報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「盂蘭盆の愛原家」

2022-10-27 14:46:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月13日12:30.天候:晴 宮城県仙台市若林区連坊小路 曹洞宗福現山保寿寺]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は親戚一同が集まって、お盆の法要を行った。
 それが終わり、今は大広間で昼食を御馳走になっている。
 曹洞宗は禅宗であり、食事も仏道修行の1つとされていて、精進料理が美味い。
 もっとも、私達が口にしているのは来客用としての贅沢な内容らしいが。
 リサよりもやかましい甥っ子や姪っ子の面倒を押し付けられ……もとい、頼まれながら、私はその合間に高橋に電話をした。

 愛原:「あー、もしもし。高橋か?」
 高橋:「先生、お疲れさまです!」
 愛原:「あー、こっちは大変だ。リサも順当に人間として育てば、こんな感じになっただろうってな子供達ばかりだ」
 高橋:「それはお疲れさまです。ガキの相手は、ガキにやらせますか?」
 愛原:「リサのことだから、寄生虫でも寄生させて操るくらいのことはするかもしれん。やっぱりいい」
 高橋:「それもそうですね」
 愛原:「そっちはどうだ?」
 高橋:「取りあえず時間潰しに、駅前のネットカフェにいます」
 愛原:「ネカフェ?もっと楽しい所、行ってもいいのに」
 高橋:「いえいえ。先生がお忙しいのに、弟子の俺が遊ぶわけにはいきませんから。化け物の監視役は、俺に任せてください」
 リサ:「化け物言うなって言ったじゃん!」

 電話の向こうから、リサの声が聞こえた。

 愛原:「何か、ダーツバーのような音が聞こえるが?」
 高橋:「あー、ダーツもあるんです」
 愛原:「そうなのか。料金は後で立替ておくよ」
 高橋:「あざっす」
 リサ:「あのね、先生!わたし、おとなしくしてるからね!?」
 愛原:「ああ、分かった分かった。ネカフェだと、あれだろ?マンガもいっぱいあるだろ?それでも読んで、時間潰しててくれ」
 リサ:「分かったー!」
 愛原:「俺はまだやることがあるから」
 高橋:「親戚付き合いですね。お疲れさまです」
 愛原:「それもあるんだが、あれだよ」
 高橋:「あれ?」
 愛原:「昨日、奥新川で見つけた資料さ。お盆明けにデイライトさんに届くよう、資料だけでも送ってくれって言われてるんだ」
 高橋:「そうなんですか」
 愛原:「一応、こっちでもコピーだけは取っておきたいんだが、何しろ忙しいからなぁ……」
 高橋:「それ、俺がやりますよ」
 愛原:「やるって?」
 高橋:「俺が先生の御宅に伺います。それから、コピー取りますよ」
 愛原:「そうか。じゃあ、頼むよ」
 高橋:「弟子にして助手の俺に任せてください」
 愛原:「午後には実家に戻るから」
 高橋:「御親戚の方々は?」
 愛原:「夕食食べてから帰るそうだ。だから、もう一泊、ホテルで我慢してくれな?」
 高橋:「先生の御命令は絶対ですから。お気になさらないでください」
 愛原:「そこのリサにも、よろしくな?」
 高橋:「分かってます。こんなアホでも、先生の御命令は絶対ということくらい……」
 リサ:「誰がアホやねん!」
 愛原:「あはは……」

 うちの事務所スタッフは本当に賑やかだ。
 高野君がいなくなって以来、本当に……。

 姪っ子A:「おじちゃん!おじちゃん!遊ぼ!」
 姪っ子B:「今度はおじちゃんが鬼!」
 愛原:「わっ、ととと!わ、悪い!昼休み、強制終了だ!また後でな!」
 高橋:「は、はい!」
 リサ:「本物の鬼とやらを見せてやr……」

 何だか電話の向こうで、リサが変な怒りを出していたような気がしたが、知らなかったことにしておこう!
 だいたい、姪っ子なんだから、別に問題無いだろ!

[同日同時刻 天候:晴 宮城県仙台市宮城野区榴岡 BiVi仙台駅東口3Fアイ・カフェ仙台店]

 リサ:「先生!女と遊んでる!」
 高橋:「先生の親戚だろ?なにジェラってんだよ?」
 リサ:「だって!」
 高橋:「まあ、確か……あのくらいの離れた親等だったら、結婚できるって聞いたことあるなぁwあぁ?w」
 リサ:「ちょっと今からお寺行って来る!」
 高橋:「オマエみたいな鬼が行ったら、坊さんに滅されるぜ?」
 リサ:「鬼斬り先輩みたいなのじゃなければ大丈夫!」
 高橋:「先生が実家にお戻りになったら、俺は資料を取りに行く。オマエはここに残ってマンガでも読んでな」
 リサ:「ヤダ!一緒に行く!」
 高橋:「オマエなぁ……!」

