![]() | キャプテンサンダーボルト |
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文藝春秋 |
先日、2015年の本屋大賞が決まった。大賞は、『鹿の王』上橋菜穂子/著であったが、残念ながらまだ読んではいない。しかし、読んでみたい作品の一つではあり、早いうちに図書館の予約をいれてあるが、まだ順番が回ってこない。多分、数ヶ月先になってしまうだろう。
そんな折、本屋大賞ノミネート作品のなかで最近読んで面白かったのが『キャプテンサンダーボルト』である。先日、お遍路から帰った三日間の中で一気に読んでしまった。この作品は第132回芥川賞の阿部和重と第5回本屋大賞の伊坂幸太郎の合作によるものだ。普通合作となると、章が変わると作風に違和感が出ることもあろうかと思うが、全編を通して違和感を感じるような事はなかった。
内容(「BOOK」データベースより)
世界を救うために、二人は走る。東京大空襲の夜、東北の蔵王に墜落したB29。公開中止になった幻の映画。迫りくる冷酷非情な破壊者。すべての謎に答えが出たとき、カウントダウンがはじまった。二人でしか辿りつけなかった到達点。前代未聞の完全合作。
タイトルからして、アクション物かなと思っていたが、主人公の相葉時之と井ノ原悠のふたりは、小学生の頃に観た戦隊ヒーロー作品『鳴神戦隊サンダーボルト』の大ファンで、大人になっても、憧れを抱いているだけで自らがヒーローであったことはない。そんな二人が、何故か世界を破滅に導く陰謀に巻き込まれ、本当のヒーローになってしまう。そのきっかけは、お金に困って金儲けになりそうなことに首を突っ込んでしまったのが、とんでもない間違いであったのだ。
早い段階で、気になる材料が提示される。1945年の東京大空襲の日に蔵王に墜落した3機のB29 があったこと。蔵王の火口湖お釜を発生源とする致死率70%強の伝染病「村上病」のこと。お釜でロケをした戦隊ヒーロー映画の突然の公開中止事件等だ。特に蔵王の「村上病」というのは、本当の事なのかと真面目にネットで調べたほどだ。しかし調べた結果は、やはりフィクションであったようだ。また、この作品では、東京大空襲が蔵王にB29を着陸させるためのカモフラージュであったという解釈も面白い。そして、相場を追ってくる「銀髪の怪人」は、恐ろしく手ごわく不死身でアクション映画を見ているようなドキドキ感があった。
「BOOK」データベースの内容にあるように、全ての謎に答えが出てからの、物語の進行がスピーディになっていく。はたして二人はヒーローになれるのだろうかと、続きを早く知りたくてぐんぐん読み進んでしまった。“血湧き肉躍る”という言葉があるが、まさにそれを彷彿させる作品であった。