報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原の脳検査」

2024-09-26 16:18:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月13日07時15分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は予てより、最大口顧客であるNPO法人デイライト東京事務所の善場優菜係長より紹介された脳神経クリニックに向かうところだ。
 何しろ、ここ最近の私には記憶障害とフラッシュバック、それに伴う激しい頭痛の症状が頻発するようになり、それを心配してくれた善場係長がクリニックを紹介して下さったというわけだ。
 そのクリニックは土曜日も診療しており、また、MRIやMRAだけの検査なら予約無しでできるということもあり、手が空いた今日、行くことにした。
 本当なら高橋に車で送ってもらおうかと思っていただが、昨日のタイミングで高橋が新型コロナという名の武漢ウィルスに感染。
 高熱と頭痛、咽頭痛で倒れており、部屋で養生している。
 また、パールはパールで、高橋の看病をするという重大な任務がある。
 仕方が無いので、私は1人で電車とバスで向かうことにした。
 クリニックは埼玉県にあるものの、けして交通不便な場所にあるわけではないからだ。
 近くまでは京浜東北線または埼玉高速鉄道で行けて、クリニックの近くまで行くバスの本数も比較的多い。
 今日はリサも登校日なので、上野までは一緒に行くことにした。
 ……のだが!

 愛原「それじゃ行ってくるから、高橋のこと、宜しく頼むな?」
 パール「はい。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
 リサ「行ってきまーす」

 リサは東京中央学園の制服に身を包んでいる。
 5月からは夏服となる為、ブレザーは着ていない。
 また、スカートも夏用のグリーンのプリーツスカートで、ブラウスも薄緑色の半袖だった。
 グリーンは東北新幹線のラインカラー、若竹色に酷似している。
 ブラウスの色は、山手線のウグイス色に似ていた。
 私はというと、ベージュのチノパンに水色のシャツ、黒のジャケットを羽織っている。
 2階から1階へ下りる階段のドアを開けようとした時だった。

 高橋「せ……先生……待って……くだせぇ……ゲホッ!ゲホッ!」

 高橋が部屋から這いずり出て来た。

 愛原「おい、高橋!見送なんかしなくていいぞ!寝てろよ!」

 高橋の熱は、まだ39度ほどある。
 昨日、薬を飲む前の40度よりはマシになったが、まだまだ寝てなきゃいけないレベルだ。

 高橋「い……行っては……なりませ……ゲホッ!ゴホッ!ガハッ!!」
 愛原「は!?何だよ!?」
 高橋「い……行かない……で……ください……」
 愛原「な、何で!?」
 リサ「きっとお兄ちゃん、熱で頭がやられたんだよ。それか、変な夢でも見たか……」
 高橋「せんせ……ぇ……危険……です……ゲホッ!ゲホゲホッ!!」

 まるで這いずりゾンビのように這いずりながら、私の元へ縋りつくように……。

 リサ「はいはい!病人は寝ててね!」
 パール「マサ!先生のお邪魔をしちゃダメって、自分で言ってたでしょ!」
 高橋「あ~……れ~……」

 事務所の女性陣2人に、寝室に連れ戻される高橋であった。
 寝室にいても、高橋の激しい咳や痰の絡む音が響いてくる。
 新型コロナは呼吸器をやられるとは聞いていたが、高橋の場合、喫煙者でもあるから尚更だろう。
 同じく初期症状に激しい咳があるCウィルスと似ているかもしれない。
 新型コロナの特効薬にリサのGウィルスが使えるのではとされていた時期があったが、それはCウィルスもまた、材料としてGウィルスが使われていたからというのもある。

 リサ「寝かせて来た」
 愛原「ご、ご苦労さん!」
 リサ「わたしのGウィルスの『胚』とか、『寄生虫』とかがあれば、それで大人しくさせられるのにねぇ……」
 愛原「危険だからやめなさい。で、今はどうしてるんだ?」
 リサ「パールさんがスタンガンで気絶させたw」
 愛原「……今のは、聞かなかったことにしておこう」

