報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「過去に愛原に起きたこととは?」

2025-01-13 20:30:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月20日06時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 

 昨夜は変な夢を見ることはなかった。
 頭にチップを埋め込まれていた時は、悪夢を見ることが多々あったのに。

 愛原「リサは今日も、授業は午後までか」
 リサ「うん。ちょっと、授業遅れ気味だから、今週の土曜日も登校日だって」
 愛原「やっぱりなぁ……。今の中高生は大変だ」
 リサ「わたしはいいけどね。……あ、昨日の牛タンジャーキー、美味しかったよ。ありがとう」
 愛原「もう食い切ったんか!w」

[同日08時00分 天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所1階ガレージ→デイライト車内]

 約束の時間に、善場係長達が迎えに来た。
 今度はプライベートではないからか、係長の私有車コペンではなく、黒塗りのセレナだった。

 善場「おはようございます。愛原所長」
 愛原「おはようございます、善場係長」

 私はエレベーターで1階に下り、ガレージで係長達と合流した。
 運転席には白峰主席が座っている。

 愛原「今日は宜しくお願い致します」
 善場「こちらこそ、宜しくお願いします。どうぞ、車へ」

 私はスライドドアを開けてもらい、助手席の後ろに乗り込んだ。
 すぐ善場係長がドアを閉めて助手席に乗り込む。

 善場「それじゃ、東拘まで」
 白峰「はい」

 車は事務所のガレージを出た。
 朝ラッシュの真っ只中ということもあり、少し時間的に余裕を見た方が良いだろう。

 愛原「係長。向こうに着いたら、高橋に差入品がありますので、それの手続きもさせて頂きたいのですが?」
 善場「構いませんよ。因みに、どんな差入ですか?」
 愛原「大したことないです。現金と、頼まれていた本が数冊です」
 善場「そうですか。それなら、制限されることもないでしょう」

 拘置所内にも収監者が利用できる売店がある。
 もちろん、牢屋から出て自由に売店に行けるわけではない。
 確か、商品リストが渡されて、その中から欲しい商品にチェックを付けるのではなかったかな。
 そして、担当刑務官が代わりに買って来てくれるとか聞いたが。
 もちろん売店なので、有料である。
 その為、人脈のある収監者は、外部から現金を差し入れてもらって、それでよく買い物をするのだとか。
 それとは別に、売店で扱っていない本もあるので、そういう本は私がネットで購入して買い与えてやっている。

 愛原「はい」
 善場「……長野県白馬村にあったという、五十嵐皓貴元社長の別荘になのですが……」
 愛原「は、はい」
 善場「こちらの調べでは、霧生市のバイオハザードが起きる前には、もう彼は所有権を手放しています」
 愛原「そうなんですか!斉藤元社長の話では、既に取り壊されているんだそうですね」
 善場「そうなのですが、その経緯が少しキナ臭い物でして……」
 愛原「キナ臭い?」

 善場「別荘はその後、他人の手に渡り、宿泊施設に転用されたとのことです。所長の記憶では、まるで洋館風の建物だったとのことですね?」
 愛原「そうです。あそこまでは大きくないのでしょうが、まるでラクーンシティ郊外の山奥に建っていたという洋館のようでした」
 善場「恐らくは、それをイメージして建てられたのでしょうね」
 愛原「その後は洋館風のホテルでしたか。経営が傾いたのですか?」
 善場「……ではなく、爆発事故があったのです」
 愛原「爆発事故!?」
 善場「はい。当時の地元消防や警察の調べでは、老朽化したボイラーが爆発したものとされました」
 愛原「爆発して消えた所も、ラクーンシティの洋館みたいですね」
 善場「はい。ラクーンシティと違うのは、日本の方は既に別の宿泊施設に転用されていたということです。それが悲劇を招きました」
 愛原「悲劇?」
 善場「営業中の宿泊施設で、ボイラー爆発ですよ?」
 愛原「あっ……!」

 私の頭に、またフラッシュバックが起きた。
 但し、これは頭痛やめまいを伴うものではなかった。
 フラッシュバックに現れたのは、当時の新聞記事。

 『悲劇!冬のペンションでボイラー爆発!!』『宿泊客、全員死亡か?「逃げ場なく……」』『現場は孤立地帯、消防車や救急車も雪に閉ざされて出動できず……』

 愛原「何か……ありましたね!そういうの!」
 善場「そうですね。爆発したことで建物は全壊・全焼、オーナー夫妻もそれで即死状態だったとのことですので、建物は復旧することなく、現在に至ります」
 愛原「うーむ……」

 それから車内では、日本アンブレラの五十嵐皓貴元社長は懲役5年の実刑判決を受けていたが、刑期を終えて出所しているものの、現在の所在は不明となっているという話までした。
 裁判まで長引きそうだという話をした記憶はあるが、その後は裁判が進んで、実刑判決は食らったらしい。
 地方の町1つ潰した悪の製薬企業の、その日本法人の代表だった男が懲役5年は短いような気がした。

[同日08時30分 天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]

 東京拘置所に到着し、私は差入の窓口に行って、高橋宛てに現金と本を差入に出した。
 それから面会受付を行う。
 面会を行うのは、私と善場係長。
 白峰主席は、いつも通り、車で待機しててもらう。
 面会時間は9時から。
 しばらくして、私と善場係長は面会室に呼ばれた。
 先にこちらが椅子に座り、しばらくすると、刑務官に連れられた高橋がやってくる。
 収容者側の方には、刑務官が立ち会う。

 愛原「やあ、高橋。どうだ、調子は?」
 高橋「……おはようございます。先生の御指示通り、独房で静かにしていますよ」

 タバコが吸えないからか、少しやつれた感じがある。

 愛原「そうか。ここに来る前に、現金と、前に頼まれてた本、差入しておいたから。まあ、自由に使ってくれ」
 高橋「ありがとうございます」
 愛原「何か困ったことがあったら、すぐに手紙を書いて送ってくれ。担当の弁護士さんに言ってくれてもいい」
 高橋「了解しました」
 愛原「それでな、ここからが本題だ。正直に答えてくれよ?オマエ……五十嵐皓貴元社長は知ってるな?日本アンブレラの社長だった男だ」
 高橋「は、はい。昔、その捜査をしましたよね?」
 愛原「その元社長も逮捕されて、いつの間にか懲役刑食らっていたみたいなんだが、釈放されたみたいだ。今、どこに住んでるか分かるか?」
 高橋「そ、それは……!」
 愛原「知っているんだろう?どうして知ってるかまでは聞かないよ」
 善場「その質問は、こちらから改めてさせて頂きますので、高橋被告は覚悟しててください」
 高橋「くっ……!」
 善場「所長、どうぞ続きを」
 愛原「はい。で、どこに住んでいるんだ?」

 私は手帳とペンを取り出した。
 会話の為に、こういう物は面会室に持ち込むことができる。
 だが、同じ理由であったとしても、電子機器の持ち込みは禁止されている。

 高橋「俺も……詳しい住所までは知りませんが……」
 愛原「まあ、言ってみな。どこだ?」
 高橋「群馬です。群馬県の東吾妻という町に、同じような洋館風の別荘を建てて、そこで暮らしてるって聞いたことがあります」
 愛原「東吾妻……」
 善場「JR吾妻線の沿線、群馬原町駅とか、その辺りです」
 愛原「吾妻線か……」

 草津温泉に行く手前辺りか……。

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