わり、東京中央学園では高等部に進学する今の中等部3年生に対し、その時できなかった修学旅行の代わりを計画しているらしい。
中高一貫校ならではだ。
但し、問題なのが高等部から入学してきた生徒をどうするかだ。
東京中央学園は中等部を卒業して別の高校に進学する生徒も少数ではあるが存在し、またその逆も存在する。
『1番』が通っていたとされる聖クラリス女学院のような、完全中高一貫校ではないのである。
愛原:「今年は、せめて修学旅行くらい行けるようになれればいいな」
高橋:「結局リサのウィルス、コロナの特効薬になれなかったっスねぇ……」
新型コロナウィルスどころか、エボラ出血熱やHIVウィルスをも食い殺してしまうTウィルスとGウィルスであるが、どうしてもゾンビ化などを抑えることができず、計画が頓挫してしまった感がある。
駅の中に入ると、吹き抜けの天井の下を歩く利用者の姿は少なかった。
愛原:「ちょっとしたオペラハウスみたいな感じだろう?」
高橋:「場所が場所なら、ここでボス戦って感じっスね」
愛原:「或いはスタート地点か、セーブポイントになっているかもしれない」
“バイオハザード”の世界では、エントランスホールは安全地帯になっている場合が多い。
もちろん例外はあるし、スタート地点たるエントランスホールが、続編やスピンオフではラスボス戦の会場になる場合もある。
愛原:「まずはキップを買おう。だけどその前に、いい加減どの列車に乗るか決めるか」
高橋:「はい」
私達は改札口の上にある発車標を見た。
かつてはパタパタ式だっただろうが、今ではフルカラーLED式である。
高橋:「9時36分発、“はやぶさ”13号、新函館北斗行きが1番先に出発しますね」
愛原:「あれだとキップを買ってすぐにホームに行って、もう乗り込むといった感じだ。もう少し時間的余裕は欲しい。オマエだって、タバコ吸い溜めしたいだろう?」
高橋:「た、確かに……」
愛原:「実家への土産はその餅とお節料理でいいだろうが、公一伯父さんにはもっと別の物買って行こうと思う。何しろ、『6番』を倒した功労者なんだからな」
高橋:「高齢者のプリウスアタックが、あんな所で役に立つとは思いませんでしたねぇ……。俺も助かりましたよ」
リサ:「日に当たっただけで死ぬポンコツだっただけ。でも、さすがは先生の伯父様」
愛原:「もう70代の老人なんだが……」
リサ:「うん。お腐れ臭マジパねぇ!」
愛原:「お腐れ臭とか言ってやるな」
高橋:「先生、次のは9時40分発、“やまびこ”55号、盛岡行きっスけど……」
愛原:「たった4分しか違わないか。もう少し余裕が欲しい」
高橋:「それじゃあ、10時ちょうど発の“やまびこ”“つばさ”133号、仙台行きと……」
愛原:「待て。確か山形新幹線を連結している“やまびこ”の場合、福島駅で切り離し作業をしている間に追い抜きをする“はやぶさ”とかがあったはずだ。いつもなら混んでいるから、むしろ前者の“やまびこ”にするところだが、今なら“はやぶさ”でもいいかもしれない」
高橋:「さすが先生!名推理っス!まるで鉄道ダイヤのトリックを暴く殺人事件ドラマっスね!」
愛原:「んな大げさな……。とにかく、券売機に行くぞ」
私達は指定席券売機に向かった。
そこでの端末の操作をリサが見ている。
愛原:「よく見ておけよ?大人になって1人で旅行する時があったら、1人で新幹線の予約とかするんだからな?」
リサ:「1人はヤだな……」
愛原:「大人になったらの話だよ。善場主任だって、部下を連れていない時は1人で行動しているだろうが」
リサ:「…………」
私はタッチパネルを操作した。
するとやはり、“やまびこ”“つばさ”133号の後すぐに出発する“はやぶさ”があった。
“はやぶさ”15号で、しかも仙台止まり。
それでもコロナ禍など無かったら満席に近い予約があっただろうに、座席表を見てみたらスッカスカだ。
しかも秋田新幹線の車両まで連結している。
供給過多状態だ。
だが、本来なら、そこまでしないとすぐに満席になるような状態だったのだろう。
私は秋田新幹線の車両を予約したい衝動に駆られたが、あいにくとそっちには3人席が無いので、東北新幹線の車両の3人席を押さえた。
〔発券しています。しばらくお待ちください〕
乗車券の区間も同じせいか、キップは1人1枚ずつ出て来た。