 私とリサは家を出た。

[同日07時25分 天候:晴 同地区内 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線703T電車・先頭車内]

〔まもなく、1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で、到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 土曜日ということもあり、平日の同じ時間と比べれば空いている。
 やってきたのは、東京都交通局の車両。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 ホームドアと車両のドアが開く。
 平日よりは空いているとはいえ、空席があるほどガラガラというわけではない。
 私とリサは先頭車に乗り込むと、運転室のすぐ後ろに立った。
 すぐに短い発車メロディが鳴る。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 電車のドアとホームドアが閉まる。
 駆け込み乗車は無かったか、再開閉は無かった。
 ドアが閉まり切ると、運転室内から発車合図のブザーが聞こえて来る。
 それから、ハンドルをガチャッと操作する音が聞こえ、エアーが抜ける音がして、電車が動き出した。
 私は手すりに掴まっているが、リサは私の腕を掴んでいるだけ。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 愛原「それにしても高橋、あそこまで錯乱するとはな……」
 リサ「きっと、悪い夢でも見たんだよ。先生が途中で事故に遭う夢とか……」
 愛原「おいおい。縁起でも無いこと言うなよ……」
 リサ「大丈夫。……だったら、病院までわたしが一緒に行こうか?先生の護衛なら任せて」
 愛原「ちゃんと学校には行こうな」
 リサ「今は頭痛、大丈夫なの?」
 愛原「今のところは……」

 かつての豪華客船“顕正号”のことについて思い出そうとすると、激しい頭痛とフラッシュバックが起きる。
 そこで何か私は、トラウマを抱えるような事件に巻き込まれたのだろう。
 しかし、詳細は高橋はもちろん、高野君も教えてくれない。
 それを明らかにする為にも、やはり脳検査は必要だろう。

 リサ「ところで、お兄ちゃんには、クリニックの場所は教えてあるの?」
 愛原「いや、埼玉としか教えてないな。詳しい話をしようとした時に、ダウンしたから」

 もしかしたら、更に川口市とまでは伝えていたかもしれない。
 しかし、住所やアクセス法については一切話していない。

 愛原「それがどうした?」
 リサ「うーん……何でもない」
 愛原「ん?」

 リサはリサで、思い当たる節でもあるのだろうか?
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“愛原リサの日常” 「高橋のダウン」

2024-09-24 20:32:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月12日15時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 事務所に1本の外線電話が入る。

 パール「お電話ありがとうございます。愛原学探偵事務所でございます」

 リサがパールのすぐ近くに行って、聞き耳を立てる。
 聴力向上の為に、人間形態から鬼形態に戻るのを忘れない。
 尖った耳をピクピク動かして、パールの電話に耳を傾ける。
 受話器の向こうからは、愛原の声が聞こえた。

 愛原「もうすぐ事務所に到着する。ちょっと下に下りて来てくれ」

 というもの。

 パール「承知しました」

 パールが電話を切ると同時に、事務所の前には1台のタクシーが止まった。

 パール「ちょっと行ってきます!リサさんはここにいてください!」
 リサ「あっ……!」

 パールはリサが呼んでいたエレベーターに乗り込んで行ってしまった。

 リサ「先を越された……。まあ、いいか」

 リサは事務所内にある監視カメラのモニタを見た。
 モニタには、1階のガレージが映し出されている。
 タクシーから降りてきたのは、愛原と高橋。
 高橋はフラつきながら、タクシーを降りていた。
 そこへパールが合流し、高橋の手を取りながら、ガレージの中に入る。
 そして、3人がエレベーターに乗り込んだ。
 リサはエレベーターの方に近づく。
 案の定、エレベーターは2階に止まった。
 そこから降りて来たのは愛原だけ。
 エレベーターは愛原を降ろすとドアを閉め、3階に上がって行った。

