[12月24日16:21.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]
〔まもなく1番線に、京王線直通、快速、橋本行きが10両編成で到着します。黄色い線の内側で、お待ちください。……〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はクリスマス・イブだが、外は風が強い。
そこから逃げるように地下鉄の駅に入ったわけだが、やっぱりここも電車が接近すると風が強い。
〔「1番線、ご注意ください。新宿、笹塚方面、快速、橋本行きが参ります。都営新宿線内並びに笹塚までは各駅に停車致します」〕
強風を伴って京王電鉄の車両がやってきた。
〔1番線は京王線直通、快速、橋本行きです〕
菊川駅には最近ホームドアが付いた。
その分、ドアの開閉にブランクが発生するので、ホームドア無しの時と比べるとややまだるっこしさを感じる。
まあ、そのうち慣れるだろうが。
〔きくかわ〜、菊川〜〕
私は高橋とリサを伴って電車に乗り込んだ。
〔1番線、ドアが閉まります〕
京王電車ならではの甲高いドアチャイムが鳴って、ドアが閉まった。
外からはホームドアの甲高いドアチャイムが聞こえて来る。
そのドアが閉まってから発車する為、やっぱりまだるっこしい。
〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.Please change here for the Oedo line.〕
〔“大魔道師の弟子”でお馴染みのワンスターホテルへおいでの方は、次でお降りください〕
ところで、どうして私達がこの電車に乗っているのかというと、斉藤さんの実家でクリスマスパーティーがあり、私達がお呼ばれしたからである。
リサ:「サイトー、家で待ってるって」
愛原:「そうか。俺達も急がなきゃな」
高橋:「18時からでしょう?このルートで行っても、超余裕ですって」
愛原:「それもそうだな」
因みに私達のルートは新宿回り。
知っている人は遠回りのように思うかもしれないが致し方無い。
愛原:「外はクソが付くほど寒い」
高橋:「先生に風邪を引かれたら、俺は責任を取って腹を掻っ捌かなければなりません」
愛原:「せんでいい!……歳のせいか、ここ最近、風邪を引きやすくなってねぇ……」
新宿回りなら、岩本町回りと違って駅の外に出なくていいから、寒風に吹き晒されることもないというわけだ。
高橋:「先生、まだそういう御歳でも……」
愛原:「ボスからもそう言われて笑われたよ。『キミ、そういうセリフはせめて40歳を過ぎてから言うもんだよ』ってさ」
高橋:「なるほど……」
愛原:「ま、とにかくこの仕事は体と頭が資本だ。両方やられる風邪には十分注意しないとな」
高橋:「メモっておきます!」
高橋はノートを取り出すと、揺れる電車の中だというのに器用にメモを取り出した。
てか、わざわざメモするまでもないだろう。
因みにインフルエンザの予防接種は既に終えている。
リサに関しては……全身ウィルスなのでその心配は無い。
いや、ほんとマジで。
前、善場さんに確認したら、『研究施設での実験結果を取り寄せてみましたが、リサ・トレヴァーにインフルエンザウィルスを投与してみたところ、インフルエンザウィルスの方が死滅したそうです』とのこと。
リサが持っているウィルスは強過ぎて、感染させた人間を化け物に変えさせるほどであるが、上手いこと調整すれば、どんなウィルスでも死滅させる魔法の特効薬なんかできるかもしれないな。
もしかしたら、リサの機嫌を取っているのも、それが目的だったりして。
暴走させて射殺処分なんかしたら、今までの研究がパーになるからな。
愛原:「クリスマスパーティーは初めてか?」
リサ:「うん」
研究所にはリサと似た年恰好の娘、似たような境遇の娘が複数いたようだが、とてもクリスマスパーティーをやるような華やいだ雰囲気ではなかったようだ。
[同日16時21分 天候:晴 新宿駅]
〔「まもなく新宿、新宿です。お出口は、右側です。この電車は京王線に入ります、橋本行きです。笹塚まで各駅に停車した後、快速運転となります。京王線内をご利用のお客様、停車駅にご注意ください。本日も都営地下鉄新宿線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕
愛原:「どーれ、着いたか……」
途中で席が空いたので、私はローズピンクのシートに腰掛けていた。
〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕
下車客も多い代わりに、乗車客も車内には多い。
多分、京王本線の客は京王新宿駅から乗るだろうから、京王新線内の乗客か、京王相模原線に向かう乗客達だな。
愛原:「さあ、高橋。出番だぞー?ちゃんとJR埼京線のホームまで連れて行けよー?」
高橋:「わっかりました!この俺にお任せ!」
チョロ男乙www
あとはこの『歩くナビタイム』に任せれば良い。
それにしても、改札口を出ると京王線のエリアなのか、そこ関係の店を通ることになる。