愛原:「よし。キップは1人1枚ずつ持とう」
高橋:「何か、随分と時間が空きましたね」
愛原:「これでも昼前には仙台に着いちゃうんだ。この土産は昼食で食べてもらうってことなりそうだな」
高橋:「はい」
私達は買ったばかりのキップを手に、東京駅のラチ内……改札内に入った。
愛原:「東海道新幹線のラチ内と違って、こっちの新幹線ラチ内はあまり店が多いイメージじゃない。ので、この在来線ラチ内で買おう」
高橋:「はい」
恐らく東海道新幹線は改札口を入ったら、直にもう新幹線乗り場なので、そういうことになっているのだろう。
しかしJR東日本側の場合は、在来線というワンクッションがあるので、店を在来線に集約しているのかもしれない。
もちろん、駅弁やキヨスク自体は新幹線乗り場にはちゃんと存在する。
高橋:「公一先生には何がいいんスか?」
愛原:「公一伯父さんはああ見えて甘党だから、それ系のがいいな。『適度な糖分の補給は、脳を動かす潤滑油じゃ』って言ってたしね。まあ、オーソドックスに“ひよこ”辺りでも……。あ、いや、オーソドックス過ぎるか……」
高橋:「逆にいっぱいあって選びにくいっスね」
愛原:「年寄りだから、あんまり硬くてアゴを使うのは止めた方がいいな。……“ひよこ”の方がいいか?」
私達のお土産選びは、良い時間潰しになった。
〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京駅丸の内北口です」〕
私達を乗せた都営バスが終点に着くと、少ない乗客達は中扉から下車した。
もちろんその中に、私達もいる。
菊川駅前から乗った時、元日にしてはそこそこ乗っていたバスも、門前仲町でぞろぞろ降りて行った。
やはり、殆どが初詣客だったらしい。
本来なら私達のような帰省客も終点か、或いは1つ手前の呉服橋バス停(東海道新幹線に乗り換えるなら、このバス停で降りた方が良い)までそこそこ乗っていていいだろうに、数少ないのは、そもそも帰省客自体が少ないからだろう。
それほどまでにコロナ禍の影響は大きいのだ。
愛原:「外は寒いな。だけど、仙台はもっと寒い。何しろ、雪が降ったって言うからな。というか、今も現在進行形で雪が降ってるらしい」
リサ:「雪かぁ。1年生の時のスキー合宿以来だね」
愛原:「そうか。リサ達は学校でスキー合宿があったんだったな」
リサ:「そう!ガーラ湯沢」
愛原:「で、昨年は無かったと」
リサ:「修学旅行もね」
修学旅行を決行した学校もあれば中止になった学校もあり、悲喜こもごもである。
その代わり、東京中央学園では高等部に進学する今の中等部3年生に対し、その時できなかった修学旅行の代わりを計画しているらしい。
中高一貫校ならではだ。
但し、問題なのが高等部から入学してきた生徒をどうするかだ。
東京中央学園は中等部を卒業して別の高校に進学する生徒も少数ではあるが存在し、またその逆も存在する。
『1番』が通っていたとされる聖クラリス女学院のような、完全中高一貫校ではないのである。
愛原:「今年は、せめて修学旅行くらい行けるようになれればいいな」
高橋:「結局リサのウィルス、コロナの特効薬になれなかったっスねぇ……」
新型コロナウィルスどころか、エボラ出血熱やHIVウィルスをも食い殺してしまうTウィルスとGウィルスであるが、どうしてもゾンビ化などを抑えることができず、計画が頓挫してしまった感がある。
駅の中に入ると、吹き抜けの天井の下を歩く利用者の姿は少なかった。
愛原:「ちょっとしたオペラハウスみたいな感じだろう?」
高橋:「場所が場所なら、ここでボス戦って感じっスね」
愛原:「或いはスタート地点か、セーブポイントになっているかもしれない」
“バイオハザード”の世界では、エントランスホールは安全地帯になっている場合が多い。
もちろん例外はあるし、スタート地点たるエントランスホールが、続編やスピンオフではラスボス戦の会場になる場合もある。
愛原:「まずはキップを買おう。だけどその前に、いい加減どの列車に乗るか決めるか」
高橋:「はい」
私達は改札口の上にある発車標を見た。
かつてはパタパタ式だっただろうが、今ではフルカラーLED式である。
高橋:「9時36分発、“はやぶさ”13号、新函館北斗行きが1番先に出発しますね」