 高橋はまた電話した。

 高橋:「あー、先生。お忙しいところ、サーセン。実はリサの奴……かくかくしかじか」
 愛原:「あー、分かったよ!連れて来ていいよ!」
 高橋:「了解っス!」
 姪っ子A:「休みなのに仕事してる叔父ちゃんは、どーん!」
 姪っ子B:「どーん!」
 愛原:「わああ!」
 高橋:「何やってんスか?」
 愛原:「姪っ子達に馬乗りにされた!早く帰りたい!」
 高橋:「お疲れさまっス」

 高橋は電話を切った。

 高橋:「先生の大慈大悲に感謝しな。オマエも来ていいってよ」
 リサ:「おー!……でも何か、電話の向こうが騒がしかったけど?」
 高橋:「先生は今、お忙しい。今、『ロリ姪っ子2人に騎乗位されてイかされた僕』を実演されているところだ」

 馬乗り≒騎乗位

 リサ:「! 先生の秘蔵動画に入ってたアレ!」
 高橋:「というわけで、先生が帰還されたと同時に行くからな?じゃ、頼んます!」
 リサ:「うぅ……私も交ざりたい……!」

[同日15:00.天候:晴 仙台市若林区某所 愛原の実家]

 親戚達と両親を交えた長話のせいで、私はなかなか帰れなかった。
 しかもその間、唯一の独身者である私が子供達の面倒を見なくてはならなくなったのだ。
 そして、ようやく帰れた時には3時のおやつの時間になっていた。
 姪っ子や甥っ子達が3時のおやつに夢中になっている間、私は急いで自室に籠り、まずはSDメモリーカードのコピーだけを行なった。
 紙の資料については、コピー機が無いので、どこかでコピーしなくてはならない。
 それはコンビニでもいいのだが、いかんせんコンビニに行くヒマすら無いのだ。
 と、そこへ私のスマホにLINEの着信があった。
 それは高橋からで、どうやら実家前に着いたらしい。
 私は早速、原本のSDメモリーカードと紙の資料を持って玄関に向かった。

 高橋:「先生、お疲れさまです!」

 家の外には高橋と、帽子を深く被って角は何とか隠しているものの、エルフ耳と長く鋭い爪は隠せていないリサがいた。

 リサ:「先生に騎乗位しやがったクソバカガキ共はどこ!?」
 愛原:「はい!?」
 高橋:「ハーッハッハッハ!」

 リサの見当違いの怒りに高橋、大爆笑。
 高橋の奴、リサに何か変なこと吹き込んだな?

 愛原:「俺は子供達と遊んだだけだよ!?」
 リサ:「アタシにも騎乗位して!」
 愛原:「何がだ!」
 高橋:「先生、それより例のブツを」
 愛原:「資料って言えよ。因みにメモリーカードについては、俺のパソコンでできたから、コピーはこの紙の資料でいい」
 高橋:「お任せください。その後、姉ちゃんとこの事務所に送ればいいんですね?」
 愛原:「ああ。この大きさなら、レターパックで行けるだろう。但し、あれだぞ?必ずハンコかサインの要る赤い方で送るんだぞ?青い方はダメだぞ?」
 高橋:「分かってますって。お任せください」
 リサ:「……わたしはここに残りたいな」
 愛原:「いいからここは俺に任せて、高橋に付いててやれよ」
 高橋:「まあ、俺1人で大丈夫なんスけど……」
 愛原:「口うるさい叔母さんとかいるから、オマエ達がいると説明が面倒臭いんだよ」
 高橋:「『不肖の愛弟子』という説明ではダメっスか?」
 リサ:「『将来のお嫁さん』という説明ではダメ!?」
 愛原:「うん、ダメだね」

 私は2人を何とか家から追い出した。
 それよりリサの奴、正体を隠さないとヤベーだろ。
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“愛原リサの日常” 「悪夢」

2022-10-27 11:38:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月13日01:32.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区榴岡 東横イン仙台駅東口2号館 リサの部屋]

 リサ:「きゃーっ!」

 リサは悪夢を見て目が覚めた。
 夢の中で、記憶が断片的に蘇りつつある。
 暮らしていた家が襲撃され、自分と姉妹(記憶が無いので、姉か妹かは不明)が拘束されるという夢だ。

 リサ:「はぁっ……!はぁっ……!」

 上半身だけ起こすと、第1形態の鬼の姿に戻っており、汗をびっしょりかいていた。

 リサ:「うう……」

 リサは汗を吸ってびしょ濡れになった、ホテルのナイトガウンを脱ぎ捨て、その下に着ていた黒いスポブラとショーツを脱ぎ捨てるとバスルームに入った。
 シャワーを浴びていても、悪夢の余波がリサの意識や感覚を奪おうとする。