 愛原「ただいま」
 リサ「お帰り。お兄ちゃん、ダウンしたって?」
 愛原「ああ、コロナ陽性だ」
 リサ「マジ!?」
 愛原「熱も出ている。40度近く」
 リサ「40度!?」
 愛原「しばらくは安静だろう」
 リサ「入院しないんだね」
 愛原「第1波、第2波の時ではないからな。まるで、インフルエンザみたいな症状だ。高熱と頭痛と咽頭痛だよ」
 リサ「薬はもらったの?」
 愛原「ああ。それを飲めば、まあ大丈夫だろう」
 リサ「先生は感染していない?」
 愛原「俺は陰性だな。あとはパールだが……」
 リサ「パールさん、検査キット買って来てたよ」
 愛原「マジか。さすがはメイド、用意がいいな」
 リサ「私のGウィルスを飲めば、たちどころに治るよ?」

 リサは口を開けた。
 そこから小さくて薄緑色をしたイソギンチャクのような『胚』が現れる。
 薄い緑色はGウィルスとTウィルスを融合したもののシンボルカラーであり、リサの体内からは無くなったはずのTウィルスが、Gウィルスに取り込まれていることが分かる。
 あくまでも偽性特異菌は、Gウィルスに取っての噛ませ役であり、生物兵器として使用できるものではない。

 愛原「化け物を増やす気か。体の外に出さない!BSAAが出動してくるよ?」
 リサ「はーい」

 リサは『胚』を体内に戻した。
 この『胚』を植え付けられた生物は、Gと呼ばれる化け物に変化する。
 リサみたいな鬼の姿になるわけではない。
 とにかく、リサは本当に特異中の特異なのだ。
 今でもGウィルスが使用されたバイオテロが発生したとなった場合、BSAAの警戒レベルは最高の10に引き上げられ、支部を越えての協力体制が求められるとされている。

 愛原「今日の夕食当番は、高橋なんだよな……。また、パールに作らせるのも悪いなぁ……」
 リサ「この場合は仕方無いんじゃない?」
 愛原「うーむ……」

 しばらくして、パールが下りて来た。

 愛原「どうだった?」
 パール「取りあえず、寝かせています。氷枕と冷却シートを使用しています」
 愛原「ああ。熱は大変だからな。ケチらず、ガンガン使ってくれ」
 パール「ありがとうございます」
 愛原「オマエも感染するとヤバい。高橋が治るまで、別の部屋で寝た方がいいかもな?」
 パール「はい。そうさせて頂きます」
 リサ「別の部屋に寝るって、どこで寝るの?」
 パール「リビングで寝ますよ。カウチソファがありますから、そこで寝ます」
 愛原「そ、そうか。何なら、事務所の倉庫に折り畳みベッドがあるから、それを引っ張り出してきて……」
 パール「いえいえ。それで結構です。マサの看病もしたいですし」
 愛原「あ、ああ、分かった」
 パール「先生こそ、マサから感染させられないように、お気をつけくださいね」
 愛原「分かってるよ。それと、食事当番だが……」
 パール「マサが治るまで、私が務めさせて頂きます」
 愛原「そ、そうか」
 リサ「わたしも手伝うー」
 愛原「そうしてやってくれ」
 パール「かしこまりました。それでは先生、食材の買い出しに行って参りますので……」
 愛原「ああ。リサも連れて行け。荷物運びに使わせろ」
 リサ「鬼の腕力、お任せあれ」
 パール「ありがとうございます。それではちょっと、冷蔵庫などを確認してきますので、少々お待ちください。あと、マサ用に何か食べれる物でも作れればと思いますので……」
 愛原「高熱が出ていたりしてると、食欲なんて無くなるからなぁ……」
 リサ「わたしがお兄ちゃんの分も食べるー」
 愛原「おいw」

