[6月20日09時30分 天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]
高橋との面会が終わった。
高橋は、日本アンブレラの五十嵐皓貴元社長の事は話しても、その情報を何故知っているのかまでは教えてくれなかった。
高橋「すいません、先生。俺、しばらく出てこれないかもれません」
と、最後に言っていたのが気になった。
善場「まだまだ余罪があるようですね」
面会室を出て駐車場に戻る道すがら、善場係長が言った。
愛原「どうして隠しているのでしょう?どうせもう拘置所にいるのですから、洗いざらい喋った方がいいのでは?」
善場「理由は2つ考えられます。1つは、彼が隠している最大の罪が殺人であり、これが立件されれば、死刑になってしまうからというのがあるから。もう1つは、余罪を小出しすれば、その分、彼の拘束期間は増えます。拘置所内は安全です。特に、未決拘禁者は基本的に独居房に入りますから。より一層、安全が確保されます」
愛原「なるほど……。でも後者の場合、セーフハウスなるものを用意して下さるんですよね?」
善場「そのつもりなんですが、高橋被告は、拘置所にいることを選択したようですね」
愛原「そのようで……」
善場「そろそろ彼の裁判も始まる頃でしょうから、そちらの傍聴もされますか?」
愛原「そのつもりです」
そんな話をしながら車に戻る。
愛原「明日、早速、東吾妻町に行って、現地調査をしてこようと思いますが、宜しいでしょうか?」
善場「少し、お待ちください。今度はさすがに、1人で行かれるのは危険かもしれません。また、例えあの日本アンブレラの元社長とはいえ、刑期を終えて出所していて、今の所まだ余罪などの疑いが無い以上は、警察も動かせませんし、BSAAも動かせません」
愛原「そう、ですかね……」
善場「こちらでも、帰所した後に会議で決めますので、しばらくお待ちください」
愛原「五十嵐元社長が住んでいるという、洋館風の建物の場所くらいは確認しましょうか。大きな町ではないでしょうから、そんな所に洋館風の建物なんか建てたら、目立つでしょうから」
善場「それはお願いします」
私達は車に乗り込むと、東京拘置所をあとにした。
[同日10時10分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]
事務所まで車で送ってもらう。
善場「お疲れ様でした。恐らく、これから高橋被告からの手紙などが届くと思いますので、それらにも十分注意してください」
愛原「手紙?」
善場「はい。直接口では言えないことは、手紙でしたら書ける事も多々あります」
愛原「でもそれなら、とっくに書いているのでは?」
善場「書くのをそれまで躊躇していたものが、我々が直接出向いたことで決心するということもあり得ます」
愛原「なるほど。そういうもんですか。検閲に引っ掛かったりしませんかね?」
善場「それは大丈夫でしょう。被告が意図的に、そういう書き方をしない限りは……」
愛原「分かりました」
善場「それでは、また依頼がある時は宜しくお願い致します」
愛原「宜しくお願いします」
私は車を降りると、事務所へ向かうエレベーターへと乗り込んだ。
愛原「ただいまァ」
パール「お帰りなさい」
愛原「高橋は元気だったぞ。明日、パールが面会に行くのを楽しみにしていた」
パール「それは……嬉しいですね。マサは、先生が望まれる通りの答えを言いましたか?」
愛原「100パーではないな」
パール「100パーではありませんでしたか」
愛原「よっぽど組織から命を狙われているのかねぇ……」
パール「そうかもしれません」
リサは学校に行っている。
愛原「どれ、新たな仕事の依頼は?」
パール「今のところございません」
愛原「マジか……。そう簡単には行かないな」
とはいえ、こっちには栗原家が所有放棄した金塊があるからな……。
しばらく、生活に困ることはないだろう。
[同日16時00分 天候:曇 同地区内 愛原学探偵事務所2階]
善場「度々申し訳ございません」
善場係長がまた事務所を訪ねてくれた。
善場「例の東吾妻町への調査ですが、正式に依頼させてください」
愛原「かしこまりました。御依頼、ありがとうございます」
デイライト内で、何か決まったのだろうか?