時期が時期だけに仕方が無いのだが、あちこちでクリスマスセールが実施されている。
愛原:「今年も女っ気の無いクリスマスか……」
リサ:「私がいるじゃない」(←中学1年生)
高橋:「先生!クリスマスは所詮性夜ですよ!?そういう考えはやめてください!」
リサの言葉を上書きするように、高橋がズイッと私の前に出て言った。
愛原:「いやいや、軽い呟きに重いツッコミするなよ〜」
高橋:「この21世紀は、『男っ気』がトレンドです。俺は先生の為に脱ぎます」
愛原:「脱がんでいい!」
せめて、『一肌』という単語が入っていればまた違ったのだが……。
[同日16:52.天候:晴 JR新宿駅・埼京線ホーム→埼京線1659K電車10号車]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。3番線に停車中の電車は、16時52分発、各駅停車、大宮行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
私の希望通り、高橋は迷わずに埼京線ホームに着くことができた。
1号車から混んでくるこの電車、1番後ろの10号車はガラガラという寸法である。
モスグリーンの座席に腰掛けると、すぐに発車の時刻になった。
ホームからはポップアップな発車メロディが聞こえて来る。
〔3番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
あとはこのまま北与野駅まで乗っていれば良い。
こちらはちゃんとドアが閉まったのだが、前の車両の方で誰かがドアに挟まれたのか、すぐには発車しなかった。
駆け込み乗車はやめましょう。
というわけで、電車がやっと発車する。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです。次は、池袋です。……〕
ところでリサはバッグを持っていて、その中にはプレゼント交換用のプレゼントが入っている。
一体何が入っているのか気になったのだが、さすがの私にも教えてくれなかった。
うむ、この辺は女の子らしい。
もっとも、私は私で手ぶらで行くのも何だから、手土産は持参であるのだが。
相手は富豪だから、あまり変な物は持って行けないんだよなぁ……。
高橋:「先生、外はもう真っ暗ですね」
愛原:「冬至が過ぎたばっかりだからな、もう16時で暗くなるよ」
昔、仕事で冬の北海道と沖縄に行ったことがある。
まだ高橋が弟子入りする前の話だ。
16時で仕事先の北海道は真っ暗なのに、沖縄は17時になってもまだ明るかったのだ。
私にとっては、日本は国土の広い国だよ。
〔まもなく1番線に、京王線直通、快速、橋本行きが10両編成で到着します。黄色い線の内側で、お待ちください。……〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はクリスマス・イブだが、外は風が強い。
そこから逃げるように地下鉄の駅に入ったわけだが、やっぱりここも電車が接近すると風が強い。
〔「1番線、ご注意ください。新宿、笹塚方面、快速、橋本行きが参ります。都営新宿線内並びに笹塚までは各駅に停車致します」〕
強風を伴って京王電鉄の車両がやってきた。
〔1番線は京王線直通、快速、橋本行きです〕
菊川駅には最近ホームドアが付いた。
その分、ドアの開閉にブランクが発生するので、ホームドア無しの時と比べるとややまだるっこしさを感じる。
まあ、そのうち慣れるだろうが。
〔きくかわ〜、菊川〜〕
私は高橋とリサを伴って電車に乗り込んだ。
〔1番線、ドアが閉まります〕
京王電車ならではの甲高いドアチャイムが鳴って、ドアが閉まった。
外からはホームドアの甲高いドアチャイムが聞こえて来る。
そのドアが閉まってから発車する為、やっぱりまだるっこしい。
〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.Please change here for the Oedo line.〕
〔“大魔道師の弟子”でお馴染みのワンスターホテルへおいでの方は、次でお降りください〕
ところで、どうして私達がこの電車に乗っているのかというと、斉藤さんの実家でクリスマスパーティーがあり、私達がお呼ばれしたからである。
リサ:「サイトー、家で待ってるって」
愛原:「そうか。俺達も急がなきゃな」
高橋:「18時からでしょう?このルートで行っても、超余裕ですって」
愛原:「それもそうだな」
因みに私達のルートは新宿回り。
知っている人は遠回りのように思うかもしれないが致し方無い。
愛原:「外はクソが付くほど寒い」
高橋:「先生に風邪を引かれたら、俺は責任を取って腹を掻っ捌かなければなりません」
愛原:「せんでいい!……歳のせいか、ここ最近、風邪を引きやすくなってねぇ……」
新宿回りなら、岩本町回りと違って駅の外に出なくていいから、寒風に吹き晒されることもないというわけだ。
高橋:「先生、まだそういう御歳でも……」
愛原:「ボスからもそう言われて笑われたよ。『キミ、そういうセリフはせめて40歳を過ぎてから言うもんだよ』ってさ」