 UBCS隊員:「裏切り者の上野達夫を始末した!女家族は3人!全員連行しろ!男は殺して構わん!」

 リサ:「うぅ……」

 銃を構えたガスマスクのUBCS隊員達の怒号が聞こえる。
 UBCSとはアンブレラ直営の軍事会社のことである。
 当然、日本ではもちろん、アメリカの本体でも事業許可を受けていない会社であった。
 事業許可を受けていたのは、USS。
 これはアンブレラ直営の警備会社で、これは事業許可を受けていた。
 本場アメリカでは、更に許可を取って、銃で武装していたくらいである。
 日本では日本の警備業法に従わざるを得ず、普通の警備会社と大して変わらなかったが。

 シャワーを浴びた後は、全裸のままバスルームから出て、冷蔵庫に入れておいたペットボトルの水をガブ飲みした。

 日本アンブレラ主任研究員:「ダメだ!母親に続いて、娘1人もダメか!」
 ヒラ研究員:「大丈夫です!1人は良い数値を示しています!白井本部長の掲げる『最も危険な12人の巫女プロジェクト』の達成には間に合うかと!」


 リサ:「うぅ……!」

 このまま眠ったら、また悪夢の続きを見てしまう。
 だから起きていようと思うのだが、時折、殴られるような頭の激痛は、そんなリサの意識を奪おうとしていた。

 善場:「一家殺人事件の経緯を知ってる!?UBCSの前に、1人の男が忍び込んだんですって!」
 高野:「あいつが何で八丈島に行ったかって?そりゃあ……」


[同日07:00.天候:晴 同ホテル リサの部屋→1Fロビー]

 女魔王:「これではっきりした!ずっと人間が嫌いだったけど、あいつらは敵だ!」

 リサ:「おー……って、あれ……?」

 枕元に置いたスマホのアラームが鳴って、リサは目が覚めた。
 今度は変な夢を見た。
 自分は魔族の一員で、自分より俄然強い女魔王に率いられて人類を滅ぼしに行く側……。

 リサ:「いやいやいや……」

 リサは夢の内容を否定して起き上がった。
 今度は大した寝汗もかいていない。
 暑かったし、ナイトガウンは一着しか無かったので、黒いスポブラとショーツだけで寝ていた。

 リサ:「ううーん……!」

 リサは大きく伸びをして、それからバスルームに行った。
 夜中にシャワーを使った為、浴槽内はまだ水滴が付いている。
 今回は顔を洗って、歯を磨くだけにした。

 リサ:「……段々、人間の姿に化けれなくなっているような……?」

 人間と殆ど姿の変わらぬ第0形態になった。
 それまでは牙も隠せたのだが、今は隠せなくなっている。
 もっとも、この程度ならまだ誤魔化せるが。
 そのうち、エルフ耳や角も隠せなくなるのではないだろうか?
 それで、本当の第1形態となる。
 バスルームから出ると、部屋の電話が鳴った。

 リサ:「はいはい」

 ライティングデスクの上の受話器を取ると……。

 高橋:「おう、リサ。起きたか?」
 リサ:「うん、起きた」
 高橋:「準備ができたら、飯に行くぞ」
 リサ:「分かったー」
 高橋:「ホテルを出る前に、洗濯するぞ。服とか汚れてるだろ?」
 リサ:「そうだね」
 高橋:「ホテルのコインランドリーを使うから」
 リサ:「分かったよ」

 リサは電話を切った。
 そして、まだ汚れていない白いTシャツと黒いスカートを穿いた。
 それから、使用済みの下着や汚れた服などをバッグに詰める。

 リサ:「これでよし」

 部屋を出ると、高橋が待っていた。

 高橋:「来たか?鍵、忘れるなよ」
 リサ:「もち」

 エレベーターに乗り込んで1階に降りると、ロビーが朝食会場となっていた。
 そこに行く前に、コインランドリーに向かう。
 長期滞在の宿泊客もいるので、大抵こういうホテルにはコインランドリーがある。

 高橋:「ほらほら、早く洗濯物入れろ」
 リサ:「はいはい」

 洗剤も売っているので、それをドバドバ入れるリサだった。

 リサ:「先生のパンツ、わたしが洗いたいなー」
 高橋:「バカ!それは俺の仕事だ!」

 洗濯を開始すると、2人は朝食会場に行った。

 リサ:「1回200円なんだねー」
 高橋:「先生が警備会社にお勤めだった頃、社員寮のコインランドリーは1回100円だったらしいぞ」
 リサ:「ほんとに!?」
 高橋:「ま、今は200円が相場ってところか」

