[1月2日10:25.天候:晴 宮城県石巻市 JR石巻駅→石巻線1631D列車先頭車]
私達は今、JR石巻駅で足止めをされている。
別に石巻線が運転見合わせになったのではなく、ダイヤ上、30分以上も停車することになっているからだ。
明らかに起点から終点まで、通しの利用客を想定していないことが分かる。
高橋がタバコ休憩から戻ってきたのだが、同じくジュースを買いに行ったリサが戻ってこない。
高橋に聞くと、何でも『仮面ライダー』や『サイボーグ009』のモニュメントに見入っているのだという。
この駅を中心駅とする石巻市は、かの有名漫画家、石ノ森章太郎氏の出身地である。
町ぐるみでそれを観光のネタにしており、それでその中心駅にあっても、石ノ森氏の作品のモニュメントが展示されているのである。
私らフラフォー世代では、『仮面ライダー』と言えば既にスーツアクター演じる特撮ものというイメージが先行しており、元々の原作はマンガであるということを頭から知っている世代は、もっと上のアラフィフ世代なのではなかろうか。
愛原:「ちょっとリサを迎えに行って来るよ。荷物見ててくれ」
高橋:「分かりました」
私は気動車のディーゼルエンジンのアイドリング音が響くホームに降りた。
この石巻線下りホームには何も無いので、喫煙所やトイレ、自販機は上りホームに集約されている。
因みに仙石線はもっと東側にある。
跨線橋を昇り降りして、上りホームに向かうと、改札口の横に仮面ライダー1号とサイボーグ009の主人公達のモニュメントが立っている。
愛原:「リサ、そんなに気になるか?」
リサ:「あっ、先生。『元は人間から改造されて、正義の味方』という所が羨ましくて……」
愛原:「ああ、なるほど」
それに対して、リサ・トレヴァーは『元は人間から改造されて、人類の強敵』か。
愛原:「心配するな。オマエだけでも『正義の味方』になっているじゃないか。それでいいんだよ。それでも気になるようなら、善場主任達が模索している、『人間に戻す計画』に乗ればいい」
リサ:「うん……」
愛原:「さて、俺はトイレに行ってコーヒー買ってくる。リサは早いとこ列車に戻るんだ」
リサ:「あ……まだジュース買ってない」
愛原:「というか自販機どこだ?」
リサ:「あっち」
愛原:「ん?」
自販機は仙石線ホームへのコンコース上にあった。
愛原:「よし、分かった。じゃあ、ジュース買ったら戻って」
リサ:「うん」
列車内にもトイレはあるのだが、狭い列車トイレより、駅のトイレの方が広く使えて良いという私の考え。
トイレに行って、それから自販機に行くと、紙コップの自販機があることが分かった。
これ、あれだ。
高速道路のサービスエリアなんかにもある、抽出中に“コーヒールンバ”が流れるヤツだ。
但し、この駅にあるのはモニタとBGMが省略された簡易版であった。
鉄道駅にあるのは、この簡易タイプであることが多い。
寒い日に、温かいコーヒーはありがたい。
私はこれを買うと、列車に戻った。
〔「お待たせ致しました。10時36分発、石巻線の下り普通列車、女川行き、まもなく発車致します」〕
発車の時間が近づいて来たが、車内の乗客数は石巻駅到着時と比べればだいぶ少ない。
運転士が運転席の乗務員室窓から顔を出して、ホームに向かって笛を吹く。
駆け込み客がいないのか、やはりこちらもスムーズに発車した。
大きなアイドリング音がして、ゆっくり発車する。
それでも旧国鉄車両と比べれば、アイドリング音は小さく、加速度も軽やかなものなのだろう。
〔ピンポーン♪ 今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は石巻線、各駅停車の女川行きワンマンカーです。これから先、陸前稲井、渡波(わたのは)、万石浦の順に各駅に停車致します。途中の無人駅では、後ろの車両のドアは開きませんので、前の車両の運転士後ろのドアボタンを押してお降りください。【中略】次は、陸前稲井です〕
高橋:「随分ゆっくりな鉄道旅っスけど、結局終点に着くのって何時何分っスか?」
愛原:「11時1分らしいな。まあ、いいんじゃないか。女川駅から女川港までは歩いて行けるらしいし、そこで聞き込み調査でもしてさ」
高橋:「はあ……」
リサ:「海沿いだと、魚が美味しい?」
愛原:「そういうことだ。ついでに、魚介類の美味い物食って帰るか」
高橋:「半分観光っスね」
愛原:「タイラントが来て、カードを落とさなければ、こんなことも無かったんだがな」
そこで私はふと気づいた。
愛原:「なあ。もしかして、これって罠だったりしてな?」
高橋:「あー……なるほど」
リサ:「罠?」
愛原:「俺達を捕まえる為のさ」
高橋:「有り得ますね」
愛原:「タイラントが落としたカードとあれば、それを解析しようとするだろう。そして、解析中に現れた文字が気になって、そこへ行こうとするだろう。行った先に罠が待ち構えているって寸法だ」
高橋:「どうします?引き返しますか?」
愛原:「多分、港までは大丈夫だろう。いくら田舎とはいえ、これから行く女川駅は女川町の中心駅だ。ましてや今は昼間。そんなに寂しいこともないだろうから、そんなに大掛かりな罠は仕掛けられないんじゃないか?」
私は楽観的に捉えた。
金華山という言葉が入っていることから、私は恐らく金華山内に何かあるのだと思った。
だが、正式に調査を頼まれたわけではない。
あくまでも、私は民間探偵業者。
依頼が無ければ動けない。
島に渡るのは止めておいた方が良いだろう。
港で定期船乗り場の調査に止めておくことにしよう。
