[5月8日13:00.天候:晴 栃木県那須塩原市 ホテル天長園]
チェックアウトの10時になってもリサは目を覚まさなかったので、私はデイライトに連絡することにした。
日曜日なので善場主任は休みだろうと思っていたが、午後になって駆け付けたデイライトの職員は善場主任であった。
善場:「お疲れ様です。愛原所長」
愛原:「どうも、善場主任。この度はとんだ……」
善場:「いいえ。事情は伺いました。しかし、想定内というか、想定外というか……。とにかく、意外な事が起きたのは事実のようですね」
愛原:「はあ……。未成年に飲酒させるとは、私も逮捕ですか?」
善場:「リサは人間ではありませんので、それには該当しませんので、ご安心ください」
BSAAの軍服を着た職員達を、私は案内した。
呆気に取られる天長会信者達。
信者A:「せ、戦争でも始まるんですか?」
信者B:「らしいですな」
信者C:「まさか、宗教弾圧!?」
信者D:「いや、軍隊使って弾圧はねぇべ。弾圧してくるのは警察だ」
なんて会話してる。
リサが寝ている客室に職員達を案内した。
軍服を着ていて、ガスマスクを着けてはいるが、赤十字の腕章と『Doctor』と書かれたゼッケンを着けているので、軍医だと分かる。
すぐにその場で、リサの検査が行われた。
その間、私は善場主任から事情聴取。
善場:「ふーむ……。どうやら、本当に愛原所長の血中アルコールを摂取したことによる泥酔状態ですか……。それに伴う体内TウィルスやGウィルスの変化について、調べてみたいものです」
その為、軍医はリサの腕から血液を10本も採取した。
リサの血は人間と同じ赤黒いものであったが、注射針を刺されてもリサは目を覚まさなかった。
採取された血液は直ちに別の医療班員に渡され、ホテルの駐車場に止められたドクターカーに運ばれる。
そこで、それまで採取されたリサの血液データと比較される。
正常な状態のリサの体内ウィルスと、現在の状態を比べてみて大きな変化があったとしたら……どうなるんだろう?
見た目は第1形態の鬼の姿のまま眠っている。
その後、リサを外のドクターカーに運ぶことになった。
ストレッチャーが運び込まれ、リサをその上に寝かせる。
客用エレベーターではストレッチャーが乗せられないので、荷物用のエレベーターに乗せることになった。
そこは凛が誘導した。
一般の宿泊客は立入禁止のバックヤードに入り、客用エレベーターとは違って何のリニューアルもされていない古い荷物用エレベーターに乗せる。
荷物用なので、その中も殺風景なものだった。
愛原:「……?」
大きな荷物を運ぶエレベーターだから、客用のそれより大きいのは分かる。
だが、それにしても大き過ぎないかと思った。
客用エレベーターでさえ、定員は15人前後である。
それがこのエレベーターは、40人乗りであった。
まるで、高層ビルの荷物用エレベーターのようである。
このホテルは、そんなに大規模なものではない。
地上8階建ての中規模なホテルだ。
しかも気になったのは、客用エレベーターには無い地下階のボタンがあったこと。
しかもそのボタンの横にだけ鍵穴が付いていて、恐らく鍵を差して回さないとボタンが押せないようになっているのだと思われた。
愛原:「凛ちゃん、この地下階には何があるの?」
凛:「倉庫と機械室です」
と、当たらず障らずの回答を返して来た。
恐らくこのエレベーターは関係者しか乗らないだろうに、わざわざ鍵で封印する必要があるのだろうか。
これが客も乗るエレベーターなら、客が間違って押さないように封印する必要はあると思うが……。
善場:「後で地下階を見せて頂いても、よろしいですか?」
凛:「それは……支配人に聞いてみませんと」
善場:「よろしくお願いしますね」
リサはドクターカーに乗せられ、そこで色々な検査を受けた。
だが、数値的には前回検査した時と大して変わりはないようだ。
あるとしたら、血中アルコールの状態。
意外なことに、かなりアルコールの分解力が弱いらしい。
つまり、『殆ど酒が飲めない』状態であるということだ。
私は……まずこのホテルに着いて、風呂に入ってから、脱衣所で缶ビールを1つ飲み、夕食の時に瓶ビールが2本とチューハイが1本とそれと【以下略】。
それから更に、夜にも風呂に入って、その風呂上がりに缶ビールを1つ飲んだんだっけ。
で、それが含まれた血をリサは吸い取ったものだから……。
軍医:「体内のウィルスの状態についてですが、数値的には特に変化はありません」
愛原:「そうなんですか」