 朝食はバイキング形式である。

 高橋:「……やると思ったぜ」
 リサ:「むふー!」

 リサは当然の如く、皿に山盛りの量を取ったのだった。

 リサ:「だって昨日の夜、何も食べてないんだもん」
 高橋:「まあ、それもそうか。ま、どうせこっちはタダだからな」
 リサ:「でしょー!」

 リサはドリンクバーから、オレンジジュースを取って来た。
 飲み物に関しては、人並みの量である。

 リサ:「昨日はパチンコ行って来たの?」
 高橋:「まあな」
 リサ:「当たった?」
 高橋:「まあな。当たり過ぎて、先生に怒られたよ」
 リサ:「先生?先生から電話があったの?」
 高橋:「ああ。ちょうど確変リーチ出てた時な」
 リサ:「それでそれで!?」
 高橋:「機械が『リーチ!』って言ってたのに、先生が、『リーチじゃねーよw』って言ってたw」

 高橋はその時のやり取りを思い出し、吹いてしまった。

 リサ:「それでそれで!?」
 高橋:「当たってラウンド曲流れてさ、先生と一緒に歌ったよ」
 リサ:「いいなぁ……」
 高橋:「オマエの歳じゃ、まだパチ屋行けねーからな」

 今はパチンコだけでは大勝ちできないので、スロットの方にも手を出したことは内緒にしていた高橋だった。
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“愛原リサの日常” 「市街地にて」

2022-10-26 20:25:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月12日17:19.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 仙台市営バス仙台駅前バス停→地下鉄仙台駅改札外トイレ]

 リサ達を乗せたバスは、仙台市営バスでも屈指の長距離路線である。
 その為、途中で乗務員交替があるくらいだ。
 白沢車庫前バス停は、名前の通り、バスの車庫がある場所である。
 営業所としての機能もあるのか、そこで運転手が交替した。
 数分停車するというので、高橋は乗務員に断って、営業所のトイレを借りた。
 確かに、作並温泉元湯バス停でバスを待っていた時、トイレに行かなかったのは高橋だけである。
 高橋が戻って来て発車の時間になったバスは、再び国道48号線を東進した。
 途中に愛子駅前バス停があり、そこでここから本数の多くなるJR仙山線に乗り換えるという案もあったが、疲れていた愛原達はこのまま終点まで乗って行くことにした。
 尚、途中に愛子バイパスや仙台西道路などのバイパスがこの国道にはあるが、路線バスは旧道を走行した。
 国道の資格を剥奪され、県道に格下げになった旧道を進んだ。

〔「ご乗車お疲れ様でした。まもなく終点、仙台駅前、仙台駅前です。車内にお忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください」〕

 バスは愛原が言った通り、青葉通の仙台市地下鉄仙台駅の乗り場近くの降車場に停車した。

 愛原:「おい、リサ。降りるぞ」

 リサは疲れてうとうとしており、被っていたピンク色のキャップを深く被っていたが、愛原に揺り起こされ、それで目を覚ました。
 作並温泉街では数えるほどしかいなかった乗客も、いつの間にかその数を増やしており、終点に着く頃には前扉に長蛇の列ができるほどだった。
 リサは帽子を浅く被り直すと、愛原の後ろに続いた。
 そして、手持ちのPasmoを運賃箱の読取機にタッチする。

 運転手:「ありがとうございました」
 リサ:「ど、どうも……」

 リサがびっくりしたのは、1130円も引かれたからである。
 まあ、路線バスで片道およそ1時間20分も乗っていたら、それくらいはするだろう。
 これがタクシーなら、およそ10倍の値段はすることを思えば、安いと言えば安い運賃だと思われる。

 高橋:「先生、荷物を回収しましょう」
 愛原:「そうだな。この地下鉄の中を通って、JRに行けるから、それで」
 高橋:「はい。……おい、リサ。付いて来いよ」
 リサ:「うん……」

 リサは体のだるさを感じていた。
 具合が悪いというよりは、疲労困憊といった感じだ。
 BOWとして体力に自信はある。
 だが、さすがに自分の過酷な人間時代の記憶が断片的にでも蘇ったことは、思いの外、苦痛であったらしい。
 それと、もう1つ……。

 リサ:「先生、トイレに行きたい」
 愛原:「あー、そうだな。地下鉄の駅にトイレがある。そこに行こう」
 高橋:「オマエ、近いな」
 リサ:「違うの……!」

 リサは眉を潜めて、自分の股間を指さした。

 愛原:「高橋」
 高橋:「あー、サーセン」

 JR仙台駅に向かう通路から外れると、改札外トイレがある。
 都営地下鉄もそうだが、こういう公営地下鉄の場合、市民への公衆トイレの意味合いもあってか、トイレが改札外にあることが多い。