 パールが再び3階に行っている間、リサは愛原と話した。

 愛原「オマエは明日、学校に行くんだろ?」
 リサ「うん。お昼までだけどね」
 愛原「土曜日だからな。じゃあ、俺は1人で行くか」
 リサ「どこに?」

 すると、愛原は自分の頭を指さした。

 愛原「脳の検査だよ。善場係長が、クリニックを紹介してくれたんだ。土曜日もやってるから、ちょっくら行ってくるよ」
 リサ「どこにあるの?」
 愛原「埼玉だよ。但し、昔、絵恋が住んでいたさいたま市までは行かないけどね」
 リサ「やだなぁ……」
 愛原「何が?」
 リサ「それで先生、『入院です』ってなったらどうしよう……」
 愛原「まあ、その可能性は低いと思うけどな。その時は連絡するよ」
 リサ「可能性あるんだ……」
 愛原「何しろ、脳の事だから、検査してみないと分からんよ。変な脳の病気が見つかるかもしれないし……」

 するとリサ、口を開けて、Gウィルスの『胚』を覗かせた。

 リサ「これを体に取り込めば、脳の病気ですらも治るよ!」
 愛原「だから、いらんっちゅーに!」

 危うくBSAA案件になるところであった。
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“愛原リサの日常” 「リサの休日」

2024-09-23 21:12:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月12日12時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 マクドナルド菊川駅前店]

 リサは近所のマクドナルドで、ビッグマックのLセットを購入した。
 イートインではなく、テイクアウトである。
 ここの店舗は客席が狭い為、食事時はすぐ満席になってしまう。
 その為、リサはいつもテイクアウトにして、事務所で食べていた。
 尚、リサに単独行動させて良いのかという指摘については、結局のところ、単独行動が認められている通学経路と同上にある為、黙認されている。
 店舗名の通り、通学に利用する菊川駅がすぐ近くにある為。

 店員「お待たせしました!211番でお待ちのお客様ー!」
 リサ「はーい!」
 店員「ビッグマックのLサイズになりまーす!お会計が……」
 リサ「Pasmoでお願いします」

 リサは通学定期券にも使用しているPasmoを取り出した。
 今や学校内の食堂、自販機、購買も電子マネーで済ませる時代となっている。
 校則でも、基本的に現金を持ってきてはならないことになっている。
 但し、やむを得ぬ事情で現金を持って来る場合、小銭入れに小銭を入れて持って来るまでは申告ナシでOK。
 むしろ、誘拐被害に遭った少女が、何とか監禁から逃れ、公衆電話で助けを求めたという事案が都内であった為、公衆電話が利用できるよう、むしろ100円玉を持たせることにしてはどうかという話になっている。

 店員「はい、お願いします」

 リサはPasmoで料金を支払った。
 沖縄でチャージしてもらったのだが、お土産などを購入したり、現地で食事をしたりしたせいか、残額がやや少なくなってきている。

 リサ「まあ、また足してもらおう」

 リサはそう言って、青になった横断を渡り、事務所へと戻った。

[同日12時30分 天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所2階]

 リサは3階のダイニングではなく、2階の探偵事務所でマックを食べた。
 食べるのは事務スペースではなく、給湯室に置いたテーブルの方。

 パール「別にここじゃなく、3階とかで食べててもいいんですよ」
 リサ「先生達がいない間、留守番をするのもいいかなと思って」
 パール「留守番は専ら私がしますから」
 リサ「忙しい時は手伝うよ?」
 パール「……今はせいぜい、事故物件の関係の電話しか掛かってこないですねぇ……」
 リサ「そっちかぁ……」

 リサが昼食を食べて片付けていると、LINEの着信があった。
 それは、太平山美樹からだった。
 美樹達、秋北学院の生徒達は今日、秋田に帰るのだった。
 美樹達は昼にはもう飛行機に乗らなくてはならないらしく、空港内で撮影したと思われる空弁の写真を送信してきた。
 リサが買った物と同じだが、リサがそれを送信したことで美樹も食べたくなり、那覇空港で購入したという。