愛原:「あれだとキップを買ってすぐにホームに行って、もう乗り込むといった感じだ。もう少し時間的余裕は欲しい。オマエだって、タバコ吸い溜めしたいだろう?」
高橋:「た、確かに……」
愛原:「実家への土産はその餅とお節料理でいいだろうが、公一伯父さんにはもっと別の物買って行こうと思う。何しろ、『6番』を倒した功労者なんだからな」
高橋:「高齢者のプリウスアタックが、あんな所で役に立つとは思いませんでしたねぇ……。俺も助かりましたよ」
リサ:「日に当たっただけで死ぬポンコツだっただけ。でも、さすがは先生の伯父様」
愛原:「もう70代の老人なんだが……」
リサ:「うん。お腐れ臭マジパねぇ!」
愛原:「お腐れ臭とか言ってやるな」
高橋:「先生、次のは9時40分発、“やまびこ”55号、盛岡行きっスけど……」
愛原:「たった4分しか違わないか。もう少し余裕が欲しい」
高橋:「それじゃあ、10時ちょうど発の“やまびこ”“つばさ”133号、仙台行きと……」
愛原:「待て。確か山形新幹線を連結している“やまびこ”の場合、福島駅で切り離し作業をしている間に追い抜きをする“はやぶさ”とかがあったはずだ。いつもなら混んでいるから、むしろ前者の“やまびこ”にするところだが、今なら“はやぶさ”でもいいかもしれない」
高橋:「さすが先生!名推理っス!まるで鉄道ダイヤのトリックを暴く殺人事件ドラマっスね!」
愛原:「んな大げさな……。とにかく、券売機に行くぞ」
私達は指定席券売機に向かった。
そこでの端末の操作をリサが見ている。
愛原:「よく見ておけよ?大人になって1人で旅行する時があったら、1人で新幹線の予約とかするんだからな?」
リサ:「1人はヤだな……」
愛原:「大人になったらの話だよ。善場主任だって、部下を連れていない時は1人で行動しているだろうが」
リサ:「…………」
私はタッチパネルを操作した。
するとやはり、“やまびこ”“つばさ”133号の後すぐに出発する“はやぶさ”があった。
“はやぶさ”15号で、しかも仙台止まり。
それでもコロナ禍など無かったら満席に近い予約があっただろうに、座席表を見てみたらスッカスカだ。
しかも秋田新幹線の車両まで連結している。
供給過多状態だ。
だが、本来なら、そこまでしないとすぐに満席になるような状態だったのだろう。
私は秋田新幹線の車両を予約したい衝動に駆られたが、あいにくとそっちには3人席が無いので、東北新幹線の車両の3人席を押さえた。
〔発券しています。しばらくお待ちください〕
乗車券の区間も同じせいか、キップは1人1枚ずつ出て来た。
愛原:「よし。キップは1人1枚ずつ持とう」
高橋:「何か、随分と時間が空きましたね」
愛原:「これでも昼前には仙台に着いちゃうんだ。この土産は昼食で食べてもらうってことなりそうだな」
高橋:「はい」
私達は買ったばかりのキップを手に、東京駅のラチ内……改札内に入った。
愛原:「東海道新幹線のラチ内と違って、こっちの新幹線ラチ内はあまり店が多いイメージじゃない。ので、この在来線ラチ内で買おう」
高橋:「はい」
恐らく東海道新幹線は改札口を入ったら、直にもう新幹線乗り場なので、そういうことになっているのだろう。
しかしJR東日本側の場合は、在来線というワンクッションがあるので、店を在来線に集約しているのかもしれない。
もちろん、駅弁やキヨスク自体は新幹線乗り場にはちゃんと存在する。
高橋:「公一先生には何がいいんスか?」
愛原:「公一伯父さんはああ見えて甘党だから、それ系のがいいな。『適度な糖分の補給は、脳を動かす潤滑油じゃ』って言ってたしね。まあ、オーソドックスに“ひよこ”辺りでも……。あ、いや、オーソドックス過ぎるか……」
高橋:「逆にいっぱいあって選びにくいっスね」
愛原:「年寄りだから、あんまり硬くてアゴを使うのは止めた方がいいな。……“ひよこ”の方がいいか?」
私達のお土産選びは、良い時間潰しになった。
正式な曲名は“終焉の始まり”でありますが、当作品内では“BOWリサ・トレヴァーのテーマ”で使わせて頂いております。
どことなく切なく聞こえるピアノの旋律は、見た目は人間の姿をしているリサの姿、しかし時折聞こえてくる不協和音は鬼の片鱗を見せるリサを表しているように聞こえたので。
そして全体的に静かな曲調は、他のボスクラスのBOWと違い、比較的静かに迫ってくるリサならではのそれかなと思いました。