善場「但し、1つ条件があります」
愛原「条件?」
善場「今のところ、五十嵐元社長には、裁判で立件されたもの以外の疑惑がありません」
もちろん、それまで、数多くの疑惑はあった。
しかし、社長として立場上の責任は追及できたものの、内容そのものは現場の独断だったということで、立件が見送られてしまった。
日本の司法では、1度立件を断念された物について、再び立件することは許されていない。
愛原「今のところは、刑期を終えて出所したばかりのまともな人という扱いなわけですね」
善場「そうです」
つまり、五十嵐元社長を犯罪者のような態度で接するなということだな。
そもそもが、日本アンブレラとは、アメリカのアンブレラ製薬の『光』の部分の象徴として設立された現地法人だ。
五十嵐元社長は、そのお飾りとして雇われた、雇われ社長に過ぎない。
愛原「ちゃんと、相手は『普通の人』として接しますよ」
善場「もう1つ、条件があります」
愛原「何でしょう?」
善場「護衛と、カムフラージュとして、リサを同行させてください」
愛原「リサを!?」
善場「あくまでも、旅行客として向かうというテイですので」
愛原「なるほど……。やはり、あのペンションが例の洋館でしたか」
善場「そうなんです」
実は私、今日はネットで、五十嵐元社長が住んでいるという別荘について色々と調べてみた。
群馬県東吾妻町は、そんなに大きな町ではない。
だから、すぐにヒットした。
当初は別荘として建てられたものであったが、今ではペンションに転用されていると。
では、また五十嵐元社長はそれを人手に渡して、また引っ越しをしたのだろうかと思ったが、そうでもないらしい。
経営者の名義が、本人のままになっているからだ。
もしかすると、五十嵐元社長は残った財産で、本当にペンションなんか始めちゃったのかもしれない。
そういう所に1人で泊まっても良いのだろうが、やはり目立つだろう。
そこで、リサと一緒に泊まることで、親子客を装えということらしい。
リサ「夫婦客の間違いでしょ!」
と、学校から帰って来て、話を聞いていたリサが文句を言っていたが。
高橋との面会が終わった。
高橋は、日本アンブレラの五十嵐皓貴元社長の事は話しても、その情報を何故知っているのかまでは教えてくれなかった。
高橋「すいません、先生。俺、しばらく出てこれないかもれません」
と、最後に言っていたのが気になった。
善場「まだまだ余罪があるようですね」
面会室を出て駐車場に戻る道すがら、善場係長が言った。
愛原「どうして隠しているのでしょう?どうせもう拘置所にいるのですから、洗いざらい喋った方がいいのでは?」
善場「理由は2つ考えられます。1つは、彼が隠している最大の罪が殺人であり、これが立件されれば、死刑になってしまうからというのがあるから。もう1つは、余罪を小出しすれば、その分、彼の拘束期間は増えます。拘置所内は安全です。特に、未決拘禁者は基本的に独居房に入りますから。より一層、安全が確保されます」
愛原「なるほど……。でも後者の場合、セーフハウスなるものを用意して下さるんですよね?」
善場「そのつもりなんですが、高橋被告は、拘置所にいることを選択したようですね」
愛原「そのようで……」
善場「そろそろ彼の裁判も始まる頃でしょうから、そちらの傍聴もされますか?」
愛原「そのつもりです」
そんな話をしながら車に戻る。
愛原「明日、早速、東吾妻町に行って、現地調査をしてこようと思いますが、宜しいでしょうか?」
善場「少し、お待ちください。今度はさすがに、1人で行かれるのは危険かもしれません。また、例えあの日本アンブレラの元社長とはいえ、刑期を終えて出所していて、今の所まだ余罪などの疑いが無い以上は、警察も動かせませんし、BSAAも動かせません」
愛原「そう、ですかね……」
善場「こちらでも、帰所した後に会議で決めますので、しばらくお待ちください」
愛原「五十嵐元社長が住んでいるという、洋館風の建物の場所くらいは確認しましょうか。大きな町ではないでしょうから、そんな所に洋館風の建物なんか建てたら、目立つでしょうから」
善場「それはお願いします」
私達は車に乗り込むと、東京拘置所をあとにした。