 太平山美樹「同じ鬼だから、肉好きなのは分かるっちゃよ。リサが勧めてくれた空弁、今から楽しみだっちゃね!」

 とのこと。

 リサ「それは良かった。それは美味かったよ。ただ、辛味が足りなかったけどね」
 美樹「これは旅の道具なんだから、そんな細かいこと言っちゃダメだべよ」

 とのこと。
 リサよりもサバサバしている感じはある。

 リサ「私のお昼は、マックだよ。今日、学校休みになったから」
 美樹「おー!テレビで観たべよ!東京中央学園、立派だべね!」
 リサ「う、うん。ところで……大学はどうするの?」
 美樹「今から帰って、曽祖父ちゃん達に相談するっちゃ。リサみたいな面白いコと知り合えたから、リサと同じ大学さ行きたいって頼んでみるっちゃ!」
 リサ「え、わたしと?」
 美樹「うん!リサは頭良さそうだから、いい大学さ行くだろうけど、私も頑張って勉強すっから!」
 リサ「と、東京中央学園大学だけど……いい?」
 美樹「おおー!付属の大学に行くんだか?!今から住む所、考えなくっちゃね!」
 リサ「いや、わたしと違ってミキの場合、一般入試受けに来ないとだよ……?」
 美樹「そうだっちゃったね!」
 リサ「それと、せっかくだから聞きたいことがある」
 美樹「何だべ?」
 リサ「あんた……人間を食ったことある?」
 美樹「……話せば長くなるよ?」
 リサ「すぐに否定しないのかよ!」
 美樹「……おっと!移動の時間だべ!話はまた後で!」
 リサ「くっ……」

 しかし、リサの方も……。

 リサ「ん?……あっ、先生からだ!」

 今度は愛原からLINEが来た。
 確認してみると、どうやら明日は、通常通り、授業が行われることになったという。
 元々土曜日だから、昼までの授業であるが、もちろん、まだケガが治っていなかったり、精神的ダメージが癒えていない生徒は無理しなくて良いという条件付きである。
 また、明日もスクールカウンセラーを増員して対応するので、希望者はそちらを優先して構わないとのこと。
 しかし、愛原が送信してきた内容は、それだけではなかった。

 愛原「高橋がダウンした。いつもなら電車で帰るところだが、今日はタクシーで帰る。一応、浜町のクリニックに立ち寄ってから帰る」

 とのことだった。

 リサ「ダウンしたってどういうこと?」
 高橋「急に熱が出て倒れた。特異菌関係ではないと思うが、一応、クリニックに寄って診てもらうことにするよ。昨夜も、疲れた感じを出していたからなぁ……」
 リサ「そう、なんだ。先生は大丈夫なの?」
 愛原「俺は今のところ大丈夫だな。とにかく、パールにもそう伝えておいてくれ。それじゃ」

 リサはパールにすぐに伝えた。
 特異菌関係については、既に愛原も高橋も治療薬を投与されているから、今更再感染はしないはずだ。
 だから、もっと別の病気かもしれない。

 パール「そうですか……。特異菌とかではないとすると、コロナとかかもしれませんね」
 リサ「コロナかぁ……」

 もちろん新型コロナとて、リサのGウィルスの前では、餌同然である。

 リサ「パールさんは大丈夫なの?」
 パール「ええ。私は今のところ大丈夫です。ちょっとドラッグストアに行って、検査キットでも買って来ましょうか」
 リサ「あー……そうだねぇ……」
 パール「ちょっと買って来ますので、留守番お願いして宜しいですか?」
 リサ「あー、もう全然オッケー!」
 パール「電話とか掛かってきましたら、宜しくお願いします」
 リサ「はいはーい!」

 リサは大きく頷くと、空いている机に座った。
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“愛原リサの日常” 「寝坊のリサ」

2024-09-23 12:13:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月12日11時32分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・リサの部屋]

 リサ「うーん……はっ!」

 リサは変な夢を見て、目が覚めた。
 それはもう、色々な夢。
 山奥の洞窟で男の鬼達にマワされたり、化け物になった我那覇絵恋と戦う夢だったりと、色々……。

 リサ「はー……寝過ぎた……。寝過ぎた!?」

 リサは枕元のスマホを見た。
 時計が11時半を過ぎている。

 リサ「ち、遅刻!?……って、今日は臨時休校だった……。危ねー!」

 体操服にブルマという姿で寝ていたリサは、ようやくそこから起き上がった。

 リサ「寝過ぎたから、頭が……」

 しかも変な夢を見たからか、人間形態から鬼形態へと変化している。
 どうしても、鬼の男達には力づくで負けてしまう。
 電撃や火炎攻撃を使えばいいのだが、何故か夢の中では使えない。