 愛原:「俺もついでに行って来るよ。リサも、ゆっくりでいいからな?」
 リサ:「うん……」
 高橋:「先生、おりものが多い日ってのは、危険日ってことですから、気をつけた方がいいですよ」
 愛原:「う、うん……って、何で俺に言うんだよ!?」
 高橋:「パールにその逆を教えられた時、危うく騙されるところでしたよー」
 愛原:「いや、知らねーし!」

 彼女持ちの高橋が愛原にそんなことを言いながら、男子トイレに入って行く。

 リサ:(じゃあ、今は妊娠できないのか。でもなぁ……)

 リサは女子トイレに入ると、手近な個室に入り、デニムのショートパンツを下ろした。
 そして、手荷物の中からナプキンを取り出した。

 リサ:(妊娠したら、学校行けなくなっちゃうからなぁ……)

 我那覇絵恋とのLINEで、沖縄中央学園那覇高校では、既に1人の女子生徒が『危険な一夏の思い出』を作ってしまい、産婦人科に入院したとの情報が入った。

 リサ:「……!」

 1~2年くらい前までは、愛原との子供を妊娠するか学校に行けなくなるかを天秤に掛けて、それだけで興奮してしまい、何度もオナニーしたのだが、今は少しそれを冷静に俯瞰して考えられるようになったことに驚いた。

 リサ:(大人になったの……かな?)

 トイレから出た後で、洗面台の鏡を見てみたが、体型はそんなに変わっていなかった。

 リサ:(巨乳になれば、先生の秘蔵動画、『巨乳JKにぱふぱふされて何度もイカされた件について』を再現してあげられるのに……)

 こればかりはGウィルスやTウィルスではどうにもならない上、むしろGウィルスが成長を阻害していることに絶望した。

 リサ:「はぁ……」

 そして、深いため息をついたのだった。

[同日17:45.天候:晴 同県仙台市宮城野区榴岡 ホテル東横イン仙台駅東口2号館]

 JR仙台駅で荷物を回収し、そこから東口に出る。
 更に少し東進した所に、東横インが2つ建っている。
 旧館の1号館と、新館の2号館である。
 そのうち1号館にあっては、現時点でコロナ患者の療養施設になっている為、一般客は2号館を利用することになる。
 愛原が高橋とリサの部屋を予約したこともあり、愛原もホテルまでついてきた。

 愛原:「それじゃ、これが部屋の鍵だ。悪いけど、宜しくな?」
 高橋:「いえ、とんでもないです」
 リサ:「気にしないで」

 鍵はカードキーではなく、普通の鍵であった。

 愛原:「じゃ、俺はすぐ帰らないといけないから」
 高橋:「はい。お疲れ様っした!」
 リサ:「気をつけてね」

 高橋はリサに鍵を渡した。

 高橋:「飯はどうする?」 
 リサ:「うーん……。今日はいいや」
 高橋:「いいのか?」
 リサ:「疲れたから、もう寝る」
 高橋:「そうか」
 リサ:「お兄ちゃんは?」
 高橋:「俺は軽く飯食ってくるよ。で、ついでにちょっと打ってくる」

 高橋は右手でハンドルを回す仕草や、スロットのボタンを押す仕草をした。

 高橋:「オメーがいない間、ちょっとな」
 リサ:「うん、分かったよ」
 高橋:「いいか?今日はホテルから出るんじゃねーぞ?勝手にBOWが出歩いたとなっちゃ、真っ先に俺が怒られるんだからな?」
 リサ:「分かってるよ。お菓子とかなら、途中で買ったし。飲み物は、ここで買えるし……。ん?ホテルから出なければ、部屋からは出ていいんだよね?」
 高橋:「あ?どういうことだ?」
 リサ:「だから、ジュース買いにロビーに下りるくらいはいいよね?」
 高橋:「ああ、そんなことか。まあ、それくらいならいいんじゃねーか」
 リサ:「やった!それなら……」

 リサ、ロビーの自販機に向かう。

 高橋:「今買うんかーい!」
 リサ:「さっきのは、足りなくなったら、の話」
 高橋:「あのなぁ……」

 自販機で飲み物を買ったリサは、それからやっとエレベーターに乗ったのだった。
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“私立探偵 愛原学” 「市街地へ向かう」

2022-10-26 15:23:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月12日15:45.天候:晴 宮城県仙台市青葉区作並 仙台市営バス作並温泉元湯停留所→市営バスS840系統車内]

 現場監督に教えられた通りの道を行くと、迷わず作並温泉の温泉街に辿り着くことができた。
 そして、大きな旅館を名乗るホテルの向かい側に、仙台駅前行きのバス停があった。
 バス停のポールは2つ立っており、1つは山形県のバス会社が運行する特急バスの停留所。
 もう1つは、このバス停を起終点とする仙台市営バスの停留所だった。
 尚、市営バスの方は『作並温泉元湯』という名前であり、山交バス(山梨交通ではなく、山形交通)は『作並温泉』を名乗る。
 時刻表を見ると、どちらもあまり本数は多くない。
 市営バスにあっては、1時間に1本という状態だ。
 だが、市営バスの方は、少し待っていれば乗れるようである。
 もっとも、バス停に先客はいなかった。
 上り線の方には酒屋が建っており、この時間はまだ営業していた。