軍医:「ただ、血液中のアルコール濃度が高いので、急性アルコール中毒を引き起こした可能性があります」
愛原:「じゃあ……」
軍医:「意識があれば排尿させるなどの処置がありますが、意識が無いので、輸液を行います」
急性アルコール中毒症に対する治療は、対症療法しか無いし、体内のアルコールを中和させる方法は無い。
軍医:「人間と同様の方法が効けば、の話ですが……」
愛原:「はあ……」
リサには輸液の為の点滴が行われた。
その時に刺した針の痛みに、リサが一瞬反応したが、それで意識を回復させることはなかった。
[同日15:00.天候:晴 同ホテル]
凛:「すいませんが、支配人が、『宗教施設にも関わることですので、お見せできません』とのことです」
凛がドクターカーの前で待機している善場主任に言うと、善場主任は眉を潜めた。
善場:「なるほど……。そうですか」
凛:「ひっ?!」
元BOWの主任の睨みは、現BOWのリサも震えさせるほど。
ましてや、半分しかBOWの血が入っていない凛は【お察しください】。
善場:「では、令状が必要になりますね。分かりました」
と、そこへマイクロバス型のドクターカーの乗降ドアが開けられた。
軍医:「善場主任、『2番』の意識が戻りました」
愛原:「本当ですか!?」
たまたま凛と一緒に外に出た私も、その言葉に驚いた。
善場主任と一緒に車に乗り込むと、ストレッチャーの上で横になっているリサの目が開けられ、ボーッと天井を見つめていた。
その瞳の色は金色。
愛原:「リサ、大丈夫か!?」
すると、リサは私に焦点の合わない目を向けた。
リサ:「先生……おはよう……」
愛原:「リサ……。良かった……」
善場:「ドクター、血中濃度は正常ですか?」
軍医:「ようやく0.05%にまで下がりました。これは通常、ほろ酔い状態になります」
それまで、リサの血中アルコール濃度は最大0.4%あったらしい。
これは人間であれば間違いなく昏睡状態になり、しかも命を落としかねないほどの濃度だそうだ。
輸液をしたことで、ようやくアルコールが薄まったらしい。
軍医:「ここまで下がれば、もう命に別状は無いでしょう。輸液はこれで終了とします」
愛原:「ありがとうございます」
愛原:「リサ、体の具合はどうだ?」
リサ:「クラクラする……気持ち悪い……オシッコしたい……」
愛原:「トイレに行こうか」
私はリサをホテル内のトイレに連れて行ったが、そこで嘔吐したり、尿を大量に排出したりしているうちに、更にアルコールは薄まったらしい。
よく、『吐いたら気分が良くなった』と言うが、リサも例外ではなく、トイレに行った後は見る見るうちに元気になっていった。
チェックアウトの10時になってもリサは目を覚まさなかったので、私はデイライトに連絡することにした。
日曜日なので善場主任は休みだろうと思っていたが、午後になって駆け付けたデイライトの職員は善場主任であった。
善場:「お疲れ様です。愛原所長」
愛原:「どうも、善場主任。この度はとんだ……」
善場:「いいえ。事情は伺いました。しかし、想定内というか、想定外というか……。とにかく、意外な事が起きたのは事実のようですね」
愛原:「はあ……。未成年に飲酒させるとは、私も逮捕ですか?」
善場:「リサは人間ではありませんので、それには該当しませんので、ご安心ください」
BSAAの軍服を着た職員達を、私は案内した。
呆気に取られる天長会信者達。
信者A:「せ、戦争でも始まるんですか?」
信者B:「らしいですな」
信者C:「まさか、宗教弾圧!?」
信者D:「いや、軍隊使って弾圧はねぇべ。弾圧してくるのは警察だ」
なんて会話してる。
リサが寝ている客室に職員達を案内した。
軍服を着ていて、ガスマスクを着けてはいるが、赤十字の腕章と『Doctor』と書かれたゼッケンを着けているので、軍医だと分かる。
すぐにその場で、リサの検査が行われた。
その間、私は善場主任から事情聴取。
善場:「ふーむ……。どうやら、本当に愛原所長の血中アルコールを摂取したことによる泥酔状態ですか……。それに伴う体内TウィルスやGウィルスの変化について、調べてみたいものです」
その為、軍医はリサの腕から血液を10本も採取した。
リサの血は人間と同じ赤黒いものであったが、注射針を刺されてもリサは目を覚まさなかった。
採取された血液は直ちに別の医療班員に渡され、ホテルの駐車場に止められたドクターカーに運ばれる。
そこで、それまで採取されたリサの血液データと比較される。
正常な状態のリサの体内ウィルスと、現在の状態を比べてみて大きな変化があったとしたら……どうなるんだろう?