 リサ「うーん……」

 部屋から出て、4階の洗面所やトイレに行く。

 リサ「お腹空いた……」

 顔を洗ったり、歯を磨いたり、トイレに行ったりしているうちに、空腹を覚える。
 3階に下りると、誰もいなかった。
 しかし、テーブルにはパールが書いたメモ書きが置かれており、『朝食は冷蔵庫の中です』とあった。
 書いてある通りに冷蔵庫を開けると、中にはおにぎりと玉子焼きが入っていた。
 これを取り出して、電子レンジで温める。

 
(電子レンジの前で待機するリサ。画像は「こんいろ保存会」様より拝借。https://bsky.app/profile/konirohozonkai.bsky.social)

 ピッ♪ピッ♪ピッ♪ピッ♪

 リサ「温まった」

 あとは冷蔵庫からお茶を出したり、リビングのテレビを点けてそれを観る。
 金曜日のこの時間ということもあって、民放では情報番組をやっていた。
 当然ながら今、沖縄の事件のことについて取り上げられている。

〔「……東京中央学園上野高校に来ています。本来ですと、今日は午前中だけ授業が行われる予定でしたが、臨時休校となっています。また、こちらの体育館では、緊急保護者会が行われており、事件の経緯についての説明や被害報告、生徒のケアなど、今後のことについて話し合いが行われていると思われます。以上、東京中央学園上野高校前からお伝えしました」〕

 リサ「マジか。学校にマスコミ来てるんだ……」

 リサは正直、修学旅行に行ってない1年生と2年生は別に良いのではないかと思ったが、スマホで『魔王軍』のグループLINEを見る限り、1年生や2年生のメンバーの中には3年生の兄姉がいる者もいるようだ。
 それは『魔王軍』に限らないだろう。
 そういった家族にも影響が出ていると考え、今日は休校にしたそうだ。
 チャンネルを変えると、今度は沖縄の方を映していた。

〔「……現在、那覇中央ホテル周辺は全面立ち入り禁止となっております。御覧頂けますでしょうか?ホテルの外壁に、黒いカビのような物が付着しています。あれが特異菌とのことです。現在、BSAAが滅菌作業に当たっています。……」〕

 リサ「特異菌はマジヤバいかならなぁ……」

 尚、東京中央学園生はリサ以外、既に特異菌の治療薬を投与している為、これといった症状は今のところ出ていない。

〔「ここで速報が入って来ました。沖縄県那覇市○○の住宅で、身元不明の遺体が見つかりました。尚、こちらは那覇中央ホテルで事件を起こした少女の自宅の可能性があり、また、その遺体は特異菌にまみれているという情報が入っております。現在、こちもまた現場周辺が封鎖されるもようです。詳しいことは、入り次第、お伝え致します。……」〕

 リサ「え……?」

 リサはまたチャンネルを変えた。

〔「……それでは、これはバイオテロということで宜しいのでしょうか?」「はい、私共はそのように考えております」〕

 リサ「善場さん!?」

 沖縄の事件現場周辺で、マスコミのインタビューを受ける善場の姿があった。

〔「誰かが故意にこの事件を起こしたと、お考えということでしょうか?」「はい、そういうことです。この事件を起こしたBOWは、地元に住む1人の女子高生でした。彼女が何者かに特異菌を投与され、BOWと化し、この事件を起こしたと我々は考えております」「その犯人に心当たりはありますか?」「目星はありますが、今現在は具体的にお答えはできません」〕

 リサ「犯人は……斉藤早苗……!!」

 リサはおにぎりを一気食いした。

 リサ「うーん……足りない。ていうか、もうすぐお昼じゃん!」

 リサは『朝食』を片付けると、食器は自分で洗った。
 それから、2階の事務所に内線電話を掛ける。
 キッチンの所に壁掛け電話があるのだが、そこに各階のボタンがあって、それを押すとブザーが鳴る仕組み。
 そのブザーの音が、電車の車掌が運転士に鳴らす発車合図のブザーに似ていると愛原が言っていた。