 高橋:「先生、ちょっと一服します」

 高橋はそう言って、タバコを取り出しながら喫煙所に向かった。
 酒屋ながらタバコも売っており、店先に吸い殻入れもある。

 愛原:「俺は何か買って来る」
 高橋:「酒っスか?」
 愛原:「なワケあるか!……昼抜きだったから、少し食べ物買ってくるよ。酒屋だから、つまみとか何か売ってるだろ」
 高橋:「さすがですね」
 愛原:「リサはどうする?」

 リサは自分の人間だった頃の記憶を断片的に思い出したショックで、嘔吐したくらいだ。
 食欲は……。

 リサ:「……食べる」

 リサのお腹がグウグウ鳴っているのが分かった。
 時間が経って、少しは落ち着いたのかもしれない。
 私は店内に入った。
 コンビニではないので、少し気は引けたが、リサはトイレも借りた。
 こういう時、リサの方がコミュ力が高かったりする。
 さすがに酒は買えないが、水やら麦茶やらを購入した。
 買った後で一気にガブ飲みしてしまったのは、それほどまでに喉が渇いていたということだ。
 それはリサも同じだった。
 高橋にあっては飲み物の他、タバコも買い足している。

 愛原:「バスが来るまでの間、ちょっと善場主任に連絡しよう」

 私はスマホを取り出すと、それで善場主任に連絡した。
 さすがに温泉街まで来れば、電波もバリバリ入っている。
 報告が長くなると思い、私は重要点だけをまず話した。
 やっぱり今回の探索で最重要点だったのは、日本アンブレラの秘密研究施設だろう。
 そして、そこに捕らわれていた少女達。
 カプセルの中に入れられ、液体に浸されているので、生きているかどうかは分からない。
 今現在の段階で警察が捜査中の、行方不明の少女達は間違いなくあの中にいると思われる。
 そんなことを話しているうちに、バスがやってきた。
 市街地まで片道1時間以上掛けて走る路線バスだが、車種は全国的に見られるごく普通の大型ノンステップバスである。

 高橋:「先生、先に乗って席確保してますんで」

 1時間に1本のローカル線ながら、交通系ICカードが使える。
 中扉から乗った高橋とリサは、手持ちのICカードを当てて、後ろの席に向かった。
 この時点で、ここから乗る乗客は私達の他に2~3人ほど。
 地元民と思われる老婆と、温泉客と思われる壮年男女の2人連れくらい。

 善場:「バスが出るのですか?それでは、続きはまた後ほどでお願いします」
 愛原:「申し訳ありません」
 善場:「いいえ。これはお手柄なんてものではありません。表彰ものです。すぐにBSAAに出動してもらいます。所長達も、どうかお気を付けて」
 愛原:「はい。失礼します」

〔「16時ちょうど発、仙台駅前行き、発車致します」〕

 愛原:「待って待って待って」

 私は電話を切ると、急いでバスに乗り込んだ。
 もちろん、カードをタッチすることは忘れない。

〔発車致します。ご注意ください〕

 私が乗り込んだのを気に、中扉は電車のようなドアチャイムを鳴らして閉まった。

 高橋:「先生、こっちへ」
 愛原:「ああ」

 私は1番後ろの席に誘導された。
 進行方向左側の窓側にはリサが座り、私がその隣に座って、高橋に挟まれるような形だ。
 バスはダイヤ通りに起点のバス停を発車した。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ いつも、市営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスはS840系統、作並駅前、市営バス白沢車庫前、愛子駅前経由、仙台駅前行きです。次は作並温泉仲町、作並温泉仲町でございます〕

 バスの中は冷房が効いて涼しい。
 リサは酒屋で買ったつまみのビーフジャーキーや、サラミジャーキーを食べている。
 私も、アタリメを購入した。
 ところがこのアタリメ、何だか味がしない。
 ……まさか、私もついにコロナに感染!?
 ……なわけがない。
 Tウィルスに抗体を持つ者は、新型コロナウィルスにも抗体があるのだとアンブレラの資料に書いてあった。
 何しろ、同じ生物兵器繋がり、材料が同じという陰謀論が……ゲフンゲフン。
 要は私も思いの外、汗をかき過ぎて、体内の塩分が不足していたのだ。
 それで体が塩分を欲しがって、アタリメに含まれている塩分、つまりしょっぱさを感じにくくしてしまったのだろう。
 麦茶にもミネラルは含まれているが、これよりもスポーツドリンクの方が良かったか。