私達は今、JR石巻駅で足止めをされている。
別に石巻線が運転見合わせになったのではなく、ダイヤ上、30分以上も停車することになっているからだ。
明らかに起点から終点まで、通しの利用客を想定していないことが分かる。
高橋がタバコ休憩から戻ってきたのだが、同じくジュースを買いに行ったリサが戻ってこない。
高橋に聞くと、何でも『仮面ライダー』や『サイボーグ009』のモニュメントに見入っているのだという。
この駅を中心駅とする石巻市は、かの有名漫画家、石ノ森章太郎氏の出身地である。
町ぐるみでそれを観光のネタにしており、それでその中心駅にあっても、石ノ森氏の作品のモニュメントが展示されているのである。
私らフラフォー世代では、『仮面ライダー』と言えば既にスーツアクター演じる特撮ものというイメージが先行しており、元々の原作はマンガであるということを頭から知っている世代は、もっと上のアラフィフ世代なのではなかろうか。
愛原:「ちょっとリサを迎えに行って来るよ。荷物見ててくれ」
高橋:「分かりました」
私は気動車のディーゼルエンジンのアイドリング音が響くホームに降りた。
この石巻線下りホームには何も無いので、喫煙所やトイレ、自販機は上りホームに集約されている。
因みに仙石線はもっと東側にある。
跨線橋を昇り降りして、上りホームに向かうと、改札口の横に仮面ライダー1号とサイボーグ009の主人公達のモニュメントが立っている。
愛原:「リサ、そんなに気になるか?」
リサ:「あっ、先生。『元は人間から改造されて、正義の味方』という所が羨ましくて……」
愛原:「ああ、なるほど」
それに対して、リサ・トレヴァーは『元は人間から改造されて、人類の強敵』か。
愛原:「心配するな。オマエだけでも『正義の味方』になっているじゃないか。それでいいんだよ。それでも気になるようなら、善場主任達が模索している、『人間に戻す計画』に乗ればいい」
リサ:「うん……」
愛原:「さて、俺はトイレに行ってコーヒー買ってくる。リサは早いとこ列車に戻るんだ」
リサ:「あ……まだジュース買ってない」
愛原:「というか自販機どこだ?」
リサ:「あっち」
愛原:「ん?」
自販機は仙石線ホームへのコンコース上にあった。
愛原:「よし、分かった。じゃあ、ジュース買ったら戻って」
リサ:「うん」
列車内にもトイレはあるのだが、狭い列車トイレより、駅のトイレの方が広く使えて良いという私の考え。
トイレに行って、それから自販機に行くと、紙コップの自販機があることが分かった。
これ、あれだ。
高速道路のサービスエリアなんかにもある、抽出中に“コーヒールンバ”が流れるヤツだ。
但し、この駅にあるのはモニタとBGMが省略された簡易版であった。
鉄道駅にあるのは、この簡易タイプであることが多い。
寒い日に、温かいコーヒーはありがたい。
私はこれを買うと、列車に戻った。
〔「お待たせ致しました。10時36分発、石巻線の下り普通列車、女川行き、まもなく発車致します」〕
発車の時間が近づいて来たが、車内の乗客数は石巻駅到着時と比べればだいぶ少ない。
運転士が運転席の乗務員室窓から顔を出して、ホームに向かって笛を吹く。
駆け込み客がいないのか、やはりこちらもスムーズに発車した。
大きなアイドリング音がして、ゆっくり発車する。
それでも旧国鉄車両と比べれば、アイドリング音は小さく、加速度も軽やかなものなのだろう。
〔ピンポーン♪ 今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は石巻線、各駅停車の女川行きワンマンカーです。これから先、陸前稲井、渡波(わたのは)、万石浦の順に各駅に停車致します。途中の無人駅では、後ろの車両のドアは開きませんので、前の車両の運転士後ろのドアボタンを押してお降りください。【中略】次は、陸前稲井です〕
高橋:「随分ゆっくりな鉄道旅っスけど、結局終点に着くのって何時何分っスか?」
愛原:「11時1分らしいな。まあ、いいんじゃないか。女川駅から女川港までは歩いて行けるらしいし、そこで聞き込み調査でもしてさ」
高橋:「はあ……」
リサ:「海沿いだと、魚が美味しい?」
愛原:「そういうことだ。ついでに、魚介類の美味い物食って帰るか」
高橋:「半分観光っスね」
愛原:「タイラントが来て、カードを落とさなければ、こんなことも無かったんだがな」
そこで私はふと気づいた。
愛原:「なあ。もしかして、これって罠だったりしてな?」
高橋:「あー……なるほど」
リサ:「罠?」
愛原:「俺達を捕まえる為のさ」
高橋:「有り得ますね」
愛原:「タイラントが落としたカードとあれば、それを解析しようとするだろう。そして、解析中に現れた文字が気になって、そこへ行こうとするだろう。行った先に罠が待ち構えているって寸法だ」
高橋:「どうします?引き返しますか?」
愛原:「多分、港までは大丈夫だろう。いくら田舎とはいえ、これから行く女川駅は女川町の中心駅だ。ましてや今は昼間。そんなに寂しいこともないだろうから、そんなに大掛かりな罠は仕掛けられないんじゃないか?」
私は楽観的に捉えた。
金華山という言葉が入っていることから、私は恐らく金華山内に何かあるのだと思った。
だが、正式に調査を頼まれたわけではない。
あくまでも、私は民間探偵業者。
依頼が無ければ動けない。
島に渡るのは止めておいた方が良いだろう。
港で定期船乗り場の調査に止めておくことにしよう。
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