[同日10時10分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]
事務所まで車で送ってもらう。
善場「お疲れ様でした。恐らく、これから高橋被告からの手紙などが届くと思いますので、それらにも十分注意してください」
愛原「手紙?」
善場「はい。直接口では言えないことは、手紙でしたら書ける事も多々あります」
愛原「でもそれなら、とっくに書いているのでは?」
善場「書くのをそれまで躊躇していたものが、我々が直接出向いたことで決心するということもあり得ます」
愛原「なるほど。そういうもんですか。検閲に引っ掛かったりしませんかね?」
善場「それは大丈夫でしょう。被告が意図的に、そういう書き方をしない限りは……」
愛原「分かりました」
善場「それでは、また依頼がある時は宜しくお願い致します」
愛原「宜しくお願いします」
私は車を降りると、事務所へ向かうエレベーターへと乗り込んだ。
愛原「ただいまァ」
パール「お帰りなさい」
愛原「高橋は元気だったぞ。明日、パールが面会に行くのを楽しみにしていた」
パール「それは……嬉しいですね。マサは、先生が望まれる通りの答えを言いましたか?」
愛原「100パーではないな」
パール「100パーではありませんでしたか」
愛原「よっぽど組織から命を狙われているのかねぇ……」
パール「そうかもしれません」
リサは学校に行っている。
愛原「どれ、新たな仕事の依頼は?」
パール「今のところございません」
愛原「マジか……。そう簡単には行かないな」
とはいえ、こっちには栗原家が所有放棄した金塊があるからな……。
しばらく、生活に困ることはないだろう。
[同日16時00分 天候:曇 同地区内 愛原学探偵事務所2階]
善場「度々申し訳ございません」
善場係長がまた事務所を訪ねてくれた。
善場「例の東吾妻町への調査ですが、正式に依頼させてください」
愛原「かしこまりました。御依頼、ありがとうございます」
デイライト内で、何か決まったのだろうか?
善場「但し、1つ条件があります」
愛原「条件?」
善場「今のところ、五十嵐元社長には、裁判で立件されたもの以外の疑惑がありません」
もちろん、それまで、数多くの疑惑はあった。
しかし、社長として立場上の責任は追及できたものの、内容そのものは現場の独断だったということで、立件が見送られてしまった。
日本の司法では、1度立件を断念された物について、再び立件することは許されていない。
愛原「今のところは、刑期を終えて出所したばかりのまともな人という扱いなわけですね」
善場「そうです」
つまり、五十嵐元社長を犯罪者のような態度で接するなということだな。
そもそもが、日本アンブレラとは、アメリカのアンブレラ製薬の『光』の部分の象徴として設立された現地法人だ。
五十嵐元社長は、そのお飾りとして雇われた、雇われ社長に過ぎない。
愛原「ちゃんと、相手は『普通の人』として接しますよ」
善場「もう1つ、条件があります」
愛原「何でしょう?」
善場「護衛と、カムフラージュとして、リサを同行させてください」
愛原「リサを!?」
善場「あくまでも、旅行客として向かうというテイですので」
愛原「なるほど……。やはり、あのペンションが例の洋館でしたか」
善場「そうなんです」
実は私、今日はネットで、五十嵐元社長が住んでいるという別荘について色々と調べてみた。
群馬県東吾妻町は、そんなに大きな町ではない。
だから、すぐにヒットした。
当初は別荘として建てられたものであったが、今ではペンションに転用されていると。
では、また五十嵐元社長はそれを人手に渡して、また引っ越しをしたのだろうかと思ったが、そうでもないらしい。
経営者の名義が、本人のままになっているからだ。
もしかすると、五十嵐元社長は残った財産で、本当にペンションなんか始めちゃったのかもしれない。
そういう所に1人で泊まっても良いのだろうが、やはり目立つだろう。
そこで、リサと一緒に泊まることで、親子客を装えということらしい。
リサ「夫婦客の間違いでしょ!」
と、学校から帰って来て、話を聞いていたリサが文句を言っていたが。
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