 パール「はい、2階事務所です」
 リサ「あ……パールさん。リサです。もう起きて、朝食食べました」
 パール「そうですか。食器は流しにでも入れといてください」
 リサ「はい。もう洗っておきました」」
 パール「あ、そうですか」
 リサ「あのー……先生は?」
 パール「愛原先生はマサと一緒に、学校に行ってますよ」
 リサ「そうですよね。うーん……」
 パール「どうしました?」
 リサ「お昼はどうするんですか?」
 パール「お昼?私は自分でお弁当作りましたけど?」
 リサ「私の分は……?」
 パール「まさか、この時間に起きるとは思わなかったので……」
 リサ「……だよね。ちょっと……自分で買ってきます」
 パール「かしこまりました」

 リサは電話を切ると、4階に向かった。
 そして自分の部屋に入ると、体操服とブルマから私服のTシャツとショートパンツに着替えたのだった。

 リサ「マックでも買いに行こう」
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“私立探偵 愛原学” 「羽田空港より帰宅」

2024-09-22 21:19:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月11日20時00分 天候:雨 東京都大田区羽田空港 羽田空港第2ターミナル4階]

 夕食を食べ終え、私達はレストランを後にした。

 高橋「ゴチっス!」
 リサ「ゴチっス!」
 パール「御馳走様でした」
 愛原「いやいや……。じゃあ、トイレ行って一服して帰るか」
 高橋「はい!」

 トイレも喫煙所も、同じフロアにある。
 だが、吹き抜けを挟んで男女別に分かれている。
 トイレは当たり前だが、喫煙所もだ。

 愛原「変わってるなァ……」
 高橋「まあ、男と一緒に吸いたくないって女もいるみたいっスよ。俺はパールがいるからいいっスけど……」
 愛原「まあ、だから結婚したんだろうがな」

 トイレから出た後、高橋は喫煙所で一服。
 まあ、吸い溜めしててもらおう。
 吸わない私は、喫煙所の外で待つ。

 愛原「ん?」

 その間、スマホを確認していると、善場係長からメールが来ていることが分かった。
 それは、私に脳神経クリニックを紹介してくれる件であった。
 場所は何と、埼玉県。
 埼玉県川口市だというから、東京都との境の町ではある。
 ここから東京都へ通勤する県民、つまり『埼玉都民』も多い。
 そこを善場係長は、紹介してくれた。
 脳ドッグを受けに行くのだから、予約しないといけないだろうと思ったが、簡易的なコースであれば、予約無しでOKとのこと。

 善場「通常の脳ドッグですと、脳の検査や脳の血管の検査の他、動脈硬化の検査や末梢神経検査などが入って来ます。あくまでも所長の場合、記憶障害が脳の病気や障害から来ていないかの検査ですので、MRIやMRAだけで宜しいかと思われます」
 愛原「了解しました」

 確か、こういう脳ドッグは自由診療扱いになると聞いたことがある。
 つまり、料金は通常の保険診療よりも高く、しかもその値段も病院によってまちまちである。
 幸い善場係長は、そのクリニックの公式サイトのURLも送信してくれたので、ここにアクセスしてみることにした。