見た目は第1形態の鬼の姿のまま眠っている。
その後、リサを外のドクターカーに運ぶことになった。
ストレッチャーが運び込まれ、リサをその上に寝かせる。
客用エレベーターではストレッチャーが乗せられないので、荷物用のエレベーターに乗せることになった。
そこは凛が誘導した。
一般の宿泊客は立入禁止のバックヤードに入り、客用エレベーターとは違って何のリニューアルもされていない古い荷物用エレベーターに乗せる。
荷物用なので、その中も殺風景なものだった。
愛原:「……?」
大きな荷物を運ぶエレベーターだから、客用のそれより大きいのは分かる。
だが、それにしても大き過ぎないかと思った。
客用エレベーターでさえ、定員は15人前後である。
それがこのエレベーターは、40人乗りであった。
まるで、高層ビルの荷物用エレベーターのようである。
このホテルは、そんなに大規模なものではない。
地上8階建ての中規模なホテルだ。
しかも気になったのは、客用エレベーターには無い地下階のボタンがあったこと。
しかもそのボタンの横にだけ鍵穴が付いていて、恐らく鍵を差して回さないとボタンが押せないようになっているのだと思われた。
愛原:「凛ちゃん、この地下階には何があるの?」
凛:「倉庫と機械室です」
と、当たらず障らずの回答を返して来た。
恐らくこのエレベーターは関係者しか乗らないだろうに、わざわざ鍵で封印する必要があるのだろうか。
これが客も乗るエレベーターなら、客が間違って押さないように封印する必要はあると思うが……。
善場:「後で地下階を見せて頂いても、よろしいですか?」
凛:「それは……支配人に聞いてみませんと」
善場:「よろしくお願いしますね」
リサはドクターカーに乗せられ、そこで色々な検査を受けた。
だが、数値的には前回検査した時と大して変わりはないようだ。
あるとしたら、血中アルコールの状態。
意外なことに、かなりアルコールの分解力が弱いらしい。
つまり、『殆ど酒が飲めない』状態であるということだ。
私は……まずこのホテルに着いて、風呂に入ってから、脱衣所で缶ビールを1つ飲み、夕食の時に瓶ビールが2本とチューハイが1本とそれと【以下略】。
それから更に、夜にも風呂に入って、その風呂上がりに缶ビールを1つ飲んだんだっけ。
で、それが含まれた血をリサは吸い取ったものだから……。
軍医:「体内のウィルスの状態についてですが、数値的には特に変化はありません」
愛原:「そうなんですか」
軍医:「ただ、血液中のアルコール濃度が高いので、急性アルコール中毒を引き起こした可能性があります」
愛原:「じゃあ……」
軍医:「意識があれば排尿させるなどの処置がありますが、意識が無いので、輸液を行います」
急性アルコール中毒症に対する治療は、対症療法しか無いし、体内のアルコールを中和させる方法は無い。
軍医:「人間と同様の方法が効けば、の話ですが……」
愛原:「はあ……」
リサには輸液の為の点滴が行われた。
その時に刺した針の痛みに、リサが一瞬反応したが、それで意識を回復させることはなかった。
[同日15:00.天候:晴 同ホテル]
凛:「すいませんが、支配人が、『宗教施設にも関わることですので、お見せできません』とのことです」
凛がドクターカーの前で待機している善場主任に言うと、善場主任は眉を潜めた。
善場:「なるほど……。そうですか」
凛:「ひっ?!」
元BOWの主任の睨みは、現BOWのリサも震えさせるほど。
ましてや、半分しかBOWの血が入っていない凛は【お察しください】。
善場:「では、令状が必要になりますね。分かりました」
と、そこへマイクロバス型のドクターカーの乗降ドアが開けられた。
軍医:「善場主任、『2番』の意識が戻りました」
愛原:「本当ですか!?」
たまたま凛と一緒に外に出た私も、その言葉に驚いた。
善場主任と一緒に車に乗り込むと、ストレッチャーの上で横になっているリサの目が開けられ、ボーッと天井を見つめていた。
その瞳の色は金色。
愛原:「リサ、大丈夫か!?」
すると、リサは私に焦点の合わない目を向けた。
リサ:「先生……おはよう……」
愛原:「リサ……。良かった……」
善場:「ドクター、血中濃度は正常ですか?」
軍医:「ようやく0.05%にまで下がりました。これは通常、ほろ酔い状態になります」
それまで、リサの血中アルコール濃度は最大0.4%あったらしい。
これは人間であれば間違いなく昏睡状態になり、しかも命を落としかねないほどの濃度だそうだ。
輸液をしたことで、ようやくアルコールが薄まったらしい。
軍医:「ここまで下がれば、もう命に別状は無いでしょう。輸液はこれで終了とします」
愛原:「ありがとうございます」
愛原:「リサ、体の具合はどうだ?」
リサ:「クラクラする……気持ち悪い……オシッコしたい……」
愛原:「トイレに行こうか」
私はリサをホテル内のトイレに連れて行ったが、そこで嘔吐したり、尿を大量に排出したりしているうちに、更にアルコールは薄まったらしい。
よく、『吐いたら気分が良くなった』と言うが、リサも例外ではなく、トイレに行った後は見る見るうちに元気になっていった。