高橋:「なるほど……」
愛原:「ま、とにかくこの仕事は体と頭が資本だ。両方やられる風邪には十分注意しないとな」
高橋:「メモっておきます!」
高橋はノートを取り出すと、揺れる電車の中だというのに器用にメモを取り出した。
てか、わざわざメモするまでもないだろう。
因みにインフルエンザの予防接種は既に終えている。
リサに関しては……全身ウィルスなのでその心配は無い。
いや、ほんとマジで。
前、善場さんに確認したら、『研究施設での実験結果を取り寄せてみましたが、リサ・トレヴァーにインフルエンザウィルスを投与してみたところ、インフルエンザウィルスの方が死滅したそうです』とのこと。
リサが持っているウィルスは強過ぎて、感染させた人間を化け物に変えさせるほどであるが、上手いこと調整すれば、どんなウィルスでも死滅させる魔法の特効薬なんかできるかもしれないな。
もしかしたら、リサの機嫌を取っているのも、それが目的だったりして。
暴走させて射殺処分なんかしたら、今までの研究がパーになるからな。
愛原:「クリスマスパーティーは初めてか?」
リサ:「うん」
研究所にはリサと似た年恰好の娘、似たような境遇の娘が複数いたようだが、とてもクリスマスパーティーをやるような華やいだ雰囲気ではなかったようだ。
[同日16時21分 天候:晴 新宿駅]
〔「まもなく新宿、新宿です。お出口は、右側です。この電車は京王線に入ります、橋本行きです。笹塚まで各駅に停車した後、快速運転となります。京王線内をご利用のお客様、停車駅にご注意ください。本日も都営地下鉄新宿線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕
愛原:「どーれ、着いたか……」
途中で席が空いたので、私はローズピンクのシートに腰掛けていた。
〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕
下車客も多い代わりに、乗車客も車内には多い。
多分、京王本線の客は京王新宿駅から乗るだろうから、京王新線内の乗客か、京王相模原線に向かう乗客達だな。
愛原:「さあ、高橋。出番だぞー?ちゃんとJR埼京線のホームまで連れて行けよー?」
高橋:「わっかりました!この俺にお任せ!」
チョロ男乙www
あとはこの『歩くナビタイム』に任せれば良い。
それにしても、改札口を出ると京王線のエリアなのか、そこ関係の店を通ることになる。
時期が時期だけに仕方が無いのだが、あちこちでクリスマスセールが実施されている。
愛原:「今年も女っ気の無いクリスマスか……」
リサ:「私がいるじゃない」(←中学1年生)
高橋:「先生!クリスマスは所詮性夜ですよ!?そういう考えはやめてください!」
リサの言葉を上書きするように、高橋がズイッと私の前に出て言った。
愛原:「いやいや、軽い呟きに重いツッコミするなよ〜」
高橋:「この21世紀は、『男っ気』がトレンドです。俺は先生の為に脱ぎます」
愛原:「脱がんでいい!」
せめて、『一肌』という単語が入っていればまた違ったのだが……。
[同日16:52.天候:晴 JR新宿駅・埼京線ホーム→埼京線1659K電車10号車]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。3番線に停車中の電車は、16時52分発、各駅停車、大宮行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
私の希望通り、高橋は迷わずに埼京線ホームに着くことができた。
1号車から混んでくるこの電車、1番後ろの10号車はガラガラという寸法である。
モスグリーンの座席に腰掛けると、すぐに発車の時刻になった。
ホームからはポップアップな発車メロディが聞こえて来る。
〔3番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
あとはこのまま北与野駅まで乗っていれば良い。
こちらはちゃんとドアが閉まったのだが、前の車両の方で誰かがドアに挟まれたのか、すぐには発車しなかった。
駆け込み乗車はやめましょう。
というわけで、電車がやっと発車する。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです。次は、池袋です。……〕
ところでリサはバッグを持っていて、その中にはプレゼント交換用のプレゼントが入っている。
一体何が入っているのか気になったのだが、さすがの私にも教えてくれなかった。
うむ、この辺は女の子らしい。
もっとも、私は私で手ぶらで行くのも何だから、手土産は持参であるのだが。
相手は富豪だから、あまり変な物は持って行けないんだよなぁ……。
高橋:「先生、外はもう真っ暗ですね」
愛原:「冬至が過ぎたばっかりだからな、もう16時で暗くなるよ」
昔、仕事で冬の北海道と沖縄に行ったことがある。
まだ高橋が弟子入りする前の話だ。
16時で仕事先の北海道は真っ暗なのに、沖縄は17時になってもまだ明るかったのだ。
私にとっては、日本は国土の広い国だよ。