 高橋「お待たせしました。先生」
 愛原「あ、ああ」

 確認しようとすると、高橋が喫煙所から出て来た。

 愛原「早いな。吸い溜めはいいのか?」
 高橋「そうっスね。飛行機から降りた時も吸い溜めさせてもらいましたし、何だか今は1本だけで十分っス」
 愛原「そうなんだ」

 高橋と合流して、女子トイレの方向に向かう。

 高橋「それよりスマホ、何かあったんですか?」
 愛原「あ、いや。善場係長からメールが来てたんだよ」
 高橋「ねーちゃんから?」
 愛原「ほら、俺の頭の件。脳神経クリニックを紹介してくれるって話。あの件だよ」
 高橋「そ、そうっスか……。い、いつ行くんスか?」
 愛原「うーん……善場係長はなるべく早くって言ってたけど、明日は無理っぽいなぁ……。緊急保護者会があるし、その後、緊急役員会もあるし……」
 高橋「そ、そうっスよね!」
 愛原「さすがに土日祝日は休みだろうから、何とか平日に時間を作って行ってみるさ」
 高橋「そ、その方がいいですよ……」
 愛原「ん?何を狼狽えてるんだ?」
 高橋「い、いえ……。何でもないっス」
 愛原「んん?」

 その後、私達は女子トイレに向かう通路の前でリサやパールと合流し、それから駐車場に向かった。

[同日20時15分 天候:雨 羽田空港第4ターナミナル5階]

 エスカレーターで3階に下り、それから駐車場に向かう。

 パール「こちらです」
 愛原「おっ、ここか」

 そこには見覚えのあるNV200が止まっていた。
 パールがハッチを開けてくれた。
 そこにキャリーバッグなど、大きな荷物を載せる。
 こういう時、荷物を積むことを強く意識して設計されているライトバンは有利だ。

 愛原「言い忘れたが、パールにも土産があるんだ」
 パール「えっ、そうなんですか?」
 愛原「ああ。沖縄の泡盛。帰ってから飲んでくれ」
 パール「ありがとうございます!」
 愛原「リサが飲みたがって大変だったんだ」
 リサ「“鬼ころし”ばっかりじゃ飽きる!」
 高橋「何言ってんだ、オメーは!本当はまだ飲める歳じゃねーんだぞ!」
 愛原「ハハハ……。まあ、リサには別の酒を紹介することも、あるかもな」
 リサ「えっ、本当!?」
 愛原「ああ」
 高橋「先生、それ、リサが20歳になってからっスよね?」
 愛原「未成年の時からタバコ吸ってたオマエが心配することはない」
 高橋「い、いや、タバコはそうっスけど、酒はちゃんと20歳になってからのみはじめましたよ!?」
 パール「20歳の成人式を少年院で迎えただけでしょうが」
 高橋「ぐっ……!」
 愛原「少年刑務所に入るのは、その後になってからなのね……」
 高橋「さ、サーセン」

 少年刑務所といっても、必ずしも少年だけが入っているとは限らない。
 比較的刑の軽い中年受刑者も収容されているという。
 もちろん、少年と雑居房が同じになることはないそうだが。
 高橋の場合は20代前半で収容された為、少年達と同じ房に入れられたのだとか。
 年齢的にギリギリ少年院に入るかどうかだったらしいが、何度か出入りを繰り返していた為、裁判所もついにブチギレて少年刑務所行きを決定したようである。

 パール「先生方はリアシートにどうぞ」
 愛原「ああ」

 荷物を積み込み、ハッチを閉めると、パールは助手席後ろのスライドドアを開けてくれた。
 タクシーにも使われる5ナンバーのワゴンタイプだとパワースライドドアになっているようだが、4ナンバーのバンではそれが無い。
 それでもバンタイプの中では、グレードの高いタイプをリースしていた。
 私が先に乗り、リサが後から乗り込む。
 高橋は助手席に乗り込んだ。

 パール「私が運転しますから、皆さんは休んでてください」
 愛原「悪いな」

 パールは運転席に座ると、車のエンジンを掛けた。
 パールはどちらかというと、車よりもバイクの運転の方が得意らしいが、もちろん、車の免許もある。
 何しろ、かつては大型バイクを乗り回し、時にサイドカーを取り付けて、そこに人間だった頃の我那覇絵恋を乗せていたくらいである。

 パール「それでは出発します」
 愛原「ああ、よろしく。それから、駐車場料金なんだが……」
 パール「はい」
 愛原「領収証を発行してもらってくれ。後で経費で落とすから」
 パール「は、はい」

 パールは車を出すと、まずは地上に下りるスロープに向かった。
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