
昨日のNHKの「地球イチバン」という番組で「サハラ砂漠レース」の事をやっていた。2005年よりほぼ毎年開催で、通常のマラソンよりも長い距離を走るウルトラマラソンの一つである。アメリカのニュース雑誌『TIME』のもっとも過酷なレース部門では堂々の一位を獲得したという大会だ。衣・食・住をすべて自分の背中に背負い、灼熱のサハラ250キロを6日間かけて激走する。しかし、完走しても賞金もないし金メダルももらえない。そんな過酷なレースに世界32か国から130人あまりが、究極の自分自身との闘いに挑んだドキュメンタリーだった。
番組では、3人のランナーに焦点を絞り、走りの様子を撮影していた。まず一人は、番組よりオファーがあって参加したお笑い芸人のワッキー。学生時代に全国高校サッカー選手権に出場した経験を持ち、かなりの体力自慢の芸人だ。そして、二人目は韓国人のキム・ジヘさん。韓国で証券会社に努めており、過去にはアイドル歌手としてデビューするなどの経験を持ち、競争の激しい韓国社会で抜きんでたキャリアウーマンだ。三人目はスティーブン・ブライドンさんを紹介。過去に怪我をして自暴自棄になっていた時期があり、今回のマラソンには子どもたちに良い父親の姿を見せるために参加したのだという。
3人とも、ものすごいアスリートだったというわけではない。体力には自慢があるのは確かだろうが、いわゆる普通の人がトレーニングを積んで、お金や名誉の為ではなくそれぞれの思いをレースに託し参加している。「お笑い以外で勇気、感動、元気を与えることをしたい」「レースに開放された自由を感じ、自身もそれを感じたい」「頑張っている姿を子供たちに見せたい」というそれぞれの思いがあるという。
だが、それぞれの思いをこのレースは、簡単に叶えさせてはくれない。アップダウンが続く砂漠では足がなかなか前に進まない。砂に足を取られ、舗装道路を走るようなわけにはいかないのだ。しかも50度を超える灼熱地獄と10キロを超す荷物の重量は、ランナーの歩みをさらに遅くする。砂嵐にでも遭遇したものなら、身動きが取れなくなり命がけである。初日は、37キロほどと比較的距離は短い。しかし37キロとはいえ、サハラ砂漠の37キロは並の距離ではない。ワッキーはゴールするまで8時間半もかかったという。キムさんは足にまめができて、痛みと闘っていた。スティーブンさんは調子よく6時間半くらいでゴール。だが、驚くべきことに速い人はいるものだ。トップは3時間くらいで初日ゴールというから凄い。さて、最後尾にはラクダが歩いてくるのだが、ラクダに抜かれたら失格というから、ラクダよりは早く走らねばならない。初日で、日本人女性を含む4人が脱落した。
さて、番組ではいくつかクイズが出されていたが、その答えは砂漠ならではの興味深い答えだった。マラソンの持ち物必需品で鏡がある。「レースに鏡が必要な理由とは?」というクイズの答えは、砂漠で助けを求めるときに信号を送る道具として必要なものであるとのこと。「撮影隊の車に選手が近づいてきた理由とは?」という問題の答えは、「車の影で休むため」だった。全く影がない砂漠では、車の作る影は絶好の休憩場所になるのだ。「マラソンで疲れたキムさんとワッキーがとった行動とは?」という問題の答えは、「歌をうたう」だった。あまりにも疲労困憊した時は、好きな歌を歌って気持ちを高ぶらせることしかないのだろう。なんだか凄く判るような気がした。
二日目は、41.2キロを走る。その過酷さは初日の比ではなく、起伏が激しいサハラの恐るべき一面。高低差170mのアップダウンが10キロにわたって続いている。これを見ただけで、とても自分は最後まで走れないと思う。ワッキーは砂漠の急斜面に足をとられて苦戦し、スタートから11時間10分でゴール。子どもたちのために参加したというスティーブンさんはスタートから8時間40分でゴールにたどり着き、キムさんは12時間20分でゴールした。二日目まで3人とも制限時間内に入っていた。
そして、三日目は一昼夜を超す長い距離を走るという。三人の結果が気になるところだったが、あいにく放送時間が無くなってしまった。後半は来週の木曜日放送ということなので、続きを見るしかない。それにしても凄いレースだ。とても完走できる自信はないが、完走した人たちを見ることで大きな感動と勇気をもらえるような気がする。次の放送が楽しみだ。