 高橋:「先生、駅に行って、荷物取って来ないと、ですよね?」
 愛原:「それもそうだな。これだったら、JRじゃなくて、地下鉄のコインロッカーに入れておけば良かったな」
 高橋:「そうなんですか?」
 愛原:「俺の記憶が正しかったら、このバス、終点の仙台駅前は、青葉通の地下鉄乗り場の前に止まると思うんだ。だから、そこからJRの駅まで行かないといけないという思いをするならな……」
 高橋:「あー、なるほど」
 愛原:「もっとも、ホテルに行くなら、ちょうど道のりなんで、けして無駄足というわけではない」
 高橋:「さすがですね」

 この2人が宿泊するホテルは、仙台駅東口を出た所にある。

 愛原:「宿泊代と食事代は俺が出すから、まあ、ゆっくりしていてくれ」
 高橋:「あざっす」
 リサ:「先生、今日の夕飯、一緒じゃないの?」
 愛原:「悪いが、今夜は集まって来た親戚達と夕食会があるんだ。それに出なきゃいけないんでね」
 リサ:「えー……」
 愛原:「東口にも食べる所とかあるから、高橋、リサに好きな物食わせてやってくれ」
 高橋:「了解っス。どうせこいつが食べるの、肉一択でしょうけどね」

 高橋はリサが持っているビーフジャーキーの袋を指さして言った。
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“私立探偵 愛原学” 「脱出」

2022-10-24 19:51:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月12日15:00.天候:不明 宮城県仙台市青葉区新川某所 愛原公一邸(旧宅)地下→地上]

 私達は地下2階からエレベーターに乗り込んだ。
 エレベーターは手動式で、壁に取り付けられたレバーで操作するものだ。
 エレベーターが上昇すると、まずは地下1階を通過する。
 地下1階の通路は、1階から侵入してきた化け物達が闊歩していた。
 通過する時に私達の姿を見つけたハンターαが駆け寄って来たが、その頃には通過した。

 愛原:「ん?」

 上昇を続けるエレベーター。
 しかし、私は首を傾げた。
 いつまで経っても、1階に着かない。
 もう4階くらいの位置まで上がってないか???
 と、思うと、エレベーターが止まった。
 どうやら、最上部に到達したようである。
 だが、鉄格子の前には扉が無かった。

 愛原:「これはどういうことなんだ???」
 リサ:「先生……これ……」

 まだショックから立ち直りきってないリサが、後ろの壁を指さした。

 愛原:「ん?」

 すると後ろは壁だと思っていたのだが、引き戸の取っ手があった。
 しかも、それが僅かに開いている。

 愛原:「こっち!?」

 試しに私が開けてみると、出口は反対側だった。

 愛原:「紛らわしいな!」
 高橋:「本当っスね!」

 しかし、地上どころか、4階くらいまで昇ったような気がしたのに、出口は真っ暗だった。

 愛原:「???」

 私達は首を傾げざるを得なかった。

 高橋:「先生、多分、これ、山ん中っスよ」
 愛原:「あっ、そうか」

 家の裏手は山になっていた。
 エレベーターの位置的に、昇り続けると山の中に入るのだ。
 しかし、どうして???
 答えは通路を突き進んで分かった。

 愛原:「トロッコだ!」

 進んだ先には、トロッコがあった。
 線路もその先に伸びている。

 高橋:「何スか、これ?ケーサツに見つかった時の脱出用ですか?」
 リサ:「どこかで見たような……」

 リサが虚ろな目をしながら呟いた。
 まあ、明らかに日本アンブレラが造ったものだろうから、リサも見たことがあるのだろう。
 そういえば、アメリカのラクーンシティにも、研究施設からの脱出用に列車が走っていたのを見聞きしたことがある。

 愛原:「ということは、これは外に繋がってるってことじゃないか。これで脱出しよう」
 高橋:「はい!」

 私達はトロッコに乗り込んだ。

 愛原:「えーと……このレバーを引けばいいのか?」

 さすがに電車のハンドルとは構造が違う。
 多分、ブレーキと加速くらいの操作しかしないのだろう。
 ブレーキを解除すると、トロッコは一気に加速した。

 愛原:「おおおーっ!?」
 高橋:「ヒャッハーッ!!」
 リサ:「!!!」

 坂を下り行くトロッコ。
 しかし、どこまで繋がっているのだろう?

 リサ:「思い出した!」

 リサがポンと手を叩いた。

 愛原:「な、何だよ!?」
 リサ:「霧生市の研究所も、物資を鉄道で運んでたの!」
 愛原:「知ってるよ。霧生電鉄のトンネルの中だろ?引き込み線を作って、その先にアンブレラ専用の貨物駅を造ったんだよな?」
 リサ:「そうなんだけど、基本的に、日本アンブレラの研究施設ってそういう鉄道があるの」
 愛原:「と、いうことは……」
 高橋:「このトロッコも、どこかの鉄道に繋がってるってことっスか?」
 愛原:「仙山線かよ!?」

 えぇえ!?
 JRの線路に繋がってるの!?
 いいの、それ?!
 私が頭を抱えた時、トロッコが大きく揺れた。
 どうやら、線路の保守をロクに行っていないらしい。
 田舎のローカル線のように、ガタガタでよく揺れる。

 愛原:「いてっ!」

 私はトロッコの揺れに体を取られ、反対側の壁に体を打ち付けてしまった。
 その衝撃で、トロッコが右に傾く。
 と!

 リサ:「あれ!?」

 何と、途中に分岐があった!
 私のせいでトロッコが右に傾いたからなのか、それとも、元々ポイントが右に向いていたのかは不明だが、トロッコが右の線路に入って行った。

 リサ:「分岐があったよ!?」
 愛原:「なにっ!?」

 左側には何があったのだろう?
 ただ、方向的に左に行くと仙山線の線路があったのかもしれない。
 じゃあ、今向かってる右方向は……?

 愛原:「仙山線の線路に出られても困るが、こっちはこっちでどこに繋がってるのか不安だな……!」

 私はいつでも止まれるようにブレーキレバーを握っておいた。

 愛原:「んんん!?」
 高橋:「うわっ!?」
 リサ:「きゃーっ!」

 何だか、おかしい。
 トロッコが急勾配を何度も通過している。
 急降下したと思ったら、急上昇を始め、また急降下を始める。
 宙返りが無いところを除けば、まるで遊園地のジェットコースターみたいだ。

[同日15:30.天候:晴 同区作並某所 廃ホテル解体工事現場]

 トロッコが止まった所は、これまた真っ暗な所。
 しかし、何だか騒がしい。
 まるで、工事現場のような……?

 愛原:「このドアかな?……ううっ!開かない!」

 鍵が掛かっていて開かないというよりは、ドアが何かに引っ掛かって開かないといった感じ。

 高橋:「ちょっと、退いてください!」

 高橋はそう言って、ドアを蹴破った。
 すると!

 ガードマン:「オーライ!オーライ!オーライ!」

 そこは工事現場だった。
 それも、何か建物の……。
 ドアの外には工事資材が散乱しており、外開きのドアは、これのせいで開かなかったのだ!

 愛原:「な、何だこりゃあ!?」
 ガードマン:「ん?な、何なんだ、アンタ達は!?どこから入った!?」
 現場監督:「ちょっとアンタ達!危ないから出て行ってくれ!取り壊しの邪魔だ!」
 愛原:「取り壊しーっ!?」

 私達は半ば追い出されるようにして、解体工事現場を出た。
 工事現場の入口にある案内板を見ると、『仙台雨傘園解体工事』と書かれていた。
 雨傘園は日本アンブレラの保養施設である。
 仙台にもあったのか!
 てか、こっちはガッツリ取り壊されている!!

 現場監督:「困るんだよ。勝手に入られると……」
 愛原:「ど、どうもすいませんでした。あ、あの……ここの建物って、長らく廃墟だったりしてました?」
 現場監督:「ん?ああ、そうらしいね。だけど、新しい買い手が付いたんで、取り壊して、また新しいホテルを建てるんですよ」
 愛原:「そ、そうでしたか」

 ということは、ここに金庫があったとしても、とっくに運び出されてるか。

 現場監督:「じゃ、今度から気をつけてくださいよ」
 愛原:「あ、あの、最後にもう1つだけいいでしょうか?」
 現場監督:「何だい?」
 愛原:「ここから街の方に行く、バスとか電車とか無いでしょうか?」
 現場監督:「はあ?何で来たの?まあ……この先に作並温泉の温泉街があって、そこにバス停があったけども……」
 愛原:「あ、どうもありがとうございます」

 私達は仙台弁交じりの現場監督に礼を言って、工事現場をあとにした。
 工事現場に至る小道には、道幅いっぱいにダンプカーが出入りしている。
 小道を出ると、国道48号線に出た。

 愛原:「作並まで来ちゃったってことか……」
 高橋:「あのホテルから繋がってたんですね。でも今は、そのホテルも無くなった……」
 愛原:「こっちもこっちで危なかったなー!」

 結局、どっちに出るのが正しかったのだろう?

 愛原:「えーと、あっちだな……」

 オレンジ色のセンターラインが引かれた二車線の地方国道という点では、昨日の国道286号線と同じだが、こちらはもっと交通量があるように思えた。
 雨傘園は温泉街から外れた場所にあるらしく、温泉街まで行くのに、少し歩くことになったのである。
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